【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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356 記憶を探る重要さ!

 

 

ついに姿現しの試験の日がやってきた。

ソフィア達は中庭で暖かな初夏の日差しを浴びながら、魔法省から配布されている『姿現し──よくある間違いと対処法』と書かれたパンフレットを読んでいた。

ハリーはソフィア達の背に隠れるようにして忍びの地図を使いドラコを見張っていた。暇さえあれば隠れて忍びの地図を見ているハリーに、ハーマイオニーがついに小さくため息をつききっぱりと告げる。

 

 

「もう、これっきり言わないけど、マルフォイのことは忘れなさい」

 

 

ハリーは何度目かの忠告を無視し、地図の中に顔を埋める。

あれからハリーは必要の部屋に向かい何度もドラコの企てを見つけ出すために言葉を変えてドラコが必要とする必要の部屋を求めたが、一度だって扉は現れなかった。

スラグホーンと会話する努力も挫折し、何十年も押し込まれているであろう記憶をスラグホーンから取り出す糸口も見つかっていないのだ。

スラグホーンの方が絶望的ならば、まだ忍びの地図を見ている方が気が紛れたのだ。

 

 

「あのー……」

 

 

ハリーは聞き覚えのない少女の声にすぐに忍びの地図を閉じて顔を上げる。

現れたのはグリフィンドールの一年生であり、ハリー達4人から穴が開くほど見つめられてしまい、気まずそうに肩をすくめた。

 

 

「これを渡すように言われたの」

「……ありがとう」

 

 

少女は小さな羊皮紙の巻紙をハリーに手渡すとすぐにその場から離れる。少女が角を曲がり見えなくなったところで、ハリーは気落ちしながら忍びの地図をポケットに突っ込んだ。

 

 

「僕が記憶を手に入れるまではもう授業をしないって、ダンブルドアはそう言ったんだ!」

「どうなってるのか聞きたいんじゃないかしら?」

 

 

ハリーが焦りながら羊皮紙を開く間にソフィアは遠慮がちに意見を述べた。

しかし、羊皮紙にはダンブルドアの細長い斜め文字ではなく、みみずが這うようなぐちゃぐちゃとした乱雑な文字がのたくっていた。何箇所もインクが滲んで大きな染みをつくり、とても読みにくくハリーは解読しようと目を細め顔を近づけた。

 

 

『ハリー、ソフィア、ロン、ハーマイオニー。

 

アラゴグが昨晩死んだ。

ハリー、ロン、ソフィア、おまえさんたちはアラゴグに会ったな。だからあいつがどれだけ特別なやつだったかわかっただろう。ハーマイオニー、おまえさんもきっとあいつが好きになっただろうに。

今日、あとで、おまえさんたちが埋葬にちょっくらきてくれたら嬉しい。夕闇が迫る頃に埋めてやろうと思う。あいつが好きな時間だったしな。

そんなに遅くに出てこれねぇってことは知っちょる。だが、おまえさんたちはマントが使える。無理は言わねえが、俺ひとりじゃ耐えきれねえ。

 

ハグリッド』

 

 

ハリーはそこに書かれた手紙を読んだ後、嘘だと思いもう一度読み──愕然としながらソフィアに「これ、読んでよ」と手紙を渡した。

 

すぐにソフィアは手紙を受け取り、左右からロンとハーマイオニーが覗き込む。ソフィアは急いで読み、だんだん表情を曇らせると最後には大きなため息をついた。

 

 

「ああ、もうそろそろだと思っていたの。可哀想だわ……でも、私ヴェール付きの帽子持ってないわ」

 

 

ソフィアはアラゴグの埋葬に行くつもりであり、服装の心配をしていたがハリーとロンとハーマイオニーは愕然とながらソフィアを見る。

3人は「ありえない」と思っていた。なぜ自分達を仲間に食わせようと思っていたアラゴグの葬儀など行くと思ったのか。どうすればハグリッドを傷付けず断れるか──と必死に考えていたのだ。

 

 

「正気かよ?仲間の連中に、僕とハリーとルイスを食えって言ったやつだぜ?勝手に食えって、そう言ったんだ!なのにハグリッドとソフィアは、こんどは僕たちが出かけて行って、おっそろしい毛むくじゃら死体に涙を流せって言うのか!」

「アラゴグが嫌いなのはわかってるわ。アラゴグのために涙を流すんじゃなくて、ハグリッドに寄り添いたいのよ!」

「ソフィア。ハグリッドは城を抜け出せって頼んでるのよ。安全対策が何倍も強化されているし、私たちが捕まったら大問題になるのを知ってるはずなのに」

「でも、何度もマントを着て行ったでしょう?バックビークを逃す時とか……」

 

 

安全対策が強化されている時に抜け出したことはある。ソフィアはそう言ったが、ハーマイオニーは真剣な目で「そうね」と呟いた。

 

 

「でも、わけが違うわ。ハグリッドを助けるためになら危険を冒すわ。でも、どうせ──アラゴグはもう死んでるのよ。これがアラゴグを助けるためなら──」

「ますます行きたくないね」

 

 

ロンとハーマイオニーは行くことに賛成ではないのだとわかると、ソフィアは少しショックを受けたような顔をして黙り込んだ。ロンの言葉はともかく、ハーマイオニーの言葉は道理にかなっているのだ。これが夕闇の時刻ではなく、出歩いていい時間ならばハーマイオニーは埋葬に参加しただろう。

ハリーは手紙をソフィアの手から受け取り、羊皮紙いっぱいに散らばっているインクの染みを見つめた。きっと、大粒の涙がぽつぽつと溢れたのだろう。

 

 

「ハリー、まさか、行くつもりじゃないでしょうね。そのために罰則を受けるのはまったく意味がないわ」

 

 

ハーマイオニーがハリーの表情を見て厳しい口調でそう言った。

ハリーは、アラゴグの事はどうでも良いと思っていた。ただ、ソフィアが言うようにハグリッドに寄り添いたい気持ちがあったのも事実だ。見透かされた事により、ハリーは小さくため息をこぼしゆっくりと頷く。

 

 

「わかってる。ハグリッドは僕たち抜きで埋葬しなきゃならないだろうな……」

「ええ、そうよ。ハグリッドを励ますのは明日の朝でもいいわ。ね、ソフィアも行かないわよね?」

「私──私……アニメーガスの姿なら出歩いても──」

「駄目よ!絶対、駄目!!」

 

 

ハーマイオニーの必死な叫びに、ソフィアは暫く黙り込んでいたが──ついに渋々頷いた。

 

 

「明日の朝1番に慰めに行くわ……」

「ええ!そうしましょう。──ねえ、ハリー。今日魔法薬学の授業はほとんどがらがらよ。殆どの生徒が試験に行くもの。だから、その時にスラグホーンを少し懐柔してごらんなさい!」

 

 

話題をハグリッドの事からスラグホーンへと戻すためにハーマイオニーはハリーに向き合った。まるで自分が全く努力していないような言い方だが、ハリーは魔法薬学の授業では毎回どうにかして話せないかと考え、必死に話しかけているがスラグホーンは聞こえないふりをしてすぐに教室を出てしまうのだ。

 

 

「57回目に、やっと幸運ありっていうわけ?」

「幸運──」

 

 

苦々しく吐き捨たハリーに、ロンは鸚鵡返しで呟きそしてパッと顔を輝かせた。

 

 

「ハリー、それだ!幸運になれ!」

「何のことだい?」

「幸運の液体を使え!」

「ロン、それって──それよ!」

「まぁ!気がつかなかったわ!確かにそうね!凄いわ、ロン!」

 

 

ロンはハーマイオニーとソフィアが同意し、それも珍しく褒められた事が嬉しく、自信に満ちた表情で胸を逸らした。

 

 

「フェリックス・フェリシス?どうかな……僕、とっておいたんだけど……」

「何のために?」

「スラグホーンの記憶ほど大切なものが他にある?」

 

 

ロンとハーマイオニーは煮え切らないハリーの言葉が信じられないと目を見張る。

ハリーは答えなかった。

この薬は幸運を引き寄せてくれる。ならば、将来──ソフィアと最高の1日を過ごすために取っておこう、と考えていたのだ。

チラリとソフィアを見たハリーの視線に、ハーマイオニーは「そう言うことか」とハリーの考えがわかると一際大きなため息をついた。

 

 

「ハリー。それは、幸運に頼らなくても大丈夫よ」

「うーん……」

「何のことだい?」

「何に使うの?」

 

 

ロンとソフィアは首を傾げ不思議そうな顔をしたが、ハリーは何でもないと手を振り、渋々頷いた。

 

 

「わかったよ。じゃあ、今日の午後にスラグホーンを捕まえられなかったら、フェリックスを少し飲んで、もう一度夕方にやってみる」

「じゃ、決まったわね」

 

 

ハーマイオニーは満足げに言うとさっと立ち上がり爪先で優雅にくるりと回った。

 

 

「どこへ──どうしても──どういう意図で──」

「おい、やめてくれ!」

 

 

後数分で始まる姿現しのテストを前に気が立っているロンは哀願し叫ぶと、必死に半分握りつぶしていたパンフレットを広げ顔を近づけた。

 

 

「僕、それでなくても気分が悪いんだ。きっと失敗する……」

「落ち着いてやれば大丈夫よ。ほら、こうやって──」

 

 

ソフィアは悪戯っぽく笑うとハーマイオニーのようにその場でくるりと回転した。ハリーはソフィアの長い髪が少し遅れて揺らめく姿にどきりとしていたが、ロンは別の意味でどきりとし顔を引き攣らせた。

 

 

「そんなの他の奴らの前でしてみろよ。非難の的だぜ?」

 

 

ロンは中庭に少女が2人現れたのを見ながら嫌そうに言う。しかし、少女達は姿現しの真似をするソフィアとハーマイオニーには目もくれず、俯き沈みながら足早に中庭を横切った。

 

 

「ほら見ろ。僕より沈んでるぜ?」

「ロン……あの2人は、姿現しのせいじゃないわ」

「モンゴメリー姉妹に何があったか知らないの?」

 

 

ソフィアとハーマイオニーは回転をぴたりと止めると今までの楽しげな笑いを消し、真剣な目でロンを見た。

 

 

「正直言って、誰の親戚に何があったかなんて、僕、もうわからなくなってるんだ」

 

 

ロンはハーマイオニーが毎朝読む新聞で誰かの訃報が無いかと聞いているが、それが無い日が少ないほど事件が起こっている。ホグワーツ生の親戚や家族が不幸な目に遭っているのは、珍しい事では無いのだ。

 

 

「あのね、2人の弟が人狼に襲われたの。噂では母親が死喰い人に手を貸すのを拒んだそうよ。それで──弟はまだ5歳だったけど、聖マンゴで死んだの」

「助けられなかったのね……本当に、辛いことだわ……」

「死んだ?でも、まさか人狼が殺すことはないだろ?人狼にしてしまうだけじゃないのか?」

 

 

ハリーは鎮痛な面持ちのソフィアのハーマイオニーを見てショックを受けて聞き返した。人狼に攻撃されたものは皆人狼になるのだと思った。噛まれた傷により死ぬ可能性がある事を、ハリーは考えていなかったのだ。

 

 

「時には殺す。人狼が興奮すると、力加減を誤って殺すんだ」

「実はね、人狼に噛まれて命が助かるケースの方が、少ないのよ……治療を拒否する人もいるからだと思うけど」

 

 

いつになくロンとソフィアは暗い表情で言った。たとえ命が助かる状況だったとしても、一生涯人狼として生きていかねばならない。それを考えた時に治療を拒絶し死を選ぶ者は少なくない。それほど、人狼の差別は強くその力は恐ろしいものなのだ、

 

 

「その人狼、なんて言う名前だったの?」

「たしか、フェンリール・グレイバッグ、だったという噂よ」

「そうだと思った。子どもを襲うことが好きな狂ったやつだ。リーマスがそいつのことを話してくれた!」

 

 

ハリーはリーマスが人狼になった原因であるグレイバッグを思い、怒りのまま叫ぶ。ハーマイオニーは暗い顔でハリーをじっと見た。

 

 

「ハリー、あの記憶を引き出さないといけないわ。全ては、ヴォルデモートを阻止することにかかってるのよ。恐ろしいことが起こるのは、結局みんなヴォルデモートに帰結するのよ……」

 

 

ハーマイオニーの言葉に皆が暗い顔をして頷いた。ヴォルデモートがいなければ、人狼は今よりは大人しくなるだろう。ヴォルデモートの後ろ盾があるからこそ、彼らは今魔法界を混乱の中に陥れようとしているのだ。

 

 

重く沈黙したソフィア達の頭上にで城の鐘がなり、ソフィアとハーマイオニーとロンは揺れる鐘を見上げた。

 

 

「行ってくるわね」

「うう……嫌だなぁ…」

「きっと大丈夫だよ、頑張れ!」

 

 

ハリーは緊張した顔をする3人を見送りながら、1人で魔法薬学の授業を受けるために地下牢へと向かった。

 

 

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