【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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381 それぞれの決意!

 

 

それから結婚式の前日まで、ソフィアたちはモリーに指示されるままに数々の手伝いをした。庭小人駆除、銀食器磨き、パーティ用小物の色合わせ、大量のカナッペ作りなど──昼夜行われる手伝いに、ソフィア達は4人で集まり話す事が難しく、最後に4人が揃ったのは数日前の朝食での僅か時間だけだった。

 

 

ハリーが来て3日目の夜。

グリモールド・プレイス12番地に変わって騎士団の仮本部である隠れ穴にはたくさんの騎士団のメンバーが入れ替わりで訪れ、一室を使い会議を行なっていた。

夕食を食べていくメンバーも多く、その日もハリーとソフィアはたくさんの食器をテーブルに並べる。ぱたぱたと軽い足音を立てながらモリーが台所から現れ、ワインとウイスキー、そしてアイスペールを広いテーブルの中央に置いた。

 

 

「ハリー。今日はビルとアーサーも早めに帰ってくるわ。それに、リーマスとトンクスとシリウスとキングズリーも夕食の時には来るみたい」

「え?──ああ、わかりました」

 

 

モリーの期待と不安が混ざった瞳とそわそわと落ち着きのない態度を見てハリーはモリーが今日の夜に自分たちが何を行うつもりなのか、それを告げる事を望んでいるのだと理解した。数日間ハリーは悩んでいたが、その件についてソフィア達と相談する暇が一切なく今日の夜を迎えてしまう。

 

 

「ソフィア達と相談したくて、部屋に行ってもいいですか?……準備は途中ですけど」

「ええ……勿論よ。ハーマイオニーは洗濯、ロンは庭の掃除をしているわ」

 

 

モリーの言葉を聞いてすぐにハリーはロンを、ソフィアはハーマイオニーを呼びに行き、ハリーとロンが寝泊まりしているロンの部屋に集まった。

 

 

「どうした?」

 

 

ロンは爪の間に挟まった土を取ろうと弄っていたがうまく行かず眉間を寄せながら聞いた。見かねたハーマイオニーはロンの手元に向かって軽い動作で杖を振り指先を清めてから──ロンは目をぱちくりと瞬いた──ロンのベッドに腰掛ける。

 

 

「まさか、また出て行きたいだなんて──」

「違う。……おばさんやおじさん達に黙って出て行ったらきっと凄く心配させるし、多分シリウスは黙ってない気がするんだ」

 

 

ハリーはベッドの上で散らかしっぱなしだった洗濯物を壁の方に無造作に押しながら腰掛ける。ソフィアは自分たちの部屋と違い、かなり散らかっている事に半分呆れながら空いていたハリーの隣に座った。

 

 

「まあ、そうよね。シリウスはなんとしてでもハリーのそばに居たいと思っているわ」

 

 

ソフィアは洗濯物に向かって杖を振り綺麗に折りたたみながら呟く。

ふと、扉を見て──なんとなく胸騒ぎがして、扉に防音魔法をかけた。

 

 

「うん。でも……ヴォルデモートの分霊箱を探して破壊するのは僕の使命だ。ダンブルドアの願いだし、騎士団に言わなかった理由があるはずだ。だから、全て言わない方が良いんだと思う」

「その事なんだけど……ソフィアと何故騎士団に言わなかったのか、考えてみたの」

 

 

ハーマイオニーは声を顰め真剣な声で言う。ハリーとロンはその事に関して全く考えていなかったため、驚きつつ同じような声量で「わかったのか?」と聞いた。

 

 

「ええ、多分。ダンブルドアは分霊箱の事をなるべく広めたくないのよ。大勢の人が知ればそれだけ秘密を隠すのは難しくなるわ。もし、どこかで漏れてしまって……ヴォルデモートの耳に入れば、どこかに隠されている分霊箱の在処はもう探せなくなるかもしれないわ」

「裏切り者なんていない!そうだろう?」

 

 

ハーマイオニーの言葉はまるで騎士団に裏切り者がいると言っているようで、ハリーは憤りながら叫び立ち上がる。

すぐにハーマイオニーが「落ち着いて」ときっぱりと言い、助けを求めるようにソフィアに視線を向けた。

 

 

「ハリー。服従の呪文がいつかけられるか、わからないでしょう?騎士団は専業じゃない、それぞれの仕事がある人も多いわ。外に出ていく以上そのリスクはあるの」

「……それは……」

「それと、多分ダンブルドア先生は──ジャックの事を気にかけているんじゃないかって思うの」

「ジャック?」

 

 

ええ、とソフィアは真剣な顔で頷く。立ち上がっていたハリーはソフィアに服を引かれ、またベッドに座り込んだがその表情は困惑していた。

 

 

「ヴォルデモートから見たジャックは、死喰い人で騎士団に潜入しているの。ジャックは優秀な人よ、閉心術にも長けていて今は裏切りがバレていないわ。でも──おそらく、ジャックの立場はあの作戦をもってしても危ういままなの」

「何でだい?ジョージと君が大怪我をして、マッドアイは死んだ!むしろ褒められるんじゃないのか?」

 

 

ロンは訳がわからず声を上げる。ソフィアとハーマイオニーは一瞬どう言えば良いのか口ごもったが、ハーマイオニーが数秒後ゆっくりと口を開いた。

 

 

「あのね。それならどうしてここの場所は襲われていないの?」

「え?」

「……あ。そうか。ジャックはヴォルデモートに作戦の日だけを教えて、偽の僕が7人もいる事は伝えなかった、どこに僕が行くのかも教えなかったんだ」

「そう。ジャックはヴォルデモートにとって十分な働きをしたとは言えないわ。ヴォルデモートは騎士団の中に潜入しているジャックなら、ハリーが隠されている場所がどこかわかると思っているはず。でも、それがバレていない──ジャックはまだ怪しまれているわね」

 

 

ソフィアは重いため息をこぼす。

ハーマイオニーが心配そうにソフィアを見つめ、その視線に気付いたソフィアは力なく微笑んだ。

ハリーとロンは察しが悪く、頭に疑問符を飛ばしながら難しい表情をして──そしてはっきりと明言しないソフィアとハーマイオニーに向かって焦ったそうに「ジャックは大丈夫なのか?」と聞いた。

 

 

「後で、シリウス達に聞こうと思うんだけどジャックはきっと凄く難しい立場ね。──まあ、それで、そんな疑いの目で見られている可能性が高いジャックが分霊箱の事を知っているメンバー達とコンタクトをとって、分霊箱の事を知って、彼なりの方法で分霊箱を探そうとすれば……」

「ジャックは……裏切り者だとバレてしまう」

「そうなるわね」

「ジャックには秘密にしてれば良いんじゃないか?」

「ジャックだけが見張られているとは思えないわ。騎士団全員がヴォルデモートと死喰い人に見張られている中で、何かを探しているらしい行動を取れば……ヴォルデモートは誰よりも邪悪だけれど、とても賢い魔法使いよ。間違いなく悟られるわ。

だから、死喰い人とヴォルデモートから逃げていると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ハリーしか分霊箱を探すことができないんじゃないかしら」

 

 

ソフィアの言葉にハリーとロンは唸りながら黙り込んだ。

朧げだが、ダンブルドアが彼らに分霊箱の存在を伝えなかった理由が見えてきたような気がしたのだ。だが、その理由がソフィアとハーマイオニーの想像ではなく事実ならば、やはり分霊箱の事は誰にも言わない方が良いのだろう。

 

死喰い人とヴォルデモートの捜索の目を掻い潜り、どこにあるのか検討もつかぬ分霊箱を探し出し破壊する。何年かかるのかわからない旅になるだろう。危険である事は言うまでもない。

ハリーは隣に座るソフィアを見た。まだその背中にはガーゼが貼られ、傷痕が残っているのだとジニーとハーマイオニーが悲しそうに話しているのを聞いたのは昨夜のことだ。

ソフィアだけではない、前回無事だったハーマイオニーとロンも、きっとたくさんの怪我をするだろう。

ベッドのシーツを無意識のうちにぎゅっと握ったハリーは、真剣な顔でソフィアとハーマイオニーとロンを見つめた。いつもそばにいた。どんな試練も乗り越える事ができた。それは僕だけの力じゃない、彼らの存在が大きい。彼らの存在が、ホグワーツであらぬ噂を立てられ後ろ指を刺される中で唯一の救いだった。

 

そんな、何よりも大切で愛している3人を、本当に危険な旅に同行させてもいいのだろうか?

 

ハリーの視線に気付いたソフィアとロンとハーマイオニーは、何か言いたい事があるのか、とハリーを見た。

 

 

「聞いてくれ。……危険な旅になる。ダンブルドアの葬儀の後で、君たちは僕と一緒に来たいと言ってくれたね。それはわかってるんだ」

「そうね」

「ああ、いつか言うと思ったわ」

「そらきた」

 

 

ハリーが改まって話し出した瞬間、ソフィアとロンとハーマイオニーは諦めと呆れに似た視線を交わしため息をついた。ハリーがここにくる前から、きっとハリーは自分たちを置いていこうと考え直すに違いない、と思っていたのだ。前回の作戦でソフィアとジョージが傷ついてしまってからは、いつそれを言い出してもおかしくない雰囲気があった。

 

 

「そういえばソフィア。どの本を持っていくか決めた?」

「薬草と魔法薬と魔法生物については必要ね」

「そうよね、後で鞄の中身を整理しなきゃ」

「おい、聞いてくれよ!」

 

 

自分を無視して話し出したハーマイオニーとソフィアに、ハリーはもう一度真剣な声で叫んだが、ハーマイオニーは一呼吸分おいて眉を吊り上げた。

 

 

「いいえ、ハリー。あなたこそ聞いて。私たちはあなたと一緒に行くわ。もう何ヶ月も前に決めたことよ」

「何年も前、かもしれないわね」

「でも──」

 

 

食い下がろうとするハリーに、ロンが「黙れよ」ときっぱりと言い切る。ロンがハリーに直接強く意見を言うのは滅多にないことであり、ハリーはぐっと喉を詰まらせた。

 

 

「君たち、本当に真剣に考え抜いたのか?」

「私からすれば、ハリー。まだあなたがそう思うだなんて驚きよ。私たちはずっと前から準備をしていたわ」

「そうよ。私はもうほとんど荷造りは終わったの。だから私たちはいつでも旅に出発できます。ご参考までに申し上げますけど、準備にはかなり難しい魔法も使ったわ。とくに、ロンのママの目と鼻の先でマッドアイのポリジュース薬を全部頂戴する事も、私とソフィアでやってのけました。

それに、私の両親の記憶を変えて、ウェンデル・ウィルキンズとモニカ・ウィルキンズという名前だと信じ込ませ、オーストラリアに移住する事が人生の夢だったと思わせたわ。二人はもう移住したの。ヴォルデモートが追跡して、私のことで、または──残念ながら、あなたのことを両親にずいぶん話してしまったから──あなたのことで、二人を尋問するのがいっそう難しくなるようにね。

もし、私が分霊箱探しから生きて戻ったら、パパとママを探して呪文を解くわ。もしそうでなかったら──そうね、私のかけた呪いが十分に効いていると思うから、安全に幸せに暮らせるでしょう。ウェンデルとモニカ・ウィルキンズ夫妻はね、娘がいたことも知らないの」

 

 

話すにつれ、ハーマイオニーの目が涙で潤み始めた。ロンはハーマイオニーの肩を引き寄せ片腕を回し、繊細さに欠けると──ロン・ウィーズリーがだ──避難するようにハリーにしかめ面を向けた。ハリーははじめてハーマイオニーの強い覚悟を知り、言葉を無くす。

 

 

「僕──ハーマイオニー、ごめん、僕──そんな──」

「気付かなかったの?ロンもソフィアも私も、あなたと一緒に行けばどういうことが起こるか、はっきりわかっているわ。それに気付かなかったの?ええ、私たちにはわかっているわ。ソフィア、あなたが何をするのかハリーに教えてあげて」

「……そうね。私はとある場所に小さな家を買ったわ──まあ、買ったのは父様だけど──そこで私とルイス、2人が()()()生活していた痕跡を残したの。その家に今いるのは魔法で作った私の精巧な人形のようなものよ。それで、その家で暮らしている偽の私は数日後には人狼に殺される事になるわ。喉を噛まれてね。それを発見するのは学校が始まる前に戻ってきたルイスになるはずよ。偽死体が損傷してから発見まで1ヶ月くらいだもの。腐乱して人だか人形だかなんて、きっと区別がつかないわね。それくらい精巧に作り上げたの、私の髪も使ったし……切れば血が流れるわ。まぁ、豚の血なんだけど。

それで、私の死は新聞の片隅に人狼に襲われた可哀想な子として記載されるでしょうね。今もグレイバックを筆頭に数人の人狼が人をたくさん襲っているって、新聞に載っていたもの。

天文台の塔の戦いの時に、私は一人の人狼を捕まえていたの、気が付かなかった?あの時鳥籠があったでしょう?あれ、実は私が変身させたもので、今は幽閉されてるんだけど──とにかく、人狼の体毛や体液は入手できるわ。家と私の偽の死体にふりかけていればきっと気付かれないわね。ルイスはホグワーツにいる生徒たちを内部から守るつもりだから、ホグワーツに行かなければならない。そこに私だけいないのは不自然だわ。病気なら看病する人がいないから入院しないといけない。でもそうすると流石にバレてしまうでしょう?なら、自由に動くために死ぬしかないの」

「そんな……僕……」

 

 

唖然とするハリーに、ソフィアは大した事は何もしていないと肩をすくめた。

死んだと思わせておいた方が良い事はたくさんある。表に出る事は難しくなるが、これからの旅は姿を隠す事が必須の為デメリットにはなり得ない。

全てを終わらせる事ができなければ、結局──死ぬ事になる可能性が高いのだ。

 

 

わざわざ死を偽装せずとも、周囲からはハリーの恋人とであると思われているソフィアは、ハリーと共に姿を消してもよかった。

しかし、そうなるとルイスが行動を起こす事が困難になる。双子であるルイスは、ホグワーツが開始されてから監視対象になる可能性が出てくる。──いや、ヴォルデモートの残虐性を考えれば、ルイスは人質にされるだろう。

それを防ぐために、ソフィア・プリンスは死亡したと見せかける必要があったのだ。

 

 

「じゃあ、次はロンの番ね。ハリーにアレを見せてあげて?」

「うっ……食事前なのになぁ……ハリー、こっちこいよ」

 

 

ソフィアに促され、ロンは渋い顔をしながらハリーに「ついてこいよ」と顎で扉を指した。ハリーは彼もまたとんでもない覚悟をしていて、それを見せられるのかと思うと少々胸が痛んだが、誘われるままに部屋から出て行く。

ソフィアもロンの身代わりとなる屋根裏部屋に住む化け物の事を知っているが、食事前にあの臭いを嗅ごうとは思わない。それほど強い悪臭と、吐き気を催すほどのグロテスクな見た目に変化させられているのだ。

 

 

数分後、顔を顰めたロンとハリーが戻り部屋の中で新鮮な空気を胸いっぱい吸い、鼻の奥にこびりついたような臭いが薄まったところで、ロンは改めてどういった作戦なのかを説明した。

屋根裏部屋に住む化け物を変身させ黒斑病に似た疱疹で体を覆う。あとはロンのパジャマを着せ、部屋を暗くすればそれがロンなのか化け物なのかはわからなくなるだろう。

もし、何者かが学校に行っていないロンを怪しみ調査をしにきたとしても、アーサーとモリーは「黒斑病にかかり重症だ」といい、化け物を見せる。

感染力の高い黒斑病患者に接近する者は──臭いも強烈だ──いない。屋根裏に寝かせているのも、隔離だと言えば納得するはずだ。

 

 

「それで、君のパパとママもこの作戦に乗っているの?」

「パパの方はね。フレッドとジョージが化け物を変身させるのを手伝ってくれた。ママは……ママは、僕たちが本当に行ってしまうまでは、きっと受け入れないよ」

 

 

部屋の中に気まずい沈黙が落ちた。きっとモリーは説明したとしても、受け入れる事はできないかもしれない。今までだって、ハリー達が危険な目に遭うのをなるべく避けようとしていた人だ。きっと怒り、嘆く事になるだろう。

 

沈黙を時々破ったのは、ソフィアとハーマイオニーが部屋の中にある散らかった服を片付ける音だけだった。

ロンは手伝いながらもぼんやりとハーマイオニーを眺め、ハリーは何も言えずソフィア達を交互に見ていた。

 

彼女達は、本当にハリーと来るつもりだった。家族を護るためにそれぞれ大変な準備していたという事が、何にも増してハリーにその事を気づかせる──この旅がどれほど危険な事か、3人にはよくわかっているのだ。

 

 

ハリーは何よりも大切な3人の顔を見ながら拳を握る。3人の決意が、自分にとってどんな重みを持つ事なのか伝えたかった。どれほど苦しいか、どれほど──嬉しいか。

しかし、その重みに見合うほどの言葉は見つからなかった。

 

 

「ありがとう──ごめん」

 

 

言葉が見つからず、なんとかして気持ちの一端を伝えたくて吐かれたのは、短い言葉だった。

ソフィア達はそのハリーの言葉に数々の感情を読み取ると優しく笑い立ち上がり、ソフィアとハーマイオニーは軽くハリーをハグし、ロンはハリーの背を叩いた。

 

 

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