【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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396 予期せぬ来客!

 

 

その日、ハーマイオニーはダンブルドアの遺品であるビードルの物語をじっくりと読み、ソフィアはセブルスが研究室として使用していた部屋に篭り秩序の匙を使い魔法薬を作った。魔法薬を完璧に作るのであれば、本来ならば得意なハーマイオニーが作ったほうがいいだろう。しかし四人で旅をし続けると言っても──ずっと、四人が揃っているとは限らない。命をかける危険な旅で、万が一バラバラになってしまった時のためにソフィアは自分の手で難解な魔法薬を作れるようにならなければならないと考えていた。

勿論少ない時間で作ることが出来る魔法薬は少ないが、それでも軽傷を治す魔法薬ならば作り出すことが出来るだろう。

 

ソフィアは匙を混ぜていた手を止め、棚の中に整然と並べられている薬を見た。中にはとても貴重な薬が並べられている。通常ならば棚の薬を勝手に持ち出せば、セブルスは間違いなく怒るだろう。しかし、今は──非常事態だ。

 

 

「……ハナハッカエキスは絶対に持って行かなくちゃ」

 

 

ソフィアは何だか家探しをし泥棒になってしまった気持ちになったが、仕方ない事だと自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

ソフィアが薬を作っている頃、ハリーは落ち着かないのか何度も暖炉の前を行き来しながら机の上に置かれた沈黙したままの鏡を睨み、ロンは肘掛け椅子に座りながらカチカチと灯消しライターを使い居間のランプの灯りを消し、灯し、また消し──と何度も繰り返していたためついにハーマイオニーが「もう!」と苛立ち叫ぶ。

 

 

「やめてちょうだい!本が読めないわ!」

「ごめんごめん、自分でも知らないうちにやっちゃうんだ」

 

 

ロンは灯消しライターを鳴らし灯りを戻したが、ハーマイオニーは「ねえ、何か役に立つ事をして過ごせないの?」と、つい嫌味らしく言ってしまい──ロンは目に見えて不服そうにポケットの中に灯消しライターを突っ込むと机の上に足を投げ出した。

 

 

「どんなことさ。御伽話を読んだりすることか?」

「ダンブルドアが私にこの本を遺したのよ、ロン──」

「──そして僕には灯消しライターを遺した。たぶん、僕は使うべきなんだ!」

 

 

些細なことで口喧嘩を始めたロンとハーマイオニーに耐えられず、ハリーは鏡を手にすると二人に気付かれないようにそっと部屋を出てソフィアが篭っている部屋へと向かった。

 

 

「ソフィア」

「ハリー?どうしたの?」

 

 

扉を開ければホグワーツでのセブルスの研究室を思い出してしまい、ハリーは内心もやりとしたが表情には出さずに瓶に薬を詰めるソフィアの元に近づく。

 

 

「調合、うまくいった?」

「ええ!いつも通り作っているはずなのに、不思議だわ」

 

 

緑色の水薬を瓶に詰め終えたソフィアは軽く掲げ、ランプの灯りにかざした。作った薬はそれほど難易度が高い物ではないが、これほど上手く作れたのは初めてであり満足げに笑いながら鞄の中に入れる。

「何か手伝う事はある?」と聞いたハリーに、ソフィアは鍋に残っている薬を空き瓶に詰めるように頼み、その間に少々散らかってしまった部屋の中を片付けた。

 

 

「──よし、とりあえず使えそうな材料と薬は手に入ったし……ハーマイオニーとロンは?」

「いつもの口喧嘩中」

「まぁ……」

 

 

肩をすくめるハリーに、ソフィアは小さく苦笑した。最近良い雰囲気になっているハーマイオニーとロンだが、根本的なところは変わらないのか──口喧嘩も、彼らにとっては仲を深める行為なのかもしれない。とソフィアは思う。

 

 

「喧嘩する心の余裕がある、と考えるべきかもしれないわね」

「……確かに、2人が静かになったらそれはそれで怖いな」

 

 

薬草の匂いが立ち込める研究室から出たソフィアとハリーは顔を見合わせ小さく笑っていたが、玄関近くの階段を中程まで降りたところで──扉をそっと叩く小さな音が聞こえた。

 

すぐにソフィアとハリーは杖を抜き、とっさにハリーは片腕を上げソフィアを自分の背中に隠した。一瞬で張り詰めた緊張感が2人を支配し、呼吸を止めてじっと扉を見る。

 

ソフィアは杖を振り、杖先から銀色の文字を出しハリーの前に出現させた。

 

 

──ハリー、すぐに隠れて。ハーマイオニーとロンに知らせて。

 

 

ハリーはごくりと固唾を飲み一瞬悩んだ。扉の外にいるのは誰だろうか?もし、死喰い人ならば狙いは自分だ。だが、ソフィアが優秀な魔女だとしてもこんなところで一人きりには出来ない。危険な目に遭うのがわかっていて、置き去りになんて──。

 

 

「──ハリー!」

 

 

動かないハリーに、ソフィアは小声で叫ぶ。

しかしハリーはどうしてもその場から動く事は出来ず、強い意志の宿る目で扉を睨みつけた。

 

 

「私だ。──リーマス・ルーピンだ。もし、いるのなら開けてくれ」

 

 

扉の向こう側からくぐもった声が聞こえた。予期せぬ人物の声にソフィアとハリーは一瞬視線を交わし、そして小さく頷く。

 

ソフィアはハリーの腕を掴み一歩進み出て、そっと杖を振る。ハリーはいつでも反撃できるように、杖を強く握り直した。

 

かちゃりと鍵が開き、ぎぃ、と音を立てて扉が開かれ──。

 

 

縛れ(インカーセラス)!」

武器よ去れ(エクスペリアームス)!」

 

 

その姿が完全に見える前にソフィアとハリーは魔法を放つ。ソフィアの杖先から黒く長い紐が噴出し、扉の向こうにいた人物を捕えた途端、ソフィアは強く引き、ハリーは弾かれ飛んだ杖を空でキャッチしながら素早く扉を蹴り閉めた。

呻き声を上げバランスを崩し床に倒れたのは──リーマス・ルーピンその人であり、リーマスは「いたた……」と唸りながら床に頬をつけ自分を睨め下すハリーとソフィアを見上げた。

 

 

「本当にリーマス・ルーピンか?」

 

 

ハリーは低く硬い声でリーマスに伝える。

リーマスの体を束縛する縄がさらに強く締まり、けほっと肺に残っている息を吐き出しながなら苦しそうに口を開いた。

 

 

「ああ──私はリーマス・ジョン・ルーピン。狼人間でときにはムーニーと呼ばれる。忍びの地図を製作した一人であり、通常トンクスと呼ばれるニンファドーラと結婚した。君に守護霊の術を教え、君の守護霊は牡鹿の形をとる。ソフィア、君と初めて会ったのは私の家で、君とルイスはセブルスに一言も話すなと言われていたけれど沢山私と話してしまってセブルスに怒られたね」

「本物だ、間違いない」

「ええ、そうね。会えて嬉しいわ!」

 

 

リーマス本人しか知らぬ情報に、ソフィアとハリーはほっと表情を緩めた。すぐにソフィアは束縛魔法を解き、ハリーはリーマスを助け起こしながら杖を渡す。

あまりの強い締め付けに赤い痕が残ってしまった手首を揉みながらリーマスは苦笑し、服についた汚れを払った。

 

 

「二人ともしっかりと警戒していたようだ。うん、それでいい──奥に行く前に、すぐ先の森でお利口に待っている犬をここに連れてきてもいいかな?」

「犬?──まさか!」

 

 

ハリーはパッと表情を輝かせ、すぐに扉を開けようとしたがリーマスがそれを止めソフィアを見る。ソフィアはこんな緊急事態でも自分たちの事情を汲んでくれるリーマスの気持ちを読み取り、柔らかく笑いながら「ええ、私が許可するわ」と伝えた。

 

それを聞きリーマスが扉を開ければ待っていましたと言うように黒犬が体を滑り込ませ、ハリーがその名を呼ぶ前に──瞬き一つの間に人へと変わり、驚き喜ぶハリーを強く抱きしめた。

 

 

「わっ!」

「ハリー!ああ、無事でよかった!」

 

 

ハリーはシリウスの肩に顔を埋め、喜びと少しの恥ずかしさから一瞬狼狽えたが──本当に彼が無事で良かったと、その背に手を回して「シリウスもね」と明るい声で伝えた。

 

 

「いったいどうし──まあ!シリウス?リーマス!?」

 

 

玄関での声に気づいたハーマイオニーとロンが杖を構えたまま現れ、熱く抱擁するシリウスとハリー、そしてそれを見守るリーマスを見て驚き目を瞬かせる。

リーマスは扉を見る事なく魔法で鍵をしっかりと掛け直し、全員の無事を確認すると初めて表情を緩めた。

 

 

「話す事はたくさんある。今ここは安全なようだ──ソフィア、リビングに行ってもいいかな」

「ええ、勿論よ。私たちも話したいことがたくさんあるわ」

 

 

ソフィアはすぐにリーマスとシリウスを居間へと案内した。数回ここを訪れたことがあるリーマスは何も言わず廊下を進んだが、シリウスは少し物珍しそうに辺りを見渡した。

 

 

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