【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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411 襲撃!

 

 

それからは長い沈黙が続いた。次に彼らが話し出したのはこのまま川岸で寝るか、それとも木の茂った斜面まで戻るかという話し合いであり、悩んだ挙句彼らは木がある方が身を隠しやすいと決め、焚き火を消して再び斜面を登って行った。

話し声や、足音は次第に離れていき、ついに消えた。

 

 

ハリー、ロン、ハーマイオニー、ソフィアは伸び耳を巻き取りながらじっと顔を見合わせた。

 

 

「何──何が──ジニーは──剣──」

 

 

ロンは蒼白な顔で必死に今聞いたことを討論しようと思ったが、口から溢れ出るのはその単語だけだった。

ハーマイオニーは一度大きく深呼吸し冷静になると、ロンの背中を強めにばしん、と叩く。その音の大きさにハリーとソフィアは驚いて身を引き、ロンは痛そうにうめいた。

 

 

「落ち着いて、ロン。スネイプ先生は味方なのよ?もしかして、ジニーはスネイプ先生に頼まれて剣をどこかに持って行こうとしたんじゃないかしら?」

 

 

ハーマイオニーは早口で言うとぐっと眉を寄せ、ぶつぶつと喉の奥で自問自答を繰り返す。じんじんとする痛みに、ロンは背中をさすりながら口を尖らせ「叩かなくてもいいじゃないか…」と呟くが、いつもの嫌味が出てこないのは、きっとパニックが収まりつつあるからだろう。

 

 

「もしかして──私たちのところに?」

 

 

わざわざ剣を別の場所に移す理由がわからず、ソフィアはふと思いつきで呟いたがハーマイオニーは難しい顔で黙り込んだままであり、ロンは首を捻り苦い顔をした。

 

 

「そうだとしても、ジニーにそんな事させるなんて……危険すぎないか?」

「ジニーはグリフィンドールの剣がハリーに遺贈されたって知っているわ。もしかして、それで自分の意思で、ハリーに届けようとしたとか……?」

「うーん……」

 

 

ハーマイオニーは自分でもこの思いつきに穴があるとわかっているのか、自信なく呟きハリーを見る。ハリーも今聞いたことを何度も反芻し考えたが、あの情報だけでは全てを理解するには何かピースが足りない。

 

 

「そもそも、剣は偽物だったんだ。なんでダンブルドアはそんなものを飾っていたんだろう。僕が組分け帽子から引き抜いた時から偽物だったのかな?」

 

 

ソフィアとハーマイオニーの顔を交互に見ながらハリーが首を傾げる。ジニーが何故剣を盗もうとしたのか、それは策略だったのかと考えていた彼女たちは目を瞬き、「あっ」と小さく声を上げ、顔を見合わせる。

 

 

「ダンブルドア先生が偽物だと気付かないとは思えないわ」

「グリフィンドールの剣は、バジリスクを殺した……小鬼製の剣は自らを強化するもののみを吸収する。もしかして、バジリスクの毒 もそうなら──」

 

 

ハーマイオニーとソフィアは自分たちの思いつきが、ただの突拍子もない考えだとは思わなかった。じわじわと胸に広がる緩やかな興奮を必死に押さえつけながら、二人は相手の目に映る自分の姿をじっと見つめた。

 

 

「グリフィンドールの剣は分霊箱を破壊することができるわ!きっとダンブルドアは分霊箱をそれで一つ壊したのよ!」

「すぐにハリーに剣を渡さなかったのは、手に入れる予定だったスリザリンのロケットを壊す必要があったからだわ。目の前で壊し方を見せるつもりだった。けれど、ダンブルドア先生の予想よりも早くドラコとルイスが死喰い人を呼んでしまって、伝えられなかった──」

「もしそうなら、一定の時まで剣は本物だったはずよ。でも偽物なのは──魔法省が難癖をつけてグリフィンドールの剣を渡さないと思ったから、ダンブルドア本人が偽物を作ったのね。校長室に入ることができる人は限られているもの」

「問題はそれを父様が知っているのか──言うタイミングがなくて、ダンブルドア先生の独断なのか──」

「──そうだわ!ジニーの動きを考えると、スネイプ先生も本物だと思っていた可能性がある!」

「──だから、父様は自分が裏切り者ではないと知っているジニーに剣を託した?」

「なら、私たちが考えないといけないのは、ダンブルドアがどこに本物を隠したのか──」

 

 

ソフィアとハーマイオニーはじっと見つめ合う。互いの瞳の奥に答えが隠れているのではないかと思ったのだ。

やはりヒントはあるのだ。むしろ──ダンブルドアが剣を遺贈しようとした時に、グリフィンドールの剣は分霊箱を破壊できると気づかなければならなかった。もっと本を深く読み込んでいれば、グリフィンドールの剣は小鬼製であり、その稀有な特徴についても知っていただろう。ダンブルドアは、きっと自分たちがそう気付くことを期待していたのだ。

 

2人は今まで知っている情報の中に他にも何か重要な事が隠されているのではないかという気がした。ダンブルドアは、ハリーに分霊箱を探す旅をさせ、それに自分たちが着いてくることを確信していただろう。ダンブルドアが何もヒントもなくハリーと自分たちを放り出すとは思えない。

 

じっと見つめあったソフィアとハーマイオニーを、ロンとハリーはただ見ていた。彼女たちほど頭の回転が速くないロンとハリーは、口を突っ込みたい事や疑問点はたくさんあったが──今話しかけるべきではないのだろう、と理解していた。

 

 

「考えて!考えるの、ダンブルドアはどこに剣を隠した?」

「ホグワーツじゃないわね。ホグワーツの次に護りが硬いところは──」

「グリンゴッツ!──でも、死喰い人の手に落ちているわ。ダンブルドアはそれも予想していたはず──」

「敵にはわからない──きっと、ハリーと私たちだけにわかるようなところ──ハリー、どう思う?」

 

 

ソフィアはハリーに視線を移した。強い目で射抜かれ、どきりとしながらハリーも懸命に考えたが──これといった案は出てこない。

 

 

「僕──その、わからない」

「ロンは?」

 

 

ハリーが残念そうに首を振ったのを見てハーマイオニーは一瞬落胆の表情を見せたが、すぐに気を取り直し「ロン、どう思う?」と話題をロンに振った。

 

 

「君たちでわからない事が僕にわかるわけないだろ?」

「思考を停止するのはダメよ!みんなで考えなきゃ!」

「事実さ」

 

 

投げやりなロンの言葉にハーマイオニーはすぐに目を吊り上げ言い返そうとしたが、その首に金の鎖がかかっているのを見てぐっと言葉を飲み込み、代わりに大きなため息を吐き出した。

 

 

「──ほら、次はあなたが持つ番よ、ソフィア」

「ええ、わかったわ」

 

 

ソフィアはちらりと時計を見て──分霊箱を持つまでには後30分ほどの猶予があることを知ったが何も言わずに頷く。ロンは時間に気付いているのかいないのか、嬉々として鎖に手をかけ外すとソフィアに向かって投げ渡した。

いきなり投げ渡されたソフィアは、慌てて身を乗り出し何とか空中でロケットを掴み、ほっと胸を撫で下ろし首にかけた。

嫌な事だが──大切なものである分霊箱の扱いに、ハリーはカッとしてロンを睨む。

 

 

「──おい!」

「なんだよ」

「危ないだろ?もし落ちたら──」

「落ちて壊れたらラッキーさ!だろ?」

 

 

大した事じゃないとばかりに肩をすくめるロンに、ハリーは怒りに任せて立ち上がり詰め寄ったが、すぐにハーマイオニーとソフィアが慌てて駆け寄り二人を引き離した。

 

 

「落ち着いて!──ロンは分霊箱の影響を受けていたのよ、ハリー」

「そうだとしても──」

「そうだとしても、この扱いは確かに許されないわね。ロン、あなたも手に持っていたものがなんなのか理解していたらそんな扱いは出来ないはずよ。それに、自分たちが今まで過ごしてきた日々にヒントがないのかちゃんと考えなきゃだめよ!」

 

 

ハーマイオニーとソフィアに諌められ、ハリーとロンは互いに顔を歪め睨み合っていたが──数秒後にロンがパッと視線を外し、自分の腕を掴んでいるハーマイオニーの手を振り解きながらどしんと椅子に座り込み、暗い目で嘲笑し、ソフィアを見上げた。──そのあまりの目の暗さに、どきりと嫌に心がざわつく。

 

 

「ああ、そうだな。ちゃんと考えなきゃな。えーと。なんでこんな事になったのか、()()()()()()()()()も考えないと──」

「ロン!!」

 

 

ロンの言葉を聞いた途端、ハーマイオニーとハリーが叫ぶ。

口を閉ざし黙り込んだロンを睨んだ後、ソフィアを心配しながら振り返り──そして目を見開き蒼白な顔で凍りついているソフィアの顔を見た。

その大きな目は今にもこぼれ落ちそうなほどの涙が溜まっている。

一瞬の沈黙がテントの中に広がり、ハリーは初めてテントに打ちつける雨音がこんなにも激しくなっているのだと気付いた。

 

 

「わ──」

 

 

唇を震わせ、ソフィアは一歩後ろに下がる。

 

 

「──わかってるわよ。誰が悪いかって?そんなの──ルイスと、と、父様が悪いって──私たちは──私たちの家族は、きっと、何年も前に間違ってしまって──だから、これは罪で──」

「ソフィア──」

「だから私は、家族の罪を償うために──ヴォルデモートを倒すために犠牲にならなくちゃ──」

 

 

震えながら呟いたソフィアは、ハッとして口を手で押さえた。

ロンの鋭い指摘と、そして分霊箱による不安感からつい口に出してしまったが、このことは誰にも言わず胸に秘めていようと思っていた。きっと知れば──嬉しいことに──みんなが悲しんでくれるから、止めてくれるから。それに甘えてしまいたくなるから、言うつもりは無かった。

 

 

「ソフィア、あなた、まさか死ぬつもりじゃ──」

「駄目だ!そんなの──そんなの、僕は許さない!」

 

 

ハーマイオニーとハリーはソフィアと同じように顔を青くさせソフィアに詰め寄る。ハリーはソフィアに腕を伸ばしたが、ソフィアは身を引くと唇を噛み締めながらゆるゆると首を振った。

今まで秘めていた思いは、一度言葉に出してしまえば呪いのように自身を蝕んでいく──ソフィアは、自分の心が、思考が、徐々に冷えていくのを感じた。

 

 

「た、沢山の人が犠牲になったわ──ダンブルドア先生も、ムーディも、私が知らないだけで、沢山の人が死んでしまって。──そ、それで──」

「違うわ!悪いのはヴォルデモートよ!あなたも、あなたの家族も犠牲者なのよ!」

 

 

テントの入り口までソフィアは下がり、弱々しく首を振る。

ハリーとハーマイオニーはソフィアの内に秘めていた心の不安定な部分にもっと寄り添うべきだったと後悔した。

──ソフィアは誰よりも強く、優しい。だから甘えていた。だけど、ソフィアは自分たちと同じ歳の女性なのだ。

 

 

ロンは椅子に座ったまま、口を尖らせ気まずそうに視線を落とした。いつも冷静なソフィアが、何故か無性に気に食わなかったのだ。

誰も何も言わないが全ての歪みを生み出したのはセブルス・スネイプの言動ではないかと思っていて、つい、わざとソフィアを傷付けるために言ったがここまで狼狽えるとは思っていなかった。

少しは傷付くだろうがすぐに冷静になって気にしないだろうと思っていた──そんなに、思い詰めていたなんて。

 

──悪いのはヴォルデモートだ、ソフィアの家族はハーマイオニーが言うように被害者だって、僕だって本当はわかってる。

 

 

分霊箱の効果が体から抜けてきたのか、冷静さを取り戻したロンは何故自分があれほど苛立ち誰かを傷つけたくてたまらなくなったのかわからず──気まずさを感じながら謝ろうと、椅子から腰を上げた。

 

 

「ソフィア──」

 

 

──ごめん、言い過ぎた。僕だって本当はわかってるんだ。ただ、家族のことが気になって、死ぬんじゃないかって不安でどうしようもなくて……──ロンはそう言おうとしたが、続きの言葉は突如鼓膜を震わせた轟音とかくれん防止器のギラギラとした光、外からの衝撃によって掻き消された。

 

 

 

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