【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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369 6年目終了!

 

 

翌日から授業は全て中止され、試験は延期された。何人かの生徒はダンブルドアの死と死喰い人の侵入を知り2日の内に彼らの親によって急いでホグワーツから連れ去られた。中にはダンブルドアの葬儀が終わってからしか帰らないと一緒に帰る事を拒否した生徒も居たが、殆どが親に従順だっただろう。

 

ソフィア達は次の日にもう一度集められ、昨夜起きた事はその時に医務室にいたメンバー以外は他言無用だと伝えられた。誰がダンブルドアを殺したかという事も、誰の企みであったかも、ソフィアの秘密も。

 

ハリーはビルの見舞いに行った帰りにソフィアとハーマイオニーとロンにだけ、ダンブルドアと何をしに行ったのかを話し、偽物のロケットを見せた。

ソフィアは自分はもう話の中に加わる事は出来ないだろうと思っていたが、ハリーはあくまでソフィアとの恋人関係を終わらせただけであり、ソフィアとの今までの友情を蔑ろにするつもりはなかった。──いや、全ての疑惑が払拭された後、もう一度ソフィアと恋人に戻るために、ソフィアを無視することなんてできなかった。恋人ではなくとも、ハリーにとってソフィアは大切で特別な存在である事に変わりはない。

 

 

「R・A・B……有名な魔法使いかしら」

 

 

ハーマイオニーは難しい顔で黙り込む。いつ偽物にすり替えられたのかわからないが、文面の内容を読む限り前回ヴォルデモートが猛威を奮っていたときにすり替えられたのだろう。当時のダンブルドアさえも手に入れていなかった分霊箱を手にした魔法使いなのだ。きっと後世に名を残している魔法使いだろうというのがハーマイオニーの考えだった。

すぐにハーマイオニーとソフィアは図書館へ行き、R・A・Bが誰かを探しに行ったが、そのイニシャルを持ちヴォルデモートに関する魔法使いや魔女を見つける事はできなかった。

 

 

「ソフィア、これ……」

 

 

過去の日刊預言者新聞を調べていたハーマイオニーは一枚の古ぼけた新聞を机の上に広げた。ソフィアは読んでいた本から顔を上げ、ハーマイオニーが指差す箇所を読む。

 

 

「アイリーン・プリンス……トビアス・スネイプ……お婆様と、お爺様の名前……?」

 

 

ハーマイオニーが見つけたのは魔女のアイリーンとマグルのトビアスが結婚し、子をもうけたという小さなお知らせだった。ソフィアは祖父母の事について殆ど何も知らなかった。どんな人かも聞いた事は無い。ただ、一度何かの流れで聞いたときにもう既に亡くなっていると知らされただけだ。

 

 

「……私の生まれは、父様の生家なの。私が生まれた時には既に2人とも亡くなっていて……父様は何も教えてくれなかったわ」

「……その、私……この前、アイリーン・プリンスの写真を見つけたの」

 

 

新聞の文字を撫でるソフィアにハーマイオニーがおずおずと言い、積み上げられた新聞の中から一枚を抜き出した。

 

 

「本当に?見てみたいわ!」

 

 

もう亡くなっている顔も知らぬ祖母を、ソフィアは一目でいいから見てみたかった。ハーマイオニーから新聞を受け取ったソフィアは、少々不貞腐れたような顔をしているアイリーンを見て目を見開く。

 

 

「……父様って、お母さん似なのね」

 

 

写真に映るアイリーンは美人とは言えない少女だった。ゴブストーンの選手であり優勝したと書かれていたがとくに嬉しくもなさそうで、その不機嫌な顔と目つきの悪さはどこかセブルスと似ていた。

くすり、と小さく笑みを漏らすソフィアにハーマイオニーはほっと表情を緩めた。

 

 

「プリンス家って、アイリーンがマグルと結婚するまでは純血一族だったんですって」

 

 

ハーマイオニーは純血の一族の名が書かれている本を引き寄せ、『プリンス家』と書かれた箇所を指先でなぞった。

ソフィアは祖母が魔女である事は知っていたが、数少ない純血家系だとは知らず──かと言って自分の中に高貴な血が流れていると思う事もなく、「そうだったのね」とあまり興味がなさそうに頷いた。

 

 

「純血一族……それなら、お婆様はこの記事を載せて、ご両親に子どもが生まれたことを伝えたかったのね。きっと勘当されていたんだわ」

 

 

セブルスが幼少期どのような暮らしをしていたのかはわからないが、スピナーズエンドにある家と、祖父母の写真はおろか痕跡が一切残されていないところを見ると貧困し、あまり良い家庭状況では無かったのだろう。

 

 

「プリンス家は、もう途絶えたのかしら?親戚の話は聞いた事がないのよね……」

「アイリーンは一人娘だったようだから……多分、ソフィアとルイスしかいないと思うわ」

 

 

ハーマイオニーは気遣うように遠慮がちに言ったが、ソフィアは残念に思う事はなかった。ただ、もし墓が残されているのならば一度は詣でてみたいとぼんやりと考えたが──それは、きっと全てが終わってからになるだろう。

 

 

「ありがとう、ハーマイオニー。お婆様のことが知れてとっても嬉しいわ」

 

 

ソフィアはにっこりと明るく笑う。久しぶりに見たソフィアの笑顔に、ハーマイオニーはほっとして嬉しそうに笑った。

 

ソフィアとハリーが別れたのだろうとハーマイオニーは気付いていた。2人は何も言わないが、寝る前のキスはあの日からしていないようだ。それでもふとした時にハリーはソフィアを、ソフィアはハリーを目で追っている。

互いに愛し合っている2人が別れた事に、ハーマイオニーはとても悲しかったが──2人の決断を、彼女は見守る事に決めた。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

ダンブルドアの葬儀には大勢の魔法使いが参列した。彼のことを慕う魔法使いや魔女は皆喪服を着て長い列を作り何百と並べられた椅子に座っている。

その中には騎士団のメンバーや、他校の教師、そして魔法省の者など多岐にわたる。

ダンブルドアの死を悲しんでいるのはヒトだけではなく、ホグワーツの湖に住む水中人は物悲しい不思議な歌を歌い彼の死を悲しみ、森に住むケンタウルス達は森の中から弓矢を放ち死を悼んだ。

 

ダンブルドアの亡骸のそばには戦いの後主人を亡くし転がっていた彼の杖が納められている。一見するとただ眠っているだけのように見えるダンブルドアに、ソフィアはまた胸が強く痛むのを感じた。

 

魔法大臣の長い弔辞が終わった途端、ダンブルドアの亡骸とそれを乗せた棺の周りに眩い白い炎が燃え上がった。それは勢いを増し、亡骸が全く見えなくなったその時、ソフィアはその炎が不死鳥の形を作ったように見えたが──瞬き一つの間に消えていた。

 

炎が消えた時、亡骸と棺は消え、白い大理石の墓だけが残されていた。

 

 

ソフィアは痛む胸を押さえ、涙を流しながらじっとその白い墓を見つめた。彼は犠牲になったのだ、私の家族のために。

 

ハーマイオニーはロンの肩に顔を埋めて啜り泣き、ロンはハーマイオニーの肩を抱きながら同じように泣いていた。ソフィアは、近くにいるハリーの顔を見る事も、悲しみに暮れる彼に寄り添う事もできず、ただ独りじっと耐え──そして、決意を固めた。

 

 

 

「──あれ?ハリーは?」

 

 

目を擦りながらロン振り向き、不思議そうに首を傾げた。ソフィアは隣にハリーが居るものだと思っていたが、考え込んでいる間に1人先に行ってしまったらしい。

ソフィア達がハリーを探していると、スクリムジョールと離れたところで話しているハリーを見つけ、すぐにソフィア達はハリーの元へ駆け寄った。

 

 

ハリーはスクリムジョールが肩を怒らせながら去って行くその背を見ながら、ソフィア達が走り寄ってくる事に気づき、3人が追いつきやすいように歩く速度を緩める。

何事もなかった日々、よく4人で過ごしていたブナの木の下でソフィア達はハリーに追いつき、心配そうにハリーの横顔を見た。

 

 

「スクリムジョールは、何が望みだったの?」

「クリスマスの時と同じ事さ。ダンブルドアの内部情報を教えて、魔法省のために新しいアイドルになれってさ」

 

 

ハーマイオニーの問いかけにハリーは肩をすくめて答える。

いつもならソフィアが隣に並んでいたが、ソフィアはあれからさりげなくハーマイオニーの隣に行っていた。ハリーは離れてしまった距離に心の底で悲しみと苦しみが溢れてくるのを感じたが、ポケットに突っ込んだ手を握りしめる事で誤魔化した。

 

 

「いいか、僕は戻ってパーシーをぶん殴る!」

「だめよ」

 

 

怒るロンの腕をハーマイオニーが掴んでキッパリと言ったが、ロンは口を尖らせて「僕の気持ちがスッキリする!」と吐き捨てる。

ハリーは思わず笑ってしまい、ハーマイオニーとソフィアも少しだけ微笑んだが、ハーマイオニーは城を見上げ、また表情を曇らせた。

 

 

「もうここに戻ってこないなんて、耐えられないわ。本当に閉鎖されてしまうのかしら……」

 

 

教師達は明言しなかったが、その噂はホグワーツ内で囁かれている。ヴォルデモートに対し安全な場所で無くなってしまったホグワーツは閉鎖の危機に瀕していたが──しかし、それは最早どこでも同じ事だろう。

 

 

「そうならないかもしれない。家にいるよりここのほうが危険だなんて言えないだろう?どこだって今は同じさ。僕はむしろ、ホグワーツの方が安全だって思うな。この中の方が護衛している魔法使いがたくさんいる。ハリー、どう思う?」

「学校が再開されても、僕は戻らない」

 

 

ハリーの静かな言葉にロンは呆気に取られぽかんと口を開いたが、ソフィアとハーマイオニーはハリーがそう考えるだろうと予想しており、驚く事はなかった。

 

 

「そう言うと思ったわ。でも、それじゃあなたはどうするつもりなの?」

「僕はもう一度ダーズリーのところに帰る。それがダンブルドアの望みだったから。でも、短い期間だけだ。それから僕は永久にあそこを出る」

「……どこに行くの?」

 

 

ソフィアは、数日ぶりにじっとハリーの目を見つめた。ハリーはソフィアの目に自分の姿が映る事に言いようのない満足感を得ながら、その緑色の目を見つめる。

 

 

「ゴドリックの谷に、戻ってみようと思っている。僕にとって、あそこが全ての出発点だ。あそこに行く必要があるという気がするんだ。そうすれば、両親の墓に詣でる事ができる。──そうしたいんだ」

 

 

ハリーはソフィアの瞳を見つめたまま呟くように答えた。ロンはハリーとソフィアの間で視線を彷徨かせ、戸惑いつつもハリーの決意を感じ取りぐっと表情を引き締めた。

 

 

「その後はどうするの?」

「それから、残りの分霊箱を探さなきゃいけない。僕がそうすることを、ダンブルドアは望んでいた。だからダンブルドアは僕に分霊箱の全てを教えてくれたんだ。ダンブルドアが正しければ──僕はそうだと信じているけど──あと四個の分霊箱がどこかにある。探し出して破壊しなければならないんだ。それから七個目を追わなきゃならない。まだヴォルデモートの身体の中にある魂だ。……あいつを殺すのは僕なんだ」

 

 

ハリーはそう言いながらソフィアから目を離し、遠くに見えるダンブルドアの白い墓をじっと見た。

参列者は殆どいなくなっていたがハグリッドはまだその巨体を縮こまらせながら咽び泣き、悲しげな哀切の声が湖面に響き渡っていた。

 

ソフィアとロンとハーマイオニーは視線を交わした。三人とも、同じような決意を目に宿らせていた。言葉を交わさずとも、互いが何を考えているか理解ができる。──彼らは、真の親友なのだから。

 

 

「僕たち、行くよ、ハリー」

「え?」

「君のおじさんとおばさんの家に。それから君と一緒に行く。どこにでも行く」

「駄目だ」

 

 

ハリーはロンの言葉を即座に否定し首を振った。

間違いなく危険な旅になるだろう。この旅にハリーは独りで向かうつもりであり、三人にはそれを理解してほしかった。しかし、ロンは揺るぎない目でハリーを見て一歩も引く事はなく、ハーマイオニーもまた真剣な目でハリーを見つめた。

 

 

「あなたは、前に一度こう言ったわ。私たちがそうしたいのなら、引き返す時間はあるって。その時間はもう十分にあったわ、違う?」

「何があろうと、僕たちは一緒だ」

 

 

ロンとハーマイオニーは視線を交わし強く頷く。そして黙ったままのソフィアを見た。

ソフィアは一歩ハリーへと近付き、懇願するようにぎゅっと眉を寄せ口を開いた。

 

 

「あなたの力になりたいの。ハリー」

 

 

ハリーはぐっと拳を強く握る。ダメだ、危険な旅になる。死んでしまうかもしれない。

しかし、心の奥で微かに喜んでいる気持ちがあることに、ハリーは気付いていた。

 

 

「だけど、おい。何をするより前に、僕のパパとママのところに戻ってこないといけないぜ。ゴドリックの谷より先に」

 

 

ロンは一気に砕けたように言い、軽い足取りでハリーの隣に並び肩を組んだ。怪訝な顔をして「どうして?」と聞くハリーに、ロンはひどく真面目な顔で答える。

 

 

「ビルとフラーの結婚式だ。忘れたのか?」

 

 

ハリーは驚きロンの顔を見つめた。結婚式のような当たり前の幸福が、まだ存在している事がなぜか信じられなかったのだ。

ダンブルドアが死に、分霊箱を見つけ出す危険な旅が待ち受けている。

しかし、その他の人にとっては明日から通常の日々が続くのだ。──なんて、素晴らしい事なのだろうか。

 

 

「ああ、そりゃ、僕たち見逃せないな」

「そうよ!その前に鎖も結び直さなきゃならない。ね?そうでしょ?そうすればあなたは分霊箱の事を、みんなに伝えるんでしょう?」

 

 

ハーマイオニーはソフィアとハリーの手を取り、強く握った。ハーマイオニーは分霊箱を探し出す危険な旅に向かうのが一人前とは言えない4人だけだなんて無謀だとわかっている。

セブルスを信じきれないハリーは分霊箱の情報が流出するのを恐れ、今はまだ沈黙しているが、信頼の鎖が結び直されたのならば助けを求めるはず。そう、彼女は期待していた。

 

ハリーはハーマイオニーの視線に曖昧に肩をすくめ、やんわりと手を振り解くとわざとらしく話題を変えた。

 

 

「そういえば、ハーマイオニーはいつから知ってたんだ?その──ソフィアの事」

「え?──ええっと……」

 

 

ハーマイオニーは迷うようにチラリとソフィアを見た。もうソフィアとセブルスの関係は知られているが、その事についてソフィアの了解なく触れていいものかわからなかったのだ。

 

 

「一年生の時よ」

「そんなに前から?」

 

 

ハーマイオニーの代わりにソフィアが答え、その言葉にハリーだけでなくロンまで驚き目を開いた。てっきり最近の事かと思っていたが、まさか一年生の時だったとは思いもしなかったのだ。

 

 

「ええ、みんなが父様が犯人だと思って、賢者の石を守りに行った時。その時……ハーマイオニーと言い合いになって、つい『子どもを呪う親が何処にいるの!』って言っちゃったの。その日、クィレルに近付き過ぎたルイスが呪われて──かけた本人が解呪するか死なないと解けないほど強い呪いをかけられてしまっていたの」

「それで、全てが終わった後にダンブルドアにソフィアとスネイプ先生と一緒に呼ばれて、改めて説明されたの。もちろん親にも言わないように約束したわ」

 

 

ハリーとロンは驚きつつも、確かにあれからハーマイオニーは全くと言っていいほどセブルスを疑う事はなく、改めて考えてみればソフィアと共に何かとセブルスを擁護していたと思った。

それにしてもセブルスの対応は我が子にしては厳しすぎてよくソフィアは罰則を受けていたしソフィアもまた反抗的な態度を見せる事が多く、本当にソフィアの事を大切に思っているのかと言う新たな疑問がハリーとロンに湧いて出た。

ソフィアはそんな2人の考えを読んだのか、少しずつ悪戯っぽく笑うと声を顰めて囁いた。

 

 

「実はね、罰則の半分はただのお茶会だったのよ。罰則という言い訳がなければ、父様と2人きりになんてなれないでしょう?」

「そうだったのか?それにしてもさぁ……スネイプにブチギレてる時もあったよな?ほら、ハーマイオニーの歯が伸びたときとか……」

「ソフィアのこと、出来損ないとか言ってなかった?」

「ああ、そんな事もあったわね……父様は衝動的にとっても酷いことを言うのは事実よ。まあ、その後にちゃんと謝ってくれたから、許したの」

 

 

あっさりと言うソフィアの言葉にハリーとロンは顔を見合わせた。あのスネイプが謝罪する場面なんて想像が出来ない。いや、むしろお茶会なんて可愛らしいものがあの男の思考の中にあるだなんて考えられなかったのだ。苦い表情をするハリーとロンに、ソフィアは少し悲しそうな目をしたがすぐにいつものように笑う。

 

 

「さあ、荷物を取りに戻りましょう。もう汽車が出発してしまうわ」

「まあ、もうそんな時間?急がないと!」

 

 

ハーマイオニーは慌てて走り出し、ロンとソフィアはその後を追いかけた。

ハリーは3人の後ろ姿を見ながら、少し遅れて走り出す。

 

分霊箱の事、ソフィアの事、考えなければならない事は沢山ある。やがてヴォルデモートとの最後の対決の日が来る事もわかっていたが、ハリーはまだソフィアとロンとハーマイオニーと過ごせる時間が残されているのだと思うと、心が浮き立つほど嬉しかった。

 

 

 






謎のプリンス、終了です。
ここでソフィアの秘密を明かす事は初めから考えていましたが、何度も書き直して納得のいく文にするのが難しかったです……。
シリウスの生存、セブルスの秘密が明かされ、裏切り者ではないとわかった事。それがこの後どのように影響を及ぼすのか……。


いつも評価、コメント、誤字報告などありがとうございます!
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