【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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350 代わりに出るのは?

 

 

ロンは入院して1週間が経っていたが、まだ退院には至っていない。

しかし、夢喰蟲が除去され繰り返し行われたカウンセリングで少しずつ『本当に操られていた。この気持ちは紛い物だ』という事を認められるようになり、経過は明るいと言えるだろう。

ソフィア達がお見舞いに行った時は決まって「本当にまともだから早く退院したい」とつまらなさそうに文句を言っていた。

 

 

未だに夢喰蟲を仕込んだ者が誰かはわかっていなかった。

教師はすぐにハニーデュークスへ向かい、店長を調査し尋問したが、店長は夢喰蟲のことなど全く知らなかった。

どうも嘘ではなく()()()()()()()()()という事がわかり、店長もまた犠牲者だろうというのが教師達の結論だ。

服従呪文をかけられ全ての命令に従ったのち、記憶を消されたのだろう。

 

ならば学校側として「ハニーデュークスの店の商品に寄生魔法生物が混入していたため、虫下し薬を全員飲みましょう」と言うことはできなかった。

店長は何も知らず、尚且つ本当に試食に混入されていた証拠はなく、夢喰蟲を見せたとしても間違いなく店主は認めないだろう。

営業妨害だと言われ、怒りを買い、今後ホグワーツ生には商品を売らないとなってしまったならば、未来の生徒達が可哀想だ。

 

 

そこで、ダンブルドアは事実の一部を捻じ曲げて生徒達に伝えた。

ダンブルドアが語ったのは、ホグワーツ内で夢喰蟲という寄生魔法生物が大量発生した事。それは体内に寄生する可能性があり、もし不安なら医務室に虫下し薬があるためすぐに処方してもらう事──のたった二つだ。

効果は絶大であり、生徒の大多数が医務室に押しかけポンフリーから薬をもらった。

 

何故そこまで効果的だったのかというと、簡単なことだ。夢喰蟲がどのような見た目をしているのかを皆に紹介したのだ。

 

ダンブルドアはハグリッドに頼み大量の夢喰蟲を用意させ、説明時にガラスケースの中で蠢く物を実際に皆に見せた。こんな気持ち悪いものが体内で蠢いているかもしれない──そう思うと、誰だって薬を飲みたくなるだろう。

 

 

ロンとラベンダーとシャーロットが入院している事は知られていたが、その寄生魔法生物が体内で育ちすぎたのだろう、とどこからともなく噂が駆け巡り、心配はされていたがそれほど大きな関心を持たれる事はなかった。 

 

 

犯人がわからない事はソフィア達の中で不満と不安が残ったが、怪しい者全員に真実薬を飲ませるわけにはいかないのだ。

尤も、犯人がホグワーツの学生ではない可能性も捨てきれない。全ての寮の談話室で時々匂っていた香り薬もあれ以来香る事はなく、誰がどうやって談話室に持ち込んだのかはわからなかった。

 

ホグワーツの生徒である可能性が極めて高い事件だが、服従の呪文がある限り、よほどの証拠と証言が揃わなければ罪を確定することは困難なのだ。──だからこそ、過去無罪を訴えた元死喰い人が多くいたのだが。

 

 

 

ついに犯人もわからぬまま、2月になり学校の周りの雪が溶け出し、冷たくて陰気な時期がやってきた。

どんよりとした灰紫の分厚い雲が城の上に低く垂れ込め、間断なく降る冷たい雨で芝生はとても滑りやすくなっていた。本来なら校庭で行われる予定だった『姿現し術』の第一回目の練習は急遽大広間で行うこととなり、通常の授業とかち合わないように土曜日の朝に設定された。

 

全寮の寮監と魔法省から派遣された指導官の魔女、そして6年生の希望者たちが大広間に集まる。

指導官は姿現しをどのように行えばいいのか──どこへ、どうしても、どういう意図での大切さを説き、いきなり1.5m先の円の中に姿現しを行う実技練習が開始された。

勿論はじめての姿現しで上手くいくことはない。何度目かの号令の後、ハッフルパフ生のスーザンの体がばらけるハプニングがあったが、寮監の4人と指導官は動揺する事なく迅速にスーザンのばらけを戻し再び練習が再開された。

 

姿現しの訓練は1回目では誰も成功する事なく終わり、また次の土曜日に同じように練習があるという。

 

ソフィアとハーマイオニーは他の生徒同様興奮した表情で大広間を出て入り口のすぐそばでハリーが合流するのを待った。

 

 

「なかなか難しいわね」

「ええ、大人でも苦手な人がいるっていうもの、うーん早くできるようになりたいわ!」

「ロン、こんな素晴らしい授業に参加できないなんてすっごく可哀想よね。──コツだけ教えに行ってくるわ」

「ええ。私はハリーを待ってるわね」

 

 

ハーマイオニーはロンに姿現しをするにあたり、大切な三つの心得を教えるために手を振り医務室へと向かう。ソフィアは壁に背をつけ入り口をちらちらと見ながらハリーが出てくるのを待った。姿現しの授業が始まってすぐに気がついたら隣からいなくなっていたのだ。

 

ハリーは人混みに紛れて現れたが──入り口近くで待つソフィアに気づく事なく、大広間を出た途端早歩きで玄関ホールを過ぎた。

ハリーに声をかけるつもりで中途半端に上げた手をソフィアは下ろし、それ程急ぐことがあっただろうかと首を傾げる。

 

 

「……先に行ったと思ったのかしら」

 

 

ソフィアはそう呟きながら、その後で出てきたパーバティと共に姿現しの訓練について話しながら寮まで戻った。

 

寮の談話室でもハリーの姿は無く、ソフィアは首を傾げつつ暖炉側のソファに寝転んでいたティティの元へ向かう。安眠しているティティを抱き上げ膝の上に乗せ頭を撫でれば、半分目覚めたティティは「きゅう」と甘えた声で鳴いた。

 

 

5分もしないうちにハリーが男子寮の階段を降り談話室に現れる。すぐにソフィアの元に駆け寄り隣に座りながら「ソフィア」と低い声で囁いた。

 

 

「さっき、マルフォイがクラッブとゴイルと言い争っていたんだ。どうやらマルフォイはあいつらを見張りにして──やっぱり何かを企んでいるらしい」

「……夢喰蟲の騒動は、ドラコじゃなかったのね」

「それはわからないな。新しい案を考えているのかも──僕、暫く地図を使ってマルフォイの動きを見る。怪しい動きをしてたら透明マントで後を追おうと思うんだ」

 

 

修理したがっている何かがホグワーツにある可能性が高いのなら、ドラコを監視するのは良い案だろう。夢喰蟲の騒動がありその事を考える余裕が無かったが一つの不安が除かれた今ならば監視する余裕も生まれている。

クリスマス休暇の時にアーサーはボージン・アンド・バークスの店を家宅捜査すると言っていたがその件に関して有効な情報は無かったようでなんの便りもない。

 

 

「そうね、何かを修理するためならどこかに隠しておくしかないもの。……でも、そこがスリザリン寮の寝室だったら入るのは難しそうね」

「あいつらを見張りに使うくらいだから、スリザリン寮以外だと思うんだけど」

 

 

難しい顔をするソフィアに、ハリーは自信がなさそうに呟く。こういった予想はソフィアとハーマイオニーの方が勘が良く、自分の予想は惜しいところで今まで外れていたのだ。──主に、騒動を起こした犯人を見つけるという点において。

 

 

「確かに、そうかもしれないわ。……ルイスは何か言ってた?」

「ううん。ルイスはザビニと話してて会話に入ってなかったな」

「そう……」

 

 

ドラコがヴォルデモートからの命を受けているのはかなりの確率で間違いないだろう。それにルイスも多少なりとも関わっているのならば──ソフィアは、ぐっと唇を噛み締め辛そうに顔を歪めた。

 

 

 

 

ハリーがドラコの行動を地図で頻繁に見るようになってから1週間が経過していた。休み時間は勿論、授業の合間であっても行きたくのないトイレへ向かい教師の目を盗んで確認したが、ドラコが怪しげな場所にいることは一度だってなかった。

クラッブとゴイルは2人で行動している時もあり、時には廊下で止まったり城の中を歩き回っているがその時に限ってドラコの姿はなかった。時々、ルイスは1人で行動しているようだが向かう先も図書館やフクロウ小屋であり、多くの生徒達が利用する至って普通の場所だ。

ハリーはドラコの姿を地図上に発見できないことがたまに会ったが、ホグワーツ全員の黒い点と名前が蠢く中で見失ってしまっているのだろう。というのがソフィアとハーマイオニーの考えだった。

実際、寮や大広間を見てみれば点と名前が重なり誰がどこにいるのか判別つき難いことはよくあったのだ。

 

これといった収穫が無く、苛立ちと焦燥感が募る中──二月の半ばにハリーにとって良いニュースと、悪いニュースがあった。

 

 

シャーロット、ラベンダー、そしてロンの3人がようやく入院生活を終え退院することが出来るようになったのだ。

日々ポンフリーのカウンセリングを受け、客観的に自分を見ることが出来るようになったロン達は自分の思想が、自分のものではないと認められるようになった。さっぱりとした笑顔で退院したロンにハリー達は両手を上げて喜んだ。

 

そして、悪いニュースは──。

 

 

「クィディッチ禁止?」

 

 

ロンから告げられた言葉に、ハリーは大きく口を開け愕然とした。ロンは不満そうな顔で頷き、大きくため息をつく。

 

 

「僕はもうまともなのに。今年度中はストレスを感じちゃいけないらしいんだ」

 

 

もう夢喰蟲は寄生していない。しかし、ロンの頭の中を開いて覗く事はできないのだ。今自分で正常な判断ができるとはいえ、過去に植え付けられた思考が湧き上がってくる可能性はあるだろう。ストレスが一つのトリガーであるのなら、暫く刺激の少ない日常を過ごさねばならないのは仕方のない事だ。

 

 

「そんな……」

「でもさ、ストレスが原因ならクィディッチだけじゃなくて宿題もテストも無しにするべきだよな?」

 

 

それが一番ストレスなんだぜ?と文句を言ったロンだったがハリーはその言葉をしっかりと聞いていなかった。グリフィンドールのクィディッチチームはギリギリの人数で行っている。キーパーの予備選手はいないため、次の試合までに誰かを抜擢しなければならない。──いや、誰か、ではなくマクラーゲンになってしまうだろう。性格にかなりの難があり、横暴でチームプレイが出来るかどうか不明だが、選抜では二位だったのだ。彼を起用しない理由が、ハリーには思いつかなかった。

 

 

ロンは退院したが、クィディッチを禁止させられたらしいという噂はすぐに広まり次の練習の前にはマクラーゲンが競技場に向かおうとしていたハリーを談話室の入り口を塞いで立ち、待ち構えていた。

 

 

「やあハリー」

「あー。うん」

「ウィーズリーは試合ができる状態じゃないらしいな」

「まあ、そうだな」

「それなら、僕がキーパーって事だろう?」

 

 

自信たっぷりに告げるマクラーゲンに、ハリーは何とか反論を生み出そうと努力したが、かわりに口から出たのは気の抜けた頷きとも否定ともとれない声だった。

 

 

「どうなんだ?」

「……うん、そうだろうな」

「よーし。今から練習だろ?行こうぜ」

 

 

マクラーゲンは満足げに言いハリーの肩を馴れ馴れしく組みながら引っ張る。ハリーは肖像画をくぐる時にその腕を押し退けながら、心の奥でため息をついた。

 

 

 

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