【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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44 禁じられた森の中!

 

グリフィンドールが150点を一夜にして喪ったのはハリー・ポッター達のせいだ。

その噂は直ぐに広まり、今まで賞賛の的でありみんなのヒーローだったハリーは一夜にして嫌われ者になった。

今や、ハリー、ハーマイオニー、ネビルに話しかけるのはロンとソフィアだけだった。

今年こそスリザリンから寮杯を取る事を悲願にしていた為、グリフィンドール生の生徒たちは皆ハリーの悪口を隠さずに言った。レイブンクロー生やハッフルパフ生までも、スリザリンから寮杯が奪われるのを楽しみにしていた為、ハリー達を罵倒した。

 

スリザリン生だけはニコニコとハリーに話しかけ、「ポッター!ありがとうよ!借りができたぜ!」なんて言いながらハリーの肩を叩いた。

ハリー達は今すぐ消えてしまいたいと何度思ったかわからない、幸運にも試験の日が近かったため、黙々と談話室や図書室で試験勉強する事で気を紛らわせた。

もう、何もしない、関係のない事には絶対首を突っ込まない。彼らは固く誓った。

 

 

「まぁ…ほら、失った点数の事を考えても仕方がないわ、授業で挽回しましょう?」

「君みたいに頭が良ければ出来ただろうね」

 

 

ソフィアは必死に減点された三人を励ましたが、今回ばかりは三人ともすぐには元気を取り戻せず、深く反省しているようだった。

 

 

ハリー達は150点という大量の点数を失った事ばかりに気を取られ、罰則の存在を忘れていたが、ある朝ハリー達の元に手紙が届き、ようやく罰則があった事を思い出し項垂れた。

 

 

「そうだ…まだあったんだ…」

「頑張ってね、ハリー…ハーマイオニーと、ネビルも…」

「ソフィア…罰則って、どんな物なの?」

「うーん…私は片付けとか…が、多かったわ。でも…時間が11時って遅いから…何をさせるつもりかわからないわね」

「…ひどい物じゃないと、いいなぁ…」

 

 

顔を青くする三人に、ロンとソフィアは顔を見合わせ、一生懸命夜まで励まし続けた。

 

 

 

 

 

 

 

夜11時、ルイスはいつも青白い顔を更に蒼白にさせたドラコと共に玄関ホールにいた。

 

 

「こんな夜に…何をさせるつもりなんだ…」

「さあ?少なくとも、天体観測じゃないのは確かだね」

 

 

ルイスはドラコを和ませようと明るく冗談を言ったが、ドラコは思い詰めるようにぐっと唇を噛むだけで返事はしなかった。

 

 

フィルチがミセス・ノリスを従え、ニタニタと笑いながら現れる。そのすぐ後にハリー達がドラコのように顔色を悪くさせて現れた。

 

 

「ついてこい」

 

 

フィルチはランプを灯し、ルイス達の先頭を歩いた。ふと、ルイスはそういえばこの人が魔法を使うところを見た事がないと気付くが、何も言わず黙っていた。

重い沈黙が落ち、ハリー達は酷く後悔しているようで、ネビルなんて今にも気絶してしまうのではないかと思うほど震えていた。

 

 

「規則を破る前に、よーく、考えるようになったんじゃないかね?」

 

 

フィルチは意地の悪い目でルイス達を舐め回すように見ながら、彼らの──ルイスはさして恐怖していなかったが──恐怖を楽しんでいるようだった。過去は痛めつける体罰を行っていた事もつげ、ゆっくりと、真っ暗な校庭を進む。無言で歩く一堂の中に、ネビルの啜り泣く声が響いた。

 

 

「フィルチか?急いでくれ。俺はもう出発したい」

 

 

ハリーは今まで鬱々としていた目を僅かに輝かす。ハグリッドと一緒ならそこまで悪い罰則では無いだろうと安心したからだったが、そんなハリーを見てフィルチは嘲笑った。

 

 

「あの木偶の坊と一緒に楽しもうと思ってるんだろうねぇ?坊や、もう一度よく考えた方がいいねぇ…君たちがこれからいくのは森の中だ。全員無傷では戻れまいよ…」

「森の中?!森の中にいけるの?僕一度行ってみたかったんだ!あそこには貴重な薬草が生えているんだよ、楽しみだなぁ…こんな事ならフラスコとか持ってきたらよかった!」

 

 

ドラコとネビルは呻めき、絶対に行きたくないとありありと示したが、ルイスは嬉しそうな歓声を上げ今にもスキップのひとつくらい見せそうな様子だった。

 

 

「ルイス…正気か?そんなところに夜いけないよ…色んなのがいるんだろう?…狼男とか…聞いたけど…」

「そんな事、今更言っても仕方ないねぇ」

「狼男は居ないよドラコ、もし居たとしても今日は満月じゃないからただの人さ」

 

 

ルイスが軽い調子で言うが、ドラコは不安げに視線を彷徨わせ、フィルチは全く恐怖していないルイスを憎々しげに見て舌打ちを溢した。

 

 

「もう時間だ、俺は30分くらい待ったぞ。ハリー、ハーマイオニー大丈夫か?…ルイスは大丈夫そうだな」

「うん!早く行こうよ」

 

 

ルイスは嬉しそうに1人だけ笑っていたが、ハリー達はルイスのように微塵たりとも笑えなかった。

ハグリッドはぎろりした目に僅かに怒りを滲ませながらフィルチを見下ろしたが、フィルチはそんな視線を鼻で笑い飛ばした。

 

 

「ふん、こいつらは罰を受けにきたんだ。あんまり仲良くするわけにはいけませんねぇハグリッド」

「それで遅くなったと、そう言うのか?説教を垂れてたんだろう、え?説教するのはお前の役目じゃなかろう。お前の役目はもう終わりだ。ここからは俺が引き受ける」

「…夜明けに戻ってくるよ、こいつらの身体の無事な部分だけ引き取りにねぇ…」

 

 

フィルチは嫌味たっぷりに言うと、ランプの火を暗闇に揺らしながらゆっくりと城へ戻っていった。

 

 

「僕は、森に行かない」

 

 

ドラコがハグリッドを睨みながら言ったが、その声にいつもの横暴さや自信に満ちた色は一つもなく、恐怖に彩られていた。

 

 

「ホグワーツに残りたいのなら、行かねばならん。悪いことをしたんじゃから、その償いをせにゃならん」

「でも、森に行くのは召使いのする事だよ…生徒にさせる事じゃない…同じ文章を何回も書き取りするとか…そう言う事だと…。もし僕がそんな事をしたと知れば父上は…、きっと…」

「それがホグワーツの流儀だと言い聞かせるだろうよ!書き取りなんて何の役に立つ?お前の父さんがお前が追い出された方がマシだって言うんなら、さっさと城に戻って荷物を纏めろ!さあ!」

 

 

ハグリッドの言葉に、ドラコは暫く唸り睨んでいたが、やがて何も言わず視線を落とした。

 

 

「よーし、それじゃよく聞いてくれ。なんせ、俺たちが今夜やろうとしていることは危険なんだ、皆軽はずみな事はしちゃいかん。暫くは俺についてきてくれ」

 

 

ハグリッドが先頭に立ち、森のはずれまで向かう。ランプを高く掲げ照らすが、暗い森の少しもその光は照らす事が出来なかった。

 

 

「あそこに光っているものを見ろ、…ユニコーンの血だ…」

 

 

ハグリッドは今回の罰の説明をした。傷ついたユニコーンを探す、それがルイス達に課せられた今回の任務であり、罰だった。

ルイスは説明を聞きながら眉を顰める。ユニコーンの血は猛毒だ、癒しの力があり延命する事もできるが、しかし、一度口にすれば穢れなき存在を貶めた罰として、一生ユニコーンの血を飲み魂を穢し続けなければならなくなる。

そんな事をする存在が、この森にいると言うのだろうか?死にかけて、それでも死を拒絶し禁忌を犯す。そんな存在がホグワーツの領域内に…?

 

 

「僕はファングとルイスと一緒がいい」

「…え?あ、ごめん話聞いてなかった、…何?」

「…よかろう、そんじゃハリーとハーマイオニーは俺と一緒に行こう。ドラコとルイスとネビルは一緒に別の道だ。もしユニコーンを見つけたら緑の光を打ち上げる。もし困ったことがあったら赤い光だ…うん、わかったな?じゃ気をつけろよ、出発だ」

 

 

ドラコはルイスの左側に、ネビルはルイスの右側に隠れるように立ち、自然とファングと先頭を歩くことになったルイスはハグリッド達と別れ一本の道をいつものような迷うことのない足取りで進んだ。

 

 

「ま、待て!もう少しゆっくり進め!」

「あ、あ、ルイス!な、な、なにかの音がするよぉ!」

「…大丈夫だから、落ち着いて二人とも…」

 

 

ドラコとネビルはルイスのローブをしっかりと握りしめ、後ろでぎゃいぎゃいと叫ぶ。少しの物音にも敏感に反応し叫び声をあげる二人に、ルイスはため息をついた。

 

 

「あ!…ちょっと待って」

「な、何だ!?何かいたのか!?」

「もう帰りたい!帰りたいぃ…!」

 

 

ルイスがふと足を止め、直ぐに木の元に駆け寄る。その側には銀色の血と、純白の毛が散らばっていた。

 

 

「…ここにもユニコーンの血がある…毛が散らばって…勿体ない…」

 

 

ルイスは血に触れないように白い毛をそっと摘むとこっそりとポケットに突っ込んだ。ユニコーンの毛はかなり貴重で、買おうと思ったらかなりの金額がする、そのまま放置し、持ち帰らないという選択はルイスにはなかった。

 

 

「──ああっ!」

「何だ!?」

「ひぃい!」

 

 

ルイスは小さな叫びを上げすぐに別の場所に移動するとしゃがみ込む。ドラコとネビルは震え、辺りを注意深く見ながらも先々進んでしまうルイスに置いていかれまいと慌ててその背中を追った。

 

 

「見て!ヤミヒカリゴケだよ…!こんな所にあるなんて…!シャーレ持ってくればよかった…!」

「ルイス!おまえ、いい加減にしろ!」

「もう脅かさないでよ!」

 

 

ドラコとネビルは、この時初めて同じ気持ちになった事だろう。

怒る二人を振り返り、ルイスは肩をすくめながら少し悪戯っぽく笑った。

 

 

「…なーんてね。少し落ち着いた?ここは森の中だからね、注意するのは良いけど怖がり過ぎるのは良くないよ。冷静にならないと…いざという時に魔法を使えないでしょう?…さ、僕が先頭を進むから、ちゃんと周りを見て、静かについてきてね」

「…、…わかった」

「…う、うん…」

 

 

ルイスへの怒りで恐怖心やパニックが少し落ち着いた二人は、ルイスの言葉に頷き、先程よりは冷静に辺りを見る事が出来るようになった。もちろん、恐怖はまだあったが、いつも通りのルイスを見ると少し心に余裕が生まれた。

 

 

「…ルイス、見て…あ、あっち…何か光ってない?」

「…本当だ、多分、ユニコーンの血だね。…見てくるから、ここでファングと2人は待ってて」

 

 

ネビルが指差した場所は少し開けた場所だった。木々の隙間から月の光が僅かに差し込み、地面に何か光っているものが見える。

ルイスは杖を向けたまま木々の隙間をそっと進む。

 

震えるネビルとファングと待つドラコは、自分もこんな奴みたいに今まで怯えていたのかと思うと無性に腹が立ち、そしてそっとネビルの後ろに回り、勢いよく背中に飛びついた。

 

 

「うわあああぁぁあーー!!」

 

 

後ろからの突然の襲撃に、パニックになったネビルは大声で叫び、杖からめちゃくちゃに赤い光を噴出させる。その光を見てルイスは驚いてドラコたちの元に戻ってきた。

 

 

「何があったの?!」

「ああ、ああーー!!」

「ネビル!落ち着いて!」

 

 

ルイスはその場にしゃがみ込み頭を抱え震えるネビルを強く抱きしめ、背を優しく撫でた。ネビルは涙を流し目を硬く瞑り身体全体を震わせ酷いパニックに陥っていたが、ルイスの優しい声かけと、背中に伝わる暖かさに少しずつ落ち着いてきたものの、涙は止まらない。

ルイスは周りを見て、何も危険がない事と、少し離れた所にバツの悪そうな顔でもじもじとするドラコを見て、何故ネビルがこれ程までに怯えパニックになったのか分かった。

 

 

「…ドラコ…本当に君ってやつは…!やっていい事と悪い事がある!もし同じ事をぼくが君にしたらどうする?」

「こ、こんなに驚くって思わなかったんだ!」

 

 

ドラコの度が過ぎた悪ふざけに、ルイスが怒りながら言うとドラコは慌てて弁解をする、流石のドラコもやり過ぎたと思ったのか、俯いて視線を逸らした。

突如茂みがガサガサと音を立てて揺れ、ルイスとドラコは勢いよく音のした方を振り返った。

 

 

 

「どうした!何があった!?」

「…ハグリッド…」

 

 

ネビルの赤い光線を見たハグリッドはすぐに駆けつけ、余程急いできたのか呼吸を荒げながら心配そうにネビルとルイスを見る。

ルイスはハグリッドだとわかると安心したが、困ったようにネビルとドラコを見て、周りを注意深く見ながら手に持つ斧をしっかりと構えたままのハグリッドを見た。

 

 

「あー…ドラコが…ネビルを驚かしたんだ、それでネビルがパニックになっちゃって…」

 

 

それを聞いたハグリッドはみるみる内に顔を怒りで赤らめドラコを見ると斧を振り上げながら叫ぶ。

 

 

「何を考えちょるんだ!罰則だと言うとるだろうか!もっと重い罰則が良かったのか!?えぇ!?ネビルに謝ったのか!?」

「…、…」

「……ふー…ネビル、大丈夫か?よしよし、大丈夫だ。…よし、行くぞ顔をあげろ。ルイスと、そこの愚かもんもついてこい」

「う、うぅ…」

 

 

どれだけ待っても決して謝ろうとしないドラコに、ハグリッドは長いため息をついた後、まだ泣いているネビルの腕を引き立たせると優しく背中を支え、寄り添いながら森の中を進んだ。

 

 

「…ドラコ、行くよ」

「…あぁ」

 

 

ドラコはルイスの言葉に小さく頷き、とぼとぼとルイスの後ろをついていった。

ハグリッドは道なき道を進み、なんとかハリーとハーマイオニーと合流すると怒りを滲ませながらドラコを睨んだ。

 

 

「お前がとんでもないことをしたせいで、見つかるものも見つからんかもしれん…。よーし組み分けを変えよう。ネビルらハーマイオニーは俺と組むんだ。ハリーはファングとルイスとこの愚かもんと一緒だ。…ルイス、この愚かもんを頼む」

「…ん、わかった」

 

 

ハグリッドは何度か頷き、くれぐれも気をつけるように告げた後、心配そうなハーマイオニーを連れて直ぐに森の中に入った。

 

残されたルイスは足元でひんひんと鳴くファングの頭を撫でながらハリーとドラコを見た。まぁ、ドラコの驚かしもきっとハリーには効かないだろうが、犬猿の中の二人を組ませる事は果たして成功なのだろうか。

 

 

「さ、ハリー、ドラコ、行こうか。…僕がファングと先頭を歩くよ。くれぐれも静かに、ついてきてね。何か気付いたら…直ぐに教えて」

 

2人が頷いたのを見てルイスはファングを引き連れ、杖先をルーモスで光らせながらゆっくりと森の中を進んだ。

 

 

 

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