【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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461 真実

 

 

ハリーは何度も時間を飛び、セブルスの過去を見て、ダンブルドアとの密会を知った。

ダンブルドアがセブルスに何を望み、セブルスが何をしてきたのか。全てはハリー・ポッターを守るためではなく、アリッサの願いを──約束を守るためだった。

それについては、ハリーは妙に納得した気持ちだった。むしろ、長年の悩みが一つ消えたような気がしていた。何年もその約束をひたすらに守り、影でダンブルドアの命に従い、一方でハリー・ポッターの存在を憎み、苦しんでいた。

 

何故こんな記憶を見せたのだろうか。

死の間際、虐げてきた自分への懺悔のつもりなのか?──ハリーは複雑な気持ちでさまざまな光景をただ見ていた。

 

 

場面が変わる。今度はまたダンブルドアの校長室になり、窓の外は暗くフォークスは止まり木に静かに止まっていた。

身動きもせず座っているセブルスの周りを歩きながら、ダンブルドアは自分自身に言うように話していた。

 

 

「ハリーは知ってはならんのじゃ。最後の最後まで。必要になるときまで。さもなければ為さねばならぬことをやり遂げる力が、出てくるはずがあろうか?」

「しかし、何を為さねばならないのです?」

「それはハリーとわしの二人だけの話じゃ。さてセブルス、よく聴くのじゃ。そのときは来る──わしの死後に──反論するでない。口を挟むでない!ヴォルデモート卿が、あの蛇の命を心配しているような気配を見せる時が来るじゃろう」

「ナギニの?」

「さよう。ヴォルデモート卿が、あの蛇を使って自分の命令を実行させる事をやめ、魔法の保護の下に安全に身近に置いておく時が来る。そのときは、たぶん、ハリーに話しても大丈夫じゃろう」

「何を話すと?」

 

 

ダンブルドアは深く息を吸い、目を閉じた。

 

 

「こう話すのじゃ。ヴォルデモート卿があの子を殺そうとした夜、リリーが盾となって自らの命をヴォルデモートの前に投げ出した時、死の呪いはヴォルデモートに跳ね返り、破壊されたヴォルデモートの魂の一部が、崩れ落ちる建物の中に唯一残されていた生きた魂に引っかかったのじゃ。ヴォルデモート卿の一部が、ハリーの中で生きておる。その部分こそがハリーに蛇と話す力を与え、ハリーには理解できないでいることじゃが、ヴォルデモートの心との繋がりをもたらしているのじゃ。そして、ヴォルデモートの気づかなかったその魂のかけらが、ハリーに付着してリリーに守られているかぎり、ヴォルデモートは死ぬ事ができぬ」

 

 

ハリーはダンブルドアとセブルスが目の前にいるにも関わらず、遥か遠くにいるような気がした。二人の声は──いや、ダンブルドアの声は奇妙に反響して脳を揺さぶり、思考を鈍らせる。

暫く沈黙が続いた後、セブルスがゆっくりと口を開いた。

 

 

「するとあの子は、──ハリー・ポッターは、死なねばならぬと?」

「しかも、セブルス、ヴォルデモート自身がそれをせねばならぬ。そこが肝心なのじゃ」

「……私はこの長い年月……アリッサの願いのために、我々はあの子を守っていると思っていた」

「わしらがあの子を守ってきたのは、あの子に教え、育み、自分の力を試させる事が大切じゃったからじゃ。──その間、二人の結びつきはますます強くなっていった。寄生体の成長じゃ。わしは時々、ハリー自身がそれにうすうす気づいているのではないかと思った。わしの見込み通りのハリーなら、いよいよ自分の死に向かって歩み出すその時には、それがまさにヴォルデモートの最後となるように、取り計らっているはずじゃ」

 

 

ダンブルドアは閉じていた目を開け、セブルスを見た。セブルスは酷く衝撃を受けた表情でダンブルドアを睨み、足の上でぐっと拳を握りなんとか湧き起こる感情を抑えてつけているように見えた。

 

 

「あなたは、死ぬべき時に死ぬ事ができるようにと、今まで彼を生かしてきたのですか?」

「そう驚くでないセブルス。今まで、それこそ何人の男や女が死ぬのを見てきたのじゃ?」

「最近は、私が救えなかった者だけです。……あなたは、私を利用した。……アリッサの願いも、そして──そして、ソフィアの想いも。あなたには想定通りなのでしょう」

「はて?」

「あなたは、全てを踏み躙った上で、ハリー・ポッターを屠殺されるべき豚のように育てたのだと言う──」

「なんと、セブルス。結局、あの子に情が移ったと言うのか?」

 

 

ダンブルドアは真顔でセブルスに問いかけ、セブルスは立ち上がると憎々しげにダンブルドアを睨みながら「違う」と吐き捨てた。

 

 

「私は、アリッサとソフィアの想いに従ったまでだ」

「ならば、その残された子であるソフィアを生かすためだと、わかっておるじゃろう?」

「ソフィアの心が引き裂かれても?彼が死ぬ事で、ソフィアが嘆き苦しんだとしても?」

「若ければ若いほど、傷は治りやすいというものじゃよ、セブルス」

「あなたは──あなたは、残酷な人だ。それこそ闇の帝王と何ら変わらない」

 

 

セブルスは爆発しそうな感情をなんとか抑え込み、それだけを苦し紛れに呟いた。ダンブルドアは全く涼しい表情で微塵も傷付かず「そうじゃろうとも」と頷き──少しだけ微笑んだ。

 

 

 

 

目の前の光景がぼやけていく。

ハリーの体は上昇し、憂いの篩から抜け出ていった。校長室の埃っぽい絨毯の上にうつ伏せになった体を押し付け、ハリーはズレた眼鏡のせいで不明瞭な世界をぼんやりと見つめていた。

とうとう真実が──最後に課せられた任務を知ってしまった。両手を広げて待ち受ける死に向かって、抵抗する事なく歩き受け入れる。それが最後にして最大の任務だったのだ。

 

ハリーは絨毯の毛を頬に感じながら、予言の事を思い出していた。

一方が生きる限り、他方は生きられぬ。──今まで、一人しか生きられぬのだと思い込んでいた。しかし、よく考えてみれば両者が生きることは不可能だが、両者が死ぬ事は、可能なのだ。

 

 

ハリーは心臓が激しく動き、胸板に打ち付けるのを感じた。死を恐れるハリーの胸の中で、その心臓はハリーを生かすために動き続けている。しかし、この心臓は止まらなければならないのだ。それも、後数分のうちに──後何回か打つだけで、終わらなければならないのだ。

 

ハリーは恐怖に支配されながらも、死から逃げ出そうとは思わなかった。どんな時でも生きる意思が強かった、輝かしく平和な未来を夢見て、どんな危険な事も乗り越えてきた。それの全てが終わるのだ、残されている道はただ一つ、死ぬ事だけだ。

 

歴代校長の肖像画が無いにも関わらず、ハリーは自分の指の震えを隠そうとして強く手を握りながら、ゆっくり──本当にゆっくりと体を起こした。

 

ダンブルドアは、自分に生きて欲しいのだと思っていた。だがそれはただの思い込みで勘違いだった。それよりもより大きく、世界のためになる──より大きな善の為の計画があった。愚かにもハリーにはそれが見えなかっただけなのだ。ヴォルデモートを倒す為の旅、ヴォルデモートの命を一つずつ潰していく旅は、自分の生命の絆をも断ち切り続ける事だった。

何人もの命を無駄にする事なく、すでに死ぬべきとされている少年に危険な任務を与える。その少年の死自体が惨事ではなく、ヴォルデモートにとって新たな痛手を与える一撃だった。

 

それに、ダンブルドアはハリーが死を回避しないという事も理解していた。──ハリーはかすかに微笑む。僕は、ダンブルドアを理解していないのに、ダンブルドアはこんなにも僕を理解している!それの、なんて鮮やかなことか!

 

ハリーは、自分のために他の人を死なせたりしない。ダンブルドアもヴォルデモート同様、そういうハリーを知っていた。何年も手間ひまかけて、ハリー・ポッターを育て理解してきた。

 

大広間に横たわっていたフレッド、リーマス、トンクス、ジャック、友人たちの亡骸が否応なしにハリーの脳裏に蘇り、ハリーは一瞬息ができなくなった。死は、もうハリーを待たない──。

 

しかし、ダンブルドアが予想できなかった問題が一つ残っている。ダンブルドアは、ハリーが終わる時に分霊箱は全て破壊されていると予想していた。だが、ヴォルデモートを地上に結びつける分霊箱の一つだけまだ──あの大蛇は生き残っている。ハリーが殺された後、その任務は誰がやるにしろ簡単な物にはなるだろう。誰が成し遂げるのだろうか、全てを知っているロン、ハーマイオニー、ソフィアの三人だろうか──。

 

校長室の螺旋階段をゆっくりと下りていたハリーは足を止めた。

唐突に理解したのだ。セブルス・スネイプがホグワーツから出る時に言った言葉。あの言葉はソフィアに対してだと思っていた。しかし、あれはきっと僕に向けられた言葉なのだ。

 

セブルス・スネイプは、ハリーを守ろうとはしていない。

亡き妻のアリッサの願いを叶えるため、ソフィアを悲しませないために──結果として、ハリーを守ることになっただけだ。

そんなセブルスが、あの時言った言葉の真意は、おそらくダンブルドアが言ったように──。

 

 

ハリーは手摺りを強く握り、目を閉じた。

さまざまな思いが、積み重なった願いが窓を打つ雨のようにハリーに降り注ぐ。

真実という、妥協を許さない現実。──真実、ハリーは死ななければならない。

 

 

目を開き、止めていた歩みを再開させた。

ソフィアとロンとハーマイオニーに、別れの挨拶も説明もするまいとハリーは心に決める。きっと──三人が全てを知ったならば、何があっても止めるだろう。それしか方法が無いにも関わらず、それが真実にも関わらず。止めてくれる。だからこそ、ハリーは三人と会うわけにはいかなかった。

 

 

城には誰もいなかった。肖像画も空であり、ゴーストもいない。城全体が不気味な静けさで覆われる中、ハリーは自分がもう死んでゴーストになり、徘徊しているのではないかと感じたほどだった。──城にある全ての生命は、残っている温かい血は、死者や哀悼者で満たされている大広間にいるのだろう。

 

ハリーは透明マントを被り、順に下の階へと向かった。薄暗く破壊されている廊下──それでも、なんて懐かしいのだろうか、胸がこんなにも痛む。

ハリーは大広間へと続く扉をじっと見た。今すぐにこの中に入れば──いや、ダメだ。──ゆっくりと、重い足を必死に動かし、大理石の階段を下りて玄関ホールに向かった。

一歩進むたびに胸の奥が重くなっていく。心の片隅で、誰かがハリーを感じ取りハリーを見て、引き留めてくれる事を期待していたのかもしれない。しかし、マントはいつものように完璧にハリーを隠し、誰もハリーを見通すことはできなかった。

 

 

簡単に玄関扉に辿り着いたハリーは、危うくネビルと衝突しそうになった。ネビルはオリバーと組みながら校庭に残されていた遺体を運んでいたらしい。その閉じられた瞳の主は──コリン・クリービーだった。きっと、未成年なのに戦いに参加したくて、勇気を奮い起こして戻ってきたのだ、そして、死んでしまった。

 

二人でコリンを運んでいたが、コリンは幼く体が小さい。オリバー一人で運んだほうが楽だと途中で気がつき、オリバーは大広間に向かい、ネビルは暫く扉の枠にもたれて、額の汗を手の甲で拭った。ネビルは少しの間だけ休むと、すぐにまた遺体を回収するために暗い夜の中へ向かっていった。

 

ハリーはもう一度だけ、大広間の入口を振り返った。時々扉は開き中の様子がちらりと見えたが、その一瞬ではハリーの愛する人たちの姿は見当たらなかった。

本当は、残された時間を全て差し出してでも、最後に一目見たかった──だが、最後の一目で、それを見納めにして死に向かう事などできるだろうか?

 

 

石段を下り、暗闇に足を踏み出す。朝の四時近くであり、遠くの方に闇の中に薄紫色が見えた──もうすぐ夜明けなのだろう。この朝日を、僕は見ることはできないのだ。

静寂の暗闇に追い立てられながら、ハリーは別の遺体を覗き込んでいるネビルに近づいた。

 

 

「ネビル」

「うわ!──ハリー!心臓麻痺を起こすところだった!」

 

 

ハリーはマントを脱ぎ、飛び上がり心臓の上を押さえるネビルの前に立った。念には念を入れたいという思いから、突然ふっと思いついた事があったのだ。

 

 

「一人でどこに行くんだい?」

「予定通りの行動だよ。やらなければならない事があるんだ。ネビル、ちょっと聞いてくれ」

「ハリー!まさか、捕まりに行くんじゃないだろうな?」

 

 

ネビルは怯えた顔でハリーの肩を掴む。ハリーは「違うよ」と息を吐くように嘘をついた。

 

 

「もちろんそうじゃない。別のことだ。……でも、暫く姿を消すかもしれない。ネビル、ヴォルデモートの蛇を知っているか?あいつは巨大な蛇を飼っていて、ナギニって呼んでる」

「聞いたことあるよ。……どうかした?」

「そいつを殺さないといけない。ソフィアとロンとハーマイオニーは知っていることだけど、でも、もしかしたら三人が──」

 

 

ハリーは言葉を途切れさせた。

その可能性を考えるだけでも息が止まるほど恐ろしい。もし、三人が死んだらその時は──だなんて。簡単に話すことはできない。しかし、やらなければならない。ダンブルドアのように、念には念をいれて、冷静に万全を期して予備の人間を用意し、別の人間が遂行できるようにしなければならない。

 

 

「もしかして三人が──忙しかったら──そして君にそういう機会があったら──」

「蛇を殺すの?」

「殺してくれ」

「わかったよ、ハリー。君は大丈夫なの?」

「大丈夫さ、ありがとうネビル」

 

 

ハリーは困ったような微笑みを見せ、去ろうと背を向けた。しかしネビルは真剣な顔でハリーの去り行く手首を掴み「僕たちは全員戦い続けるよ、わかってるね?」と念を押した。

 

 

「ああ、僕は──」

 

 

胸が詰まり、言葉が途切れる。小さく震えるハリーを、ネビルは変だと思わなかったらしく、ハリーの肩を軽く叩いて再び遺体探しへと向かった。

 

ハリーはマントを被り直し、歩き始める。

そこからあまり遠くないところで、誰かが動いているのが見えた。そっと近づいたハリーは、その場に凍り付いたように立ち竦む。

 

 

「ごめんなさい」

「もう謝らないで、あなたは悪くないわ」

「ごめんなさい、ごめんなさいソフィア……私を助けたから、ジャックは──」

「あなたの命が助かって、本当に良かったわ。ジャックは──子どもが好きなの、だから、だから──大丈夫よ。あなたが無事でよかった」

 

 

しゃがみ込み、顔を覆い泣いている彼女のそばにソフィアは寄り添い、その小さくなった背中を撫でていた。ソフィアの頬には涙の跡が残り、目元は赤い。ジャックを思って、違う世界へ逝ってしまった彼らを思って泣いたのだろう。

 

 

「大丈夫よ、大丈夫だから──」

 

 

ソフィアの声は震えていた。「大丈夫」それは自分に言い聞かせているのだろう。ヴォルデモートが提示した時間まで後三十分もない。その後ヴォルデモート本人が戦いに参加したとき、どうなるのか──何人が生き残るのか。ソフィアは強く目を閉じ、「大丈夫」と何度も呟き寄り添った。

 

 

ハリーの背筋をざわざわとした冷たいものが通り過ぎた。

闇に向かって、死に向かって大声で叫びたかった。──ここにいる事を、ソフィアに知って欲しかった。ソフィアを抱きしめて、手を引いて、そのまま二人でどこか遠くに行って、家を買って、隠れ暮らしたかった。

 

最後の時までそばにいたい。ソフィアとハリーのたった一つの願いは、叶わぬ願いなのだと、ハリーにはわかっていた。たった一人の愛しい人に、決められた死へのレールを歩かせることなどできなかった。

 

 

ハリーは力を振り絞り、歩き始めた。そばを通り過ぎるとき、ソフィアが顔を上げ振り返るのをハリーは見た気がした。通り過ぎる気配を感じ取ったのだろうか──ハリーは声をかけず、振り返る事もなく鬱蒼とした森へと向かった。

 

 

 

 

 

禁じられた森の中、ハリーは首から下げていた巾着を手繰り寄せ、凍える指先で中からスニッチを取り出した。私は終わる時に開く。──あの時は、この言葉の意味がわからなかった。しかし、今はこんなにも簡単に理解ができる。

 

ハリーは金色の金属に唇を押し当て、「僕は、間も無く死ぬ」と囁く。

金属の殻がぱっくりと割れ、中には黒い石があった。ニワトコの杖を表す縦の線にそって、その蘇りの石は割れていたが、マントと石を表す三角形と円形はまだ識別できた。

 

あの人たちを呼び戻すのではない。呼び戻さなくても、すぐ自分もその仲間にはいるのだ。あの人たちを呼ぶのではなく、あの人たちが僕を呼ぶのだ──。

 

ハリーは目を閉じ、手の中で石を三度転がした。

何もいなかった、何の音もしなかった世界に微かな気配が生まれる。

儚い何かが、小枝や石を踏み、ゆっくりとこちらに向かっている音がした。ハリーはゆっくりと目を開け、離れた場所に立つ彼らを見た。

ゴーストではない、かといって本当の肉体を持ってもいない。日記から抜け出したあのリドルの姿に最も近いとハリーは漠然と思う。

生身の体ほどではないが、しかしゴーストよりもずっとしっかりした姿で、それぞれの顔に愛情が灯った微笑を浮かべてハリーに近づいてきた。

 

ジェームズは、ハリーと全く同じ背丈だった。死んだ時と同じ服装で、髪は同じようにくしゃくしゃ。メガネは片側が少しだけ下がっている。

リーマスはハリーが知っている生前の姿よりもずっと若かった。見窄らしくなく、髪の色も濃い。顔に疲れたような皺もない。

リリーは、誰よりも嬉しそうに微笑んでいた。髪にかかる長い髪を後ろに流して、ハリーに近づきながらハリーに似た目で、見飽きることがないというように、ハリーの顔を眺めていた。

 

 

「あなたはとても勇敢だったわ」

「お前は殆どやり遂げた。もうすぐだ……父さんたちは鼻が高いよ」

 

 

「苦しいの?」子どもっぽい質問が、ついハリーの口をついて出た。少しでも、話していたい──この幸せの中に、身を落としたい。

 

 

「眠りに落ちるよりも早く、簡単だよ。それに、あいつは素早く済ませたいだろうな」と、リーマスが優しく答える。ハリーはリーマスを見て、「僕、あなたたちに死んでほしくなかった」と囁いた。

 

 

「誰にも。許して──男の子が生まれたばかりなのに……リーマス、ごめんなさい」

 

 

ハリーは誰よりもリーマスに許しを願った。心から、許しを願った。リーマスは悲しそうに微笑み森の向こう側を見た──遺してきた者がいる、家の方角だろう。

 

 

「私も悲しい。息子のこれからを知ることができないのは残念だ。……しかし、あの子は私が死んだ理由を知って、きっとわかってくれるだろう。私は、息子がより幸せに暮らせるような世の中を作ろうとしたのだとね」

 

 

森の中心から冷たい風が吹き、ハリーの前髪を揺らした。この人たちの方から、ハリーに奥に向かえと言わない事を、ハリーは知っていた。決めるのは、ハリー自身で無いといけないのだ。

 

 

「一緒にいてくれる?」

「最後の最後まで」

「あの連中には、みんなの姿は見えないの?」

「私たちは、君の一部なんだ。他の人には見えないよ」

 

 

ハリーはジェームズ、リーマスを見た。

そして最後にリリーを見て「そばにいて」と静かに告げる。

 

 

そしてハリーは森の奥へと歩き出した。

吸魂鬼がそばに隠れ潜んでいるのか、凍えるような寒さが足元に忍び寄っていたが、彼らの存在を感じているハリーは少しも挫けることはなかった。

 

深い闇の中を進みながら、ハリーはソフィアを思い──木々の隙間から輝く星を見上げた。

 

 

 

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  • スネイプ家の過去、アリッサとセブルス編
  • 呪いの子編
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