【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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353 その部屋の意味!

 

 

ハリーはダンブルドアとの授業でトム・リドルがボージン・アンド・バークスで働き、そこでホグワーツ創立者の特別な遺品について知り巧妙な手口でハッフルパフのカップとスリザリンのロケットの所持者であるヘプジバ・スミスを殺害しその二つを奪ったことを知った。

その後、行方をくらましたリドルは死喰い人と世界各地を周り悍ましい闇の魔術を知り、闇の生き物と関わり──数年後、ダンブルドアの元に闇の魔術に対する防衛術の教師を志願しにきた時にはリドルの顔は火傷を負ったように引き攣り、蝋人形のように奇妙に表情は無く、もとのハンサムな姿では無くなっていた。

 

 

ハリーはダンブルドアから再度スラグホーンが持つ記憶がどれだけ重要なものかと説かれ、次の日からどうすればスラグホーンを説得し、手が加わっていない記憶を手に入れられるかと知恵を絞った。

しかし、ハリーだけでなくソフィア達にも良い閃きは無く、毎回この事で話し合っても難しい顔をして沈黙するだけだった。

 

談話室の暖炉脇に座りながら、ハリーは上級魔法薬書をぺらぺらと捲る。何かプリンスが役立つ事を書き込んでないかと思ったが──残念ながら見つけ出すことは出来なかった。

 

 

「そこからは何も出てこないわよ」

 

 

呪文学の教科書を読んでいたハーマイオニーはきっぱりと言うが、言われなくともハリーはわかっていた。

むっつりとした表情でまた数ページ捲り、真実薬のページの余白に書かれたプリンスの解釈や作り方の訂正を見つつハリーはため息をつく。

 

 

「真実薬は本当の事を言わせるけど、ダンブルドアは効かないって言ってた」

「解毒薬を持ってたら意味がないわ。……警戒してるもの、きっと持ってるわ」

「うーん……」

 

 

ハリーの隣に座っていたソフィアは教科書を覗き込みながら頷く。たとえ真実薬を盛ったとしてもスラグホーンはすぐに対処するだろう。それが失敗すれば、もう二度と彼との信頼関係を築くことは不可能になる。

 

 

ハリーは教科書を捲っていた手をふと止め、余白に書かれた『セクタムセンプラ』という呪文に目を留める。呪文の上には殴り書きで『敵に対して』と一言添えられていた。どんな魔法なのか使ってみたい気持ちになったが、流石に今使うことはできず、ハリーはその呪文が書かれたページの端をそっと折り曲げる。

 

その呪文を見ながら、ハリーはどこかで「セクタムセンプラ」という魔法を聞いたことがある気がした。しかし、全く思い出せない。去年、憂いの篩の中で誰かが使っていただろうか?

 

 

「宿題もやばいけど、姿現しのテストもやばいよな……うーっ、きっと僕は合格できないんだ。またあの2人にからかわれる……」

 

 

ロンは呻めき苦しげにしながら談話室にある掲示板を落ち着きなく振り返った。

夕食後、生徒達が戻ってきた時に新たな掲示物が貼られ、姿現しのテストが4月21日に開催されると書かれていたのだ。テスト日までに17歳になる者はテストを受ける事ができる。不安がある者は追加の授業の申し込みをすることも可能だと書かれており、希望者枠にはたくさんの名前が書かれていた。

 

 

「前、惜しかったじゃないか」

「そりゃ、君は一回成功してたから余裕だろ?それに君はテストを受けるのは7月だ!いいなぁ、誕生日を交換したいよ……」

 

 

この中でまだ一度も姿くらましも、姿現しもうまく行っていないのはロンだけだった。

ソフィアは三度、ハーマイオニーは二度姿現しに成功していてテストに自信があり、先週の授業でハリーもようやく一度だけ成功することが出来たのだ。

 

 

「眉毛の置き忘れに注意が必要ね」

 

 

前回、眉毛のみがばらけてしまったロンは、苦い表情でしっかりと顔の中にある眉毛をパチンと叩き「今度はついてこいよ!」と唸る。その様子がおかしくてハーマイオニーとソフィアはくすくすと笑った。

 

 

姿現しのテストについて散々不安になり文句を言っていたロンは宿題の手が止まり、夜の10時を回ってもまだ終わっていなかった。難しいものを後に残していたツケを払わねばならない時がついにやってきて──ロンは途方もなく難解な闇の魔術に対する防衛術の宿題とついに格闘し始めた。

 

 

時々ソフィアとハーマイオニーが吸魂鬼についてのレポートを添削し、文字の誤りがないかを確認していく。

宿題を終わらせたハリーはあくびをしながらぐるりと談話室を見回した。もう遅い時間だからか、談話室には4人以外誰もいない。

ハリーはソフィアの横顔をぼんやりと見つめながら、もしここにロンとハーマイオニーが居なければどうなっただろうか、と考えた。

 

 

ソフィアとハリーが恋人同士になってから一年は経過している。しかし、どうしても2人きりになれる時間は少なく、2人は恋人としてキス以上の行為に及んだことは無かった。

ハリーも健全な男子であり、ソフィアとの甘いひと時を何度も妄想し眠れぬ夜を過ごしたことがある。下世話な同級生に「ソフィアの調()()()どうだった?」と下衆びた笑いで聞かれたことだってあった。

 

その度に無視をしているが、ハリーはふと暇な時があればソフィアの白い肌について考えてしまっていたのだ。

 

──誰かにいい隠し部屋がないか聞こうかな。みんなは……他の恋人達はどうしているんだろう。

 

 

そんな事を考え、ソフィアを見つめていたハリーは、顔を上げたソフィアと目がパチリと会ってしまい胸がどきりと高鳴り──何気なさを装って視線を逸らした。

ソフィアが開心術を使えなくて本当によかった。もし心を見られていたら軽蔑されるだろうか?でも、きっとソフィアも僕と同じ気持ちのはずだ。誰だって恋人と触れ合いたいと思うんだから──。

 

 

ハリーは脳裏に脱ぎかけた服を押さえ、恥ずかしそうに目を潤ませるソフィアを想像してしまい、必死に頭の外に押しやりながらわざとらしくぐっと手を上に伸ばし欠伸をした──その時。

 

 

 

──バチンッ!

 

 

大きな異音が響き、ハーマイオニーは悲鳴をあげ跳び上がりソフィアは直ぐにポケットから杖を出し音がした方を鋭く見た。

 

 

「クリーチャー!」

 

 

暖炉の前に現れたのは深々とお辞儀をしたクリーチャーであり、なぜ彼がこんなところにいるのか、とソフィアとハーマイオニーとロンは困惑しながらクリーチャーを見る。

 

 

「あなた様は、マルフォイ坊ちゃんが何をしているのか定期的な報告をお望みでしたから、クリーチャーはこうして──」

 

 

──バチンッ!

 

 

今度はクリーチャーの隣にドビーが現れた。

少しよろめいた途端、帽子代わりのティーポットカバーが横にずれドビーの眠そうな目を半分隠した。

 

 

「ドビーも手伝っていました、ハリー・ポッター!そして、クリーチャーはドビーに、いつハリー・ポッターに会いに行くのか教えるべきでした。一緒に報告するために!」

 

 

クリーチャーはキーキーと甲高い声で責めるドビーを恨みがましい目で睨む。

 

 

「ど、どうしてクリーチャーがここに?」

「何が起こってるの、ハリー?」

 

 

クリーチャーとドビーの登場に衝撃が抜けきっていないハーマイオニーは目を見開いたままハリーに向き合う。ソフィアはクリーチャーの言葉でハリーが何をしたのかおおよそよ検討はついていた。

ハリーはどう答えようか迷った。結局ソフィア達にはタイミングを逃し、クリーチャーとドビーにドラコを尾行させた事を話していなかった。ロンとソフィアはなんとも思わないだろうが、ハウスエルフの事に敏感なハーマイオニーは間違いなく、批難的な目で見るだろう。

 

 

「あー……その。2人は僕のためにマルフォイをつけていたんだ」

「昼も夜もです」

「ドビーは1週間寝ていません、ハリー・ポッター!」

 

 

ドビーはふらふらとしながら誇らしげに言ったが、その言葉を聞いた途端ハーマイオニーは眉を吊り上げ、ハリーは顔を顰めた。

 

 

「ドビー、寝てないですって?まさか、ハリ。あなた眠るなって──」

「勿論そんな事言ってないよ。ドビー、寝ていいんだ、わかった?──で、どっちかが何か見つけたのかい?」

 

 

実際、24時間監視しろと言ったのだから確かに眠る暇はなかったかもしれないな。とハリーは思ったがそれを正直に言うつもりは無かった。

ハリーはハーマイオニーの猛烈な怒りを宥めるために慌ててドビーに優しく言い聞かせ、再びハーマイオニーが邪魔しないうちにと急いで聞いた。

 

 

「マルフォイ様は純血に相応しい高貴な動きをいたします。その顔貌はわたしの女主人様の美しい顔立ちを思い起こさせ、その立ち居振る舞いはまるで──」

「ドラコ・マルフォイは悪い子です!悪い子です!そして──そして──」

 

 

 

ドラコを褒めるクリーチャーに対抗すべくドビーは金切り声で叫んだが、すぐにぶるぶると震え暖炉目掛けて飛び込みそうな勢いで駆け出した。

ハリーはこういうこともありうると予想していたため、素早く腰あたりを捕まえドビーを押さえた。ドビーは数秒間もがいていたが、やがてだらりと手を弛緩させた。

 

 

「ありがとうございます、ハリー・ポッター。ドビーはまだ、昔のご主人の事を悪く言えないのです……」

 

 

耳を垂らし苦しく喘ぎながら言うドビーは数回深呼吸し、ずれていたティーポットカバーを被り直すとクリーチャーに向かって挑むように叫んだ。

 

 

「でも、クリーチャーはドラコ・マルフォイがハウスエルフにとってよいご主人じゃないと知るべきです!」

「そうだ。君がマルフォイを愛してるなんて聞く必要はない。──早回しにして。マルフォイが実際どこに出かけたのかを聞こう」

 

 

ドラコについての愛はどうでもいいとハリーは切り捨て、クリーチャーに向き合う。クリーチャーは憤慨した顔で声に出さず文句を言った後、また足先を見るように深々とお辞儀をした。

 

 

「マルフォイ様は大広間で食事をなさり、地下室にある寮で眠られ、授業はさまざまな事を──」

「ドビー、君が話してくれ。マルフォイはどこか、行くべきではないところに行かなかったか?」

「ハリー・ポッター様。マルフォイはドビーが見つけられる範囲では何の規則も破っておりません。でも、やっぱり何かを探られないようにとても気を使っています。色々な生徒と一緒にしょっちゅう8階に行きます。その生徒達に見張らせて、自分──」

「必要の部屋だ!」

 

 

ハリーは上級魔法薬の教科書で自分の額をバチンと叩いた。ソフィアとハーマイオニーとロンは目を丸くしてハリーを見ていたが、ハリーはなぜ今まで気づかなかったのかと自分自身に舌打ちをしたい気持ちだった。

 

 

「そこで姿をくらましてたんだ!そこでやってたんだ!──何かをやってる、きっとそれで地図から消えてしまったんだ。……そういえば、地図で必要の部屋を見たことがない!」

「忍びの者は知らなかったのかもな」

「それが、必要の部屋の魔法の一つなんだと思うわ。地図上に表示されないようにする必要があれば、そうするのよ」

「そうね、必要の部屋のことはほとんど誰も知らなかったようだもの……」

 

 

ロンとハーマイオニーとソフィアが頷き神妙に呟く。

そうだ、去年自分たちは必要の部屋を使った。必要の部屋の存在を、自分たちを捕まえにきたドラコは知ったはずだ。その部屋の仕組みを考えれば、それ以外の絶好の隠し場所はないと思うに違いない。

 

 

「ドビー、うまく部屋に入ってマルフォイが何をしているか覗けたかい?」

「いいえ、それは不可能ですハリー・ポッター」

「そんなことはない。マルフォイは先学期、僕達の本部に入ってきた。だから僕も入り込んで、あいつのことを探れる。大丈夫だ」

 

 

ドラコ・マルフォイにできるのだから、自分にも出来るはずだとハリーは確信しこれでようやく尻尾を掴むことが出来たと興奮し喜んでいたが、ソフィアとハーマイオニーは顔を見合わせ「それはどうかしら」と低い声で呟いた。

 

 

「ハリー。多分それはとても難しいと思うわ」

「えっ、どうして?」

「たとえば。ドラコが自分以外に入ることが出来ない部屋を望んでいたら?」

 

 

考えながら言ったソフィアの言葉に、ハリーは目を見開き、苛立ちながら頭を掻く。確かにそうだ。あの必要の部屋は必要とするならばどんな部屋にでも姿を変える。それが本人以外侵入不可の部屋ならばどうする事も出来ない。

 

 

「それと、去年マルフォイは私たちがあの部屋をどう使ってたかしっかり把握していたわ。マリエッタがべらべら喋ったものね。もしマルフォイが個人的な部屋を必要としたわけじゃないにしても、あなたはあの部屋が何の部屋になってるのかを知らない。だから、どういう部屋になれって願うことはできないわ」

「侵入不可じゃなきゃ、なんとかなるさ」

 

 

ハリーは自分に言い聞かせるためにそう言ったあと、ドビーとクリーチャーに礼としっかりと寝るようにと伝える。

バチン、と2人のハウスエルフが消えた後、再び談話室にいるのは4人だけになった。

 

 

「上出来だろ?マルフォイがどこにいるかわかったんだ!とうとう追い詰めたぞ!」

 

 

ハリーはソフィア達には熱っぽく言い、どうすればドラコが必要としている必要の部屋に入ることができるかと頭を捻らせた。

 

 

「だけど、いろいろな生徒と一緒にそこに行くってどういうことかしら?何人関わっているの?ルイスだけなら、まだわかるわ。マルフォイがそんなに大勢の人を信用して自分のやってることを知らせるとは思えないけど……」

「確かにそうね」

 

 

ハーマイオニーは眉を寄せながら呟き、ソフィアも頷いた。ドラコの周りにはいつも多数のスリザリン生がいるが、彼らと深い付き合いではないだろう。間違いなく──ドラコにとって信頼できるのは、ルイスだけだ。

 

 

「マルフォイが、自分のやってることはお前の知ったことじゃないってクラッブに言っているのを聞いた。それなら、マルフォイは他の見張りの連中に──連中に──」

 

 

ハリーはじっと暖炉の火を見つめながら呟く。徐々にその声は小さくなり、ついに途切れた時、ハリーは「そうか」と掠れた声で呟いた。

 

 

「──なんて馬鹿だったんだろう。はっきりしてるじゃないか?地下室にはあれの大きな貯蔵桶があった……マルフォイは授業中にいつでも少しくすねることが出来たはずだ」

「くすねるって、何を?」

「ポリジュース薬。スラグホーンが最初の授業で見せてくれたポリジュース薬を少し盗んだんだ。……マルフォイの見張りをする生徒がそんなに多いわけがない。いつものようにクラッブとゴイルの2人だけなんだ……ルイスは、多分……中に入ってるんだ。──うん、これで辻褄が合う!」

 

 

ハリーは勢いよく立ち上がり、呆気に取られているソフィア達を置き去りにしながら暖炉の前を行ったり来たりし始めた。腕を組みぶつぶつと呟くハリーの目には執念の炎がメラメラと燃えている。

 

 

「あいつら馬鹿だから、マルフォイが何をしようとしているのか教えてくれなくてもやれと言われたことをやるだろう。でも、マルフォイは2人が必要の部屋の前で彷徨いているところを見られたくなかった──だから、ポリジュース薬を飲ませてほかの人間の姿をとらせたんだ。マルフォイがクィディッチに来なかったとき、マルフォイとルイスといた二人の女の子──そうだ、クラッブとゴイルだ!」

「ということは──私が秤を直してあげたあの女の子?」

「まあ!……ああ、どうりで……ネクタイをつけてなくて、どこの寮の子なのかなって思ったのよね……スリザリン生だともバレたくなかったのね」

「ああ、勿論だ!マルフォイがあの時部屋の中にいたに違いない!──そうだ、あそこを通る少し前に地図で見た時、マルフォイは見つけられなかった!──それで、あいつら、誰かが近づけば秤を落としてマルフォイに知らせたんだ!マルフォイのそばを、僕達しょっちゅう通り過ぎていたのに気が付かなかったんだ!」

「あいつら、女の子にされてたのか?」

 

 

ロンはゲラゲラと笑い出し、目元を指で擦る。なるほど、だから最近クラッブとゴイルは不服そうだったのか。小さな女の子に変えられていたら──しかもその理由も詳しくは知らされずに──誰だって不満だろう。

 

 

「あいつらがマルフォイにやーめたって言わないのが不思議だよ」

「そりゃ、できっこないさ。うん。マルフォイがあいつらに腕の闇の印を見せたなら。──もしかして、ルイスも脅されてたり?」

 

 

ハリーはハッとしてソフィアを見たが、ソフィアは眉をキュッと寄せ、悲しげに微笑んだ。

 

 

「確かに、死喰い人は恐ろしわ。──けれどルイスはドラコを恐れることはないわ」

 

 

やはり、ルイスは自分の意思でマルフォイと一緒にいるのだ。そう思うとハリーは胸の奥がぐらぐらと煮えたぎるような気がしたが、以前のような痛みは感じなくなっていた。

 

 

 

 

次の日からハリーはドラコの必要の部屋には何を必要とすれば入られるのか必死に考えた。

ソフィアもまたハリーと同じように悩みつつ色々な意見を出したがソフィアはハリーほど熱心に考えていないようだった。無謀すぎるとわかっているのだろう。

ソフィアだけではなく、ハーマイオニーはこことさら無関心であり、ハリーがハーマイオニーに必要の部屋に侵入する計画を伝えても何の反応も示さなかった。

 

 

「ハリー。勿論マルフォイのことも気になるわ。実際にマルフォイは何かしているし、あの夢喰蟲にも関わっていたのかもしれない。けれどあなたはそんな事よりもやらなきゃならないことがあるでしょう?──スラグホーンの説得よ」

「僕は説得の事を忘れちゃいない。だけど、どうやったら記憶を引き出せるのか見当つかないんだ。頭に何か閃くまで、マルフォイが何をやってるか探したっていいだろう?」

「言ったはずよ。あなたはスラグホーンを説得する必要があるの。小細工するとか、呪文をかけるとかの問題じゃないわ。そんな事だったらダンブルドアがあっという間にできたはずだもの」

 

 

ハーマイオニーはドラコの尻尾を掴む事よりも、ダンブルドアが望む記憶を手に入れることが先決だと言ってハリーがどれだけ宥めたり、言い方を変えて助けて貰おうとしてもさっと立ち上がり大股で去っていった。

 

 

「マルフォイがとんでもない事をしてるんだ!それが、あと少しでわかるっていうのに無視なんてできるはずないだろ?」

「そうね……でも、ハリー。本当にダンブルドア先生の宿題にも取り組まなきゃダメよ?」

「……うん。わかってるよ」

 

 

ソフィアにも言われてしまい、ハリーはむっつりと気難しい表情をしながら渋々頷いた。

オートミールを食べながら、ハリーは必要の部屋について考える。

どんな部屋を必要としただろうか。物置?会合の場所?何かを直すのなら、作業場?隠れ家、だろうか。

 

 

ドラコが何を必要としたのか必死に考えていたハリーは、唐突に──とんでもない発想が頭をよぎった。

 

 

──必要の部屋なら、ソフィアと二人きりになれるし、誰にも邪魔されない……?

 

 

ハリーは今まで頭のほとんどをドラコの企みが占めていたが、一瞬にしてそれらはどこか遠くに飛んでいき、ソフィアの白い頬や赤い唇だけが頭の奥に残った。

 

 

「……どうしたの?」

「──あっ、ううん、なんでもない。僕、この後空き時間だから、部屋が開くかどうか試してみるよ」

 

 

ハリーに穴が開くほど見つめられていたソフィアは不思議そうに首を傾げる。

ハリーは慌ててオートミールを流し込むようにして平らげると、すぐに立ち上がり8階まで全力疾走した。

残ったロンとソフィアは、それほどまでしてドラコの企みが気になるのかと何とも言えない気持ちになった。

 

 

 

 

 

ハリーは8階の、必要の部屋の扉が隠されている壁に近づいた。

全力疾走したからか、心臓はドキドキとうるさく高鳴っている。部屋の前には誰もいなかったが、今のハリーにそれは残念な事だったのか、幸福な事なのか判断は難しいだろう。

 

 

はやる気持ちをぐっと堪え、ハリーは目を閉じ全神経を集中し自分が必要とする部屋を考えた。

 

 

扉の前を三度通り過ぎ、そしてそっと目を開く。

壁だったところに小さな扉が現れており、ハリーはごくりと生唾を飲み静かに扉を開けた。

 

 

「……うわ……」

 

 

ハリーは後ろ手で扉を閉めながら、その部屋の様子を見て──もう少しロマンチックならよかったのに。と考えた。

 

 

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