【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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361 刻一刻と近づく。

 

 

クィディッチの試合が終われば、とうとう生徒達にとって倒し難い敵である学年末試験が迫り来る。

五年生と七年生は将来のためにとても大切なテストを控え毎日のように図書館か談話室に篭るのだ。ソフィア達六年生にも勿論試験はあったが、例年通りならばきちんと授業を受けていれば問題なく終わる。

 

ソフィアとハーマイオニーはOWL試験を迎えるジニーのために彼女が望めば二つ返事で夜遅くまで勉強に付き合い、去年出題された魔法についての詳細を伝えた。いや、ジニーだけではなく他の五年生に頼まれたのなら、二人は何時間でも勉強に付きあったのだ。

ハーマイオニーは監督生として助けを求めている下級生を無視する事はできず──元々、ハーマイオニーは勉強を自主的に行う生徒にはとても優しいのだ──ソフィアは困っているものがいるのなら助けたい。その思いだった。

 

 

ソフィアは薬草学について教えるハーマイオニーとうんうん唸りながら頭に知識を詰め込んでいくジニーを談話室に残し、図書館へと向かっていた。この次は魔法薬学の勉強をする予定で、ジニーのためにわかりやすい参考書を選んであげようと思っていたのだ。

 

 

廊下を曲がった所でソフィアは前から本を抱えたルイスがこちらに向かってくる事に気付く。周りにいつもいたスリザリン生の姿は無く、ドラコもいない。

 

ソフィアはルイスが自分の姿に気づいたのを見た後、すぐ隣にある空き教室に目を向け、手招きをする。

 

 

先に空き教室に入ったソフィアは、ルイスはここに来ないかも知れない。と考えた。

それぞれの目的のために別行動をしているのだ、周りに誰もいないとはいえ、ルイスは自分と話そうとはしないかもしれない。

 

 

埃っぽい椅子に杖を向け清め、座って待っていると──がちゃり、と小さな音を立て扉が開き、ルイスが現れた。

 

 

「ルイス、久しぶりね」

「うん。そうだね」

 

 

いつものように声をかけるソフィアに、ルイスもいつものように答えながら杖を振る。扉に鍵をかけたルイスは静かにソフィアの元へ向かい、隣にある椅子を清めた後で座った。

 

 

「ドラコはもう大丈夫?この前見かけた時は、元気そうだったけど」

「大丈夫。まだちょっと痕が残ってるけど、すぐに消えると思う」

「そう……良かったわ」

「僕、アロホモラでは開けられないようにしてたのに……どうしてハリーは開けられたの?上位魔法を使えるようには思えないけど」

「ああ……どんな鍵でも開けられるナイフを持っているの」

「そんなものがあるんだ」

 

 

2人の会話は軽く、緊張感は微塵もない。まるで何も無かったかのように話しているが、2人はそれぞれの立場を考え明言を避けているだけだ。

ソフィアはルイスに聞きたい事がたくさんあった。何をしているのか、何を企んでいるのか──何故、私に何も言わないのか。

 

ソフィアはルイスをじっと見上げる。ルイスもまた、静かにソフィアを見下ろした。

 

 

「……大丈夫なの?」

「うん、大丈夫だよ」

「……ひどい事はしないわよね?」

 

 

静かな問いかけに、ルイスはふっと小さく微笑みソフィアの頬を指先で撫でる。

 

 

──ソフィアは僕を信じている。だからこそ、僕がどんな事をしているのか想像もしないんだ。

 

 

ソフィアにとってルイスは誰よりも信用している心優しき兄である。勇敢で、優しく、家族のことを愛している。だからこそ彼が今どれほど恐ろしい事を考えているのか想像も出来ないのだ。

きっとルイスはドラコを止めてくれる。自分ならそうするのだから、と──ソフィアはただルイスを信じている。

 

 

「僕は護るために動いているだけだよ」

 

 

ルイスの言葉にソフィアは安心し、ほっと息を吐くとルイスの手を握り、目を閉じた。

 

ルイスはソフィアに嘘はついていない。今ルイスが企んでいる事は、大切なものを護るために必要な事なのだ。たとえそれでその他の者が傷つこうとも、ルイスは構わなかった。大切な妹と、父を護れるのであれば、ルイスはその他の命を奪う覚悟が出来ていた。

 

 

──もう、後戻りは出来ない。

 

 

ルイスはそっとソフィアを抱き寄せ、手触りの良い髪を撫でる。

この大切な人を護るためならば、どんな毒だって飲み込もう。人に理解されぬ行動だとしても、僕にとってかけがえのない者を護るために、大きな罪を犯さなければならないとしても。

 

 

「……じゃあ、僕はもう行くね」

 

 

優しく微笑んだルイスは、ソフィアの額にキスを落とすとそっと離れ扉へと向かう。

ソフィアはその背中を見て、何故か胸がざわついた。

 

 

「──またね、ルイス」

 

 

扉に向かって杖を振り鍵を開けたルイスは、半分扉を開き振り返り、「またね」と柔らかい声で伝えた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

その日は唐突に訪れた。

ソフィア達はいつものように談話室のソファに座り、出された宿題の中から期日の近い物を選び羊皮紙と教科書に向かい合っていた。

 

ジミー・ピークスが宿題をしているハリーの側に近づき「これ、あなたにだって」と言いながら羊皮紙の巻紙を差し出した。ハリーはすぐに羽ペンを放り出し羊皮紙を受け取る。

 

 

「ありがとう、ジミー。……あっ、ダンブルドアからだ!出来るだけ早く校長室に来てほしいって!」

 

 

巻紙を開き目を走らせながら興奮し小声で言うハリーに、ソフィアとハーマイオニーとロンも宿題の手を止め目を瞬かせる。

 

 

「おっどろきー……もしかして、見つけたのかな……?」

「すぐに行った方がいいわ」

「うん、行ってくる!」

 

 

ハリーは勢いよく立ち上がりすぐに談話室を飛び出した。

ハリーを見送ったソフィア達は不安げな表情で視線を交わす。ダンブルドアが一つの分霊箱を見つけた時、ハリーもそれに同行すると言っていた。あの、ヴォルデモートの要である分霊箱だ、きっと簡単な旅では無いだろう。

 

 

「大丈夫かしら……」

「きっと、大丈夫よ。ダンブルドア先生がいるんだもの……」

 

 

心配そうに閉じられた肖像画の穴を見るハーマイオニーにソフィアはそう呟いたが、それは自分に言い聞かせるような囁き声だった。

 

それからソフィア達は宿題に全く身が入らず、そわそわと落ち着きなく時計を見たり、意味もなく教科書をぺらぺらと捲ったりしていた。もうハリーはダンブルドアと行ってしまったのか。それとも発見したという知らせだけであり、分霊箱を破壊するのは夏季休暇に入ってからなのだろうか。

 

 

30分もしないうちにハリーは談話室に戻ってきた。ソフィアとロンとハーマイオニーは立ち上がり、心配そうにハリーを見る。

 

 

「ダンブルドアは何のご用だったの?──ハリー、あなた大丈夫?」

「大丈夫だ」

 

 

ハーマイオニーが間髪入れずに聞いたが、ハリーは足早に3人のそばを通り過ぎながら短く答え、寝室へと上がった。

ハリーの顔色はとても悪かった。打ちのめされているような、失望したような、それでいて、葛藤しているような──そんな複雑な表情だったのだ。

 

 

寝室に戻ったハリーは忍びの地図と両面鏡、フェリクスを丸めた靴下ごと掴み、急いで談話室に戻り、呆然としたままのソフィア達の元へ駆け戻り急停止した。

 

 

「時間がないんだ。ダンブルドアは、僕が透明マントを取りに行ったと思っている。いいかい。今から僕はダンブルドアと共に分霊箱を見つけに行く。だけど大変なことが起きたんだ──」

「大変な事って?」

「──必要の部屋のところにトレローニーがいた、トレローニーは部屋に入ろうとしたけど弾かれたんだ。中で歓喜の叫びを聞いた、男の子だって言ってた──間違いない、マルフォイだ。トレローニーはチェリー酒を隠そうとしていた!必要の部屋は、マルフォイに隠し部屋を提供したんだ。だから同じように願うトレローニーはその場所に入ってしまった。マルフォイはきっと修理が終わったんだ。だから、どう言うことかわかるだろう?ダンブルドアは今夜ここにはいない。だからマルフォイが何かを企んでるにせよ、邪魔が入らない良いチャンスなんだ!──いいから聞いてくれ!」

 

 

ソフィアとロンとハーマイオニーが口を挟もうとしたが、ハリーは鋭い声でそれを制し、一度深呼吸をして切羽詰まった声で捲し立てた。

 

 

「必要の部屋で歓声を上げたのがマルフォイだって、僕にはわかってるんだ。さあ、マルフォイを見張らないといけない。──それに、スネイプも。他に誰でも良いからDAのメンバーを掻き集められるだけ集めてくれ。ハーマイオニー、ガリオン金貨の連絡網はまだ使えるね?ダンブルドアは学校に追加的な保護策を施したって言うけど、もし、スネイプが絡んでいるのならダンブルドアの追加保護策も回避の方法も知られている──だけど、スネイプは君たちが監視しているとは思わないだろう?」

「何故、スネイプ先生も監視するの?スネイプ先生は味方だわ!」

「それは──僕もそう思っていた。だけど、トレローニーの予言をヴォルデモートに漏らしたのはスネイプだったんだ、トレローニーが言ってたし、ダンブルドアも認めた。スネイプはそれで酷い間違いを起こしてかけがえのないものを失ったらしい。ダンブルドアはスネイプを信用している。僕は──わからなくなった。だから、スネイプが潔白かどうか見張ってて欲しい」

 

 

ソフィアの声にハリーは一言で説明すると、手に持っていた忍びの地図をソフィアの手に押し付ける。

ソフィアは目を大きく見開き、何も言えないまま言葉を無くした。ハーマイオニーが一瞬ソフィアに視線を向けたが、今はソフィアとセブルスの問題を追求するよりハリーの話を聞かなければならないと判断し、すぐにハリーに向き合う。ハリーもまた、突然沢山のことが起こり頭の中が混乱し、ソフィアの表情の変化に気を配らせる余裕はなく、ロンの手に両面鏡と靴下を押し付ける。

 

 

「これも、持っていて」

「これは……?」

「両面鏡、一応シリウスに連絡してくれ。ホグズミードにいるなら、何かあれば直ぐに来れるように。あと、フェリックス・フェリシス、君たちで飲んでくれ。もう行かなきゃ、ダンブルドアが待ってる──」

 

 

ロンが畏敬の念に打たれたような顔で靴下の中から小さな金色の薬が入った瓶を取り出しているのを見ながら、ハリーはソフィアの腕を引き抱きしめた。

 

 

「ソフィア、行ってくるね」

「ハリー、私たちは薬はいらないわ!それを飲むのは、あなたよ……!」

「大丈夫、僕はダンブルドアと一緒だ。僕は、君たちが無事だと思っていたいんだ……そんな顔しないで、あとでまた会おう」

 

 

ハリーはソフィアの震える唇にそっと口付け、安心させるために微笑むとその場を離れて肖像画へ駆け出した。

 

 

「ハリー!」

 

 

ソフィアの叫び声を後ろに聞きながら、ハリーはダンブルドアと落ち合う約束をしていた正面玄関へと走る。

僕は命を落とす事はない、ダンブルドアがいる。だけどホグワーツにはダンブルドアという大きな護りが無くなってしまう。マルフォイが何もしなければいい、失敗に終われば良い、だけど、マルフォイがこんなチャンスを逃すとは思えない。どうか、ダンブルドアが帰るまで無事であってほしい。

 

 

 

談話室に残されたソフィア達は呆然と目を合わせる。

暫く3人は何も言えなかったが、遂にごくりと固唾を飲んでハーマイオニーが深呼吸を一つした。

 

 

「私、DAに伝えてくるわ。ハリーが言ったことが……当たるかはわからないけれど、廊下をパトロールしましょう」

「これ、どうする?」

 

 

ロンは手の中にあるフェリシスを軽く振る。もし、ハリーの妄想に近い予想が当たり、ドラコがホグワーツを危険な事に巻き込むつもりならば何が起こるのか検討もできず、飲んだ方がいいのかもしれない。しかし、杞憂で終わったのならばただの幸福な夜になるだけで貴重なフェリシスは無駄になってしまう。

 

 

「それは全員が朝まで幸運を保つには足りないわ、だから今飲むのはやめましょう。何かが起こりそうな気配を感じたら、飲むの。何も起こらないに越した事は無いけど……もし起こるのなら、きっと夜中よ。今はまだ沢山の生徒が廊下にいるし、ドラコが暗躍するには早すぎるわ」

「この事、他のやつらにも伝えた方がいいか?」

「……不安を煽って混乱させるだけだわ。何も無いかもしれないもの。……出来れば、みんなには寮で眠っててほしいわね、何があってもそこは安全だもの。……そうだわ、ドビーに頼んで各寮に眠り薬を──」

 

 

ソフィアは真剣な顔で話していたが、途中で言葉を止め愕然とし自分の口を手で押さえる。「まさか」と呟かれた声は震えていて、ハーマイオニーもハッとしたように息を飲み真剣な目でソフィアを見た。

 

 

「──ドビー!お願い、来て!」

「──お呼びでございますか、ソフィア・プリンス」

 

 

ソフィアの呼びかけに、ドビーはバシンと小さな物音を立てて机の上に現れた。

ソフィアはドビーの主人では無い。しかしドビーの大切な友達であるハリーの、その大切な人なのだ。彼女の呼びかけにドビーは喜んで答えた。

頭に沢山の手編みの帽子を乗せて大きな目を輝かせるドビーに、ソフィアは囁いた。

 

 

「……スネイプ先生の研究室に、眠り薬があるの。それを四つとって、それぞれの寮の談話室に置いてほしいの。みんなが気持ちよく眠れるように。薬は後で私とハーマイオニーで補充するから、絶対にバレないわ」

「ええ──ええ、わかりました。良い睡眠は大切ですとも!」

「……ねぇドビー?同じような事を、前に誰かに頼まれた?」

 

 

ソフィアとハーマイオニーが固唾を飲んで恐々と聞く中、ドビーは誇るように胸を逸らし堂々と伝えた。

 

 

「ええ、ハリー・ポッターの友人である、ルイス・プリンスに!」

 

 

ソフィアは頭を殴られたかのような衝撃を受けた。ハーマイオニーも口を手で押さえ、恐怖と怒りに戦慄いている。ロンだけが訳がわからず首を傾げ目を瞬かせていたが、ソフィアに全てを説明する余裕は無かった。

 

 

「そう──じゃあ、お願いね。ありがとう、ドビー」

 

 

ドビーはハーマイオニーの言葉に恭しく頭を下げると、現れた時のように突然消えた。ハウスエルフは唯一ホグワーツで姿現しを使う事ができ、セブルスの侵入者避けがかかった研究室にも入ることが出来る。

そして、何より──ドビーは縛られない、自由なハウスエルフだ。

 

 

「そんな、ルイス──」

「ソフィア、終わった事を考える余裕は無いわ。マルフォイが動いても大した脅威にはならないけど、ルイスが本当にマルフォイの肩を持つのなら話は別よ。──ソフィア、しっかりして!」

「ハーマイオニー……」

 

 

ハーマイオニーは虚な目をするソフィアの肩を掴み、強く揺さぶった。暫く視線を彷徨わせていたソフィアは今にも泣き出す迷子のような目をしていたが、ハーマイオニーの強い視線に小さく頷く。

 

 

「ルイスとマルフォイとスネイプは何処にいるの?」

「ええと……我ここに誓う、我、よからぬ事を企む者なり」

 

 

ソフィアは杖を出し地図をトンと叩いた。みるみるうちに何も書かれていなかった羊皮紙に沢山の線が踊り黒点が蠢く。ソフィアとハーマイオニーとロンは顔を突き合わせ隅から隅までルイス達の名前を探した。

 

 

「スネイプは職員室ね。──ルイスとマルフォイは……」

「……ルイスは──あ、フクロウ小屋にいるわ!ドラコは……」

「居た!スリザリンの談話室だ。他の奴らもいるぜ」

「ソフィア、今はルイスのところに行こうなんて思わないで。マルフォイが動くのが今日だとしたら、それを知られるのは駄目よ。それに、危険だわ」

「でも──でも、ルイスは──」

「ソフィア!!」

 

 

ハーマイオニーの大声にソフィアは肩をびくつかせ、不安げに彼女を見つめた。ハーマイオニーは小さくため息をつくと、ソフィアをぎゅっと抱きしめる。

 

 

「後回しよ。私たちが動いている事を知られない方がいいわ」

「……ええ、わかったわ」

 

 

ソフィアは小さな声で頷く。

本当なら今すぐルイスの元に駆け、ルイスが夢喰蟲の騒動を起こしたのかと詰問したかった。馬鹿な事はやめて、直ぐにドラコの企みを阻止してと言いたかった。

しかし、全てがもう遅いのならば──そして、今日この後ドラコとルイスの企みが発動するのなら、それが何にせよ知っている自分たちが防がねばならない。

 

 

「さあ、DAを集合させましょう。ロンはシリウスに呼びかけて」

 

 

ハーマイオニーの言葉に、ソフィアとロンは頷いた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

ハリーがダンブルドアからの羊皮紙を受け取る少し前、ルイスとドラコは必要の部屋の中に居た。

 

 

「……開けるぞ」

 

 

ドラコは薄汚れたキャビネット棚の前に立ち、緊張を孕んだ声で呟く。隣に立つルイスは、小さく頷いた。

 

何度も失敗している。もう6月になってしまった、時間がない。これが修理できなければ企みは全て水の泡だ。新しい作戦を考える暇もない。

護りたいものを護るために、僕はやらなければならないんだ。

 

 

取手を持つドラコの手は情けないほど震えていた。

ドラコはその震えを抑えるように強く取手を握りしめ、勢いよく開く。

途端に白いものが棚の中から飛び出した。パッと弾かれたようにそれを目で追ったドラコは、雑然と物が積み重なるその頭上をパタパタと飛ぶ白い鳥を見て、歓喜の声を上げる。

 

 

「やった!──やったぞ!これで問題なく使える!」

 

 

ルイスは天井付近を飛ぶ白い鳥を見て、胸の奥から形容し難い感情がふつふつと湧き起こるのを感じた。安堵、恐怖、失望──さまざまな感情を飲み込んだルイスは、喜びを噛み噛めるドラコの歓声とは別に何かの物音を聞いた。

 

それは間違いなく扉が開く音であり──ルイスは人影が見えた瞬間、表情を硬らせ振り向き、素早くポケットから杖を抜き心の中で魔法を唱え吹き飛ばした。

部屋に入りかけていたトレローニーは悲鳴を上げ弾かれ、扉は強く閉まった。

 

 

「誰だ?ポッターか?」

「いや、トレローニー先生だ。……この隠し部屋を知っていたんだろう。……今直ぐ出るのは駄目だ、あと少し待ってからここを出よう」

「ああ……。次にダンブルドアがホグワーツから出た時に……」

 

 

ドラコはキャビネット棚の扉を閉めて囁いた。先程までの歓喜で高揚していた頬は一瞬で蒼白になり、不安げに瞳が揺れる。

 

 

「死喰い人を、ここに呼び出す」

 

 

ドラコの声は広い隠し部屋の中に嫌に響き、薄寒くこだました。

ルイスはドラコの怯えと恐怖を感じ、そっと寄り添いその背中を支える。

 

 

「大丈夫だよ、ドラコ。何があっても僕は君の味方だ」

「……ああ、僕は……しなきゃならないんだ。父上を救うために……ソフィアと、君を護るために」

 

 

ドラコの真剣な言葉に、ルイスは少しだけ笑い「僕のプリンセスだったのにね」と揶揄う。一瞬何のことかわからずきょとんとしたドラコだったが、カッと顔を赤くするとルイスの背中を軽く叩いた。

 

 

 

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