クリスマス休暇が始まった。
ソフィアとルイスのルームメイト達は皆家へ帰ってしまった為、2人は良く大広間か花束を持つ少女の部屋で過ごした。図書室でニコラス・フラメルについて探してはいたが、収穫は全くなく少し飽きてしまい、たまに全く関係の無い本を読んで気を紛らわしていた。
ハリーとロンは、人も殆ど居ない為ルイスをグリフィンドール寮へ誘ったが、あの日──誕生日の事だが──特別で、流石に何度も入る事はダメだろう、とルイスはやんわりその誘いを否定した。それに、監督生のパーシーはホグワーツに残っていた為、彼の目を何度も盗むのは難しい。
クリスマス当日、ソフィアは枕元にある沢山のプレゼントを嬉しそうに開き、父からのプレゼントである高度変身術集を夢中になって読んだ。
その日のクリスマスのご馳走はとても豪華な物だった。生徒が少ないにも関わらず、素晴らしい豪勢な食事を振る舞うダンブルドアに、ソフィアは尊敬の眼差しを向けながら大好物のブランマンジェがある事に気づき歓声を上げて何度もおかわりをした。
ルイスもまた、美味しいプディングを食べ満足そうに笑う。ルイスはハリー達と共に座っていたが、勿論誰も何も言わなかった。
「ルイス、──ほい、一緒に引っ張ろうぜ!」
「うん!…かなり大きいね、これ!」
フレッドが持ってきた抱えるほど大きなクラッカーを一緒に引っ張れば、大砲かと思うほど大きな爆音と共にピンク色の煙がもくもくと上がり、様々な楽器を持つ音楽隊がファンファーレを奏でながら現れ、真っ白なウサギが数羽飛び出した。
いつも各自静かに食事をとっている教師達も、今日ばかりは楽しげに会話をし声を上げて笑っている。
ソフィアはマクゴナガルが酔っ払ったハグリッドに頬にキスをされ、照れながらもくすくすと笑っているのを見て少し驚いた。
ソフィアもルイスも両手に抱えきれない程のクラッカーのおまけを手に持ち、一度部屋へ戻った。
この後中庭でハリー達と待ち合わせをしているため、充分な防寒具を身につけ、2人はぱたぱたと中庭に向かった。
既にウィーズリー4兄弟とハリーが雪合戦をしていて、ルイスとソフィアは顔を見合わせ、直ぐに笑顔になりその雪合戦に混じった。
「きゃっ!──ルイス!雪を付き纏わせないでよ!」
「はは!──うわっ!」
「ルイス!後ろがガラ空きだぜ!」
「もう!魔法ありなら初めから言ってよね!ーー
ソフィアは雪玉に魔法をかけ、雪で出来た鳥を弾丸のように皆に襲わせた。鳥達はハリー達の頭を突っつき、最後は背中に突撃し雪玉へと戻っていった。
雪合戦中は動き回っていて熱かった体も、終われば寒くなり、びしょ濡れで凍えながらルイスはスリザリン寮に、ソフィア達はグリフィンドール寮に戻った。
ソフィアは服を着替え、微かな倦怠感から欠伸をひとつ零すとベッドの中に潜り込みそのまま心地よい夢の中に旅立った。
夜の8時前、クリスマスディナーを食べた後ソフィアとルイスは魔法薬学の研究室へと向かい、その扉を叩いた。先日と同様すぐに返事があり、扉が開かれる。
「父様、メリークリスマス!」
「クリスマスケーキは食べた?とってもおいしかったわよね!」
「メリークリスマス、ソフィア、ルイス」
2人はセブルスに促され彼の自室へと入り、いつものようにソファに座った。
温かい紅茶を飲みながら、ソフィアとルイスは家族で過ごすクリスマスを幸せな気持ちで過ごしていた。
「…ソフィア、変身術の個人授業は順調か?」
「ええ!今は大きなものへ変身させる練習をしているの!私、いつかドラゴンに変えてみたいわ!そして、背中に乗って飛ぶの!」
「えー?ドラゴン?ドラゴンはかなり高度で成功者は少ないって聞くよ?」
ソフィアに出来るのかなぁ、とルイスは懐疑的に言うが、ソフィアは全く気にせず自信に満ちた目でルイスの目を見た。
「マクゴナガル先生は、応援するって言ってくださったもの!」
「ふーん?じゃあ初めは赤ちゃんドラゴンから始めるの?」
「…それは盲点だったわ!…たしかにいきなりドラゴンの成体は難しいわよね…今度マクゴナガル先生に言ってみるわ!ありがとうルイス!」
「どういたしまして?」
セブルスは2人の会話を聞き、アリッサも同じようにドラゴンに変身させる夢を持っていた事を思い出した。それは叶う事は無かったが、もし彼女が今生きていれば、きっと心から喜んだだろう。
「…アリッサ…お前達の母親も、変身術の才能があった。…ドラゴンに変身させてみたいと、よく言っていた」
「えっ…母様は変身術が得意だったんだ…ソフィアは母様に似たのかな?」
「ふふ!嬉しいわ!…ルイスは父様に似たのね、魔法薬学が得意でしょう?」
「そうだね!…ねえ、父様?母様の話…僕、もっと聞きたいな」
「私も聞きたいわ!…ねえ、だめかしら?」
ルイスとソフィアはセブルスの腕にくっつき、下から見上げ甘えるような声を出した。セブルスは優しい眼差しで2人を見つめ、少し言葉を選ぶようにしながらぽつぽつと2人の母親の事を話した。
「…アリッサは…スリザリンだったが…ルイスのように、他の寮に友がいて慕われていたな。…いつも彼女の周りには人が絶えなかった」
「へー!スリザリンだったんだ!」
「…もしかして、私だけグリフィンドールなの?」
ソフィアは少し不服そうに頬を膨らませた。
家族の中で自分だけがグリフィンドールなのは、なんとなく仲間はずれになったような気がしたのだ。
「そうだな。まぁ…アリッサはスリザリンらしくは、無かったな。才能に恵まれた彼女は、たまに疎まれる事もあったが…気にせずいつも2人のように笑っていた」
「へー?…ソフィアみたいな性格だったの?」
「ああ。…だが、彼女はソフィアほど規則を無視せず、悪戯を仕掛ける事もなかったが」
「……紅茶、美味しいわー」
セブルスがソフィアを見ながらちくりと言えば、ソフィアは舌をぺろりと出して何も聞こえなかったふりをした。
ルイスはセブルスが静かに自分達の母親──彼の亡き妻のことを話すのを見て、まだその横顔に僅かな寂しさと悲しみが写っている事に気付いた。
──母様が亡くなったのは、僕らが一歳になって少しだ。11年が経っても、悲しいんだ。
「ねぇねぇ父様!どっちから告白したの?」
ソフィアはセブルスの膝の上に上半身を乗せ、にやにやと笑いながら聞いた。
セブルスはソフィアを見下ろし、少し沈黙した後で微かに微笑む。
「……それを伝えるには、まだ2人は幼い」
「えー!?教えてよー!」
「ねね、母様モテたでしょう?どうやって射止めたの?それだけでも!お願い父様!」
ルイスとソフィアの声をセブルスは無視し、紅茶を飲んだ。
懐かしい記憶が蘇る、何年たっていても、その記憶は褪せる事なく思い出せる。
3年生になってすぐだった。
図書室で宿題をしていると、アリッサは何の前触れもなく口を開いた。
「ねえ、セブ、あなた結婚式はしたい?」
「…何の話だ」
「何がって、私たちの結婚の話よ」
「…僕と、結婚?」
「あら、ご不満がおありで?」
悪戯っぽく笑うアリッサに、戸惑いを隠せなかった、結婚という話以前に自分達は恋人同士ですら無かった。その時既に恋心を抱いていたのは間違いなかったが、彼女は自分に対しそんな素振りを一切見せたことは無く、何かの冗談かと思ったほどだった。
「冗談ではないわ、セブ。…セブルス、あなたは私と結婚するのよ」
当然の事のように言う彼女はとびきりの笑顔を見せ、頬は赤く染まっていた。
彼女は誰からも好かれていた、たしかな美貌と、誰に対しても分け隔てのない優しさ、学力も高く常に上位をキープし、教師の信頼もあつい。
ただ、少し頭のネジの1本は外れているようだと、その時思った。
「愛しているわ」
「僕も、…愛している」
「知ってたわ!」
そう言って彼女はまた何の前触れもなく、ほぼ無理矢理自分の心も、唇も奪っていったのだった。
「──父様!ねえ、教えてよー!」
「それは出来ない」
きっぱりとセブルスが言えば、2人はぷくっと頬をわざとらしく膨らませた。
ルイスとソフィアはその後セブルスにくっつくようにして寝てしまい。セブルスも2人のルームメイトが誰もいない事を知っていた為無理に起こす事はせず、自分のベッドまで抱き運ぶと幸せそうに微笑みながら眠る2人の額に口づけを落とし、夜の見回りへと向かった。