翌朝の呪文学の授業で、ハリーはロンとハーマイオニーに何故ハグリッドの元へ向かったのかという理由と、幸運に導かれスラグホーンの記憶を手に入れた後ダンブルドアへ報告に行った事を告げた。
ヴォルデモートの分霊箱のことや、ダンブルドアが次の一個を発見したらハリーを連れて行くと約束した話をすると、ソフィア達は息を飲み感服した。
「うわー、君、本当にダンブルドアと一緒に行くんだ……そして破壊する……うわー!」
ロンは感心しながら意味もなく杖を上に向けくるくると回す。全く意識していないようだったが、ロンの魔法により天井からちらちらと雪が降っていた。
「ロン、あなた、雪を降らせているわよ」
「ああ、本当だ。……ごめん、みんな酷いフケ症になったみたいだな」
ハーマイオニーがやんわりとロンの腕を掴み杖を天井から逸らしながら優しく言った。ロンは空から降った偽物の雪が同級生の頭に積もっていくのを申し訳なさそうに見て肩をすくめ、ハーマイオニーの肩に積もった雪を払う。
「綺麗な魔法ね」
ソフィアはくすくすと笑いながら杖を振り、杖先から柔らかな風を出しハリーの頭に積もっていた雪や、自分についた雪を吹き飛ばした。
「これ、次のクリスマスの時に使えるわ」
「確かにそうね、ずっとクリスマスツリーに降らせられるようにしましょうか──」
「しっ!フリットウィックだ」
小声で話していたソフィアとハーマイオニーにロンが慌てて伝える。机の間をひょこひょこと跳ねるようにフリットウィックが現れ、お喋りに夢中だったソフィア達の机をじっと見つめる。
机の上にはフラスコが4つあり、酢をワインに変える魔法を練習していたのだが、ガラスのフラスコが綺麗な赤ワインで満たされているのは2つであり、残りの2つは濁った茶色をしていた。
成功しているのが誰か聞かずともフリットウィックにはわかり、咎めるような目でハリーとロンを見上げる。
「さあ、さあ、そこの二人。おしゃべりを減らして行動を増やす。──先生にやって見せなさい」
ロンとハリーは同時に杖を上げ、集中してフラスコに杖を向けたが──ハリーの液体は氷に変わり、ロンのフラスコは木っ端微塵に爆破してしまった。
散々な結果に近くで見ていたハーマイオニーは気の毒そうな顔をし、フリットウィックは手に持っていたボードに羽ペンで成績をつけながら「はい、宿題ね」とさらりと言った。
「練習しなさい」
フリットウィックがそう言い他の生徒の元へ行った後、ソフィア達は顔を見合わせ肩をすくめ、それからは真面目に授業に取り組んだ。
呪文学の授業の後は珍しく4人全員が空き時間であり、ソフィア達はクィディッチの競技場へと向かった。
ソフィアがキーパーの試験を受けるのは昼休みであり、昼休みまであと1時間半はあるが、その前に久しぶりに箒に乗るソフィアが試験を受ける前に練習をしたいと言い、ハリーは勿論喜んでそれに付き合い、ロンとハーマイオニーは応援するべく観客席に座った。
「じゃあ、僕がクァッフルを投げるから、それを防いでみて」
「ええ、わかったわ」
ソフィアは箒置き場に入れたままだった最高級の箒を撫で「よろしくね」と呟き跨る。素晴らしい加速を見せたソフィアはゴールポストを大きく通過してしまい、慌ててくるりと一回転して自分の配置に戻った。
「すごく速いの忘れてたわ」
「ソフィア!頑張ってねー!」
観客席の方からハーマイオニーの声援が聞こえ、ソフィアは手を挙げてそれに応えた後しっかりと両手で箒を握り、身を低くした。
ハリーはクァッフルを持ち、離れたところからじっとソフィアの動きを見る。
ソフィアと一緒にプレイできたらどれほど幸せだろうか。きっと素晴らしい思い出になる。試験に合格して欲しい。──でも、ソフィアはきっと手加減する事は望んでないだろうし、僕も、したくはない。
ハリーはクァッフルをぎゅっと握ると素早くゴールポストに近づき、輪の中目掛けて投げた。
ソフィアは離れた場所にいたがハリーの視線や腕の角度を見てどのゴールポストを狙ったのかを予想し的確に弾き返す。
30分ほどソフィアの練習は続いた。ハリーは途中で練習だという事を忘れ、このクァッフルをゴールポストに叩き込みたいと強く思いムキになり投げていたが、ソフィアはハリーや見ているロンとハーマイオニーが唸るほど見事にゴールを守った。
「──凄いじゃないか!」
「ありがとう!私って、キーパーが向いているのかもしれないわ」
ソフィアは息を弾ませながらグラウンドに降り、額に滲んだ汗を拭き溌剌とした輝く笑顔を見せる。ハリーは言葉を変え何度もソフィアを褒めちぎり、これは手加減なんてしなくても間違いなくソフィアは他のチームメンバーに認められるだろうと思い嬉しくなった。
「ソフィア、君ってなんでも出来るのかい?」
グラウンドに降りてきたロンは少し顔を引き攣らせ呟いた。嫌味の一つを言いたくなるほどの完璧な守りに、ロンは来年クィディッチの選抜試験にソフィアが出ず、自分がキーパーになってしまえば──間違いなく比べられるだろうと考え、今から気が重かった。
「ソフィアはすっごくよく見てるもの!クァッフルだけじゃなくて、全てね。私、正直シーカーよりも才能があると思うわ」
「去年は、見過ぎて大変な事になっちゃったものね」
ソフィアはハーマイオニーの賞賛に茶目っ気たっぷりに笑い頭を押さえる。そこは去年代理シーカーだったソフィアがブラッジャーを受け、記憶を一時的に無くすという怪我をした箇所だった。
「今度は記憶を無くさないでね」
「ええ、ブラッジャーに伝えないといけないわね」
くらくらと頭を振りおどけて見せるソフィアに、ハリー達は声を上げて笑った。
昼休みを使い、チームメンバーの前で行われたソフィアのキーパーの試験は何も心配する事なく終わり、皆がその力を認め、ソフィアは正式にキーパーになる事が出来た。
次の試合まで後1ヶ月ほどであり、ソフィアは選手達と練習に明け暮れた。
次のグリフィンドール対レイブンクローの試合はどちらも優勝杯圏内である。──いや、グリフィンドールはかなり厳しいと言ってもいいだろう。
グリフィンドールが優勝するためにはレイブンクローに300点差で勝たなければならない。それを下回る時はレイブンクローがたとえ試合に負けても優勝となり、グリフィンドールは2位だ。
グリフィンドール生だけでなくほぼ全ての生徒が混戦状態の優勝争いに強い関心があり、雌雄を決するその試合の数日前からは、お決まりのように対抗する寮の生徒達が相手チームを廊下で脅そうとしたり、選手が通り過ぎる時にわざとらしく選手の嫌味を言った。
「あら、プリンス!あなた医務室の予約はしたの?」
「また記憶を失うんじゃないか?」
ソフィアも廊下を歩けばレイブンクロー生やスリザリン生から意地の悪い言葉をかけられたが、去年シーカーを経験した時のプレッシャーに比べれば、まだソフィアの心には余裕があった。
「ご心配ありがとう。素敵なヘルメットをプレゼントしてくれるかしら?」
ニコリと笑い余裕の表示で手を振るソフィアは吹っ切れたように試合前の緊張感や嫌味を楽しんでいた。
レイブンクロー戦の数日前、ハリーは一人談話室を出て夕食に向かっていた。
ソフィアはティティを連れてマクゴナガルとの個人授業へ向かい、ハーマイオニーは数占いの授業で提出したレポートに間違いがあったかもしれないとベクトル教授に会いに行き、ロンはフリットウィックの授業で補習を受ける事になってしまっていた。
ハリーはクィディッチの優勝だけでなく、ドラコの企みを暴くことへの情熱も衰えていなかった。
つい習慣でいつものように回り道をして8階の廊下に向かいながら、忍びの地図をチェックする。ざっと見てもどこにもドラコの姿は無く、また必要の部屋に篭っているのだと思ったが──よく見れば、ドラコ・マルフォイと記された小さな点が7階の空き教室に佇んでいるのが見えた。
ドラコだけではない、ルイスもそばにいる。
周りにクラッブとゴイルや、その他のスリザリン生の姿は無く、ハリーはきっと何かを企んでいるに違いないと思い急いで階段を降りた。
忍びの地図と目の前の扉を見比べ、この空き教室で間違いない事を確認し、扉に耳をつけたが何も声は聞こえない。
ハリーは小声で「アロホモラ」と唱え、ドアノブを回したが──ピクリとも動かなかった。
アロホモラで解呪できる以上の鍵が魔法でかけられている。人に聞かれたくない話をしているに違いない。
ハリーは足音を殺しなるべく急いで談話室に戻るとトランクの中身をひっくり返し、底にあったナイフを取り出す。それはシリウスから貰ったどんな鍵でも開けることができるナイフだった。
喉が焼けるほど痛かったが、ハリーは廊下を疾走し、ドラコとルイスが密会している隠し部屋へと戻る。少し前の廊下で速度を落とし地図を素早く確認すれば、幸運にもドラコとルイスはまだ先程と同じ場所にいた。
はやる気持ちを抑え、足音をなるべく立てないようにそっと扉に近づき、扉と鍵の隙間にナイフを差し込んだ。
カチ、と小さな音が自分の押し殺した呼吸しか聞こえない廊下に響く。
ハリーはごくりと固唾を飲み扉を薄く開いた。
ルイスが扉に背を向けて立っていた。その前にはドラコがいる。向き合い寄り添うあう2人に、ハリーは抱きしめ合っているのかと怪訝な顔をしたが──違った。
ドラコは項垂れ、ルイスの肩に手を乗せていた。ルイスは今にも崩れてしまいそうなドラコを支え、必死に声をかけている。
「大丈夫だよ」
「駄目だ……僕にはできない、こんな、恐ろしいこと……」
「大丈夫。僕がついてるから」
「っ……うまくいくわけがない……うまくいくのも、怖い……」
「僕がいる」
ハリーは今見ている光景が信じられなかった。
ドラコの声と体は震えていた。ゆっくりと上げられた顔色は悪く、そして──泣いている。
涙が青白い頬を伝い、ぽたぽたと流れていたのだ。その目は恐怖と絶望に染まっていた。
「ドラコ……」
「わかってる。やらないと……殺される、僕だけじゃない。みんな──」
ドラコは言葉を切った。ルイスの肩越しに魔法で閉めたはずの扉が開いているのが見え、そして顔を覗かせているハリーに気付いたのだ。
ハリーとドラコが唖然と見つめ合ったのは瞬きほどの時間だった。ドラコはルイスを押し退け杖を取り出し、素早く振り下ろす。ハリーもまた反射的に杖を取り出し、脇に飛び退いた。
ドラコの魔法はハリーから僅かに逸れ、扉に当たり木製の扉は砕け散った。ハリーは「
ドラコは目元を乱暴に拭き、次の魔法をかけようと杖を振るう。ハリーも負けじと足縛りの呪いをかけようとしたが狙いがそれ、端に並んでいた机を破壊した。
「
「駄目だ!」
ルイスはドラコが顔を歪めて言いかけた魔法に素早く反応し、ハリーを護るべく杖を振る。ハリーは昨日読んでいた上級魔法薬──プリンスの本に書かれていた魔法を思い出し、夢中で唱えた。
「
「なっ──!」
ドラコの胸や腹から、まるで見えない刃で斬られたような傷がパッと開き、刹那遅れて大量の血が吹き出す。その血の勢いは、離れたハリーの顔に届くほどだった。
目を見開き、後ろ向きに倒れるドラコのその姿が、ハリーにはひどくゆっくりに見えた。
「ドラコッ!」
「そんな──」
ルイスは悲痛な声で叫び、ドラコに駆け寄る。ハリーはよろめきながらドラコの側に近づき、呆然とその血に塗れた体を見下ろした。
ドラコの体からは夥しい血が溢れ、むせ返るような強い血の匂いが一気に漂い、黒い床がじわじわと赤色で染まっていた。蒼白な顔で苦しげに喘ぎ胸を掻きむしるドラコを見て、ハリーは頭が真っ白になりその場から動けず、目も離せなかった。
ルイスは何度か深呼吸し、自分の震えを落ち着かせると血が溢れる傷口に杖を向け、歌うように唱えた。
「ヴァルネラ・サネントゥール──」
その呪文を唱えた直後、破壊された扉の残骸を踏みつけながらセブルスが飛び込んできた。
ハリーは憤怒の表情のセブルスを見ても、心が止まってしまったかのように何も思わなかった。荒々しくハリーを押し退けたセブルスは跪いてドラコの側にかがみ込み、杖を取り出す。
「腹の傷を」
セブルスの低い声にルイスは小さく頷き、腹を裂きぬるりとした内臓が見えている傷口に同じ呪文をかける。セブルスは損傷の激しい胸元の傷をゆっくりと杖でなぞりながらルイスと同じ魔法を唱えた。
ハリーが自分のしたことに愕然としている間に出血が緩やかになり、ドラコの体に付着していた血はみるみる内に体の中に戻った。
セブルスは二度目の魔法を唱え終えるとルイスに目配せし、ドラコを半分抱え上げて立たせた。
「医務室に行く必要がある。……多少傷痕を残す事もあるが、すぐにハナハッカを飲めばそれも避けられるだろう」
「……はい」
ルイスはドラコの肩に手を回し、まだ蒼白な顔をして目を強く閉じ脂汗を流しているドラコを抱えて部屋から出て行った。
残されたのは、ハリーとセブルスの2人だった。
セブルスは無言で杖を振り破壊された扉や机を修復し、床に流れ落ちていたドラコの血を清める。
ハリーは自分の体についた血を見つめ「そんなつもりはありませんでした」と震える声で呟いた。
「あの呪文が、どういうものなのか知りませんでした」
「習ったのだろう」
セブルスの声は低く冷たかった。
ハリーは数秒沈黙し、葛藤した。あの素晴らしい本、あれがあったから魔法薬学で最高の成績を収め、フェリシスを手に入れる事が出来た。あの本がなければスラグホーンの記憶を得ることは不可能だった。
ぐっと拳を握る。ぬるり、とした感触があり、ハリーはふと手を開き自分の手のひらを見た。
そこには、自分の汗と混じってドラコの血液がべっとりと付着していた。
ハリーは掌をじっと見ていたが、ここで嘘をつくことは何の意味もないと感じた。僕の言葉を、この人は信じてくれるだろうか?いや、でも──どっちにしろ、僕の罪は重い、知らなかったでは許されない。
「いえ──僕、読んだんです」
「……何?」
「実は──今年度の初め、上級魔法薬の本を、教室の貸し出し本の中から借りました。それに……沢山の書き込みがあって、それで……」
「上級魔法薬の本?」
ぼそぼそと話すハリーの言葉に、セブルスは怪訝な顔をし──大きく目を見開いた。
ハリーは俯いていてその表情を見ていなかったが、間違いなくセブルスの目には狼狽と焦りが浮かんでいた。
「はい。かなり古い本で、ソフィアは──自分の親戚のものかもしれないと言っていました。著名があって、プリンス、と。だから……ソフィアの親戚のものに、こんな危険な魔法があるだなんて、思わなくて……敵に使う。としか、書いてなくて……」
セブルスは自分のとんでもない失態に内心で舌打ちをこぼした。ハリーが持っている本は、紛れもなく自分が学生時代に使っていた本だ。あの本には自身の創作魔法だけでなく、沢山の魔法薬の改善点が書かれている。今年ハリー・ポッターの成績がルイスよりも良いのは、──私の教科書を使っているからだ。
どこにやったのかと思っていた、てっきり家の本棚の中だと。これは──もしや、自分にも責任が僅かばかりにあるのかもしれない。
「……その本をここに持ってくるのだ。今すぐに」
「はい……」
ハリーは項垂れたまま、一度もセブルスの顔を見ず──どうしても見る事が出来なかった──その場から駆け出した。
一人残ったセブルスは、大きくため息をついて顔を手で覆った。
あの教科書、そんなところに入れていたか。私の授業で教科書を持ってこない生徒など存在しなかった、貸し出し棚など、一度も使うことはなかった……だからこそ忘れていたのだろう。
ソフィアは、間違いなくあの本が私の本だと分かったはず。知っていて黙っていたのか?危険な魔法があることを言わずに──いや、きっと、下手に追求し、万が一私との関係を知られたらと思うと動けなかったのだろうか。
数分後、ハリーは本を持ってセブルスの前に現れた。
震えるその手が血で汚れているのを見て、セブルスは杖を軽く振るう。ハリーの服や顔についていたドラコの返り血はすっかり綺麗になり、ハリーは初めて顔を上げた。
「誰が作り出したかわからぬ呪文を使うことが、どれほど愚かなことかわかっただろう」
「はい」
「この本は我輩が持つ。異論は無いな?」
「……はい」
「君は人の命を奪いかけたのだ。その罰は背負わねばならん。──今学期一杯、土曜日に罰則を与える。朝の10時、我輩の研究室で」
「──っ……」
次の土曜日は、クィディッチの試合だ。それをわかっていてセブルスは土曜日の朝10時という日時を設定した。これほどハリーに効果的な罰はないだろう。
ハリーはぐっと奥歯を強く噛み、何とか不満が漏れそうなのを耐えた。──いいや、スネイプの言う通りだ。僕はマルフォイを殺しかけた。ハーマイオニーも、あまりどんな魔法かわからないのは使わない方がいいと言っていた。ソフィアの親戚のものかもしれないって言うのも、僕達がそう思っただけで証拠は無いんだ。
「……はい」
ハリーは何とかその一言を絞り出した。
セブルスは項垂れたハリーの後頭部を見て鼻で小さく笑い。それ以上何も言うつもりはないのか、これ以上の罰は無いのか──黙って部屋から出て行った。
残されたハリーは、ぐっと拳を握りながら強い吐き気と人を殺したかもしれない恐怖に打ちのめされていた。
ーーー
後20分でマクゴナガルとの個人授業が終わる。ソフィアはティティに杖を向けマクゴナガルから指導されつつ集中し授業に取り組んでいたが、それは外からのノックで一時中断された。
「はい、どうぞ」
「失礼」
「スネイプ先生、どうしました?」
現れたのは険しい表情をするセブルスで、マクゴナガルはソフィアを見て「ミス・プリンスに用ですか?」と首を傾げる。ソフィアも一体何だろうかと不思議そうな顔をしてティティにかけようとしていた魔法を止めた。
セブルスは首を振ると無言でマクゴナガルに近づき、ソフィアに聞こえぬよう二言三言囁く。怪訝な顔をしていたマクゴナガルは冷水を浴びたかのように一気に蒼白な顔をし、唇を戦慄かせるとセブルスと同様険しい表情をした。
「ミス・プリンス。今日はここまでです。私は行かねばなりません。片付けはよろしくお願いします」
「は、はい。ありがとうございました」
言いながら扉に向かい、足早に教室から出て行くマクゴナガルの背を見てソフィアは心配そうに呟く。きっと、何かあったのだろう。まさかドラコの企みにより、また事件が起こったのだろうか?
セブルスは杖を振り扉を閉めた。そのままくるりとソフィアに向き合い、ローブの中から一冊の本を出し差し出す。苦い表情のセブルスに困惑しながら、ソフィアはその古い本を見て──何を意図するのかわからず目を瞬かせた。
「この本がどうしたの?」
「……ソフィア、この本はどういうものだと思っていた」
「え?父様の本でしょ?名前は違うけど、文字が同じだもの。時々他の筆跡が2人分あるから……ジャックと母様も書き込みしていたのかな、って思って……その本、ハリーが持ってたのにどうして……?」
「……ここに書かれている魔法を全て知っているか?」
「人を宙吊りにする魔法はあるのは知ってるわ。私も読みたかったけど、ハリーがすっごく大切にしてたから、私はあまり読んでないの」
セブルスは眉間の皺を押さえながら大きくため息を吐く。やはり、ポッターはセクタムセンプラがどのような魔法か本当に知らなかったのか。もし、ソフィアがセクタムセンプラが書かれていると知れば、流石にその危険性を忠告していただろう。ソフィアには、2年生の時にこの魔法の危険性をしっかりと伝えた。
「……何故、正体不明の人物が書く魔法が載っている本を使い続けた」
「正体不明って……父様のでしょう?本に呪いなんてかけられてなかったわ」
机の上にある教科書や使用した道具に向けて杖を振り片付けながらソフィアは不思議そうに首を傾げる。
ソフィアは心からセブルスを信頼している。その本に、まさか人の命を脅かす魔法が隠すことなく書かれているとは夢にも思わなかった。
「……ポッターが、セクタムセンプラをマルフォイに使った」
「えっ!?そんな──ドラコは無事なの?」
ソフィアはその魔法の危険を知っている。すぐにセブルスに駆け寄り心配そうに眉を下げた。
「ああ、ルイスと私で治癒した。今は医務室だが命に別状はない」
「良かった……でも、何でハリーがセクタムセンプラを?私、教えてない──まさか、その本に……?」
セブルスの手にある本と彼の長い表情を見て、ソフィアはようやく何故セブルスがこの教室に残ったのかを理解した。
「……セクタムセンプラには、どんな説明が書いてあったの?」
「……敵に対して」
「まあ……それだけ?体を傷つけ対象者に重傷を負わせるとか、体を切り裂くとか……」
「……」
「それだけの文なら、ハリーはドラコに使うわ。だってハリーにとって敵はドラコだもの。勿論、効果のわからない魔法は使うべきじゃないけれど。……ルイスだって、あの時敵だった私に使ったでしょう?」
ソフィアは呆れるような目でセブルスを見たが、セブルスはその視線から逃れるように無言で本を見下ろした。