【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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45 恐ろしい行いと影!

 

点々と続く銀の血を追いながら、ルイス達はどんどん森の奥へと進む。風に合わせてざわざわと木々が人の騒めきのような音を出した。少し進む度に闇がより深くなり、鬱蒼とした森の中ではルイスの灯す光だけでは、酷く頼りなく見えた。

ルイスも流石に気を引き締め緊張したまま森を進む。この森に来たのは初めてだが、あまりにも生き物がいないことに違和感を感じていた。何かに怯えているのか、森に住むはずの生き物は一匹たりとも現れない。

 

ユニコーンを襲った存在が、近くにいるのだろうか。ルイスは杖を持つ手に力を込めた。

 

 

落ちている銀色の血の量が多くなってきた。木の根元に大量の血が飛び散り、草が倒されている。それは傷付いたユニコーンがこの辺りで痛みと苦痛にのたうち回った事を簡単に想像させ、ルイスは眉を顰め、ハリー達を振り返る。

 

 

「…近いと思う、気を引き締めて…」

 

 

ハリーとドラコは緊張した面持ちで頷いた。

樫の古木が絡み合うその先は、開けた平地だった。

 

 

「っ…ルイス…見て…」

 

 

ハリーが息を飲み震える指で先を示した。

開けた平地の奥に、月の光を浴びて純白に輝くものが落ちていた。

ユニコーンは白く細い足を力なく投げ出し、輝く真珠色の立髪は暗い木の葉の上に散らばっている。身体の至る所が傷付き、最も深い首の傷からはまだ銀色の血が溢れ、血溜まりを広げていた。

美しくも、悲しい生き物の死に、ハリー達は強く心を痛めた。

 

ルイスはそっと近付き、ユニコーンの傷口を観察した。その傷は鋭利な何かで切り裂かれたような傷だった。少なくとも、獣が噛みついたり、切り裂いたような歪な傷では無い、刃物で裂いたような長く深い傷、こんな傷口を作る事が出来る生き物は人間しかいない。

もう少しよく観察しようと思ったルイスだったが、ずるずるとローブを地面で擦るような音にいち早く気付いたハリーが慌ててルイスを引っ張り木々の後ろに隠した。

 

 

「な──」

「しっ!何か、聞こえた…」

 

 

ハリーはルイスの口を塞ぎ、自身も木の影に身を隠した。ずるずると言う音にルイスとドラコも気付き、顔を青くさせぴくりとも動かなかった。

 

暗がりの中から、フードを深く被った黒い影が現れた。まるで獲物を漁る獣のようにゆっくりユニコーンに近付くと、その横たわった死骸に身を屈め、傷口から血を飲みはじめた。

身体中の産毛が粟立つ程の恐ろしさと強い嫌悪感、美しいものが穢されていく光景に、ルイスは思わず顔を強く顰めた。

 

 

「ぎゃああああっ!」

 

 

悍ましい光景と、強い恐怖に耐えきれずドラコが絶叫し、もんどり打ちながら逃げ出した。ファングもその声に驚いたように飛び上がるとすぐにドラコの後を追い森の奥へと走り去る。

 

ドラコの声に気付いた影のは、ゆっくりと顔をもたげた。フードで隠された顔の下からぽたぽたと銀色の血が垂れる。

それは、こちらをじっと見て、するすると音もなく近づく。

 

 

「──うぐぅっ!」

「ハリー!」

 

 

ハリーは額の傷が今まで感じた事もない激痛で自身の頭が割れたかと思った程だった。目に涙が浮かび、ルイスに縋るように倒れかかる。

ルイスはハリーを片手で支えると杖を構え、その影をじっと見た。

 

 

──死。

 

 

死ぬかもしれない。あれが出す異様な空気は、人間では無いと思ってしまう程、悍ましい。だが、あれは間違いなく、人間だ。

ユニコーンの血を飲むなど、人間しかあり得ない。どれだけ死にかけている生き物でも、決してユニコーンの血は口にしない。純粋な存在を殺してまで生きたいと、呪われても生きながらえたいと願う生物は、地上に一種しかいない。──人間だ。

 

 

 

影がルイスとハリーに近付く。

ふと、ルイスは酷く甘く、重苦しさを感じさせる臭いを嗅いだ。

 

 

 

ルイスの脳裏に父と、ソフィアの顔が一瞬横切り、これが走馬灯かと思い覚悟を決めた時、後ろから蹄の音が聞こえ、ハリーとルイスの頭上を飛び越えその影に向かって突進した。

ルイスに手を伸ばしかけていた影はさっと手を引き込める。

 

 

目の前に現れたケンタウルスに、ルイスは驚き目を見開いた。ケンタウルスは、決して人とは関わろうとしないはずだ、まさか助けたのか?いや、偶然、なのだろうか。

 

 

その影はケンタウルスの振り上げられた前脚にたじろぎ、また音もなく滑るように木々の奥へと姿を消した。

 

 

「怪我はないかい?」

「あ、ありがとうございます…」

 

 

暗闇の中、輝く青く澄んだ目がルイスを見つめる。あまりの美しい宝石のような瞳に、ルイスは一瞬今の状況も忘れて見入ってしまった。

ハリーは額を抑えながら、よろよろと立ち上がり、自分達を助けてくれたケンタウルスをじっと見た。ケンタウルスもまた、ハリーの傷口をじっと見ていた。

 

 

「ありがとう…あれは…何だったの?」

「…、…君はポッター家の子だね?早くハグリッドの所に戻った方がいい、今この森は安全じゃない、特に君はね…さあ、そこの君は…ああ、…その顔…アリッサの子だろう。君たち私に乗れるかな?その方が早いから」

「えっ!…い、いいんですか…?そんな…貴方は…ケンタウルスでしょう?」

 

 

ルイスは何故ケンタウルスが母の名前を知っているのかという驚きよりも、ケンタウルスが人を背に乗せるといった選択をした事に驚いた。ケンタウルスはルイスの戸惑いを察すると少し、優しげに微笑み頷く。

 

 

「君はアリッサのように聡明だ。彼女は私達の友であった…さあ、早く乗りなさい、旧友の子とポッター家の子を死なせるわけにはいかない」

 

 

ルイスはそれでも迷った。ケンタウルスは気高い生き物だと知っているからだ。だがそんな事知らないハリーは直ぐに脚を曲げたケンタウルスの後ろによじのぼり、焦ったそうにルイスを見た。

 

 

「ルイス!早く!」

「…う、うん…」

「私の名はフィレンツェだ」

 

 

ルイスがハリーの後ろに乗った事を確認すると、ケンタウルスーーフィレンツェは直ぐにその場から踵を返した。

 

だが、すぐにその足は止まる。

平地の反対側からフィレンツェの行く手を阻むように二体のケンタウルス──ロナンとベインが現れた。その顔は怒りと困惑に満ちている。

 

 

「フィレンツェ!何という事を…人間を背中に乗せるなど、恥ずかしく無いのですか?君はただのロバなのか?」

「この子達が誰かわかっているのですか?ポッター家の子と、我々の亡き友人アリッサの子どもです。一刻も早くこの森を離れるほうがいい」

「アリッサの…?いえ、だからと言って…君はこの子達に何を話したんですか?フィレンツェ、忘れてはいけない。我々は天に逆らわないと誓った。惑星の動きから、何が起こるか読み取ったはずじゃないかね?」

 

 

ベインが唸るように言い、苛立ちからか蹄を打ち鳴らす。ルイスはハリーの背に捕まりながら、不安げに三体を見る。やはり、背中に乗るのは間違いだったのだ。

 

 

「私はフィレンツェが最善と思う事をしているんだと、信じている」

 

 

ロナンが困惑しながら言うが、ベインの怒りは収まらない。

 

 

「最善!それが我々と何の関わりがあるんです?ケンタウルスは予言された事にだけ関心を持てばそれでいい!森の中で彷徨う人間を追いかけてロバのように走りまわるのが我々のする事でしょうか!」

「あのユニコーンを見なかったのですか?何故殺されたのか、君にはわからないのですか?それとも惑星がその秘密を君には教えていないのですか?ベイン、僕はこの森に忍び寄るものに立ち向かう。そう、必要とあれば人間とも手を組む」

 

 

フィレンツェは叫ぶように言うとすぐに向きを変え、ロナンとベインを後に残し木立の中に飛び込み素早く木々の中を駆けた。

 

 

「…フィレンツェは…母と…友人だったんですか?」

「…ええ、彼女はかけがえの無い友でした。優しく…人間にしては聡明でした。惑星の動きに目を向け星の囁きに耳を傾けていた…ああ、あなたの名前を教えて下さい」

「ルイスです。…双子の妹がいます。ソフィアっていう名前の…」

「ああ…そうですか、いつか会いたいものです」

 

 

フィレンツェは少し嬉しそうに言った。

ルイスはハリーの背中に捕まりながら、何故母がケンタウルスと友人になれたのかと考えた、ただの人と友人になるのとは訳が違う。ケンタウルスは気高く、そして──人を嫌う。

 

 

「ねえ、どうしてベインはあんなに怒っていたの?君は一体何から僕たちを救ってくれたの?」

 

 

ハリーの疑問に、フィレンツェは速度を落とし並足になると言葉を選ぶように沈黙した。ルイスは、何故彼がそうしているのかわかっていた。ケンタウルスは、全てを理解していても、惑星の動きから大きく外れることは出来ない、そういう、賢く孤高な生き物なのだ。

 

 

「二人はユニコーンの血が何に使われるか知っていますか?」

「ううん。角とか尾の毛を魔法薬の時間に使ったきりだよ」

「…僕、知ってます」

「ルイス、君はアリッサのように聡明でいて、その知識ゆえに酷く心を痛めていますね。…そう、ユニコーンを殺すなんて非情極まりない事です。これ以上失う物は何も無い、しかも、殺す事で自分の命の利益になる者だけが、そのような罪を犯す。ユニコーンの血は、たとえ死の淵にいる時だって命を長らえさせてくれる。でも恐ろしい代償を払わなければならない。自らの命を救う為に、純粋で無防備な生物を殺害するのだから、得られる命は完全ではない。その血が唇に触れた瞬間から、その者は呪われた命を生きる…生きながらの死なのです」

 

 

フィレンツェの言葉に、ハリーは必死に考えた、生きながら死んでいる。そんなの、誰が望むのだろうか。

 

 

「いったい誰がそんな必死に?永遠に呪われるんだったら、死んだ方がマシだと思うけど、ちがう?」

「その通り。しかし──他の何かを飲むまでの間だけ生き長らえればよいとしたら…二人はこの今この瞬間に、学校に何が隠されているのか知っていますか?」

「…賢者の石ですね」

「そうか!命の水だ!だけど、いったい誰が…」

「力を取り戻すために、長い間待っていたのが誰か──思い浮かばないですか?」

 

 

フィレンツェの、静かな声にルイスは息を呑んだ。そうか、そうだとしたら、すべての辻褄が合う──合ってしまう。いや、しかし、フィレンツェがここまで知っているなんて、惑星の語りかける予言はどれほど正確なものなのだろうか。

 

 

ハリーは、自分の心臓が鷲掴みにされたような気がした。手が震え、脳が痺れたように揺れる。それじゃあ、さっき見たのは──

 

 

「それじゃさっき見たのは…ヴォル──」

「ハリー!ルイス!あなた達、大丈夫?」

 

 

ハリーが全てを言おうとした時、道の向こうからハーマイオニーが走り寄ってきた。その後ろからハグリッドも息を荒げながら走ってくる。

 

 

「僕は大丈夫だよ」

「僕も大丈夫。ハグリッド、ユニコーンが死んでた、…殺されてた。森の奥、開けた所にいるよ」

「何!?わかった、すぐ見てくる」

 

 

ハグリッドはすぐにルイスの指が示した先へと走っていった。ハグリッドを見送りながら、フィレンツェは小さく呟く。

 

 

「ここで別れましょう。君たちはもう安全だ」

「…ありがとうございます、フィレンツェ…」

「いいえ、当然の事ですルイス。…幸運を祈りますよ、ハリー・ポッター。ケンタウルスでさえも、時には惑星の読みを間違えた事がある…今回もそうなりますように」

 

 

フィレンツェはハリーとルイスを下ろし、そう言い残して暗い森の奥へと駆けていく。

フィレンツェの言葉に、ルイスは眉を寄せた。その言葉は、ハリーにとって良く無い未来を惑星が示した事を意味している。一体、惑星は何をケンタウルス達に予言したのだろうか。

 

 

ハリーは無意識の内に額を抑えながら、ブルブルと震えていた。

 

 

「すぐに…ロンとソフィアに言わなきゃ…」

「…ねえ、今回だけ、これで最後にするから…僕もグリフィンドールの寮に連れて行って、ユニコーンの死骸は僕が一番近くで見た、あの影もだ…僕も一緒に何があったか話すよ」

 

 

ルイスはハリーの両肩を掴み、真剣な声で懇願した、ハリーは驚いたもののすぐに頷く。ハリーは今先程の光景を冷静で話せる気がしなかった。できればルイスにいて欲しいと思っていたのだ。きっとこの時間、グリフィンドールの談話室に起きている人は居ない。黙ってさえいれば、バレる事はないだろう。

 

ハリー達は頷き、そっとグリフィンドール塔まで走った。ルイスは途中でスリザリンカラーのネクタイを外しポケットに突っ込み、ハリーのネクタイを借りて首に掛けた。

 

 

 

 

ハリー達の帰りを待っている内に、ロンとソフィアは真っ暗になった談話室で寝てしまっていた。一つのソファに身を寄せ合い、すやすやと眠る2人をハリーはやや乱暴に揺り起こす。

 

「──ああ!ファウルだ!くそっ!」

「──だめよ!トビナガウサギはどう足掻いても泳げないの!」

「何言ってるの!2人共、起きて!」

 

 

訳の分からない寝言を言う2人にハリーは小声で叫ぶ。2人は目を擦りながらむにゃむにゃと口を動かし、ぼんやりとした目でハリー達を見た。

 

 

「ふぁあ…おかえりハリー…」

「んうー…あれ?ルイスがいるわ…まだ夢を見ているのかしら…」

「夢でも何でも無いよソフィア、とんでもない事があったんだ」

 

 

眠そうなとろりとした目で、ロンとソフィアは真剣な表情するハリーとルイスを見て不思議そうにしていたが、ハリーとルイスが何があり、何を見たのか話していくうちに徐々に目が冴えてきたのか皆と同じ真剣な眼差しでハリー達の言葉を聞いた。

 

ハリーは落ち着かないようにそわそわと火の消えた暖炉の前を何度も言ったり来たりし、口元に手を当てながら呟く。

 

 

「スネイプはヴォルデモートのためにあの石が欲しかったんだ…ヴォルデモートはあの森の中で待ってるんだ…僕たち、いままでずっと、スネイプはお金のためにあの石が欲しいんだと思っていた…」

「そんな──」

「その名前を言うのはやめてくれ!」

 

 

ソフィアは父があの人なんかに服従しているものかと叫びそうになったが、それを言うよりも先にロンが震える声で叫んだ。

顔は蒼白になり、目は大きく見開かれている、信じられないものを見る目で、ハリーを怖々と見た。

 

 

「その名前を言うのはやめてくれ!」

 

 

だが、ロンの声はハリーには届かない。頭の中でみるみる内に様々なパーツが揃い、パズルが噛み合うような、今までの事件の全てがたった一つに集約されていく感覚に、ハリーは自分が興奮していくのを感じた。これは、正解がわかったからか、それとも、恐怖からかなのか、ハリーにはわからない。

 

 

「フィレンツェは僕たちを…僕を助けてくれた。だけどそれはいけない事だったんだ──」

 

 

ハリーが熱で浮かされたように言葉を続ける中、ルイスはそっとソフィアの手を繋ぐ、ソフィアが不安げに眉を寄せ、このままハリーの考えを黙って聞くのか、父様がそんな事するわけが無いのに。と目で訴えかける。だが、ルイスは小さく首を振り、ハリー達に聞こえないよう、声を出さず口を動かした。

 

 

──何も言わないで。

 

 

ソフィアはその言葉に戸惑ったが、あまりにもルイスの真剣な目に、小さく頷いた。

 

 

「ヴォルデモートが僕を殺すのなら、それをフィレンツェが止めるのはいけないって、ベインはそう思ったんだ…僕が殺されるのも星が予言していたんだ」

「頼むから、その名前を言わないで!」

「それじゃ、僕はスネイプが石を盗むのをただ待っていればいいんだ…そしたらヴォルデモートがやってきて僕の息の根をとめる…そう、それでベインは満足なんだ」

 

 

熱に浮かされたような、絶望したような、どこか不思議な声でハリーは呟いた。

ハリーは今、正気では無い。死んだとされていた、ヴォルデモートが死んではいなかった、両親の敵が、今蘇り自分を殺そうとしている。それは想像を絶する恐怖であり、怒りだろう。

ルイスとソフィアはハリーの虚な目を見て、苦しげに眉を寄せる。

 

ソフィアは立ち上がり、色々な感情が溢れ、その逃し方がわからないのだろう、酷く落ち着きのないハリーの頭をそっと抱きしめた。

ハリーは暫く身体を硬直させたが、ソフィアの胸に頬をつけていると、小さな鼓動の音が聞こえることに気付き、その一定間隔で鳴る音はハリーの昂っていた神経を落ち着かせた。

 

 

「…ハリー、落ち着いて?…ダンブルドア先生は、あの人が唯一恐れている人だって、みんな言ってるわ。ダンブルドア先生がいる限り、あの人はあなたに触れることなんて出来ないわよ」

「そうよ、ハリー。それにケンタウルスが正しいだなんて、誰が言った?私には占いみたいなものに見えるわ。マクゴナガル先生がおっしゃったでしょう。占いは魔法の中でも、とっても不正確な分野だって」

 

 

ソフィアの抱擁と、ハーマイオニーの励ましにより、ハリーは落ち着きソフィアからそっと離れると頷いた。

 

話し込んでいるうちに空が白み始め、ハリー、ハーマイオニー、ロンはすぐに自室へと戻ったが、ソフィアはルイスをグリフィンドール塔の下まで送ると言い、寮を出ていた。

 

 

グリフィンドール塔の廊下で、ソフィアはルイスに向き合い、やや非難がましい目で見ながら小さく叫んだ。

 

 

「なんで…!と──スネイプ先生じゃないって否定しなかったの?」

「ソフィア…ハリー達にはスネイプ先生だって思わせておいた方がいい」

「どうして…!」

「もし、…いや、間違いなく、後ろにあの人がいる。…全ての元凶は…クィレルだと、僕は思うし…知ってる。ただ、それが本当に正しいのなら…ハリーがクィレルに近付くのは危険すぎるんだ。クィレルだけならまだ良かった…でも、後ろにいるのがあの人なら…ダメだ、僕たちが…子ども達が踏み込んでいい域を超えている。ハリーが真実に気付けば…きっと、殺されてしまう。だから、ハリー達は勘違いをしていた方がいい」

「でも…そんな…」

 

 

果たして、それが正解なのか、ソフィアの目は不安げに揺れていた。

ルイスはぐっとソフィアを強く抱きしめると、その耳元で囁いた。

 

 

「ソフィア、君は…絶対にもう…関わらないで。ハリーに何を言われても、何をこれ以上知っても!…お願い、僕は君に何かあったら…きっとハリー達を許せない」

「…ええ、わかった。…約束するわ」

「…良かった…僕は…タイミングを見つけて、父様に言うよ。信じてもらえるかわからないけど…。ソフィア、危険だから絶対1人にはならないで、僕も極力1人にはならないようにするし、ドラコが居なくても…人が多いところで過ごすから」

「…そうね、それが…いいと思うわ」

 

 

もう、手に負えない。そうルイスもソフィアも思っていた。

本当に、あの人が森にいるのなら、早めに知らせなければならない。

今なら、ハリーが聞いたクィレルと父様の会話の意味がわかる。

父様は、クィレルに聞いていたのだ、ダンブルドア側につくか、あの人につくか。…父様は、長くクィレルとこのホグワーツで教師をしていた、ただの他人ではなかったのかもしれない。助けたいと、思っていたのだろう。

 

父のあまりにも回りくどく分かりにくい不器用な優しさに、ルイスだけが気付き、胸を痛めた。

 

 

──もう、遅い。もう、彼はユニコーンの血を飲んでしまった。呪われたのだ。

 

 

禁じられた森で影と対峙した時、ルイスは風に乗って酷く甘く、重い臭いを嗅ぎ取った。それは、クィレルがターバンを外し掛けた時にふと香った臭いだと、ルイスは気付いていた。

  

 

 

 

 

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