【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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428 ポッターウォッチ!

 

それからソフィア達の中で、死の秘宝を探しに行きたいハリーと、分霊箱探しを再開させなければならないと考えるハーマイオニーとロン。双方で微妙な意見の食い違いが現れやや気まずい雰囲気になってしまった。

 

ソフィアは死の秘宝も無視できない問題とはわかっているが、それよりも分霊箱探すべきだと考え、ハリーは完全に──とは言えないかもしれないが──孤立していた。

 

 

 

「残りの分霊箱はどこにあるんだろう?」

「もう一度考えましょう」

 

 

分霊箱について考えるのはもっぱらロンとハーマイオニーとソフィアの三人であり、何度もハリーがトム・リドルの記憶を通して見た場所を復習し、どこにあるのか頭を捻らせていた。

 

 

「確定しているのは毒蛇のナギニだけだもの……あ!噛まれた時のために解毒薬を用意した方がいいかしら?」

 

 

ナギニに過去噛まれたアーサーはその毒により出血が止まらなくなり死の淵を彷徨った。解毒薬があれば即死毒ではない分、噛まれたとしてもまだ冷静に対応できるだろう。

ソフィアの言葉にハーマイオニーは深く頷きすぐに上級魔法薬学書を取り出した。

 

 

「この本に幾つもの難しい魔法薬が載ってるわ。血を止めるのは──これね、うわー!複雑な作り方だわ……材料は……うん、ギリギリ一人分なら作れそうね……」

 

 

ソフィアが安息地だった家からいくつか持ってきていた薬草等も、もうかなり少なくなってきている。効能が素晴らしい薬は総じて調合が困難で、さらに材料も気軽に手に入るものではないのだ。

 

 

「もし失敗したら困るから、この薬は──」

「任せて、私が作るわ!」

 

 

ソフィアには薬をうまく作れるようになる特別な匙があったが、それを使ったとしてもハーマイオニーが作るほうが間違いなく成功率が高いだろう。

ハーマイオニーは教科書を穴が開くほど見つめ、ぶつぶつと呟きながら作り方を何度も反芻した。

 

 

「……そうね、次の移動に合わせて調合を始めるわ。完成するまでに三ヶ月くらいかかりそうだけど、そんなに長い間留まることは出来ないから……工程が移るタイミングで、私たちも移らないとね」

「ええ、薬はとっても大切だもの。タイミングはハーマイオニーに任せるわ」

 

 

調合に関してはソフィアもロンも何も口出しはしないと決め、また三人の会話はどこに分霊箱があるのかという話に戻った。

 

 

「一つ目は、日記、破壊済み。二つ目はスリザリンのロケット、破壊済み。三つ目は指輪、破壊済み。……四つ目はおそらく、ハッフルパフのカップ。五つ目もおそらく、レイブンクローの何か。六つ目は蛇のナギニよね……」

「その、ハッフルパフのカップを持ってたヘプシパ?──ヘプジパ?まぁいいや──スミスだっけ。その親戚を探すか?何か知ってるかも」

「へプジバ・スミス。……うーん、スミス家なんて山ほどあるし、完全犯罪だったんだから誰も知らないんじゃない?」

「ああ、そうか」

 

 

ロンは名案だと思っていたが、難しい顔をするハーマイオニーにばさりと否定されてしまい頭を捻らせながら腕組みをした。

当てもなく向かうには危険すぎる。しかしこうもヒントが無いとどこに向かえばいいのかわからず足がすくんでしまう。

まるで、それは暗闇の中を手探りで進んでいるかのような漠然とした不安と焦燥感だった。

 

 

ハリーはすっかり分霊箱探しの意欲を失い、その代わりにいつでもヴォルデモートの考えを読もうとし、ニワトコの杖のありかについて調べようとしていた。

分霊箱探しに積極的でなくなってしまったハリーに代わりに、魔法界に詳しいロンとソフィアがいくつか魔法使いのみが暮らす村の名を上げ、ヴォルデモートが住みたいと思いその場に隠した可能性にかけて幾つかの村を訪れる旅が始まった。

魔法使いの領域を頻繁に突付き回っていると、ソフィア達は何度か人攫いを見かけることがありそのたびに透明マントの下で息を殺し気配を消していた。

 

 

「死喰い人と同じくらいワルもいるんだぜ。僕とハーマイオニーを捕まえた一味はちょっとお粗末だったけど、ビルはすごく悪い奴らもいるって言ってた。ポッターウォッチで言ってたけど──」

「何て言った?」

 

 

人攫いの集団から逃げ、テントの中でロンがそう呟く。ハリーは自分の名が出たことに反応し片眉を上げた。

 

 

「ポッターウォッチ。言わなかったかな、そう呼ばれてるって。僕がずっと探してるラジオ番組だよ。何が起こってるかについて、本当のことを教えてくれる唯一の番組だ!例のあの人路線に従ってる番組がほとんどだけど、ポッターウォッチだけは違う。君たちにぜひ聞かせてやりたいんだけど、周波数を合わせるのが難しくって」

 

 

ロンは毎晩のようにさまざまなリズムでラジオを叩き、ダイヤルを回していた。静かなテントの中では、時々龍痘の治療のヒントや流行りの歌の数小節が流れていたが、ロンが求めるポッターウォッチは一向に流れてこない。正しいパスワードを当てようとロンは何時間もラジオに向き合ったが、その幸運はなかなか訪れなかった。

 

 

「普通は、騎士団に関係する言葉なんだ。ビルなんか当てるのが凄くうまくて──僕も、数撃ちゃそのうち当たるだろ……」

「早く聞いてみたいわ。日刊預言者新聞も例のあの人一色で、何が起こっているのか本当にわからないもの……私たちには信じられる情報が必要だわ」

 

 

ソフィアの言葉に、ロンはさらにポッターウォッチを当てる熱意を燃やしたようで、暇さえあればいつでもラジオを叩いていた。

 

早く聞かせてやりたい。情報を少しでも多く手に入れたい。──自分たちにも味方がいるのだと、教えてあげたい。

そんなロンの気持ちが通じたのか、それともただの幸運だったのかはわからないが、ようやくパスワードがわかったのは春の訪れを少しずつ感じることができるようになった三月のある日だった。

 

 

「何だろう……ホグワーツ……ハリー・ポッター……透明マント……」

「なかなか当たらないわね。うーん……何かしら……」

「騎士団の関係者の名前とかはどう?ニンファドーラ・トンクス……マッドアイ・ムーディ……」

 

 

難しい解毒薬もすでに作り終えていたハーマイオニーもパスワード当てに頭を悩ますロンとソフィアの隣に座り込み、代わる代わる思い浮かんだ名を呟きながら杖でラジオを叩いた。

 

 

「シリウス・ブラック……アルバス・ダンブル──」

 

 

ロンがダンブルドアの名を呟きながらラジオを叩いた途端、短いノイズが走り、次の瞬間には人の声が流れ出した。

 

 

「まぁ!アルバス、だったのね!」

「凄いわ、ロン!」

「やった!やったぞ!僕、ハリーに伝えてくる!」

 

 

ロンは興奮しながら見張り番をしているハリーの元へ飛んで行き、すぐにハリーを引き連れて戻ってきた。

 

死の秘宝の思索から何ヶ月かぶりに目覚めたハリーは、小さなラジオのそばで跪き食い入るように見つめているロンとハーマイオニーとソフィアの後ろに立った。

 

小さなスピーカーからは、ノイズ混じりでやや聞き取りにくかったが──聞き覚えのある懐かしい声が流れていた。

 

 

「──暫く放送を中断していた事をお詫びします。お節介な死喰い人たちが我々のいる地域で何軒も個別訪問してくれたせいなのです」

「あっ!この声リー・ジョーダンだわ!」

「そうなんだよ、かっこいいだろ?」

 

 

誰だかわかったソフィアが歓声を上げ、ロンはにっこりと笑う。ソフィアは何度も頷きながら、スピーカーから流れる声に集中した。

 

 

「──現在、安全な別の場所が見つかりました。そして、今晩は嬉しいことにレギュラーのレポーター三人を番組にお迎えしています。レポーターのみなさん、こんばんは!」

「やあ」

「どうも」

「こんばんは、リバー」

「リバー、それ、リーだよ。みんな暗号名を持ってるんだけど、たいがいは誰だかわかる──」

「シーッ!」

 

 

得意げになって説明しようとしたロンの言葉を、ハーマイオニーが黙らせた。

 

 

「ロイヤルとロムルスとトレミーの話を聞く前に、ここで悲しいお知らせがあります。WWN・魔法ラジオネットワークニュースや、日刊預言者新聞が報道する価値もないとしたお知らせです。ラジオをお聞きの皆さんに、謹んでお知らせいたします。

残念ながら、テッド・トンクスとダーク・クレスウェルが殺害されました」

 

 

その名前に、ソフィア達は息を呑み顔を見合わせた。テッド・トンクスは──ニンファドーラ・トンクスの、父だ。何ヶ月も前、ソフィア達は逃げている彼らを目撃していた。

 

 

「ゴルヌックという小鬼も殺されました。トンクス、クレスウェル、ゴルヌックと一緒に旅をしていたと思われているマグル生まれのディーン・トーマスともう一人の小鬼は難を逃れた模様です。ディーンがこの放送を聞いていたら、またはディーンの所在に関して何かご存知の方、親御さんと姉妹の方々が必死に情報を求めています。

一方、ガッドリーではマグルの五人家族が自宅で死亡しているのが発見されました。マグルの政府はガス漏れによる事故死と見ていますが、騎士団からの情報によりますと、死の呪文によるものだということです。

マグル殺しが、新政権のレクレーション並になっているという実態については、今更証拠は無用ですが、さらなる証拠が上がったということでしょう。

最後に、大変残念なお知らせです。バチルダ・バグショットの亡骸がゴドリックの谷で見つかりました。数ヶ月前にすでに死亡していたと見られています。騎士団の情報によりますと、遺体には闇の魔術によって障害を受けた、紛れもない跡があるとのことです。

ラジオをお聞きの皆さん。テッド・トンクス、ダーク・クレスウェル、バチルダ・バグショット、ゴルヌックに、そして死喰い人に殺された名前のわからぬマグルのご一家に対しても、同じく哀悼の意を表して、お亡くなりになった皆様のために一分間の黙祷を捧げたいと思います。黙祷──」

 

 

沈黙の時間だった。ハリー、ロン、ハーマイオニー、ソフィアは言葉も出さず目を閉じ沈黙する。

ハリーはもっと聞きたいという気持ちと、これ以上不吉なことを聞きたくないという気持ちが半々だったが、外部の世界と完全に繋がっていると感じたのは久しぶりのことであり、心臓がドキドキと高鳴った。

 

 

「──ありがとうございました。さて、今度はレギュラーのお一人に新しい魔法界の秩序がマグルの世界に与えている影響について、最新の情報を伺いましょう。ロイヤル、どうぞ」

「ありがとう、リバー」

 

 

すぐに誰かわかる深い低音の抑制のあるゆったりとした安心感のある声が流れる。

ロンは興奮しながら「キングズリーだ!」と思わず口走ったが、すぐにハーマイオニーに「わかってるわ!」と黙らせられた。

 

 

「マグルたちは死傷者が増え続ける中で、被害の原因を全く知らないままです──」

 

 

キングズリーはそれでも魔法族が近隣の何も知らぬマグルを守るために保護呪文をかける者が居ると言う。こうした模範的行為により多くの命が救われるため、このラジオを聞いている人達もそれに倣うべきだと強く訴えた。

中には魔法使い優先だ、と考える者もいるが、そういう考えを持つことが純血優先に結びつき、最終的には死喰い人にも繋がるのだと厳しい声で説く。

 

 

「我々は全て『人』です。そうではありませんか?全ての命は同じ重さを持ちます。そして救う価値があるのです」

「素晴らしいお答えです、ロイヤル。現在のごたごたから抜け出した暁には、私はあなたが魔法大臣になるよう一票投じますよ」

 

 

リーの言葉に、キングズリーが謙遜し低く笑う声が聞こえた。ソフィア達も、キングズリーのような人が魔法大臣になれば世の中は平和になるだろうと頷く。

 

 

「さて、次はロムルスとトレミーにお願いしましょう。人気特別番組の、ポッター通信です」

「ありがとう、リバー」

「よろしく」

「リーマスと──」

「シリウスだ!」

 

 

ハリーは突然聞こえてきた──聞き間違えるはずのない──シリウスの声に、ロンを押し退け無理矢理隣に座り込み一言も聞き逃すまいと耳を傾ける。

 

ソフィアもシリウスの安否はかなり心配していたため、ほっと表情を和らげた。シリウスはハリーの身代わりになり世界中を放浪していたのだ、もし捕まって危険な目に遭っていれば、それは自身の発案のせいだとソフィアはずっと思い悩んでいたのだ。

 

 

「二人はこの番組に出ていただくたびに、同じ事を繰り返していらっしゃいますが、ハリー・ポッターはまだ生きているという意見ですね?」

「その通りです」

「疑いようはありません。万が一、ハリーが死んでいれば死喰い人たちが大々的にその死を宣言すると、私は確信しています。今の腐った魔法省や死喰い人達に抵抗する人々の士気に、ハリーの死は致命的な打撃を与えるからです」

「生き残った男の子は、今でも我々がそのために戦っているあらゆるもの──つまり、善の勝利、無垢の力、抵抗し続ける必要性の象徴性なのです」

「ダンブルドア亡き今、我々に残された光とも言えるでしょう」

 

 

シリウスとリーマスの言葉を聞き、ハリーの胸に恥ずかしさと感謝が湧き上がってきた。もう長い間会っていない。無事なのかどうか、日刊預言者新聞でハリー発見の見出しを見なくなってから本当に心配だった。──無事、生きてくれている。

 

 

「では、トレミー、ロムルス。もしハリーがこの放送を聞いていたら、何と言いたいですかね?」

「我々は全員、心はハリーと共にある。そう言いたいですね」

 

 

ロムルス──リーマスが真剣な声でそう言った。距離は離れてしまっても、いつでも心はそばにある。ほとんど何も言えずに旅に出てしまったが、それでも自分を信じてくれている言葉を聞き、ハリーは感極まり言葉を詰まらせた。

 

 

「ありがとうございます。ではトレミーは何かありますか?」

「そうですね……。ハリー」

 

 

ラジオから聞こえる、トレミー──シリウスの低い声に、ハリーは目の前で語りかけられているようだと感じた。距離は離れていても、心はそばにあるのだ──。

 

 

「ハリー、自分の直感に従え。それは良い事だし、何よりも正しい」

「何よりも正しい……」

 

 

ハリーはシリウスの言葉を繰り返す。

今まで孤立して戦っていた彼らにとって、これほど勇気づけられる言葉は無かった。

 

 

「ありがとうございます。ハリー、君がこの放送を聞いている事を願います。──それでは、いつものように、ハリー・ポッターに忠実であるがために被害を受けている友人達の状況はどうですか?」

「そうですね、この番組をいつもお聞きになっている方にはもうお分かりのことでしょうが、ハリー・ポッターをもっとも大胆に支持してきた人々が数名投獄されました。例えばゼノフィリウス・ラブグッド。かつてのザ・クィブラーの編集長などですが──」

「そんな!投獄されてしまうなんて……!」

「少なくとも生きてるって事だ。せめてルーナと同じところならいいんだけどなぁ」

 

 

悲鳴まじりのソフィアの言葉に、ロンは励ますように呟く。確かに、ゼノフィリウスはルーナの無事を確認できたのならその場所がアズカバンでも平気かもしれない──心配そうな顔をするソフィアの背を、ハーマイオニーが優しく撫でた。

 

 

「つい数時間前に聞いた事ですが、ルビウス・ハグリッド。ホグワーツ校の森番ですが、構内で逮捕されかけました。自分の小屋でハリー・ポッター応援パーティを開いたとの噂です。私も参加したかったところですが──ハグリッドは拘束されず、逃亡中だと思われます」

「ポッターウォッチとしては、トレミーと同じくパーティに参加したい気持ちとハグリッドのその心意気には喝采しますが、どんなに熱意的なハリーの支持者であってもハグリッドの真似はしないようにと強く警告します。今のご時世ではハリー・ポッター応援パーティは賢明とは言えない」

 

 

パーティについて褒めるような楽しげなシリウスの言葉を聞き、リーマスは真面目な声で注意を促す。

 

 

「二人の意見に賛同します。そこで我々は稲妻型の傷痕を持つ青年への変わらぬ献身を示すために、ポッターウォッチを聴き続けてはいかがでしょう!

さて、それではハリー・ポッターと同じくらい見つかりにくいとされている、あの魔法使いについてのニュースに移りましょう。ここでは親玉死喰い人、と呼称したいと思います。彼を取り巻く異常な噂のいくつかについて、ご意見を伺うのは新しい特派員のローデントです。ご紹介しましょう」

「ローデント?俺はローデントじゃないぜ、冗談じゃない。レイピア、諸刃の剣──にしたいって言ったじゃないか!」

 

 

またも聞き覚えのある声に、ソフィア達は同時に「フレッド!」と叫ぶ。しかしハリーは同じ声を持つもう一人を思い浮かべ「いや、ジョージかな?」とロンを見た。

 

 

「いや、フレッドだと思う」

 

 

ロンは耳をそばだてて言った。ラジオ越しの声でわかりにくいが──そもそもフレッドとジョージの声は殆ど同じだ──兄弟であるロンは、僅かな抑揚の差を聞き取っていた。

 

 

「ああ、わかりました。ではレイピア、親玉死喰い人について色々耳に入ってくる話に関する、あなたのご見解をいただけますか?」

「承知しました、リバー。ラジオをお聞きの皆さんはもうご存知でしょうが、もっとも、庭の池の底とかそういう類の場所に避難していれば話は別ですが、親玉死喰い人が表に出ないという影の人物戦術は相変わらずちょっとした恐慌状態を作り出しています。

いいですか、あの人を見たという情報が全て本物なら、優に十九人もの親玉死喰い人がその辺を走り回っていることになりますね」

「それが敵の思うつぼなのだ。謎に包まれているほうが、実際に姿を現すよりも大きな恐怖を引き起こす」

「そうです。ですから皆さん、少し落ち着こうではないですか。状況はすでに悪いんですから、これ以上妄想を膨らませなくてもいい。例えば親玉死喰い人は、ひと睨みで人を殺すという新しいご意見ですが、皆さんそれはバジリスクのことですよ。簡単なテストが一つあります。こっちを睨んでいるものに脚があるかどうかを見てみましょう。もしあれば、その目を見ても安全です。

もっとも、相手が本物の親玉死喰い人だったら、どっちにしろそれがこの世の見納めとなるでしょう」

 

 

フレッドの言葉にハリーは声をあげて笑った。ハリーだけではなくロンとハーマイオニーとソフィアも、昔と変わらぬフレッドの言い回しが面白く──同時に安堵して──くすくすと笑みをこぼす。ハリーはこの場を支配していた重々しい緊張感がふっと緩和していくのを感じた。

 

 

「ところで、親玉死喰い人を外国で見かけたという意見はどうでしょう?」

「そうですね。あの人ほどハードな仕事ぶりなら、その後でちょっとした休暇が欲しくなるんじゃないでしょうか?

要はですね、あの人が国内にいないからといって間違った安心感に惑わされないこと。海外かもしれないし、そうじゃないかもしれない。どっちにしろあの人がその気になれば、その素早さときたら誰も敵わないでしょうね。だから危険を冒して何かしようと計画している方は、あの人が遠くにいることを当てにしないように!

こんな言葉が自分の口から出るのを聞こうと思わなかったけれど──安全第一!」

「レイピア、懸命なお言葉をありがとうございました。ラジオをお聞きの皆さん、今日のポッターウォッチはこれでお別れの時間となりました。次はいつ放送できるかわかりませんが、必ず戻ります。ダイヤルを回し続けてください。

次のパスワードはマッドアイです。お互いに安全でいましょう。信頼を持ち続けましょう。──では、おやすみなさい」

 

 

リーがラジオを締めくくり、その後はダイヤルがクルクルと回り周波数を合わせるパネルの明かりが消えた。ジー、という小さなノイズ音のみが聞こえる中、ソフィア達はまだ笑っていた。聞き覚えのある懐かしく──勇気をもらえる声を聞くのは、この上ないカンフル剤効果があった事だろう。

孤立に慣れてしまっていたハリーは、ヴォルデモートに抵抗する人々がこんなにもいるのだと実感し、長い眠りから醒めたような気持ちになった。

 

 

「いいだろう、ねっ?」

「素晴らしいよ」

「ええ、みんな元気そうで良かったわ……シリウスは、きっとポリジュース薬が切れてしまったのね。それで騎士団と合流したんだわ」

「本当に……なんて勇敢なんでしょう、見つかりでもしたら……」

 

 

ハーマイオニーは敬服しながらため息をつき、心配そうにハリー達を見回す。

決まった日に放送できず、時間も短いのは常に警戒しているからだろうとソフィアも思い、彼らの無事を祈るように胸の前で手を組んだ。

 

 

「でも、常に移動しているんだろ?僕たちみたいに」

「それにしても、フレッドの言った事を聞いた?」

 

 

ハリーが興奮したように立ち上がり、奥の暖炉の中で燃える炎を見つめながら言う。放送が終わってみれば、ハリーの思いはまた同じところに戻っていた──いや、むしろさらに大きなものになったと言えるだろう。

シリウスは、離れていても僕を信じてくれている。直感に従え、それが正しいと、後押しをしてくれている。その思いはハリーの中でゆらゆらと燻っていたものを爆破的な速度で急成長させてしまった。

 

 

「ヴォルデモートは海外だ!まだ杖を探しているんだよ、僕にはわかる!」

「駄目よ──」

 

 

その言葉に、ソフィアとロンとハーマイオニーは息を呑んだ。まだニワトコの杖について強く執着しているのかという呆れではない、彼の言った言葉に、血の気が引いたのだ。

 

 

「どうして否定するんだ?シリウスも言っていた!僕の直感が正しいって!ヴォル──」

「ハリー、やめろ!」

 

 

ロンが叫ぶが、ハリーの口から一度出た言葉は止める事ができない。

 

 

「──デモートは、ニワトコの杖を追っているんだ!」

「その名前は禁句だ!忠告しただろ!?その名前は言っちゃだめだって!保護を掛け直さないと──」

 

 

ロンが大声を上げて立ち上がりハリーの口を抑えたが全て遅かった。すぐにハーマイオニーとソフィアも立ち上がり杖を抜きながらテントの扉へ走ろうとしたが──。

 

扉を開ける前に、ソフィアとハーマイオニーはぴたりと動きを止めた。二人だけではなくロンとハリーもそうだ。四人の目は机の上に置かれているかくれん防止器に向けられている。いつもは静かなそれが、明るく光りぐるぐると回りだしていた。

それだけではない、外から声が聞こえだんだん近づいてきたのだ。荒っぽい興奮したような声に、ロンは灯消しライターをポケットから取り出し鳴らした。

 

ランプの火が消えたと同時に、暗闇の向こうから怒号が飛び込む。

 

 

「両手を上げて出てこい!中にいる事はわかっているんだ!六本の杖がお前達を狙っているぞ。呪いが誰に当たろうが、俺たちの知った事じゃない!」

 

 

六人分の足音が、テントの周りを取り囲んだ。

 

 

 

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