【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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421 同じ考え!

 

 

破壊された分霊箱の破片はハリーが持つ巾着袋の中に入れた。なんとなく、このまま森の片隅に無造作に捨て置く事はできなかったのだ。

 

精神的に疲弊したロンはハーマイオニーに支えられながらテントに戻り、体に残っていた空気を全て吐き出すかのような大きなため息をつきベッドに座り込んだ。

 

ソフィアは人数分の紅茶を入れ、鞄の中から少しだけ残っていたヌガーを出し机の上に置いた。柔らかな紅茶の匂いと、甘いヌガーによりようやく彼らは一息つくことができ、数日ぶりに心から落ち着いた。

ソフィアもハリーも──そしてロンとハーマイオニーも──口には出さなかったが、二人きりになってしまってから体の半身がなくなってしまったかのような虚無感と言いようの無い心の痛みを感じていたのだ。

ようやく、四人が揃うことができた。それは間違いなく彼らにとってこれ以上のない力を生み出すだろう。

 

ソフィアとハリーは二人が落ち着いたのを見て二人と別れてから自分たちがどこに向かったのか、なぜハリーの杖が折れてしまったのかを簡潔に話した。ロンとハーマイオニーは息を呑んだり顔を蒼白にしたりしたが、余計な口を挟むことなくじっと聞き入り、最後に「よく生きてたなぁ」とロンがしみじみと呟き、ハーマイオニーは「本当に、無事でよかったわ」と涙ぐみながら言いソフィアの手を握った。

 

 

「でも、あの銀の狐は誰の守護霊なのかしら」

「うーん。多分、父様だと思うの。父様の守護霊は狐なの。ジャックもだけれど……本物のグリフィンドールの剣の場所を、きっとダンブルドア先生から聞いていたんだわ。でも、ホグワーツには死喰い人がたくさんいるし簡単には渡せなかったのね……ちょうどクリスマス休暇だし、ホグワーツも人が少なくなっているでしょう?隙を見て持ってきたのよ」

「でも、どうやって?守護霊は物は運べないわ」

「うーん……それは、わからないのよね……どうやって居場所がわかったのか……」

 

 

本物のグリフィンドールの剣がここにあるという事は、ソフィアの言う通りにセブルス・スネイプが持ってきたのかもしれない。だが、なぜこの居場所がわかったのだろうか?

ソフィアも難しい顔をして黙り込んでいたが、ふと顔を上げハーマイオニーを見た。

 

 

「ハーマイオニー、死喰い人があの時護りを破って奇襲した理由がわかったって本当なの?もしかして、父様も──何か、死喰い人だけが知っている方法を使ったのかもしれないって思ったんだけれど」

 

 

ソフィアは死喰い人が自分達の居場所がわかったように、セブルスも何かの魔法を使って自分の居場所を突き止めたのだと考えていた。自分達には想像もできない魔法があるということは、この身を持って痛いほど理解している。

 

 

「ああ、実はね。禁句があるの。例のあの人の名前よ。その名前には呪いがかかっていて、それで追跡できるようになっているの。その名前を呼ぶと魔法の乱れを引き起こして保護呪文が破れてしまうのよ」

「よくやるよな。敵ながら良い案だよ。あの人に対して真剣に対抗しようと思う者だけが、その名を呼ぶ勇気があるから。騎士団のメンバーを見つけるには早くて簡単な方法さ!」

「ビルが言っていたけど、キングズリーも危うく捕まるところだったらしいわ。けど、戦って逃げて逃亡中だって」

「名前……そうか、トテナム・コート通りでも、あの時も僕たちが名前を呼んだから……」

「そんな魔法があるのね……」

 

 

ソフィアとハリーは眉根を寄せて唸った。

確かに、騎士団員を炙り出すにはこれ以上ない方法だろう。あの時、あれ以来ロンがヴォルデモートの名に怯え口にしなかったのは、今思えば最良だったのだ。

 

 

「もしかして、スネイプもソフィアの名前に呪いをかけて追跡したとか?ほら、ソフィア・スネイプだって知ってるのは一部だけだろ?」

「うーん……」

 

 

ロンは膝を手で叩きながらそう言うが、ソフィアはその考えはないような気がして首を捻る。確かに自分の本当の名前を知っているのはごく限られた人間だけだが、世界中を探せば無関係の『ソフィア・プリンス』という人間がいるかもしれない。ファミリーネームこそ稀有だが、ソフィアという名前はわりとよくある名前なのだ。

そんな不確定要素があるなか──さらに娘の名前に呪いをかけるような人だとソフィアは思えなかった。

 

 

「まあ、私たちには想像もできない方法なのかもしれないわね」

 

 

ハーマイオニーはソフィアの浮かない表情を見て、話をそれとなく打ち切る。セブルスがどのような方法を使ったのか、今判断する事ができなくともここに本物のグリフィンドールの剣がある事は確実であり、遠くからでも力を貸してくれる人がいるという事は少なからずハリー達の慰めになった。

 

 

「そうだ、ハリー。この杖を使えよ、今ないんだろ?」

 

 

ロンは人攫いから奪った杖をずっと持っていた。自分の杖は持っているが、捨てることもできず持っていたものがまさか本当に使えるとは思わなかったが。

ハリーはリンボクでできた杖を受け取り、まじまじと眺めながら試しに「ルーモス」と唱えた。

 

ぽう、と杖先に光が灯ったがしばらくして消えてしまう。本当の持ち主ではないからか、不死鳥の杖に比べて些か効きが弱いように感じた。

 

 

「少し練習した方がいいかもしれないわね。杖によって癖があるみたいだし」

「うん、そうだね」

 

 

ソフィアの慰めまじりの声音に、ハリーはやや憂鬱な気持ちになったが──それを悟らせまいと必死に胸の奥から湧き起こる気持ちに蓋をした。

 

──ソフィアも、ハーマイオニーも、ロンも。不死鳥の杖が本当に僕の意思とは関係なく魔法を放って何度も助けてくれたことを信じていない。あの杖は、きっとただの杖じゃなかったんだ。

 

 

「じゃあ僕が初めに入り口で見張るよ。その間に魔法の練習もしたいし」

 

 

ハリーはマグを持ちながら立ち上がり、テントの入り口へ向かった。

ソフィアとハーマイオニーとロンは、ちらりと顔を見合わせ──ハーマイオニーが首を振り、ロンとソフィアは肩を落とした。

自分達に心配させないためにハリーが虚勢を張っていると、三人は理解していた。杖を失ったことはやはり何よりの痛手だったのだろう。慰めたい気持ちは強かったが、ハリーの背中が拒絶しているように見えて、三人はこれ以上声をかける事ができなかった。

 

 

「あ、そういえば──私、あの騒動でハーマイオニーが遺贈された本を持ってきちゃったの、ごめんなさい」

「ああ!私、逃げ出す時に本のことを考える余裕もなくて……!ありがとう、あの場所に置いてきてしまったとばかり思っていたわ!」

 

 

ハーマイオニーは死喰い人の襲撃に遭った時、ダンブルドアから遺贈された本を置き忘れたと思い込み──もう内容は覚えていたが──かなり落ち込んでいた。

ソフィアが鞄から本を出すと、それを両手で受け取り、大切な壊れ物を扱うかのように慎重に受け取り、ざらついた本の表紙を撫でる。

 

 

「あと、リータの本もあるの。ちょっと手に入れる事ができて──色々興味深い事が書いてあるから、ぜひ読んでほしいわ」

「……ええ!わかったわ」

 

 

ハーマイオニーはもう一つの真新しい本を受け取る時に嫌そうに顔を歪めたが──ソフィアが興味深いとまで言うのだ、きっと中身は完全に嘘ばかりではないのだろうと考え、気は進まないが表紙を捲った。

 

 

「私、ちょっと魔法薬を作るわね。もう薬が心許なくて」

 

 

ソフィアは鞄から大きな鍋と数種類の薬草、遺贈された匙を取り出し部屋の隅へ向かった。ハリーと二人の旅になってから、いつ敵が襲撃するかわからず気が張っていて薬を作る余裕がなかったが、今なら少し薬作りに集中する事ができるだろう。

各々がやる事を決める中、ロンは何をすれば良いのかわからず──休み続けるべきか悩んだ末に、リュックサックから小さな木製のラジオを取り出し入り口近くにいるハリーのそばに座り込み周波数を合わせ始めた。

 

 

「一局だけあるんだ、本当のニュースを伝えているところが。ほかの局は全部例のあの人側で、魔法省の受け売りさ。でもこの局だけは……聞いたらわかるよ。すごいから。ただ、毎晩は放送できないし、手入れがあるといけないからしょっちゅう場所を変えないといけないんだ。それに、選局するにはパスワードが必要で……問題は、僕、最後の放送を聞き逃したから……」

 

 

ロンは小声で思いつく限りの言葉を呟きながらラジオのてっぺんを杖でトントンと叩いたが、パスワードが異なるのかラジオからはジーッという小さなノイズ音が流れるだけだった。

ハリーはしかめ面をしながらラジオと向かうロンを横目で見ながら、近くにある小石を浮かせてみた。やはり効き目は弱く、以前よりぎこちない。

 

分霊箱を身につける必要がなくなった分、心労は減ったが新たなる問題が自分達の中に芽生えた事をハリーは理解していた。

 

グリフィンドールの剣を手に入れる事ができた。それに、スリザリンのロケットを破壊することも。

 

しかし、その他の分霊箱の在処は依然としてわからないままなのだ。壊す道具があっても、分霊箱が見つからなければ意味がない。

 

 

ハリーは壁を歩いていた小さな蟻に肥大魔法をかけながら、残りの分霊箱の事を考える。それでも、以前よりもじわじわと首を絞めるような不安や焦燥感が無いのは、ロンとハーマイオニーと再び出会う事ができたからだろうか。

 

ハリーはラジオから出てくるノイズと、ハーマイオニーが本を捲る微かな音、そしてソフィアが作る薬の苦いような甘いような不思議な匂いを嗅いで少しだけ、心がじんわりと暖かくなった。

 

 

 

三十分ほどロンはラジオに向かいぶつぶつと呟きながら杖先で叩いていたが、やはりパスワードがわからないままではうまく繋がる事はなく、ついに諦めたのか欠伸をこぼしてラジオを切り、ベッドへと向かった。

 

ハリーが見張りをしてくれているし、自分は休んでも良いだろう。また交代で見張りをする事になるのだ、少しだけでも仮眠を取らなければ──そう思い、ふと首を傾げる。

 

 

「ベッド、一つしかないけど。君たちはどうやって寝ていたんだい?」

 

 

その言葉にハーマイオニーは読んでいた本から顔を上げ、ソフィアと入り口にいるハリーを見て眉を寄せ怪訝な顔でロンを見た。

 

 

「そんなの──」

「一緒に寝てたわ」

 

 

そんなの、ソファがあるじゃない。と言いかけたハーマイオニーの言葉はあっさりとしたソフィアの言葉に遮られ、ぽかんと口を開いたまま固まった。

魔法薬の難しい工程は終わり、匙でぐるぐると混ぜていたソフィアはハーマイオニーとロンが何故そんな唖然とした表情で自分を見るのかわからず首を傾げる。

 

 

「だって、杖は一つしかなかったもの。そばにいなければ万が一敵の襲撃があったときに、逃げられないわ」

「ああ、そう──そうね」

「なるほど」

 

 

当然だと言わんばかりのソフィアに、ハーマイオニーとロンは納得して頷き、この会話が聞こえているにも関わらず一切こちらを見ようとしないハリーをチラリと見る。

 

 

「苦労したのね、ハリー」

「……お気遣いどうも」

 

 

心の底から労うハーマイオニーの言葉に、ハリーは低い声で言い返した。

ハリーの目にはテントの扉しか写っていないが、見なくともハーマイオニーは気の毒そうな顔をして、ロンはニヤニヤとしているのだとわかってしまい、ハリーは誤魔化すように壁を這っている虫を吹き飛ばした。

 

 

 

結局、ベッドにはハーマイオニーが魔法をかけセミダブルサイズに肥大化し、ソフィアとハーマイオニーが寝る事になり、ロンはソファで寝る事になった。ロンとハーマイオニーは寝袋を持っていたが、どうしても寝袋では快適に寝る事ができず可能ならば使いたくないのが本音だろう。

 

 

「ハーマイオニー」

「どうしたの?」

 

 

真夜中。ロンのいびきがテントの中に一定のリズムで聞こえる中、ソフィアは声を落として隣にいるハーマイオニーに声をかけた。

杖先に灯りをつけ、薄暗い中本を読んでいたハーマイオニーはすぐに隣にいるソフィアを見る。

 

 

「あのね、あなた達と別れている間。グリフィンドールの丘に行ったって言ったでしょう?」

「ええ、そこでバチルダに化けていた蛇に会ったって……」

「その前にお墓にも行ったの。何か手掛かりがあるんじゃないかって……ハリーのご両親のお墓と、ダンブルドア先生の家族のお墓を見つけたわ。その墓地にはたくさんの家のお墓があったんだけど……その中に、このマークが描かれているお墓があったの」

 

 

ソフィアは枕のそばに置いてあったダンブルドアから遺贈された本──ビードルの物語を引き寄せ、ページを捲り小さなマークを指差した。

 

 

「このマークが?」

「ええ、名前はとても読みにくかったけれど……多分、イグノタス・ペベレルって書いてあったわ。かなり古いお墓だったの。過去の著名な魔法使いかもしれない」

「持ってきた本を使えば探し出せるかもしれないわね……」

「ええ、それで……ダンブルドア先生が私たちに渡した遺品は、きっとこの旅の何かに繋がっていると思うの。灯消しライターも、私たちが離れ離れになる事を見越してロンに遺贈していたのかもしれない……」

「それなら……このマークについて、より知らなければならないわ」

 

 

低く呟くハーマイオニーの言葉にソフィアは頷いた。今自分達に分霊箱に近づく手掛かりはない。しかし、何か行動しなければ何も始まらないのだ。ならばやはり少しの疑問も捨て置く事はできないだろう。

 

 

「……だから、私たちが会うべき人は──」

「ゼノフィリウス・ラブグッド」

 

 

即答するハーマイオニーに、ソフィアは薄く微笑み頷いた。

 

 

「ゼノフィリウスさんは、結婚式の時にこのマークを身につけていた。もしかして、何か知っているのかもしれないわ」

「ルーナのお父さんだもの、私たちの敵にはならないしね」

「ええ……それに、今はクリスマス休暇よ。うまくいけばルーナに会えて、ホグワーツの内情を聞くこともできるかもしれない。問題は──」

「ルーナが、死喰い人に見張られてるかもしれないってことね」

 

 

またも言葉を待たず先に言ったハーマイオニーに、ソフィアはニヤリと笑い枕に頭を乗せ、下からハーマイオニーを見上げて満足げに目を細めた。

 

 

「あなたと友達になれて本当に良かったわ」

「あら、親友の間違いじゃない?」

 

 

ハーマイオニーは本を閉じ、ソフィアの髪を撫でる。その優しい手付きに、ソフィアはくすぐったそうに小さく笑いながら、大きく頷いた。

 

 

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