ソフィアとハリーはアンブリッジの部屋の引き出しという引き出し全てを開け、中身を確認したがその中にロケットは見つからなかった。
アンブリッジにその価値がわかったのかはわからないが、処罰を何よりも愉しむ彼女が法律違反を犯していたマンダンガスの目を瞑る代わりに手に入れたロケットだ。
その価値がわからなくとも特別な物だと無意識のうちに理解していたのなら、部屋に無造作に置かないだろう。無駄足だったか──いや、それでもしっかりと自分の目で確認する事に意味があるのだ。
ハリーは落胆しつつもそう自分に言い聞かせ、壁に貼ってある自分のポスターの下に書かれた『問題分子ナンバーワン』の言葉を睨みつけた。
「この部屋にはなさそうね。……ジャックはロンと会えたかしら?」
切なげに笑いかけるダンブルドアの写真が表紙を飾る本の表紙を撫でながらソフィアはハリーに問いかけた。
「きっと、雨を止めてくれたに違いない。ロンと合流しなきゃ」
「ええ、その前に法廷の様子を見に行きましょう?吸魂鬼がどの程度いるか調べておかないと、ロンもハーマイオニーも守護霊魔法があまり得意ではないもの。といっても……守護霊魔法を使えば一発であなたの存在がバレてしまいそうだけど」
「確かにそうだね……よし、ハーマイオニーのところに向かおう。アンブリッジが一人きりになるタイミングがあればいいんだけど」
「ええ、早くしないと、ポリジュース薬の効果はあと30分程度だわ。もし今回無理でも、次のチャンスはあるわ」
ソフィアは『アルバス・ダンブルドアの真っ白な人生と真っ赤な嘘』という本のページを適当に捲り、色褪せた写真が載せられているところで手を止めた。肩を組みあった10代の少年二人が大笑いをしているその姿に、ソフィアはダンブルドアにもただの少年だった時代があったのだと少し不思議な気持ちになりつつ、どこか彼の面影のある溌剌とした笑顔を見る。ハリーはそんなに面白い本なのだろうか、と本を覗き込み、少年たちの笑顔を見た。
しかし、今はゆっくりと読んでいる場合ではないとソフィアは本を閉じハリーを見上げる。
「行きましょう」
「うん」
ソフィアは荒らした部屋を魔法で元通りにした後ハリーと共に部屋を出て、足早にエレベーターへと向かった。
幸運にもエレベーターから降りてくる者も一階から乗り込む者もいなかったため2人は胸を撫で下ろし、エレベーターに乗り込み小声でアンブリッジがロケットを持っているかどうか調べるにはどうすればいいかと話し合った。
そうこうしている間に法廷のある階でエレベーターが止まり、2人は素早くエレベーターから降りる。後ろでエレベーターが音を立て去って行くのを聞きながら、目の前の光景にごくりと固唾を飲んだ。
そこは絨毯敷きの一階とは異なる、冷たい石壁が松明にぼんやりと照らされているだけの寂しい廊下だった。
「入り口は左手にある。下に降りる階段があるはずだ」
「ええ、わかったわ」
ハリーは一度法廷に出たことがある。その時の記憶を手繰り寄せながら小声でソフィアに法廷の場所を伝えた。
ソフィアはこの先にいるだろう吸魂鬼のことを考え──守護霊魔法を使うのは最終手段だとわかってはいるが──ローブの下でしっかりと杖を握りながら左手の奥にある暗い階段へと向かった。
一段下りるごとに不自然な冷気がじわじわと喉元を締め付けるような感覚に陥り、ソフィアは必死に幸福な感情を思い起こす。喉に入り込んだ冷気が真っ直ぐに肺を引き裂き、絶望感が忍び寄る。──間違いなく、吸魂鬼がそばに居る。気を奮い起こし階段を下りきり右に曲がると法廷へと続く暗い廊下には、黒いフードを被った吸魂鬼が壁を背にして立っていた。
それも、一体や二体ではない。何十という吸魂鬼が固い木のベンチに座る尋問に連れてこられたマグル生まれを見下ろし、ガラガラと不吉な音を発している。
マグル生まれ達は体を寄せ合い震えていた。殆どの者が顔を両手で覆い俯いているのは、口から魂を吸われるのだと本能的に理解しているのだろう。
数体の吸魂鬼は獲物を前にして廊下を滑るように歩く。その場の絶望感や無気力感が、呪いのようにハリーとソフィアに襲いかかってきた。
ハリーは透明マントの中で力を振り絞り、静かに一歩一歩と前に進む。守護霊を出したい衝動に駆られたが、ハリー・ポッターの守護霊は牡鹿だと知られている。守護霊を出せばたちまち自分の存在が知られてしまうだろう。
マグル生まれ達はソフィアがやって来た事に気づき震えながら顔を上げたが、それが慰めにも助けにもならない
その時突然、凍りつくような沈黙に衝撃が走り、左側に並ぶ地下室の扉の一つが開いて中から叫び声が響いた。ソフィアだけでなく、マグル生まれ達も肩を跳ねらせ引き攣った顔でその扉を見つめる。
「違う、違う!私は半純血なんだ、聞いてくれ!父は魔法使いだった。本当だ、調べてくれ!アーキー・アルダートンだ、有名な箒設計士だった。調べてくれ、お願いだ──手を離せ、手を、離してくれ!」
「──これが最後の警告よ」
魔法で拡大されたアンブリッジの猫撫で声が男の絶望の叫びをかき消して響いた。
「抵抗すると、吸魂鬼にキスさせますよ」
男の叫びは静かになったが、乾いた啜り泣きが廊下に響いてきた。「連れて行きなさい」死刑宣告のようなアンブリッジの声が響き、法廷の入り口に二体の吸魂鬼が現れる。腐りかけた瘡蓋だらけの腕が気絶した魔法使いの両腕を掴み、そのまま滑るように廊下を去っていき、その後に残された暗闇が男の姿を飲み込んだ。
「次──メアリー・カターモール」
アンブリッジの呼びかけに、小柄な女性が立ち上がった。頭のてっぺんから足先まで震える魔女は胸の前で真っ白な両手を組み、一瞬ソフィアに縋るような視線を向けたが──ソフィアは、動くことが出来なかった。ここでアリスらしくなく動けばすぐに捕まるだろう。
独りで地下牢へと入っていくメアリーを、ソフィアはただ見送ることしかできなかった。
バタン、と扉が閉まり再び苦しいほどの沈黙が落ちる。ソフィアは暫く扉を睨んでいたが、やはりこの法廷に忍び込むのは不可能だと判断し、「次の者を呼ばなければ」とわざとらしく独り言をこぼし──勿論この場から離れるという意味をハリーに伝えるために──踵を返した。
来た道を戻り、エレベーターに乗り込みソフィアは隣の何もない空間に向かって話しかける。
「どうする?やっぱり守護霊魔法を使わないと、あの場をクリアするのは難しいわ。先にロンを探しましょう」
しかし、帰ってきたのは沈黙だった。
ガタガタと音を立てて動くエレベーターの中、ソフィアは訝しげな顔をして隣に手を伸ばしたが、その手は何にも触れず空を掴む。どきりと心臓が跳ねるほどの嫌な予感に、ソフィアはエレベーターの隅々まで手を伸ばしたがその手はやはり何も触れる事はない。つまり、透明マントで隠れているハリーはこの場にいないのだ。
──まさか、ハリーはあの場に残った?でも、あの場に居続けても意味がないわ。ロンと合流して一旦魔法省から退却しないと。……まさか、侵入した?……まずいわ。ジャックに私たちは会った。誰も私たちとジャックが共にいた事を知らないけれど、その前にアンブリッジに会ってる。ジャックと私たちの関係がバレたら──。
エレベーターが停止し、2階で止まった。
疲れ切った表情でエレベーターに入ってきたのは
「ロン、私よ。ソフィアよ」
「えっ、あ──そうか、忘れてた!ハーマイオニーとハリーはどうして一緒じゃないんだ?」
「法廷にいるわ。アンブリッジと一緒に。私とハリーはハーマイオニーと合流しようとしたんだけど、法廷には入れなくて──私はね」
硬い声で言うソフィアに、ロンは嫌な予感にごくりと唾を飲む。
「わ、私はってことは……」
「ハリーは透明マントをかぶっているの。だから、多分……メアリー・カターモールが法廷に入るときに忍び込んだんだわ」
「う──うわ、まじで?」
「正義感に溢れているもの、独りで向かうメアリーさんを無視できなかったのね、多分」
ソフィアは大きくため息をつく。ロンは「ハリーならやりかねない」と難しい表情で沈黙した。
「雨は止められたの?」
「あ、えっと。大丈夫だった。僕は無理だったけど、何でかジャックが来て、それで……」
「そう。……もう一度法廷へ行きましょう。4人がバラバラになるのは避けないと、もう時間もあまり残されていないわ。ロンの姿はメアリーさんの夫だから、法廷の外で待っていても不審がられないわ」
「うん、わかった──」
小声で話しているうちにエレベーターが止まり、数名の魔法使いが乗り込んだためソフィアとロンは口を閉ざした。
エレベーターが停止するたびに深刻そうな表情をした魔法使いや魔女が乗り込む。格子が開くまではヒソヒソと話していた彼らは、ソフィアの姿を見た途端貝のように口を閉ざし黙り込んでしまった。気まずい沈黙と緊張感が流れるエレベーター内は居心地が悪かったが、それでも話しかけられてボロが出てしまい本人ではないとバレるよりはマシだと、ソフィアは真っ直ぐに扉を見つめ「話しかけるな」という雰囲気を醸し出し続けた。
最上階に到着したエレベーターは、ソフィアとロンを残したまま再び下降を始める。
3階を過ぎた時、エレベーター内にはソフィアとロンの他に猛獣のような顔つきをした男が二人居たが、彼らは小動物のように背を曲げて不安そうなロンを見てニヤニヤと人の悪い冷やかし笑いを浮かべた。
「ほら、あいつの女は──」「法廷にいねぇってことは見捨てたのか」と囁く声に、ロンは口をぎゅっと閉じ顔色を蒼白にしたまま自分の靴先をじっと見つめた。その姿はひどく情けなく見えたが──不審がられることはない。
その時、エレベーターが到着する前に一瞬ザザッというノイズ音が走り、エレベーター内に居る者は皆顔を上げた。
「──全職員に連絡。重要危険人物発見。パターンA。繰り返す、重要危険人物発見──」
その声は低くエレベーター内に広がり、ソフィアとロンの前にいた二人の男は一気に興奮し早く扉が開かないかとうずうずと体を動かした。
「重要危険人物?パターンAって──」
不穏な空気にロンはつい困惑しながら口を開いたが、目の前の男達に睨まれ慌てて視線を逸らした。
すぐにエレベーターは停止し、格子が開き切るより前にお互い肩を押し合いながら我先にと外へ出た。その先には彼らと同じように目をぎらつかせ足早にどこかへ向かう魔法使いと、不安げに彼らを見つめる魔法使いがいた。誰も乗り込む事なく格子が閉まった途端、ロンは切羽詰まった表情でソフィアを見た。
「まさか、ハリーとハーマイオニーがバレたのか?」
「それならみんな法廷に向かうはずよ。……さっきの放送はジャックの声だったわ。多分、私たちが少しでも逃げやすいようにしてくれたのね」
「ジャックが?」
「説明は後。とにかく、ハリーとハーマイオニーと合流しなきゃ」
ハリーとソフィアがジャックと会い姿を知らせたことを知らないロンは頭に疑問符をたくさん飛ばし困惑していたが、ソフィアの有無を言わさぬ言葉に頷くしかなかった。
ポリジュース薬の効果は1時間であり、残りの時間はかなり少ない。4人が合流できていれば姿が戻る瞬間にハリーの透明マントで隠れる事ができるが、間に合わなければ──どんな酷い目に遭うのか、想像に難くない。
エレベーターが法廷の階で止まり、格子が開く。ソフィアとロンはすぐに出ようとしたが、目の前に立つ魔法使いや魔女の多さに驚愕し立ちすくんだ。
「レッジ!」
集団の先頭にいたメアリー・カターモールが叫び声を上げ、ロンの腕の中に飛び込んだ。ソフィアは一瞬恐怖のあまり打ち震えているのかと思ったが、彼女の言葉には困惑はあれど、微かな喜びや希望が滲み出ていた。
「ランコーンが逃してくれたの。アンブリッジとヤックスリーを襲って。そして、私たち全員が国外に出るべきだって、そう言うの。レッジ、そうした方がいいわ。ほんとにそう思うの。急いで家に帰りましょう。それで、子どもたちを連れて、外国に行きましょう」
「あー──うん」
ロンは困惑していたがとりあえず曖昧に頷き、やんわりと抱きついているメアリーを離した。
エレベーターに乗り込んだ者は皆先ほどまで白い顔をして震えていたマグル生まれであり、ソフィアはメアリーの言葉と、自分たちを護るように悠然と立つ牡鹿とカワウソを見てハリーが何をしたのかを理解した。
こうなってはもう遅い、きっと失神呪文を使ったのだろう。ならば、その魔法が解けてアンブリッジとヤックスリーが目覚める前にここを抜け出すしかない。
「アレは手に入れた?」
ソフィアは覚悟を決め集団を引率するハリーに声をかけた。ハリーはポケットの上からスリザリンのロケットを押さえ強く頷く。
「勿論。ソフィアも、ロンと会えていてよかった」
「後10分もないわ。さっきの放送は聞いたかしら?多分、敵は別のところに集められている。逃げ出すのなら今しかないわ」
「うん。──杖を持っている者は?」
ハリーの声に呆然としていた集団の半数がそろそろと手を上げた。
「よし、杖を持っていない者は、誰か持っている者についていること。迅速に行動するんだ──連中に止められる前に、さあ、行こう」
ハリーとハーマイオニーとソフィアは手分けをして──アリスが自分たちを逃がそうとする様子に、マグル生まれたちは目を見開き動揺していた──全員を二台のエレベーターに乗せた。金の格子が閉まり、上がり始めるとマグル生まれ達は本当に助かるのかもしれない、と微かな希望を目に宿し白い頬に生気が宿り始める。
ソフィアは彼らを見てぐっと奥歯を噛み締める。出来る限り隠密に行動しなければならなかったが、アンブリッジとヤックスリーが異変に気がつけば間違いなく魔法省は侵入者を逃さぬように一時閉鎖されるだろう。その前に、何としてでも──誰が誰に変身しているのか知られる前に逃げ出さねばならない。
「8階。アトリウムでございます」
落ち着いた声が響き、ソフィアは先頭を堂々とした態度で進む。
アトリウムでは来た時と同じように魔法使いが忙しなく歩いていたが、その表情がどこか緊張が孕み不安げなのは、先ほどの放送と関係があるのかもしれない。
1番奥の暖炉では獲物を狙う獰猛な獣のような顔をした魔法使いや魔女達が我先にと外へ向かっていく。与えられた重要な使命を前にして、彼らはソフィア達が逃げ出そうとしていることに全く意識を向けていなかった。
間違いない。ジャックは死喰い人を魔法省から遠ざけ、自分達を逃がそうとしてくれている。行き先はおそらく──ハリーに化けているシリウスの元だろう。シリウスの事を考えると胸が締め付けられるが、今はこの案に乗るしかない。そうするしか、自分たちも、マグル生まれ達も生き残る術はない。
「さあ、行け。2度とここに来るな」
ハリーは低い声で彼らに命じ、彼らは怯え不安そうな表情をしていたが彼らもまたこのチャンスを逃せばアズカバン行きになると分かっていたため慌てて暖炉の前に進み、二人ずつ組んで姿を消した。
「アリス、彼らは──?」
マグル生まれ達がこの場から出ていく様子に、神経質そうな男がおずおずとソフィアに話しかける。ソフィアは内心舌打ちし動揺したが──一度深呼吸をするとその男に向き合った。
「通常業務は一時停止です。私もすぐに向かわねばなりません。あの者達にかける時間はありません。そうでしょう?」
「あ、ああ。勿論、そうだな……」
淡々とした冷たい声に男は怯えたように肩をすくませ、困惑し、遠巻きにソフィア達を見ていた魔法省の職員達の元に戻った。
──何とか、この場を凌げたわ。後少し、彼らが逃げ出した後、私たちもすぐにこの場を離れなければ。
後数人となり、ソフィア達の間に希望が見えたその時──。
「メアリー!」
その声にメアリーが振り向いた。本物のレッジ・カターモールが、げっそりとした青い顔でエレベーターから降りて走ってくるところだった。
ソフィアはレッジを見て硬直し、ハーマイオニーは喉の奥で悲鳴を上げた。──そうだ、彼は体調不良如きで一日休むわけがない、彼の妻が尋問にかけられる日なのだ、少しでも薬の効果が薄まればすぐに戻ってくる。
「レ、レッジ?」
メアリーは、レッジとロンを交互に見た。ロンは顔を歪めると思わず「くそっ!」と低く叫ぶ。この場での本物の登場は、想定外だった。
遠巻きにソフィア達を見ていた魔法省職員達は双子のようにそっくりなレッジとロンを見てあんぐりと口を開け、滑稽な首振り人形のように何度も二人を見比べる。
「おいおい──どうしたっていうんだ、これは──」
「──出口を閉鎖しろ!閉鎖しろ!」
予想外の事態に困惑していた彼らに、鋭い怒号が走った。
ハリーが気絶させていたヤックスリーが憤怒の表情でもう一台のエレベーターから飛び降り、暖炉の脇にいる職員に向かって走ってくるところだった。マグル生まれはレッジとメアリーを除きすでに全員が暖炉の中へ消えていた。
指示された職員が反射的に杖を上げたが、ハリーは巨大な拳を振り上げその体を強く殴り吹っ飛ばす。
「
ソフィアは辺りに白い霧を出現させ、ヤックスリーや職員が騒ぎ出している間に困惑しているメアリーとレッジの腕を掴み無理矢理暖炉の中に押し込み小声で叫んだ。
「──逃げてください!」
「い、一体──」
「ああ、レッジ、私わけがわからないわ──」
「早く!」
ソフィアの叫びに、メアリーとレッジは困惑していたがしっかりと互いの手を掴み暖炉の緑色の火に飲まれ消えた。
「来るんだ!」
ハリーはソフィア達に向かって叫び、ソフィアはその声のする方へ飛び込みしっかりとハリーの腕を掴んだ。ハーマイオニーもまたロンの手を掴むと混乱しながらも暖炉を閉鎖しようとしていた魔法省職員に失神呪文を放ち昏倒させ、そのまま暖炉に飛び込む。
ハリーとソフィアは数秒間くるくると回転し、トイレの小部屋に吐き出された。すぐに立ち上がりハリーがパッと戸を開けると、ロンとハーマイオニーも少し遅れて隣の小部屋から飛び出す。
4人の視線が絡み、一瞬、逃げ出せた安堵から気を緩ませてしまったその時、ソフィア達の後ろの小部屋で音がした。
弾かれるように振り返れば、ヤックスリーが獰猛に目を輝かせ現れたところだった。杖を持つ腕が上がる──。
「行くわよ!」
叫ぶや否や、ソフィアはハリーとロンの手を握り、ロンとハーマイオニーがしっかり手を握り合っているのを確認し、その場で姿くらましをした。
四人を暗闇が飲み込み、体が締め付けられているような感覚。
ハリーは何かがおかしい、と直感した。握っているソフィアの手が徐々に離れていく。ハリーは窒息するのではないかと思うほどの圧迫感にもがきながら、何も見えない、息もできない中でただソフィアの手の強さだけを感じていたが、その手もゆっくりと離れていく──。
その時ハリーの目にソフィアの家と周りの森が見えた。到着した。息を吸い込む前に、悲鳴が聞こえ紫の閃光が走る。
何が起こったのかわからない中、ソフィアの手が突然ハリーの手を痛いほど強く握り、全てがまた暗闇に戻った。