【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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385 分霊箱とは?

 

 

ソフィアとハーマイオニーはロンとハリーの部屋に向かった。

部屋を片付ける、と言っていた2人だったが特に片付けている様子もなくベッドに座り込んでいる。その場から逃れるための言い訳だったのだと理解していたソフィアとハーマイオニーは何も言わずに、二人のそばに腰掛けた。

 

 

「とりあえず一歩前進、だよな?」

 

 

ロンが全員揃ったのを見て呟く。ハーマイオニーは泣きすぎて腫れぼったい目元を指先で押さえながら「そうね」と頷いた。

 

 

「まさか、シリウスの弟が分霊箱の事に気付いて持ち出したとは想像もしなかったけれど……マンダンガスを捕らえることが出来れば、さらに一歩近づくわ」

「本物のロケットを手に入れたら、破壊しないといけない。……でも、どうすれば破壊できるんだろう」

 

 

魔法使いとは異なる強力な魔法を使うことができるハウスエルフでも壊せなかった分霊箱。きっと粉砕魔法や爆破魔法では傷一つつけることができないのだろう。ならば、分霊箱を破壊するためにはどうすればいいのか──ダンブルドアは、どのように破壊したのだろうか、とハリーは考えた。

 

 

「あのね、私たち、その事についてずっと調べていたの」

「どうやるの?図書館には分霊箱に関する本なんてない、と思ってたけど?」

 

 

ハーマイオニーは「なかったわ」と答えながら頬を少し赤らめた。

 

 

「ダンブルドアが全部取り除いたの、でも、処分したわけじゃなかったわ」

「おっどろき!どうやって分霊箱の本を手に入れたんだ?」

 

 

ハーマイオニーの遠回しな言い方は、分霊箱についての詳細が書かれた本を手にしている、とぼんやりと伝えていた。

去年あれほど探して全く見つかることのなかった本をどのように見つけ出すことができたのか、ロンとハリーは驚きと感心が混じる目でハーマイオニーを見たが、ハーマイオニーは言葉を詰まらせると助けを求めるようにソフィアを見た。

 

 

「簡単よ。女子寮の部屋で──駄目元で、アクシオを唱えてみたの。ダンブルドア先生の校長室には入れないでしょう?だから。そうしたら、飛んできたのよ」

「盗んだんじゃないのよ?もし、ダンブルドアが本当に誰の目にも触れさせたくなかったら、きっとアクシオなんかで手に入れられなかったもの!」

 

 

ハーマイオニーの代わりにソフィアは何でもないことだと言う雰囲気で伝えたが、ハーマイオニーは必要な事だとはいえ人の書斎から本を呼び寄せ手元に置いておくことが果たして正しいことなのか──盗んだように思われるのではないか──と、気が気ではなかったのだ。

 

 

「だけど、いつの間にそんな事を?」

 

 

ハリーとロンは二人の行動を驚きつつも、決して責めるつもりはない。今まで散々校則を破っているのだ。本が長期間借りっぱなしになることなんて──その本の内容が悍ましいとしても──今更どうって事はない。

 

 

「ダンブルドア先生の、葬儀の後すぐよ。あなたと共に分霊箱を探しに行くと決めたでしょう?だから──分霊箱の事を知らなければならないと思って」

「思いつきで、アクシオをしてみたの。そうしたらうまくいったわ。開いていた窓から飛び込んできて、それで──本をみんなしまいこんだの。ダンブルドアは、きっと怒らなかったと思うの。私達は分霊箱を作るために情報を使おうとしているんじゃないんだから、そうよね?」

 

 

ハーマイオニーはごくりと唾を飲み込み、哀願するようにハリーとロンに伝える。二人は「当然だ、僕たちが責めるとでも?」と言いハーマイオニーを慰めた。ハーマイオニーは表情を緩めると常に肩から下げている鞄を膝の上に置き、中に腕を突っ込む。

暫くごそごそと探っていたが、ついに擦り切れた黒革綴じの分厚い本を一冊取り出した。ハーマイオニーは吐き気を催すような、青い顔をしながらまだ生々しい死骸を渡すように恐る恐る本をハリーとロンに向けて差し出す。

 

 

「この本に、分霊箱の作り方が具体的に書いてあるわ。深い闇の秘術。──恐ろしい本、本当にぞっとするわ。邪悪な魔法ばかり!」

「きっと、ダンブルドア先生は校長になってから、図書室からこの本を取り出したのね。ヴォルデモートは必要な事はこの本から全て得たに違いないわ。……少し読んだけれど、分霊箱だけじゃなくて……本当に、とんでもない魔法が書かれていて……」

 

 

ソフィアは声を顰め呟くと、ぶるりと身を震わせた。思い出すだけで気分が悪くなり悪夢を見るのではないかという魔法ばかり書かれていたのだ。

 

 

「でもさ、もう読んでいたんなら、どうしてスラグホーンなんかに分霊箱の作り方を聞く必要があったんだ?」

「あいつは、魂を七分割したらどうなるかを知るためにスラグホーンに聞いただけだ」

 

 

ハリーはロンの疑問に答えながら、その黒い本をじっと睨むように見つめる。

 

 

「リドルがスラグホーンに分霊箱のことを聞いたときには、とっくに作り方を知っていただろうってダンブルドアはそう確信していた。ハーマイオニー、ソフィア、君たちの言う通りだよ。あいつはきっとこの本から情報を得ていたと思う」

「この本で、分霊箱について知れば知るほど──」

 

 

ソフィアは恐ろしいものを見る目で本を見つめ呟く。ぶるりと大きく震えながら視界にその本が入るだけで不快なのか、視線を無理矢理逸らすと不安そうに眉を寄せハリーとロンを見つめた。

 

 

「──ますます恐ろしい物だってわかるの。あの人が本当に六個も分霊箱を作っただなんて、信じられないくらいに。この本は魂を裂くことで残った魂がどんなに不安定なものになるのか警告しているわ。それも、たった一つの場合なの。それなのに……今の私たちよりも幼い時に分霊箱を作り出したなんて……」

「偉人は幼少期から逸話を残しているものだけど、本当にヴォルデモートは異質だわ。まぁ、褒められる事じゃないのは確かだけれどね」

 

 

ハーマイオニーは厳しい表情で呟く。ハリーはその言葉を聞き、ダンブルドアがヴォルデモートのことを「通常の悪を超えた領域まで踏み出した」と言っていたことを思い出した。

大人になってから作り出した分霊箱もあるだろう。しかし、初めて作ったのはまだ15歳程度の未成年の魔法使いなのだ。常識を逸し、異様であり、異質だとハッキリとその行動が物語っている。

 

「魂を元に戻す方法はないのか?」とロンがハーマイオニーとソフィアに尋ねれば、2人は顔い顔を見合わせた。

 

 

「あるわよ。でも、地獄の苦しみでしょうね」

「なぜ?どうやって戻すの?」

「良心の呵責。自分のしたことを心から悔いなければいけないの。注釈があるわ──あまりの痛みに、自らを滅ぼす事になるかもしれないって」

「まあ、方法があったとしてヴォルデモートがするだなんて想像もできないわ。そうでしょう?」

「できないな」

 

 

ソフィアの言葉に、ロンが即答した。ヴォルデモートが人を殺めたことを悔いる事があるのならば、そもそもヴォルデモート卿はこの世に存在していないだろう。

 

 

「それで、その本には分霊箱をどうやって破壊するのか書いてあるのか?」

「それも、書いてあったわ」

 

 

ソフィアが嫌そうな顔で本を見下ろし、慎重に──なるべく触れる箇所を減らすように──本のページを捲る。

 

 

「この本には、分霊箱に対していかに強力な呪文を使わなければいけないかが書いてあるの。分霊箱を完全に破壊する方法は少ないけれど……分霊箱が、ひとりで回復出来ないほど強い破壊力を持ったものであればいいの。ハリーがリドルの日記に対して取った方法がその一つね」

「へー、じゃあ。バジリスクの牙が大量にあってラッキーだったな。あんまりありすぎて、どう始末すればいいのかわからなくなったぜ」

 

 

ロンが揶揄いまじりに言えば、ハーマイオニーとソフィアは少しムッとしてロンを見る。ロンはそんな視線にも慣れっこであり、肩をすくめるだけで謝る事はしなかった。

 

 

「バジリスクの牙じゃなくてもいいのよ。バジリスクの毒に対する解毒剤はたった一つで、しかも信じられないくらい希少なもの──」

「不死鳥の涙だ」

「そう。問題は、バジリスクの毒と同じ破壊力を持つ物質はとても少ないということ。しかも持ち歩くのには危険なものばかりだわ」

 

 

ハーマイオニーは難しい表情で唸る。バジリスクの毒以外にも、魔法界にはさまざまな猛毒や薬が存在するが、どれも安全に持ち運ぶのは困難なものばかりだ。中には使用するには特別な免許が必要な毒薬もある。それをヴォルデモートや死喰い人から逃げつつ、稀有な材料を集め難しい調合をするのは現実的ではないだろう。

 

 

「バジリスクの牙は、まだ──多分、ホグワーツにあるわ。他の方法が見つからなかったら、全ての分霊箱を入手した後でホグワーツに向かうことも考えなければならないわね」

 

 

ホグワーツに向かうこともまた困難には違いないが、可能性として高いのはその方法だろう。ソフィアの言葉にハーマイオニーは賛同するように深く頷いた。

 

 

「うーん……そもそも、魂の入れ物になってるやつを壊したにしても、中の魂のかけらが他のものに入り込んでその中で生きる事はできないのか?」

「ええ、分霊箱は人間とは完全に真逆だもの」

 

 

ロンの疑問にソフィアがあっさりと答え頷く。しかし、その言葉だけではロンとハリーはピンとくるものが無く頭の上にたくさんの疑問符を飛ばし怪訝な顔をした。

ソフィアは唇を指先で撫でながら彼らに伝える方法を考える。──ハリーは、ふいにその動作をどこで見たのかを思い出し複雑な気持ちになったが、何も言わなかった。

 

 

「そうね……例えば、私が今ナイフを持っていてハリーに突き刺すとするでしょう?肉体は損傷するけれど、魂が壊れる事はないわ。魂は無事のままなの。けれどね、分霊箱はその逆なの。中に入っている魂のかけらが生き残るかどうかは、その入れ物──つまり、魔法がかけられている器に影響するの。器なしでは存在できないのよ」

「あの日記帳は、僕が突き刺したときにある意味で死んだんだ」

 

 

ハリーは穴の空いたページからインクが血のように溢れ出したこと、そしてヴォルデモートの魂の断片が消えていくときの悲鳴を思い出した。

 

 

「そうよ。日記帳が完全に破壊されたとき、その中に閉じ込められていた魂の一部は存在できなくなったの」

「ちょっとまった」

 

 

ソフィアの説明を聞いていたロンが顔を顰めて話を止めた。ここまで噛み砕いてもまだわからなかったか、とソフィアとハーマイオニーは思ったが、ロンが口にしたのはあの日記に宿る魂のかけらがジニーに取り憑いたのはどういう理由だ、という事だった。

 

 

「魔法の器が無傷のうちは、中の魂の断片は誰かが器に近付きすぎると、その人間に出入りできるのよ。何もその器を長く持っているという意味ではないの。器に触れることとは関係ないの──感情的に近づく、という意味なの。ジニーはあの日記に心を打ち明けた、それで極端に無防備になってしまったのね。分霊箱が気に入ってしまったり、それに依存するようになると問題だわ」

 

 

ハーマイオニーはロンが口を挟む前に一気に全てを説明した。ロンはハーマイオニーの説明を頭の中で何度か繰り返し、ようやく納得ができたのか「なるほど」と呟き難しい顔をして唸る。

 

 

「分霊箱を手に入れたとして、その取り扱いも注意が必要ね。スリザリンのロケット、ハッフルパフのカップ。レイブンクローの何か……それと、蛇のナギニ。ロケットとカップはともかく、レイブンクローの何かが──例えば魔導書とかならば、また語りかけてくる可能性があるもの」

 

 

ソフィアは本を閉じながらいい、もう見たくないのかハーマイオニーに本を手渡した。受け取る瞬間ハーマイオニーは腐った内臓を手にしたかのように身震いしながら、慎重に鞄の中に本を押し込む。

 

 

「ダンブルドアはどうやって指輪を破壊したんだろう?僕、どうしてダンブルドアに聞かなかったのかな……どうして、死ぬことがわかっていて教えてくれなかったんだろう」

 

 

ダンブルドアは死を予見していた。ならばその前に幾つもの事を教えてくれてもよかったのではないかと、ハリーの心の奥に暗い気持ちが湧き起こる。

 

 

「ダンブルドア先生は、多分──ハリー、あなたが解き明かす事を期待しているんじゃないかしら」

「僕が?」

 

 

ソフィアは真剣な顔で頷く。確かにダンブルドアは多くを語らなかったが──ハリーに授けた知識は無意味ではないはずだ。ヴォルデモートがトム・リドルだった時をたどり、その場を見せた事にも何か意味はあるはず。

 

 

「一年生の時もそうだったけれど、ダンブルドア先生は全てを教えるんじゃなくて、ハリーに沢山のことを選択させようとしていたでしょう?自分からその道を選んだ、その積み重ねが必要なのよ」

「……そうか……」

 

 

ハリーはダンブルドアと話した事を思い出した。自分は予言によりヴォルデモートとの戦いという宿命を選ばされたのではなく、自ら選んだのだと。作られた道を歩き、死に直面する戦いの場に引き摺り込まれるか、頭を高く上げてその場に踏み入れるかの違いなのだ。その二つは選択の余地がほとんどないと思う者もいるかもしれないが、ハリーはその二つの明確な差を知っていた。

この道は、自分で選んだ道だと理解することが何よりも重要なのだ、それゆえに、自分の力で全てを終わらせなければならないのだ。

 

ソフィアの言葉にハリーとハーマイオニーは真剣な顔をして頷いたが、ロンだけは納得が出来ないのか怪訝な顔をし眉を顰めていた。

 

 

 

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