【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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41 敵の内部に殴り込み!

 

 

ルイスはソフィアから、父とクィレルが密会し──父がクィレルを問い詰めている場面のことを聞いた。

 

クィレルの事を探る。

そうソフィアに伝えたものの、さてどうするかと思案した。

 

 

「もっと早くに手を出してくると思ったんだけどなぁ…」

 

 

トロールでの一件。

クィディッチでの一件。

その二つを邪魔した自分がさぞ鬱陶しいだろうと思い、きっと排除するために何らかしらの接触を仕掛けてくると思っていた。

自分を囮にして、何か証拠を掴みたい。そう思っていたがクィレルはルイスに何も反応は示さなかった。

 

近頃、クィレルの顔色はどんどん青白くなり目は窪んでいる、病んでいるかのような形相に、何人かがひそひそと噂を話していた。なんでも「吸血鬼が近づいている」らしい。それは定かではないが、クィレルの体調が頗る悪いのは事実だった。

 

 

──ちょっと、仕掛けてみるか。

 

 

「クィレル先生?いますか?」

 

 

ルイスは闇の魔術に対する防衛術の教室の前に来ていた。トントンと扉をノックするが返事はない。

 

 

「クィレル先生?」

 

 

もう一度叩き、声をかけるがやはり返事はなく。ルイスはゆっくりとドアを開けた。

むせ返るようなニンニクと香草の臭いが鼻をつく。この臭いはいつまで経っても慣れることのない。

 

一応、手には闇の魔術に対する防衛術の教科書を持ってきている。もしここにいる事が責められても、質問があり、探していたと言えば良いだけだ。

 

 

「クィレル先生?いらっしゃいませんか?」

 

 

一応、ルイスは探しているという建前を守るべく小さな声でクィレルの名を呼んだ。

やはり、部屋の中にはいない。だとすれば奥の研究室か、それとも職員室だろうか?

 

ルイスはそっと奥にある扉に近づく。

手を上げて扉を開けてノックしようとしたが、奥で何か物音が聞こえた。

手を止め、そっと扉に耳をつける。

 

 

「──だめ、だめ、です。そんな──まだ──まだ、今は──どうか──お願いします──」

 

 

誰かと話しているクィレルの声は、酷く怯え、今にも叫び泣きそうな恐怖が滲んでいた。まさか、ここに誰かいる?クィレル以外の、黒幕が、今ここに──?

 

 

ルイスはごくりと唾を飲み、悩むように顎を少し撫でたが、さっと扉から数メートル離れるとわざとらしく足音を立てて扉に近づいた。

 

 

「クィレル先生!いませんか?質問があるんです失礼します!」

 

 

ルイスは一言でそう言い、扉に手をかけた。この扉に鍵穴は見当たらなかったが、ドアノブをいくら回してもガチャガチャとなるだけで開くことはない。──閉ざされている、それに、これは鍵ではない。魔法で、念入りに──。

 

 

「クィレル先生!扉をしめてどうしたんですか?」

「ミッミミミスター・プリンス、わ、わたしはい、いい今忙しくて後にして、く、ください」

 

 

扉の向こうからくぐもり、いつものようなどもり混じりの声が聞こえてきた。何としてでもこの先に入る、クィレルと話している相手が誰なのか知りたい。

ルイスは杖を出し、鋭く唱えた。

 

 

アロホモラ・デュオ(扉よ 強く開け)!」

 

 

ルイスは扉が開いたのを確認し、そのままドアノブを捻り中に飛び込んだ。

その研究室もまた、酷い臭いが立ち込めていた。ただ、ニンニクと香草の臭いだけではない、何処か酷く甘く、胸がつっかえるような重い臭いがした。

それ程広い部屋ではなかった。壁一面に書棚があり本が収められている。真ん中にぽつんと机があり、机の後ろに大きな姿見の鏡がある。ただ、それだけの質素な研究室だった。──研究なんて、何もしていないのだろうことは一目でわかった。

 

ルイスは素早く部屋の中を見たが、クィレル以外誰もいなかった。

そんな、まさか──この部屋には暖炉もない、窓もない。どこに行ったんだ。

 

 

驚愕で目を見開くクィレルは乱れたターバンを手で押さえた。慌てて巻いたのか、そのターバンは半分解けている。 

 

 

「プリンス…き、君は…」

「クィレル先生、ターバン解けてますよ?巻くの手伝いますね」

 

 

執拗なまでにターバンに触れられるのも、解かれるのも拒絶するクィレルのターバンに近づくチャンスに、ルイスは強引かと思ったがーーいや、もういい、ここまで来たのだ何かを掴んで帰りたい──ニコニコと人のいい笑顔を浮かべ、全く他意は無いですと表情を取り繕いクィレルに近づいた。

 

 

「来るなっ!」

 

 

その悲鳴にも似たその声は、いつものクィレルとは違うハッキリとした鋭い声だった。

 

 

「クィレル先生?…どうしました?」

「──…ミ、ミスター・プリンス…こ、このターバンは…大切なものなんです、触られたく、あ、ありません」

 

 

しかし、次の言葉はいつものように、おどおどと神経質そうな、怯えているような声だった。だが、ルイスを見る目だけはいつもとは違った。

いつもならクィレルはルイスをちらちらと見るか、視線を一切合わせない。だが今、クィレルの視線は強く、ルイスを射抜いていた。

 

 

──目は口ほどに物を言う、って何かの本で書いてあったな。

 

 

きっと、何か聞かれたのかと探っているのだ、だからあんな探り疑う目をしている。

 

 

──これでいい。

 

 

ルイスは内心で嗤う。このまま自分を疑っているんじゃないかという疑念を持ち過ごしてほしい、そうすれば精神は間違いなくすり減り、何処かでボロが出るかもしれない。

 

 

「ミスター・プリンス…勝手に、は、入ってはいけません」

「…扉が開かなかったもので、つい。──だってこの扉、鍵穴がないのに、扉が開かなくて、何かあったのかと…最近覚えた魔法を試してしまいました」

「…スリザリン5点減点です。きょ、教師の部屋は、危険な物が…あ、あります」

「はーい、ごめんなさい」

 

 

クィレルは鏡を見る事なく慣れた手つきでターバンを巻き直し、ルイスから一度視線を外し足元を見つめ、もう一度目を上げた時にはいつものような怯える目に戻っていた。

 

 

「そ、それで…なんの、よ、ようですか?」

「ああ、分からないことがあって、聞きに来たんです」

「…ど、どこですか?」

「ここです」

 

 

普段のように戻ったのなら仕方がない、きっともう探ることは出来ない。ルイスは内心ため息をつき、言い訳として持ってきていた教科書を開いた。

 

 

──まぁ、この教科書にトラップは仕掛けてあるけど。

 

 

 

「吸血鬼についてなんですけど、いいですか?」

「え、ええ…」

「吸血鬼の弱点を教えてくれませんか?」

「…?…そ、その本にも乗っているように…ニンニク…日光…銀のナイフ…ロザリオ…聖水…です」

「そうですよね。…──だからわからないんです…」

 

 

ルイスは深く頷き、パタンと教科書を閉じる。

そして、おどおどとするクィレルを見上げた。

 

 

「吸血鬼なんて、弱点の多い生き物の…何が怖くて、貴方はそこまで怯え恐れているんですか?…少なくとも、2年前は違いました。あなたは吸血鬼に会ったからだと言いました。…本当に?吸血鬼なんて…僕でも駆除の方法を知っていれば恐れることはありません」

 

 

クィレルは目を見開いた。

 

 

「…そ、それは…襲われた時の、き、記憶が…と、トラウマに…弱点が多いのは、わ、わかってます、それでも…こ、怖くて…」

 

 

ガタガタと震えるクィレルは、確かに恐れているように見えた。

ルイスはその答えを聞いて、納得したように深く頷くが、すぐにまた首を傾げ目を細めた。

 

 

「なるほど、トラウマですか。…なら、クィレル先生は何で…闇の魔術に対する防衛術を担当したんですか?自ら希望したと聞きました…元のマグル学の方が…あなたのトラウマを刺激しなくて済むのでは?」

「──っ!…」

 

 

クィレルは何度か口を開き、そして閉じた。

ルイスは何も言わずに笑ったままクィレルを見上げる。

 

 

「き…君は…」

「…さて、僕を納得させることができる…回答はありますか?」

「そ、それは……、…」

「…ああ、もう次の授業が始まりますね…失礼します」

 

 

口をつぐみぶるぶると震えるクィレルに、ルイスはあえて背を向けた。攻撃をするならすればいい、それを証拠としてダンブルドアに突き出してやる。

だがクィレルは何もせず、何も言わず、悔しそうな目でルイスを見つめた。

 

 

「…ああ、そうだ。…僕、スネイプ先生のお気に入りなんですよ、…知ってました?」

 

 

扉から出るときに、そうルイスは牽制し、目を見開くクィレルの驚愕の顔をしっかりと見て目を細め、部屋から出て行った。

 

 

残されたクィレルはぐっと拳を握り、怒りから震えていたが急にびくりと肩を震わせると胸の前に、まるで自分を守るように手を上げた。

 

「あ…あのこは…た、ただの生徒、です──。は、はい、わ、わかりました…し、調べます…!」

 

 

がたがたと震えながら見えない誰かに何度も頭を下げ、クィレルはそう答えた。

 

 

 

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