【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

451 / 467
451 蛙!

 

 

階段は長く続き、ところどころ松明がかけられあちこち思いがけないところに曲がり角がある。ソフィアが最後の曲がり角を曲がった時、ハリーが硬い壁らしきものの前でルーナに透明マントを被せているところだった。

 

 

「ソフィアも入って」

 

 

ハリーは自分もマントに被さりながらソフィアに手招きし、ソフィアはすぐにその中に入り込んだ。三人ともしっかりと隠れている事を確認し、ハリーは壁にそっと触れる。

壁は触った途端溶けるように消え、三人は外に出た。振り返れば壁に開いた穴は溶けるように消え始めている。

ハリーはソフィアとルーナを引っ張り物陰に移動し、首からぶら下がる巾着の中を探って忍びの地図を取り出した。顔を地図にくっつけるようにして自分とソフィアとルーナの点を探し、今いる場所を確認する。

 

 

「六階だ。──こっちだ、行こう」

 

 

ハリーは行く手の廊下から、フィルチの点が遠ざかって行くのを見つめながら囁いた。

ソフィアが杖を振り消音魔法を唱え、三人分の足音を消しながら彼らはこっそりと進んだ。ハリーとソフィアは何度も夜に城の中をうろついた事があったが、今ほど心臓が早鐘を打った事はなかった。

無事に移動しなければならない。魔法の罠がかけられていない事を期待するしかない。か細い紐を頼りにしているような不安を感じながらも、ハリーとソフィアは引き返す事はなかった。

 

 

「こっちよ」

 

 

ルーナがハリーの袖を引き、螺旋階段の方に引っ張りながら声をひそめて囁く。

三人は目の回るような長く急な螺旋階段を急いで上った。やっとの事で扉の前に来た時には三人の息は少し上がっていただろう。ハリーはすぐに開けようと手を伸ばしかけたが、扉の前には取っ手も鍵穴も無く、鷲の形をしたブロンズのドアノッカーがついているだけだった。

 

ルーナがひょいと手を伸ばし、一回ノックした。

静けさの中でその音は大砲が鳴りびいたようにハリーには聞こえ、ぎくりと肩を強張らせる。

少しして鷲の嘴がぱかりと開き、鳥の鳴き声ではなく柔らかな歌うような声が流れた。

 

 

「不死鳥と炎はどちらが先?」

「んん……どう思う?ハリー、ソフィア?」

「えっ、合言葉じゃないの?」

「あら、違うよ。質問に答えなきゃいけないんだもん」

「間違えたらどうなるの?」

 

 

思慮深い表情をしているルーナにソフィアが静かに聞けば、ルーナは当然のように「誰か正しい答えを出す人が来るまで待たないといけないもん」と言った。

 

 

「そうやって学ぶものよ。でしょ?」

「なるほどね」

「ルーナ、ソフィア、僕たちには待つ時間はないんだ」

 

 

ソフィアはレイブンクローらしいと納得したが、ハリーは焦り苛立ちながら早口で囁いた。

 

 

「炎、不死鳥。どちらが先かだなんで言い切れないわ。つまり、堂々巡りね」

「うん、あたしの考えも、答えは、円にははじまりがない」

「よく推理しましたね」

 

 

ソフィアとルーナの答えを聞いた鷲は柔らかい声で褒め、ぱっと扉を開けた。

ハリーは全く意味がわからなかったが扉が開いた事だけが重要であり深く考える事はない。扉を過ぎればすぐにレイブンクローの談話室がソフィア達を迎え入れた。

そこは広い円型の部屋で、ハリーはグリフィンドールとスリザリンの談話室よりも爽やかで優雅な印象を感じた。壁の穴ところどこにアーチ形の窓があり、壁には青とブロンズ色のシルクのカーテンがかかっている。天井はドーム型で星が描かれ、濃紺の絨毯も同じ模様をしていた。

机、椅子、本棚がいくつかあり、扉の反対側の壁の窪みに背の高い白い大理石の像が建っている。

 

ルーナの家でレイブンクローの胸像を見ていたソフィアとハリーにはそれがレイブンクローだとすぐにわかった。その像は寝室に続いていると思われるドアの脇に置かれ、ハリーは逸る心で真っ直ぐに像へと近づいた。

像は軽い微笑を浮かべ、美しいが少し威圧的でもあった。頭部には大理石で繊細な髪飾りの環が再現されている。フラーが結婚式の時につけていたティアラとどこか似ていた。

もっと近くで詳細を確認したいハリーは像の台座に乗ろうとしたが、透明マントを被ったまま三人一緒に上ることは不可能であり、ソフィアとルーナを透明マントの中に残し外へ出て台座に素早く上った。

 

ソフィアは透明マントから出たハリーを引き止めようとしたが、手を伸ばした時にはハリーはすでに台座に足をかけてしまっていた。流石に寮の中には敵はいないだろうか?ここはレイブンクローだし、スリザリンではない。とソフィアは考えつつも念のため杖を抜きルーナを引き寄せる。

 

 

台座に上ったハリーは、よく見れば台座に文字が刻まれている事に気づき、薄暗い中その文字を小声で読んだ。

 

 

「計り知れぬ英知こそ、我らが最大の宝なり」

「──つまり、お前は文無しだね能無しめ」

 

 

甲高い魔女の声が響く。ハリーは素早く振り返り台座から滑り降り、ソフィアは声のした方に杖を向けた。

棚と棚の間、暗がりの奥から現れたアレクト・カローはソフィアの失神魔法がその身を貫くよりも早く、人差し指を前腕の髑髏と蛇の焼印に押しつけていた。

 

 

 

指が印に触れた途端、ハリーの傷痕が堪えようも無く痛み台座に強く背を打ちつけた。その痛みも全く感じないまま、ハリーの意識はヴォルデモートの元へと飛んでいく。

星を散りばめた部屋が視界から消え、ハリーは崖下の突き出した岩に立っていた。心が歓喜で震える。──小僧を捕らえた。

 

 

「ハリー!」

 

 

ハリーはソフィアの必死な呼び声で意識を取り戻し、反射的にアレクトの方へ杖を向けたがすでにアレクトはソフィアの失神魔法に貫かれた後だった。

アレクトは衝撃で本棚に衝突し、ドサドサと音を立てて本が落ちる。容赦のない失神魔法はかなりの音を響かせてしまい、寝静まっていたレイブンクロー生が目覚め、慌てて談話室へ駆け寄ってくる足音がドアの向こう側から聞こえてきた。

 

 

「マントの中へ!早く!」

 

 

ソフィアはハリーの手を引きすぐにマントを被せると、談話室の奥へと素早く移動した。

その直後ドアが開き寝巻き姿のレイブンクロー生がどっと談話室に溢れ出た。何があったのかと不安げな顔をしていた生徒達は、アレクトが失神しているのを見て息を呑み、小さく叫ぶ。

恐々と近づいた生徒達はアレクトを囲み、獰猛な獣が今にも目覚めるのではないかと緊張した顔でアレクトを見下ろす。

勇敢な小さい一年生がその輪からパッと飛び出てアレクトに近寄り、足先でアレクトの尻を小突いた。

 

 

「死んでるかもしれないよ!」

 

 

喜んで叫ぶ一年生に、生徒達は喜びつつ何故こんなところで、と口々に不安げに囁いた。

 

 

「あいつが、ここに来る。ソフィア、この髪飾りだと思う?」

「ええ、あの人は秘密の部屋も開けたわ。伝説的なものを収集する癖からしても、可能性は高いわ」

「うん──そうか」

 

 

ハリーとソフィアは小声で囁き合う。確かにそうだ、あいつはいつも創設者に縁があり希少で価値のある物を求めた。問題はどこに失われた髪飾りが隠されているかだ。

ハリーは目を閉じ、傷痕の疼きに合わせながらヴォルデモートの心の中に沈んでいった。──トンネルを通り、最初の洞穴に着いた──ホグワーツに来る前に、ロケットの安否を確かめることに決めたのだろう。しかし、それが無いことに気付くのはすぐであり、やはり時間は残り少ない。

 

 

突如、談話室の扉を激しく叩く音がしてレイブンクロー生は息を止めみんな凍りついた。「消失した物体はどこに行く?」と歌うような声が聞こえたが、すぐに汚い怒鳴り声がそれを掻き消した。

 

 

「そんなこと俺が知るか!黙れ!アレクト?アレクト!そこにいるのか?あいつを捕まえたのか?ここを開けろ!」

 

 

アレクトの兄、アミカスが唸りながら叫ぶ。レイブンクロー生達は怯え後退りし、互いに囁き合っていた。あいつとは、誰だ?この中で、アレクトを失神させたものがいるのか?

レイブンクロー生が動揺していると、何の前触れもなく銃を発射したような轟音が響き、再びアミカスの苛立ちの叫びが聞こえた。

 

 

「アレクト!あの方が到着して、もし俺たちがポッターを捕まえてなかったら──マルフォイ一家の二の舞になりてえのか?返事をしろ!」

 

 

アミカスは力の限り扉を揺すぶりながら大声で喚き魔法を発射したが、扉は頑として開かない。

レイブンクロー生は全員がさらに後退りし、答えなければ扉は開かないとわかっていても何人かは寝室に戻ろうと慌てふためいて階段を駆け上がり始めた。

ソフィアとハリーはこれ以上騒ぎになる前に外に出てアミカスを失神させるしかない、そう思ったが扉を開けた途端失神させられたらどうしようかと悩み──そうしていると、扉の向こうで聞き慣れた懐かしい、別の声が聞こえた。

 

 

「カロー先生、何をなさっているのですか?」

 

 

非難めいたその声は、マクゴナガルのものだった。ソフィアとハリーは息を呑み、無意識のうちに一歩扉に近づく。

 

 

「このくそったれの扉に入ろうとしているんだ!フリットウィックを呼べ!あいつに開けさせろ!今すぐにだ!」

「しかし、妹さんが中にいるのではありませんか?フリットウィック先生は宵の口にあなたの緊急な要請で妹さんをこの中に入れたのではなかったですか?たぶん、妹さんが開けてくれるのでは?それなら城の大半を起こす必要は無いでしょう」

「妹が答えねぇんだよこの婆ぁ!てめえが開けやがれ!さあ開けろ!今すぐ開けろ!」

「承知しました。お望みなら」

 

 

マクゴナガルは恐ろしく冷たい口調で答え、ノッカーで上品に扉を叩いた。ソフィアは恩師であるマクゴナガルへの暴言に、沸々とした怒りを感じ強く杖を握り扉の先を睨む。

 

 

「消失した物体はどこに行く?」

「非存在に。つまり、全てに」

「見事な言い回しですね」

 

 

鷲のノッカーが答え、扉がパッと開いた。

アミカスが肩を怒らせ杖を振り回して扉から飛び込んでくると、残っていた数少ないレイブンクロー生は矢のように階段へと走った。

アミカスは床の上に大の字に倒れ動かないアレクトを見つけ、怒りと恐れが入り混じった叫び声を上げながら駆け寄った。

 

 

「ガキども!何しやがった?誰がやったか白状するまで、全員磔の呪文にかけてやる──それよりも、闇の帝王が何をおっしゃるか──やつを捕まえてねえ、その上ガキどもが妹を殺しやがった!」

「失神させられているだけですよ」

 

 

屈んでアレクトを調べていたマクゴナガルは苛立ちを抑えながら「妹さんはなんともありません」と言ったが、アミカスは手で髪を掻き乱し歯を食いしばり唸り声を上げた。

 

 

「何ともねえもクソもあるか!妹が闇の帝王に捕まったらとんでもねえことになる!こいつはあの方を呼びやがった、俺の闇の印が焼けるのを感じた!あの方は、俺たちがポッターを捕まえたとお考えになる!」

「ポッターを捕まえた?どういうことですか?ポッターを捕まえたとは?」

「あの方が、ポッターはレイブンクローの塔に入ろうとするかもしれねぇって、そんでもって捕まえたら呼ぶようにって、俺たちにそう仰った!」

「ハリー・ポッターがなんでレイブンクローの塔に入ろうとするのですか?ポッターは私の寮生です!」

 

 

まさか、という驚きの声の中に、微かに誇りが含まれていることにハリーは気付く。胸の奥が熱くなり、マクゴナガルへの敬愛の気持ちがどっと溢れてくるのを感じた。

 

 

「俺たちは、ポッターがここに来るかもしれねえって言われただけだ!なんでもへったくれもねえ!」

 

 

マクゴナガルは立ち上がり、鋭い目で部屋を眺め回した。その目がハリー達が立っている場所を二度行き過ぎる。

 

 

「ガキ共になすりつけてやる。そうだ、そうすりゃいい。こう言うんだ。アレクトはガキ共に待ち伏せされた。上にいるガキ共によ。ガキ共が無理矢理妹に闇の印を押させた、だから、あの方は間違いの報せを受け取った。……あの方はガキ共を罰する。ガキが二、三人減ろうが減るまいが、たいした違いじゃねえだろう?」

 

 

罪のないレイブンクロー生にいやしくも濡れ衣を着せようとするアミカスに、ハリーとソフィアはマントの下で強い軽蔑の視線を向けた。

アミカスの醜い顔が狡賢く歪んだのを見て、ハリーを探していたマクゴナガルは鋭い目でアミカスを睨み、その愚かな案を一蹴する。

 

 

「真実と嘘の違い、勇気と臆病の違いにすぎません。要するに、あなたにも妹さんにもその違いがわかるとは思いません。しかし、一つだけはっきりさせておきましょう。あなたたちの無能の数々を、ホグワーツの生徒達のせいにはさせません。私が許しません」

「何だと?」

 

 

アミカスが進み出て、マクゴナガルに息が掛かるほど無遠慮に詰め寄った。マクゴナガルは一歩も引かず、彼の睨みに臆することなく便座に着いた不快な物でも見るようにアミカスを見下ろした。

 

 

「ミネルバ・マクゴナガルよ。あんたが許すだの許さないだのって場合じゃぁねえ。あんたの時代は終わった。今は俺たちがここを仕切ってる。俺を支持しないつもりなら、ツケを払う事になるぜ」

 

 

アミカスは憎々しく汚い顔で笑い、マクゴナガルの顔に唾を吐いた。

 

 

「してはならないことをやってしまったな」

「許さない」

 

 

透明マントを脱いだのは、ハリーが先かソフィアが先か。二人はアミカスが振り返る前に杖を振るい上げ叫んだ。

 

 

苦しめ(クルーシオ)!」

蛙に変身せよ(タスフォフルグ)!」

 

 

アミカスは醜い吹き出物で覆われたでっぷりとした蛙になり、宙に浮かび上がった。溺れるようにもがき、声なき叫びをあげ、本棚の正面に激突しびたんと鈍い音を立てへばりつく。

ソフィアは近くにある本を籠に変え、気絶した蛙を閉じ込めた。ぴくぴくと痙攣する蛙を見下ろし、沸き起こった怒りを何とか抑えようと深く深呼吸した。

 

 

「ポッター!ミス・プリンス!──い、いったいどうしてここに──?」

 

 

マクゴナガルは胸を押さえながら小声で叫び、落ち着こうと必死になりながらソフィアとハリーに駆け寄り「バカなまねを!」と叱りつけた。ハリーは禁じられた呪文を使い、ソフィアは人を獣に変身させた。許されることではないが、二人とも真っ直ぐな目でマクゴナガルを見つめる。

 

 

「こいつは先生に唾を吐いた」

「一生この姿で生きていくといいわ」

「ポッター、ミス・プリンス、私は──それは──とても雄々しい行為でした──しかし、わかっているのですか?」

 

 

「ええ、わかっています」と、ハリーはしっかりと答える。マクゴナガルが慌てていることが、かえってハリーを冷静にさせた。

 

 

「マクゴナガル先生、ヴォルデモートがやってきます」

「あら、もうその名前を言っていいの?」

 

 

ルーナが透明マントを脱ぎ捨て、面白そうに聞く。三人目の出現にマクゴナガルは衝撃を受け、よろよろと後退りしながら傍らの椅子に座り込んだ。

 

 

「あいつをなんて呼ぼうか同じことだ。あいつはもう、僕がどこにいるのか知っている」

「逃げないといけません。さあ、ポッター、ミス・プリンス、できるだけ急いで!」

「それはできません。僕たちはやらなければならないことがあります。先生、レイブンクローの髪飾りがどこにあるのか、ご存知ですか?」

 

 

今までレイブンクローの髪飾りが分霊箱であることは半信半疑だった。しかし、ソフィアの推理とヴォルデモートが「ポッターはここに来るかもしれない」と死喰い人に忠告した事によりそれは確実なものになったのだ。ヴォルデモートは、ハリーがレイブンクローの髪飾りを確認するかもしれないと考えていたのだろう。

 

 

「レイブンクローの髪飾り?もちろん知りません、何百年ものあいだ、失われたままではありませんか?」

「先生、この城に隠されている髪飾りを僕は見つけなければならないんです、髪飾りの可能性が高い──フリットウィック先生とお話しすることはできませんか?」

 

 

レイブンクローの寮監であるフリットウィックならば、なにか手がかりを知っているかもしれない。ハリーがそう聞いた時後ろから身じろぎの音が聞こえた。失神させられていたアレクトが呻き声をあげ意識を取り戻しており、ハリーとソフィアが動くよりも早くマクゴナガルが立ち上がり死喰い人に向かって杖を振るい鋭く唱えた。

 

 

服従せよ(インペリオ)!」

 

 

びくりと体を震わせた死喰い人はアミカスが落とした杖を拾ってぎこちない足取りでマクゴナガルに近づき、自分の杖とまとめて差し出した。そうするとふらふらとしながら気絶している蛙が入った籠を抱える。

マクゴナガルが再び杖を振るとアレクトの姿はくすんだ色をした蛙になり、開いた籠の中にぴょんと飛び込む。そのままがちゃりと扉は閉まった。

 

 

「ポッター、ミス・プリンス」

 

 

マクゴナガルは蛙の兄妹になったカロー兄妹の事など、ものの見事に無視し、再びハリーとソフィアに向き合った。

 

 

「あなた達がダンブルドアの遺した仕事で行動しているのは承知しています。私は名前を言ってはいけないあの人から、この学校を守りましょう。あなた達がその──何かを探している間は」

「できるのですか?」

「そう思います」

 

 

ヴォルデモートに対抗できるのはダンブルドアだけだとハリーは考えていた。しかし、マクゴナガルは簡単に、あっさりと頷くと驚き心配そうな顔をするソフィアとハリーに、僅かに挑戦的な顔で微笑みかける。

 

 

「先生方は知っての通り、かなり魔法に長けています。全員が最高の力を出せば、しばらくの間はあの人を防ぐことができるに違いありません。スネイプ教授も──」

 

 

マクゴナガルはソフィアを見たが、すぐにルーナを見て言葉を止め「スネイプ教授は、どうにかなるでしょう」と言い換えた。

 

 

「闇の帝王が、校庭の門に現れホグワーツがまもなく包囲されるという事態になるのであれば、無関係の人間をできるだけ多く逃すのが懸命というものでしょう。しかし、煙突飛行ネットワークは監視され、学校の構内では姿現しも不可能となれば──」

「手段があります」

 

 

ハリーが急いで口を挟み、ホッグズ・ヘッドへと繋がる抜け道について説明した。何百人という生徒だが、ヴォルデモートがホグワーツの境界周辺に注意を払っているのならばホッグズ・ヘッドから何人もが姿くらましをしても関心を払わないだろう。

 

 

「それはいい考えです。──さあ、他の寮監に警告を出さなければなりません。あなた達はまた、マントを被った方がよいでしょう」

 

 

マクゴナガルは扉まで進みながら杖を上げた。杖先から目の周りにメガネのような模様のある銀色の猫が三匹飛び出し、しなやかに先を走る。

ソフィア達が螺旋階段を下りる間、守護霊達が階段を銀色の灯りで満たす。四人が廊下を疾走すると一匹、一匹と方向を変え姿を消した。マクゴナガルが先頭を走り、その後をソフィアとハリーとルーナが追う。二階へと降りた時、もう一つのひっそりとした足音が加わった。

まだ額の疼きを感じていたハリーが最初にその音に気づき、誰なのか忍びの地図を出して確認しようとした時、マクゴナガルもその足音に気づき足を止めた。

 

 

「そこにいるのは誰です?」

 

 

敵かもしれない。杖を上げ決闘の体勢をとりながらマクゴナガルは暗がりに向かって緊張を孕んだ声を投げかける。

 

 

「我輩だ」

 

 

闇の中から、低い声が答えた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。