【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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458 二人で一つ

 

 

夜はたちまち元通りの暖かさや周囲の戦闘の音を取り戻し、ハリー達は詰まっていた息を吐いて現れたルーナ、アーニー、シェーマスの方を見た。

 

 

「助かった、君たちのおかげだ──もうダメかと」

 

 

ロンが震えながら、現れた三人に心からの感謝を言った時、森の中から吠えながら地面を震わせ、背丈よりも巨大な棍棒を振り回しながらゆらりゆらりと、新たな巨人が現れた。

 

「逃げろ!!」ハリーが叫ぶまでもなく、みんな逃げ出していた。次の瞬間には今まで彼らがいた場所に巨人の足が振り下ろされ棍棒が猛烈な勢いで通過した。

ソフィアとハーマイオニーとロンとルイスはハリーに従いてきていたが、ルーナ達は再び戦いの中に姿を消していた。どうか無事でいてくれ、とハリーは消えた三人を思い、強く願う。

 

 

「暴れ柳だ、行くぞ!」

 

 

ハリーが指示し、ソフィア達は必死に走った。

今は全ての悲しみを心の奥に封じ込め、走るしかない。愛する人々の安否がわからない恐怖を押し殺し、向かうしか生きる道はないのだ。走らなければならない、ヴォルデモートの側にいる蛇を殺さなければ、他に終わる道はない。

 

 

暴れ柳は周囲の異変を感知し、狂ったように枝を振り回していた。喉が焼けるように痛み、枯れた呼吸が絶えず溢れる中、ハリー達は暴れ柳を麻痺させる瘤を見つけようと闇を透かしてその太い幹を必死に見た。

 

 

「あそこよ!」

 

 

ハーマイオニーの叫びに、ソフィアが誰よりも早く反応し瞬く間にアニメーガスの姿になると暴れ柳の鋭利な枝の攻撃を素早く掻い潜り、まっすぐ幹に向かって駆けた。一箇所膨れている瘤に前足を乗せれば、身悶えし暴れていた古木はたちまち静かになった。

 

 

「完璧よ!」

「待ってくれ!」

 

 

ハーマイオニーが息を切らしながら古木に駆け寄ろうとした時、ハリーがそれを止めた。

一瞬、迷ったのだ。この先には大蛇がいるが、ヴォルデモートもいる。ヴォルデモートの思惑通りに動いているが、本当に彼らを連れて行っていいのか、彼らを危険な罠に引き込もうとしているのではないかと──一瞬迷った。

 

 

「ハリー、僕たちも行く!」

「とにかく入ろう!」

 

 

ロンがハリーを押し、ルイスは強く促した。

ハリーはされるがままに古木の根本に隠された土のトンネルに体を押し込んだ。その後にロンとハーマイオニーとルイスが続き、彼らは以前ここに入った時よりも閉塞感を覚えながら進む──そうだ、前よりも成長したんだ。

 

ソフィアはすでにアニメーガスを解き、油断なく杖を構えながら先に進んでいた。トンネルの天井は低く、半分這うようにして奥へと進む。

今にも恐ろしく危険な罠が襲い来るるのではないか、そう覚悟していたが何も出てこず、彼らは無言のまま移動した。先頭のソフィアが杖先に微かな光を灯し、それだけを頼りにハリー達は進む。

 

 

トンネルが上り坂になった時、ソフィアは行く手に細長い光の筋を見た。この先にヴォルデモートと大蛇がいる。ソフィアはすぐに灯りを消し、ハリー達の到着を待った。出口付近は今まで狭かったトンネルと違い、ハリーはソフィアの隣に並び身を伏せる。

 

 

「マントよ、このマントを着て!」

 

 

ハーマイオニーが囁き、持っていた透明マントを押し付ける。ソフィアとハリーは動きにくい姿勢からなんとかそれを受け取り被さった。

マントの下でハリーとソフィアは互いを見て頷き、息を殺してじりじりと前に進む。

ソフィアはマントの下で素早く杖を振るい自分たちがいる狭い範囲にだけ防音魔法と認識阻害魔法をかけた。

 

 

「防音魔法と認識阻害魔法をかけたわ。蛇はこっちが見えなくても、私たちの居場所を感知するかもしれないから」

 

 

防音魔法をかけていても、ソフィアは油断なく声量を落とし告げる。

いくつかの魔法をかけたとしても、相手はヴォルデモートだ、気休めにしかならないことは彼らも理解していたために慎重に、全神経を張り詰めながら細く差す光の方へ向かう。今にも冷たく通る声が聞こえるのでないか、今にも、緑の閃光が見えるのではないかと思い、息をするのも忘れて進んだ。

 

その時、微かな話し声が隙間から漏れ聞こえてきた。トンネルの出口は梱包用の古い木箱で塞がれていて、その声はくぐもりはっきりとは聞こえない。それでも、ソフィアとルイスにはその声がセブルスのものだとはっきりとわかった。

ソフィアとハリーは木箱ギリギリまで近づき、わずかな隙間から部屋の様子を覗き見た。

前方の部屋は薄ぼんやりとした灯りで照らされ、海蛇のようにトグロを巻いて美しい球体の中で浮かんでいる大蛇が見える。テーブルの端に、黒いローブ、それに杖を弄んでいる青白い指が見えた。ハリーが屈んで隠れている場所の、わずかな距離にセブルスとヴォルデモートがいるのだとわかり、ハリーは心臓が締め付けられたような気がした。

 

 

「──我が君、抵抗勢力は崩れつつあります」

「しかも、お前の助けなしでもそうなっている。熟達の魔法使いであるが、セブルス、今となってはお前の存在も、たいした意味がない。我々はもう間も無くやり遂げる──間も無くだ」

 

 

冷たい声に、ソフィアは自分の爪が手のひらを傷付けるのも厭わず強く握りしめた。ソフィアのローブを後ろからハーマイオニーが掴み、ぐっと引っ張る。「行っちゃダメ」と、その動作が伝え、ソフィアはなんとか飛び込むのを耐えた。

場の雰囲気はどう考えてもよくない。やはり、ヴォルデモートはセブルスに娘と息子がいるのだと知ってしまったのだろうか?裏切りを気付き、ゆっくりと時間をかけ追い詰め、断罪の時まで苦しむ様子を楽しんでいるのだろうか?

 

 

「小僧を探すようお命じください。私めがポッターを連れて参りましょう。我が君、私ならあいつを見つけられます。どうか」

 

 

セブルスもいつもと違うヴォルデモートの雰囲気を感じ取っていたため、一刻も早くここから離れなければならないと感じていた。──自分の必要性を解かなければならない、私はまだ伝えていない。これだけは、何があってもなさねばならない。

 

 

「問題があるのだ、セブルス」

「我が君?」

「セブルス、この杖はなぜ、俺様の思い通りにならぬのだ?」

 

 

ヴォルデモートは静かに言いながら、指揮者がタクトを上げる繊細さ正確さで、ふっとニワトコの杖を上げる。

セブルスはその杖をじっと見ながら沈黙した。杖のことなど、詳しく知る由もない。ただダンブルドアから奪ったものならば──何か阻害魔法がかかっているのではないか、と思った程度だ。

 

 

「……我が君、私には理解しかねます。我が君は──その杖で極めて優れた魔法を行なっておいでです」

 

 

しかし、そんな事を言えば機嫌を損ねさせ、緑の閃光が体を打ち抜くだろうとわかっていたセブルスは言葉を選びながら視線を近くで浮かんでいる大蛇へ向けた。

 

 

「──違う。俺様が成しているのは普通の魔法だ。たしかに俺様は極めて優れているのだが、この杖は……違う。約束された威力を発揮しておらぬ。この杖も、昔オリバンダーから手に入れた杖も、何ら違いを感じない」

 

 

ヴォルデモートの口調はあくまで静かであり、瞑想しているようだったが、ヴォルデモートが話すに連れハリーの傷痕はズキズキと疼き始めていた。うちに秘められた怒りが高まりつつあるのだと、ハリーは感じた。

 

 

「何ら違わぬ」

 

 

ヴォルデモートはもう一度静かに告げ、ゆっくりと部屋の中を歩き始めた。セブルスは身の危険を感じ、素早く目だけで辺りを見回すが出入り口は一つしかなく、逃げ出す前に死の呪いが自らを襲うだろう。

ヴォルデモートの気を落ち着かせ、安心させる言葉を探しているうちに、ヴォルデモートはさらに言葉を続ける──同時に、ハリーが受け取った痛みと怒りは高まっていった。

 

 

「俺様は時間をかけてよく考えたのだ、セブルス。……俺様がなぜ、お前を戦いから呼び出したかわかるか?」

「いいえ、我が君。しかし、戦いの場に戻ることをお許し頂きたく存じます。どうか、ポッターめを探すお許しを」

「お前もルシウスと同じことを言う。二人とも、俺様ほどにあやつを理解しておらぬ。ポッターを探す必要などない。あやつの方から俺様のところに来るだろう。あやつの弱点を俺様は知っている。一つの大きな欠陥だ。周りで他のやつがやられるのを、見てはおれぬやつなのだ。自分のせいでそうなっていることを知りながら、見てはおれぬのだ。どんな代償を払ってでも、止めようとするだろう。あやつは来る」

「しかし、我が君。あなた様以外の者に誤って殺されてしまうかもしれず──」

「死喰い人達には明確な指示を与えておる。ポッターを捕らえよ。やつの友人達は殺せ──多く殺せば殺すほど良い──しかし、あやつは殺すな、とな。しかし、俺様が話したいのはセブルス、お前のことだ。ハリー・ポッターの事ではない。お前は俺様にとって非常に有能だった。非常にな」

 

 

ヴォルデモートは歩みを止め、少し距離をあけてセブルスに向かい合う。その指先はいまだに杖を弄び、一見すると隙だらけに見えたが──セブルスは、杖を向ければ即座に殺されるとわかっていた。自分がどれだけ優れた魔法使いであっても、ヴォルデモートとの差は歴然だった。

 

 

「私めが、あなた様にお仕えする事のみを願っていると、我が君にはおわかりです。しかし──我が君、この場を下り、ポッターめを探すことをお許しくださいますよう。あなた様の元に必ず連れて参ります。私めにはそれができると──」

「言ったはずだ。許さぬ!」

 

 

ヴォルデモートが鋭く叫ぶ。

闇の中でもわかるほど、彼の目は獰猛に光っていた。マントを翻し一歩一歩とセブルスに歩み寄る音は、まるで蛇が獲物を狙っているようだった。ハリーは額の焼けるような痛みでヴォルデモートの苛立ちを感じた。

ソフィアとルイスは、心臓が口から飛び出そうなほど煩く激しくなっている事に気づいていた。嫌な予感に、背筋が凍え、手や体は小さく震えている。死の足音が、ここまで聞こえてくるようだ。

 

 

「俺様が目下気掛かりなのは、セブルス、あの小僧とついに額を合わせたときに何が起こるかということだ!」

「我が君、疑いの余地はありません。必ずや──」

「──いや、疑問があるのだ、セブルス。疑問が」

 

 

ヴォルデモートは立ち止まり、ぐらぐらとした苛立ちを鎮めて告げた。張り詰めた空気、嫌な空気にセブルスは思わず、一歩後ろに下がる。

 

 

「俺様の使った杖が二本とも、ハリー・ポッターを仕損じたのはなぜだ?」

「わ──私めにはわかりません。我が君」

「わからぬと?俺様のイチイの杖は、セブルス、何でも俺様の思うがままにことを成した。ハリー・ポッターを亡き者にする以外はな。あの杖は二度もしくじりおった。オリバンダーを拷問したところ、双子の芯の事を吐き、別な杖を使うようにと言いおった。俺様はそのようにした。しかし、ルシウスの杖はポッターの杖に出会って砕けた」

「──私めには、説明できません」

「俺様は、三本目の杖を求めたのだ。セブルス。ニワトコの杖、宿命の杖、死の杖だ。前の持ち主から、俺様はそれを奪った。アルバス・ダンブルドアの墓からそれを奪ったのだ。──この長い夜、俺様が間も無く勝利しようという今夜、俺様はここに座り考えに考え抜いた」

 

 

ヴォルデモートは殆ど囁き声で言いながら指先でニワトコの杖を撫でた。不穏な空気はより濃く重くなり、セブルスはごくり、と固唾を呑みローブの下で強く杖を握る。

 

 

「なぜこのニワトコの杖は、あるべき本来の杖になることを拒むのか……なぜ、伝説通りに正当な所有者に対して行うべき技を行わないのか……そして、俺様はどうやら答えを得た」

 

 

セブルスは無言でヴォルデモートを見た。首に杖を突きつけられているような気持ちになりぞわりと首筋に鳥肌が立つ。セブルスはヴォルデモートが何を言いたいのか──何をするつもりなのか察していた。

 

 

「おそらくお前は、すでに答えを知っておろう?なにしろ、セブルス、お前は賢い男だ。お前は、忠実な良き下僕であった。これからせねばならぬことを、残念に思う」

「我が君──」

「ニワトコの杖が、俺様にまともに仕えることができぬのは、セブルス、俺様がその真の持ち主ではないからだ。ニワトコの杖は、最後の持ち主を殺した魔法使いに所属する。お前がアルバス・ダンブルドアを殺した。お前が生きている限り、セブルス、ニワトコの杖は真に俺様のものになる事はない」

「我が君!」

 

 

セブルスが抗議の声を上げ、ローブから杖を抜いた。

それと同時にソフィアが向こうとこちらを隔てる木箱に飛びかかり、ハリーがすぐにソフィアを抱きしめ地面に押し付ける。後ろではもがくルイスをハーマイオニーとロンが必死に掴み地面に押し付けていた。

 

 

「離して!!」

 

 

ソフィアは無我夢中で暴れ、叫び、ハリーの頬を爪で引っ掻いた。ハリーの眼鏡はずれ、頬に痛みが走ったがハリーは押さえつける手を緩める事はなく──むしろ強くソフィアを抱きしめた。まだ防音魔法がかかっているこの場だから知られずにすんでいるだけだ。少しでも木箱に触れてしまえば護りの外になり、こちらの居場所が知られる。ソフィアまで、殺されてしまう。

 

 

「これ以外に道はない──」冷たい声が響く。ハリーとロンとハーマイオニーは体の奥まで凍りつきながら、必死にソフィアとルイスが飛び出さないよう押さえつけた。後で恨まれようが、嫌われようが、暴れ、父の元へ向かいたいと叫ぶ彼らを許すわけにはいかない。

「嫌──駄目──」ソフィアは目を見開き、木箱へと向かって手を伸ばした。

 

 

「セブルス、俺様はこの杖の主人にならなければならぬ。杖を制するのだ。さすれば俺様はついにポッターを制する」

 

 

ヴォルデモートはニワトコの杖で空を切った。

大蛇の檻が空中で回転し、セブルスは防御する間もなく、その中に飲み込まれた。いくつか魔法を放ったが、その檻の中で魔法が発現することは無い。

 

「殺せ」その言葉が聞き取れたのは蛇語がわかるハリーだけだった。

 

 

「いやああああっ!!」

 

 

ソフィアの絶叫が、くぐもったうめき声と、肉に噛み付くぐちゃりとした音を掻き消した。

セブルスは自身の首に歯を突き立てた大蛇をなんとか剥がそうとしたが、毒を持っているのか指や足から力が抜けていく。セブルスは、口から呼吸と共に血の塊を吐き、その場に膝をついた。崩れ落ち、壁に背中を預けながら咄嗟に力の入らない手で首を押さえるが、血は心臓の鼓動に合わせて血を噴出させ指の間から滝のように鮮血が流れ落ちる。

 

 

「残念なことよ」

 

 

ヴォルデモートは背を向けた。その言葉に同情も、情けも、悲しみも、後悔もない。

セブルスから離れた大蛇を連れてヴォルデモートはすぐにその場から姿くらましをし、今こそ自分の命に従うはずの杖を持ち城へと向かった。

 

 

バシン、と姿くらまし独特の音が響いた途端、ソフィアはハリーの腹を蹴り上げ一瞬ハリーの押さえつけている力が弱まった隙に這い出て木箱を強く押した。

ハリーとロンとハーマイオニーは、蒼白な顔でそれを眺める事しかできず、すぐに三人を押し退けルイスもまた部屋の中に飛び込んだ。

 

 

「父様!!」

「そんな!嫌だ!」

 

 

セブルスの目は薄く開き、子ども達の声に反応して瞼がわずかに震えた。「なぜ」その言葉は声にならず、代わりにごぽりと泡だった血が吐かれる。

ソフィアとルイスは強い死の予感と、血の臭いにその場に崩れ泣き喚きそうになったが──ぐっと拳を握り気を奮い起こした。

 

 

泣き喚いているだけの子どもではない。私たちは、ずっと戦ってきた、辛い日々を乗り越えてきた。もう大人の魔法使いなんだ。泣き喚いて、何もできない子どもじゃない!大切な人を、この手で救うことだってできるはずだ!

 

 

ソフィアとルイスはすぐにセブルスに駆け寄り状態を確認した。二人の顔は蒼白だったが、それでも目だけはしっかりと動き冷静そのものだった。

首の怪我が深刻だ。大きな血管を傷つけているのか、鼓動と共に血が吹き出している。つまり、問題は失血死だろう。あの蛇はアーサーの時もそうだったが即死させる事はない──ヴォルデモートは、獲物がじわじわと死の足音に怯えながら死にゆくのが好きなのだ。

 

 

「父様、大丈夫。死なないわ。死なない、死なせない!」

「回復魔法、首にかけるね。ソフィア、増血薬は?」

「持ってるわ。それにあの大蛇の毒消しもね。絶対死なせない」

 

 

ソフィアは素早く鞄の中に杖を突っ込み、幾つかの瓶を引き寄せ素早く蓋を外し血を流す首元に垂らした。傷口から灰色の煙が上がりセブルスは呻き声を上げる。出血の速度は緩やかになったが、それでも首を抉る傷は治癒される事なく見えている。

 

セブルスは僅かに目を動かし、ソフィアとルイスの後ろで蒼白な顔をして黙り込んでいるハリーを見た。──伝えなければならない、これは私の残された最後の仕事だ。

 

 

「これを……これを、取れ」

 

 

血以外の銀色の液体がセブルスの首の傷や口、両目から溢れていた。ハリーは自分を射抜くセブルスの暗い瞳に一瞬躊躇ったが、それでも治療を続けるソフィアとルイスの間に屈み込む。ハーマイオニーが鞄の中からフラスコを取り出し、ハリーの手に震えながら押しつけた。

 

ハリーは杖でその銀色の物体をフラスコに汲み上げる。それを見届けたセブルスは、眉に深く刻んでいた皺を少し緩めゆっくりと瞬きをしソフィアとルイスを見た。

 

 

「ソフィア……ルイス……」

「っ──止めて!父様、喋らないで!絶対に、絶対に助けるから!」

「血が──なんで、止まらない──」

 

 

ルイスは何度も治癒魔法を唱えていたが、セブルスの首に深く刻まれた傷が塞がる事はなかった。増血薬を飲ませても血は吹き出し続け意味がない。今にも止まりそうなほど、セブルスの呼吸はか細く血が混じり、死に際の苦しさを物語っていた。

 

 

どうして?なんで、今まで私たちは何を学んでいたの?私たちは、大切な人を守るために──生きるために、魔法を学び戦ってきた!それなのに、大切な人を守れないなんて──。

 

 

ソフィアは浮かんできた涙でぼやけた視界を必死に擦り、強い目でセブルスを見る。諦めてたまるものか、死なせるわけにはいかない──!

 

 

「ルイス!」

「──っ」

 

 

ルイスの冷たい手を強く握る。ルイスは詰まっていた呼吸を吐き出し、今にも泣きそうな──絶望した目でソフィアを見たが、ソフィアの視線の強さに息を呑み、ぐっとその手を強く握り返す。

ソフィアは諦めていない。最後まで足掻くと、父様を助けると、強く思っている。

 

 

「私たちならできるわ。だって私たちは──」

 

 

ソフィアはセブルスの首元に杖を突きつける。その目は、確かな意志と強さを持っていた。

 

 

そうだ──僕たちは、二人で一つ、二人で、一人前なんだ。

 

 

傷よ、癒えよ(ヴァルネラ・サネントゥール)──!」

 

 

ソフィアとルイスは手を強く繋ぎ、同じ思いでその魔法を唱えた。

互いを繋ぐ手から、暖かいものが流れ出ているような気がした。それは体の中を通り、心臓を強く打ち、杖腕へと流れ出る。二人の想いと、違わぬ願いを乗せ発現された魔法は銀色に眩く輝き、セブルスを優しく包み込んだ。

 

 

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