【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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408 次の場所は?

 

 

満たされた胃は意気を高め、空っぽの胃は言い争いと憂鬱をもたらす。

ダーズリー家で過ごしていた時に何度も餓死寸前の時期を経験していたハリーにとってこれは驚くべき発見ではなかったが、今まで経験したことの無かったソフィアとハーマイオニーとロンにとっては初めての驚くべき経験だった。

 

毎日毎食十分な食事にありつけることは無く、ベリーや少量の備蓄缶しかない日も多い。ハーマイオニーはいつもより少し短気になったり、気難しい顔で黙り込む事が多くなり、ソフィアもまたいつもの明るい笑顔は控えめになりぼんやりとしている事が増えた。

2人は空腹ゆえの苛立ちを感じてもぐっと堪えて紅茶や水を飲み、なんとか空腹を誤魔化し自制していたが──ロンは別だった。

 

ロンは空腹だとわがままになり、怒りっぽくなってしまったのだ。さらに食べ物のない時と分霊箱を持つ順番が重なると、ロンは思いきり──彼らにとって──嫌なやつになった。

 

 

「それで、次はどこ?」

 

 

そうロンは口癖のように何度も聞いた。自分自身の考えは持たないが、食糧の少なさに悩んでいる間にソフィアとハリーとハーマイオニーが計画を立ててくれていると期待しているのだ。

3人はどこに行けば分霊箱を見つけられるのかと結論の出ない話し合いに何時間も費やす事になったが、新しい情報がなかなか入ってこない状況では、3人の会話は次第に堂々巡りになっていた。

 

ダンブルドアがハリーに、分霊箱の隠し場所はヴォルデモートにとって重要な場所に違いないと教えた事もあり、話し合いではヴォルデモートが住んでいたか訪れた事がわかっている場所の名前を繰り返し発言し、何度も推測した。

ヴォルデモートが生まれた孤児院、知識を得たホグワーツ、勤めたボージン・アンド・バークス、亡命したアルバニア──しかし、どれも決め手に欠けていた。

 

 

「そうだ、アルバニアに行こうぜ。国中を探し回るのに、午後半日あれば大丈夫さ」

 

 

古い肘掛け椅子に座り、足を投げ出しながらロンは皮肉を込めて言った。

 

 

「そこには何もあるはずがないの。国外に逃れる前に、すでに五つも分霊箱を作っていたんですもの。それにダンブルドアは六つ目はあの蛇に違いないと考えていたのよ。あの蛇がアルバニアにいないことはわかっているわ。だいたいいつもヴォル──」

「それを言うのはやめてくれって言っただろ?」

 

 

説明していたハーマイオニーの言葉を遮り、ロンが必要以上に大きな声で口を挟む。確かにヴォルデモートの名前は不吉でありその名前を告げることを控えていたが──ロンは今まで以上に異常なほど反応し、苛立ちを隠すことなく咎めた。

ハーマイオニーはつい口が滑ってしまっただけなのにそんなキツく言わなくてもいいじゃないか。と思ったが、なんとかその文句を飲み込んだ。ロンの首には金色の鎖がかかり、昨日の食事も薄いトースト一枚、たったそれだけだったのだ。下手に刺激すると爆発するのは目に見えていた。

 

 

「わかったわ!蛇は大体いつも例のあの人と一緒にいる。──これで満足?」

 

 

しかし、ハーマイオニーとて聖人ではない。空腹であり緊張と不安から余裕がないのは彼女も同じだ。睨みながら言うハーマイオニーに、ロンは「べつに」と素っ気なく返して後頭部で手を組みため息をついた。

 

 

「──ボージン・アンド・バークスにも無いと思うわ。だってあそこの店主は闇の魔術の品の専門家だし、誰かの手に渡る可能性があるもの。命と同じ大切なものを置いておかないわよ」

 

 

ソフィアはハーマイオニーとロンの間に漂う嫌な雰囲気に気付いていたが、あえて指摘はせず今まで何度も討論した事を口にした。新しい発見ではない事は重々承知であり──ロンはわざとらしく欠伸をした。

 

 

「僕は、やっぱり、あいつはホグワーツに何か隠したんじゃないかと思う」

「その可能性もゼロでは無いわね」

「でも、それならダンブルドアが見つけているんじゃない?」

「ほら、ダンブルドア先生は秘密の部屋も知らなかったわけでしょう?ダンブルドア先生は偉大な人だけれど、ホグワーツの全てを知っているわけじゃないわ」

 

 

ここ数日の間、ハリーとハーマイオニーとソフィアの間で議論され続けているのはホグワーツに分霊箱があるかどうか、という点だった。ハリーは直感的に間違いないと思っているが、ハーマイオニーは否定的であり、ソフィアは可能性はなくは無い。という中立の立場だった。

 

 

「そうだよ。ダンブルドアが僕の前で言ったんだ。ホグワーツの秘密を全て知っているなどと思ったことはないって。はっきり言うけど、もしどこかもう一ヶ所、ヴォル──」

「おっと!」

「──例のあの人だよ!」

 

 

ロンに言葉を遮られ、ハリーは今までのロンの横暴な態度に我慢の限界が近く大声で叫んだ。ハリーもまた、次の分霊箱の居場所が全くわからない状況に焦燥し、苛立っているのだ。

 

 

「もしどこか一ヶ所、例のあの人にとって本当に大切な場所があるとすれば、それはホグワーツだ!」

「おい、いい加減にしろよ。学校がか?」

「ああ、学校がだ!あいつにとって、学校は初めての本当の家庭だった。自分が特別だって事を意味する場所だったし、あいつにとって全てだった。学校を卒業してからだって──」

「僕たちが話しているのは、例のあの人の事だよな?君のことじゃないだろう?」

 

 

ロンは首にかけられている金の鎖を引っ張りながら嘲笑する。ハリーは衝動的にその鎖でロンの首を絞めたくなったが、その代わりに自分の手のひらに爪を食い込ませ必死に耐えた。駄目だ、ロンがこうなっているのは分霊箱と、空腹のせいだ。もともとロンは──去年嫌と言うほどわかったのだが──ストレスに弱い。

 

 

「例のあの人が、卒業後にダンブルドアに就職を頼みにきたって話、してくれたわよね?」

 

 

ソフィアは彼らの意識を自分に持って来させるために、いつもより大きな声で言う。

ロンは不満げにそっぽを向き、ハリーは一度深呼吸をして心を沈めてからソフィアと向かい合った。

 

 

「そうだよ」

「あの人が戻ってきたいって考えたのは何かを見つけるためで、創設者ゆかりのものを探すためだった。とダンブルドア先生は思っていたのよね?」

「うん」

「でも、就職はできなかった。だから分霊箱はホグワーツに無い。というのがハーマイオニーの意見よね?」

「ええ、そうよ」

 

 

ソフィアとハーマイオニーとハリーは何度も話し合っていた。ここで話は途絶え、ハリーはホグワーツに分霊箱がない可能性をチラリと考える事になるのだが、一度脳を占めた考えを無かった事にはできないのだ。

 

 

「でも──例えば──」

 

 

いつもならここで議論は平行線をたどり、終了していたが、ソフィアは答えを求めるようにじっとロンの首にかかっている金の鎖を見る。ハリーとハーマイオニーはソフィアが新しい案を出してくれる事を期待して身を乗り出したが、ロンは興味なさそうに意味もなく爪の間に挟まった泥を弄っていた。

 

 

「──例えば、もうすでに創設者ゆかりの品を分霊箱にして持っていたら?」

「え?でも、それなら何を探しにきたんだ?」

「創設者の品は四つあるわ。スリザリン、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー……あの人はその時間違いなくスリザリンとハッフルパフの品は持っていた。だから──分霊箱をホグワーツに隠すことと、レイブンクローかグリフィンドールの品を探し出す事を同時にしたかったのだとしたら?」

「あっ──その可能性も、確かにあるわ!」

 

 

まさに青天の霹靂、というようにハーマイオニーが叫び口を押さえた。

今まで、学校で働きたかったのは創設者ゆかりの品を探すためだと思っていた。ダンブルドアがそう考えていたからだ。しかし、それだけではなく──()()()()()()()()()()()可能性を否定できない。

 

 

「例えば、就職してグリフィンドールの剣の存在を知って、探し出し手に入れようとしていたけれど、ダンブルドア先生に拒否されてしまった。でもホグワーツを訪れることはできた。だからその時にハッフルパフか……どこかで手に入れたレイブンクローの物を隠した可能性はあるわ」

「ハッフルパフはカップよね。レイブンクローは……何かしら……ああっ!ホグワーツの図書館ならレイブンクローについてもっと調べられたかもしれないのに!」

 

 

ハーマイオニーは焦ったそうに叫ぶ。

何度か透明マントを被り魔法界の図書館に行き創設者ゆかりの品が何なのか探した事あった。しかし、それも限られた時間であり、吸魂鬼や魔法省の職員、死喰い人の気配があればすぐに退散しなければならない。

今のところ、有効な情報は全く得られていなかった。

それでもハリーは今まで何日も堂々巡りだった討論に別の考えが出たことは明るい兆しだと前向きに捉える。

ソフィアの考えに信憑性があるわけではないが、結局のところそれは誰の意見でも同じだ。ならば、可能性を潰すためにホグワーツ中を探さねばならない。

 

しかしホグワーツには味方もいるが敵もいる。簡単に侵入する事は不可能であり、とりあえず後回しにして別の場所を探す方が効率がいいということになり、ハリー達はロンドンに行き透明マントに隠れてヴォルデモートが育った孤児院を探したが、孤児院は何年も前に取り壊されていたようで、その場所には新たにオフィスビルが建っていた。

 

孤児院跡地を前にしてハリーは「ここには無い」と強く思う。ヴォルデモートにとって孤児院出身でありマグルの世界で過ごしていたと言う事は捨て去りたい屈辱的な過去のはず。ならば、そんな場所に大切な魂の一部を隠したりはしないだろう。

ダンブルドアは、ヴォルデモートが隠し場所に栄光と神秘を求めたと言っていた。──こんな場所、あいつは自分にふさわしくないと思ったに違いない。いや、孤児院のことなど、一切思い出さなかっただろう。

 

 

 

他に新しい事も思いつかないまま、ソフィア達は安全のために毎晩場所を変えてテントを張りながら地方を巡り続けた。

時々ソフィアがアニメーガスになり、ゴミ箱に捨てられていた日刊預言者新聞を手に入れる事でしか周囲の状況を知る事は出来なかった。新聞に家族や親しい者の死が書かれていないか、騎士団は、ホグワーツはどうなったのか──ソフィア達は新聞の隅々まで読み込んだが、吉報も凶報も無かった。ただ、淡々とした文章でマグル生まれが捕まり尋問されている、と書かれているだけだ。時たまハリー・ポッター発見か?という記事があるが、捕まったとは書かれていなかった。

 

ハリーは見張りの時に、そっと両面鏡を取り出し「シリウス・ブラック」と声をかけたが──反応はない。稀に何かが見える気がしたが、きっと月の光が反射した目の錯覚だろう。

 

シリウスは姿を変えハリー・ポッターとして敵を撹乱し続けている。

鏡は隠れ穴に忘れてしまったと言っていたし、隠れ穴は魔法省の職員の見張りがあるはずだ。きっと、取りに行くタイミングが無くて手元にないんだろう。──ハリーは鏡から返事がない事をそう結論付けて、不安な気持ちはあったが表情には出さなかった。

 

 

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