寮生が少しずつ自室へと戻り、談話室には人気がなくなってきた。ハリー達は徐々に緊張し、言葉少なに決行の時を静かに待つ。
最後、リーが談話室から出ていった時、ハリーは透明マントを取りに急いで自室へと戻り、すぐにまた談話室へと帰ってきた。
「ここでマントを着てみた方がいいんじゃない?4人も入れるかしら…」
「大丈夫だよ、一度4人で入った事があるから」
ハーマイオニーの不安げな声に、ハリーが答える。そういえば、ルイスはどうしたんだろう、夕食の時にも居なかったし。そう、ハリーはふと思ったが、今からする事が無事に終わってからソフィアに聞こうと考えた。
「君たち、何してるの?」
部屋の隅からネビルが現れ、手にトレバーを掴みながらハリー達をじろじろと見る。
「なんでもないよ、ネビル。なんでもない」
「また外に出るんだろ。外に出てはいけないよ、また見つかったら、グリフィンドールはもっと大変な事になる」
ネビルは責めるようにハリー達に言ったが、ハリー達も流石にすぐに引くことは出来ない。
いつものネビルならすぐに引き下がったが、ネビルは出口の肖像画の前にさっと立ちはだかると、両手を震わせながらも、決意に満ちた目でハリー達を見た。
「僕、僕…君たちと戦う!」
「ネビル、そこをどけ、バカはよせ!」
「バカ呼ばわりするな!もうこれ以上規則を破ってはいけない!恐れずに立ち向かえと言ったのは君じゃないか!」
ロンに向かってネビルは叫び、その手を振り回した。ロンはイライラとしながら頭を掻きむしる。
「ああ、そうだ、でも立ち向かう相手は僕たちじゃない!」
「──
ソフィアの静かな呪文が響き、ネビルの両腕がびちりと体の脇に張り付き、両足が閉じる。身体が硬くなり一枚板のようになったネビルは驚愕の表情のまま、うつ伏せにばったり倒れた。
「ネビル、ごめんね。私たち急いでるの…後でちゃんと解きにくるわ」
ソフィアはネビルの側に座ると、呼吸が出来るようにネビルをひっくり返す。ネビルは目だけを動かし、恐怖に満ちた目で4人を見ていた。
「ネビル…こうしなくちゃならなかったんだ、わけを話している隙がないんだ」
「あとで、きっとわかるよ、ネビル」
「ああ…!ネビル、ごめんなさいね」
ハリーとロン、ハーマイオニーは口々にネビルに言い、ソフィア達はネビルを跨ぎ透明マントを被った。
なるべく急いでソフィア達は四階へと向かった。少しの物音でびくりと身体をこわばらせ、フィルチが来たのではないかと不安になり。途中でピーブズに気付かれそうになりながらもハリーの機転でなんとか突破し、彼らはようやく目的地へ到着した。
禁じられた廊下に続く扉は、僅かに開いていて、それを見てハリーが唸るように呟く。
「ほら、やっぱりだ。スネイプはもうフラッフィーを突破したんだ。…君たち、戻りたかったら、恨んだりしないから戻ってくれ。マントも持って行っていい、もう必要ないから」
「バカ言うな」
「一緒に行くわ」
「早く行きましょう」
ロンとハーマイオニーとソフィアの答えに、ハリーは扉を押し開けた。
扉は軋みながら開き、すぐに獣の唸り声が響く、ソフィア達はごくりと固唾を飲み、そっと扉をくぐった。
「…見て、ハープがある、きっとあれで眠らせたのね」
「…僕が笛を吹く、さあ、始めよう」
ハリーが横笛に口を当てた。音楽とも言えない旋律だったが、すぐにフラッフィーはトロンと目を眠たげに瞬かせ、そしてよろよろとたたらを踏み、膝をついて座り込みゴロンと床に横たわり大きな寝息を立て始めた。
4人はマントを抜け出し、そっと仕掛け扉へと向かう。
「扉は引っ張れば開くと思うよ。…ハーマイオニー、先にいくかい?」
「いやよ!」
「ロン、一緒に行きましょう。私1人では重くて開けられないかもしれないわ」
「…ようし!」
ハーマイオニーは首をちぎれんばかりに振って拒絶したが、ソフィアはすぐにフラッフィーの足をぴょんと跨ぐとすぐに屈んで扉の引き手を持った。
ロンも決心がついたのか慎重にフラッフィーの足を跨ぎ、引き手を一緒に掴む。
「せー…のっ!」
二人が目一杯引っ張ると、隠し扉が錆び付いた音を立てて跳ね上がる。ソフィアはその扉の先を覗いたが、中には闇があるだけで梯子や階段は見当たらなかった。
「
「…何が見える?」
「何にも…真っ暗だ…降りていく階段もない…落ちて行くしかない…」
誰が初めに降り立てばいいのか、悩むロンの肩をハリーは叩き、手で自分自身を指差した。
「君が先に行きたいのかい?本当に?…どれくらい深いかわからないよ、ハーマイオニーに笛を渡して、犬を眠らせておいてもらおう」
ロンの提案にハリーは頷き、ハーマイオニーに横笛を手渡した。ハーマイオニーはすぐに吹き始めたが、僅かに音が途絶えただけでフラッフィーは唸り前足を動かした。
ハリーは穴の中に入り、指先だけで扉にしがみつくと、心配そうにみる3人を見上げた。
「もし、落ちた後僕の身に何か起きたら、ついてくるなよ。まっすぐフクロウ小屋にいって、ダンブルドア宛にヘドウィグを送ってくれ。いいかい?」
「了解」
「気をつけて、ハリー」
「じゃ、後で会おう。…できればね」
ハリーはぐっとくちびるを噛み締めて、手を扉から離す。ソフィアとロンはハリーが消えて行った穴の中を覗き込んだが、暫くは何の叫び声も聞こえなかった。どうやらかなり、深いらしい。
「──オーケーだよ!降りてきて大丈夫!」
ハリーの声に、ロンがすぐに飛び降りる。ソフィアはハーマイオニーを見て手を差し出した。
「一緒に行きましょう」
ハーマイオニーは笛を吹きながら頷き、しっかりソフィアの手を繋ぎ同時に穴の中に飛び込んだ。
冷たい湿った空気を切りソフィアとハーマイオニーは落ちて行った、かなりの深さを落ちたが、着陸した場所はやわらかい植物の上で痛みはなかった。
ソフィアはすぐに立ち上がり、あたりを見渡す。この植物は、なんだろう、蔓が絡み合うように伸びている。
「この植物のおかげでラッキーだったよ」
「ラッキーですって!?自分を見てごらんなさいよ!」
ハーマイオニーの悲鳴に、皆が自分の身体を見下ろした、足元にある蔓が蛇のように蠢き、脚に絡みついていた。ソフィアは咄嗟に振り解いたが、ハリーとロンは気がつくのが遅れ長い蔓で脚を絡め取られていた。
「動かないで!私、これ知ってる!悪魔の罠よ!」
「あぁ。なんて名前か知ってるなんて、大いに助かるよ!」
「ロン!ちょっと黙って!」
ロンの唸り混じりの叫びにソフィアは厳しい声で制する、ハーマイオニーは目を閉じてなんとか思い出そうとうんうん唸っていた。
「悪魔の罠…悪魔の罠…スプラウト先生はなんて言ってたっけ?暗闇と湿気を好み…あぁ、どうしたら…!」
「なら、火だ!炎だよ!」
「ああ、そうね!でも、薪がないわ!」
ハリーの言葉にハーマイオニーはハッとしたが、あたりを見渡し絶望したように叫ぶ。
「気が変になったのか!?君はそれでも魔女か!」
「あっ…!」
「
ソフィアは冷静でないハーマイオニーの代わりに蔓に向かって杖を向け魔法を唱える。ハーマイオニーも慌てて杖をふるい、青い色の炎が植物めがけて噴射された。
真っ赤な炎と青い炎の熱と光に蔓は怯えるようにすくみ上がり、ハリーとロンの身体を締め付けていた蔓がみるみる解けて行く。
ハリーとロンは汗だくになりながら、ソフィアとハーマイオニーの居る壁に息も絶え絶えに近づいた。
「ハーマイオニー、君が薬草学をしっかり学んでいて良かったよ」
「本当だ。それにこんな状態でハリーとソフィアが冷静でよかったよ!薪がないの!なんて…まったく…」
ロンはぶつぶつ言っていたが、ソフィア達は気にする事なくその先の石造りの一本道を走る。
次は何が待っているのか、ソフィア達は杖を手にしっかりと持ち、慎重に進んだ。
「何か聞こえない?」
「…何だろう、ゴーストかな?羽根の音みたいに聞こえるけど…」
柔らかく擦り合うような音や、金属がぶつかるような軽い音が進むたびにはっきりと聞こえていた。
四人は顔を見合わせ頷き合うと、通路の出口に飛び出した。
そこは今までいた場所よりもかなり明るく、高く夥しいほどの鳥が羽ばたき渦を作っていた。
その鳥の群れの奥に、古くて大きな扉が見える。進めば鳥の大群に襲われるのではないかと思ったが、鳥達はハリー達が扉目掛けて走っても襲ってくることは無かった。
「ダメだ!鍵がかかっている!」
「
押しても引いてもびくともしない扉に、ソフィアがすぐにアロホモラを唱えたが扉は硬く閉ざされたままだった。
「どうする?」
「…鳥よ、鳥はただ飛んでるわけじゃないはずだわ!」
ハーマイオニーの言葉にソフィア達は頭上高くで旋回している鳥達を見上げた。鳥達は黄金の色に輝いていて、ハリーはそれを見て突然叫んだ。
「鳥じゃないんだ!鍵なんだよ!羽の生えた鍵なんだ!…と言う事は…ほら!あそこに箒がある!扉を開ける鍵を捕まえなくちゃいけない!」
ハリーはすぐに箒を手に持つとソフィア達に押しつけた。ロンは空を飛ぶ鍵と箒を見ながら不安げに呟く。
「でも…何百匹もいるよ?」
「大きくて、昔風の鍵を探すんだ、たぶん…取手と同じ銀製だ」
ハリーはそれだけを言うとすぐに箒に跨り鳥達の中へ突っ込んでいった。ソフィア達も箒に跨り地面を蹴って、なんとか捕まえようとしたが小さな鍵はするすると3人の手から逃れる。しかし、ハリーはクィディッチのシーカーだ、それも、今世紀最年少であり、特別な才能を持つ。
「あれだ!あの大きいやつだ!明るいブルーの羽だ!…片方折れ曲がってる…皆で追い込まなくちゃ!ロン、君は上からきて!ハーマイオニーは下で待機、ソフィアは右へ!僕が捕まえてみる!──いまだ!」
ハリーの素早い号令に、ソフィア達はすぐに動く、ソフィア達の目は既に銀色で青い羽の鍵を見失っていたが、ハリーだけはそれを捉え続け、壁に突撃するように素早く鳥達の間を通りそして、一羽の鍵を壁に押さえつけるようにして手にしていた。
「すごいわハリー!」
目にも止まらぬ速さで捕まえたハリーに、ソフィア達は歓声を上げながら箒から降りて扉の前に集まった。
ハリーは手の中で暴れる鍵を押さえつけながら鍵穴に突っ込んで回す。かちゃり、と小さな音がして扉がすぐに開き、その瞬間鍵の鳥はまた飛び去って行ってしまった。二度も捕まった鍵の鳥の羽は折れ曲がり、かなり不恰好な飛び方をしていた。
「いこう」
ハリーが取手に手をかけながらソフィア達を見て聞き、ソフィア達は静かに頷いた。
次の部屋は鍵の鳥の部屋とは対照的に真っ暗だったが、四人が入り扉が閉まると突然部屋中に光が溢れた。眩しそうに目を細め手で目を覆ったソフィアだったが、手の影から見えたその光景に驚息を呑む。
「…チェス…?」
「…向こうにいくにはチェスをしなくちゃなないんだ」
「…どうやるの?」
「多分、僕たちがチェスの駒にならないといけないんだ…」
ロンが呟きながら巨大なチェス盤に並ぶ大きな石像で出来た黒のナイトに触れた、するとナイトは命を与えられたかのようにぶるりと震え、馬が蹄で地面を蹴る、ゆっくりと、ナイトがロンを見下ろした。
「…ちょっと考えさせて…僕たち、四人が…ひとつずつ黒い駒の役目をしなくちゃいけないんだ…四人か…」
1人ならともかく、4人全員の駒を失う事なく進めるのは中々に大変な事だろうと、ハリー達は思う。ロンはこの中で誰よりもチェスがうまい、それを知っているハリー達は考え込むロンを黙って見守った。
「…気を悪くしないでくれよ。でも、3人ともチェスはあまり上手じゃないから…」
「私たちはロンを信頼してるわ!何をしたらいいの?」
ソフィアの声にロンは少しだけ安心したように微笑んだが、すぐに気を引き締めると一度駒を見渡し、口を開いた。
「ハリーはビショップと代わって、ハーマイオニーはその隣でルークの代わりをして。ソフィアはクイーンだ」
「ロンは?」
「僕はナイトになるよ」
チェスの駒はロンの言葉を聞いていたようで、4人が代わりとなる黒の駒達はくるりと後ろを向きチェス盤から降り、持ち場を譲った。
「よし…じゃあ、始めようか」
ロンは自分を奮い立たせるように、静かに開始を宣言した。
その後何度も危険な場面はあったが、なんとかロンがギリギリで気付き回避することが出来た。ソフィアたちはもう盤上の事はわからない、ただ、じっとロンの言葉通りに動いた。
「詰めが近い。──ちょっと待てよ…うーん…」
ロンが突然呟き、暫く盤面を見た。
そして、目の前にいる白のクイーンを見て、一度振り返りハリー達を見た。
「…やっぱり。これしかない。僕が取られるしか…」
「だめ!!」
3人は同時に叫んだ、だがいつもなら震えているだろうロンは、ハッキリとした言葉でハリー達に言った。
「これがチェスなんだ!犠牲を払わなくちゃ!僕が一駒前身する、そうするとクイーンが僕をとる。ハリー、それで君が動けるようになるから、キングにチェックメイトをかけるんだ!」
「でも…」
「スネイプを止めたいんだろう?違うのかい?急がないと、スネイプがもう石を手に入れたかもしれないぞ!──いいかい?僕はいくぞ、勝ったらここでぐずぐずしてたらダメだよ」
ロンは青ざめた顔で、ただきっぱりとそう言う。そしてもうハリーたちを見ることなく、一歩進んで目を閉じた。
白のクイーンがロンに飛びかかり、石の腕でなぐりつけた。ロンが床の上に倒れ、ハーマイオニーとソフィアが悲鳴をあげたが、なんとか持ち場から離れず踏みとどまる。白のクイーンはロンを片隅に引き摺っていった。
「…チェックメイトだ…!」
そして、ハリーはキングにチェックメイトをかけ、白のキングが王冠を足元に捨てた。チェスの駒達は左右に分かれ、前方の扉への道をハリー達に開けた。
ハリー達は気絶してしまったロンを見て、ぐっと奥歯を噛み締めロンの願い通りに、扉へ突進し次の通路を進んだ。
「ロン、大丈夫かしら…」
「きっと、大丈夫さ」
心配そうなハーマイオニーの声に、ハリーは自分に言い聞かせるように答えた。
「…ロンを早く迎えに行くためにも…早く、行きましょう」
ソフィアが2人を促し、ハーマイオニーとハリーも強く頷く。暫くまた通路を進んでいたが、次の扉がまた現れた。
「いいかい?」
「…いきましょう」
ハリーはそっと扉を開けた。
途端にむせ返るような悪臭が鼻をつき、三人はローブをたくしあげ鼻を覆った。
ハロウィンの日にみたトロールよりも巨大なトロールが地面に横たわっている。
頭から血を流していて、気絶しているようだった。
「よかった、こんなのと戦わずに済んで…」
ハリーはそう呟き、そっとトロールの巨大な足をまたぐ、ハーマイオニーが続いて跨いだ時、小山のようなトロールがびくりと動いた。
慌ててハーマイオニーはハリーに続いて扉に飛びついたが、ソフィアはもうそちらに行くことが出来なかった。
トロールは頭を押さえながらゆっくりと身体を起こし、痛みに顔を歪めながらソフィアを見下ろした。
「──トロールはあなた達に気付いてないわ!何も言わないで、声を出しちゃだめ!早く、行って!」
ソフィアは杖をトロールに向け、今にもこちらに向かってきそうなハリーとハーマイオニーを制した。
「早く!行きなさい!!私は大丈夫!もうあんなヘマはしないわ!」
ハーマイオニーは何度も首を振っていた。彼女の脳裏にはハロウィンの日、血を流して顔を蒼白にしたソフィアが思い浮かんでいる。あの日のトロールよりも、手負いとはいえかなり巨大だ。
「大丈夫、私は──変身術士よ!」
ソフィアは自分を鼓舞するためにそう言うと地面の小石に向かって呪文を唱え杖を振るった、途端に小石はガタガタと震え、巨大な狼が数匹唸りながら現れる、狼達はソフィアを守るように囲み、その牙を剥き出しにしながらトロールを威嚇した。
「早く!!」
ハリーはハーマイオニーの腕を強く引き、無理矢理扉の中に入った。
「…このトロールを用意したのがクィレルなら…ハロウィンの日の騒ぎはクィレルの仕業だって、どうしてみんな気がつかないのかしら…──いや…違うわ…そもそも、賢者の石を守るのに…何故、子供が解ける程度の守りしかないの…?」
ソフィアは狼達がトロールに噛みつき、引っ掻く中、じっとその意味を考えたがすぐに思考を切り替え、杖を振るとトロールが持つ棍棒を可愛らしい花に変化させた。
トロールは急に自分が振り回していたものが花にかわり、何が起こったのかわからないという不思議な目で小さな白い花を見つめる。
その隙にソフィアは高く石をトロールの頭上目掛けて放り投げた。
「
小石は巨大な大岩になり、トロールの血が流れる頭に鈍い音を立てて落ちる。今度こそトロールはぐるりと目を回し、その場に倒れた。
ソフィアは大きく息を吐き、狼達を小石に戻した後ですぐに次の扉に向かったが、ソフィアが手をかける前にハーマイオニーが飛び込むようにして現れた。
「ハーマイオニー!」
「ああっ!ソフィア!無事だったのね!?」
ハーマイオニーは目に涙を溜めてしっかりとソフィアを抱きしめた。
「無事だったのね!ああ、良かった!」
「ええ、…ハリーは?」
「…もう行ったわ、この先に行けるのは1人だけだったの!トロールは倒したのよね?じゃあすぐに戻りましょう。ダンブルドアを呼ばないと!スネイプにハリーが殺されてしまうわ!」
ハーマイオニーは目に涙を溜めて叫ぶ。
ソフィアは小さく首を振った。
「スネイプ先生じゃないわ。ハーマイオニー、まだわからないの?今までの試練を思い出して!トロールをここに用意したのはだれ?クィレルでしょう?ならハロウィンの日にトロールを連れてきたのは誰?」
「で、でも…そんな…」
ソフィアはハーマイオニーの手を取り、トロールを避けながら二人は手を繋いだまま、走った。
「でも、スネイプはクィレル先生を脅していたわ!」
「違う!それがそもそも思い込みなのよ!スネイプ先生は、クィレルがダンブルドアにつくか、例のあの人につくかよく考えるようにいいたかったの!…きっと、クィレルを助けたかったのよ!」
「そんな、でも…クィディッチでハリーを殺そうとしたわ!」
「誤解よ!あれはきっと反対呪文よ!…ハーマイオニー、それにね、ルイスが言ってたでしょう。自分に何かがあったらクィレルを疑ってって」
ソフィアはトロールの部屋を足早に過ぎ、廊下で足を止めハーマイオニーを見つめる。
ソフィアの硬い表情とその言葉に、ハーマイオニーははっと口を押さえた。
「まさか…」
「ルイスは…今、呪いをかけられて眠っているの、深い眠りで…術士を倒さなきゃ目覚めないかもしれないわ」
「そんな!それなら早くスネイプを倒さないと!」
「だから…!スネイプ先生はそんな事をするはずがないの!」
ソフィアの言葉に、ハーマイオニーも負けじと言い返す、どう考えても怪しいのはスネイプだ、なぜ、ソフィアはそこまでスネイプを庇うのか。ハーマイオニーは自分の考えに自信を持っているからこそ、譲れなかった。二人とも自然と声が大きくなり怒鳴るように言い合った。
「何でそんなにスネイプを信じるの!?いつも嫌味ばっかり言うしあなたにも辛くあたるじゃない!挙げ句の果てにルイスを呪っただなんて!例のあの人に指示されたんだわ!ルイスは森であの人の姿を見てしまったから!!」
「自分の子どもに呪いをかける親がどこにいるって言うの!?」
ソフィアも負けじと声を張り上げた。
「それは!──え?」
──しまった。
ソフィアは口を抑えたが、もう全て遅い。
ぐっと唇を噛み、暫く沈黙したが大きく息を吐き体にこもっていた力を抜いた。
ハーマイオニーの目は驚愕で見開かれている。
「ソフィア…いま…何て…」
「…言葉の通りよ」
「そりゃあ…子どもを呪う親はいないわ。…まって、…本当に?…本当に、ルイスとソフィアは…?」
ハーマイオニーは静かにソフィアに問いかける、その目は嘘と言って欲しいというどこか、懇願が含まれていた。
「…ええ、そうよ。黙っていてごめんなさい。…私の本当の名前は…ソフィア・スネイプ…セブルス・スネイプは私の父様よ。
…ねえ、わかるでしょ?だから、私たちは初めから、スネイプ先生を…父様を疑ってないの。父様が…自分の子どもがいるのに、トロールをホグワーツに放つと思う?自分の子どもの、ルイスを呪うと思うの?」
「そんな…まさか…!なんで、言ってくれなかったの!?」
「言えなかったの、私達がホグワーツに通うための、ダンブルドアとの約束だったの。…誰にもバレてはいけない…バレたら…私たちはホグワーツを退校しなければならない」
ソフィアは苦しげに呟いた。
ルイスはきっと起きた時に退校すると聞いて驚くだろう、謝っても許してくれないかもしれない。一年も秘密を隠すことが出来なかった。
「そんな!嫌よ、ソフィアがいなくなるなんて!…私、絶対誰にも言わないわ!」
「ハーマイオニー…学校が変わっても、友達よ。…手紙を送ってね」
「ああ!…ソフィア!」
ハーマイオニーはソフィアに抱きついた、ソフィアは一度強く抱きしめ。すぐにハーマイオニーを離し優しく笑いかけた。
「…もうスネイプ先生…父様を疑ってない?」
「…ええ、そうね…うーん…半分くらいかしら」
「まあ!」
それでも半分は疑っているハーマイオニーに、ソフィアは呆れたが、何も言わず止まっていた歩みを進めた。
「…さあ、ロンを起こしてフクロウ小屋に行きましょう」
「──ええ、そうね」
2人はこの話は後だとお互いに考え、しっかり手を取り、ロンが待つチェスの部屋へと向かった。
扉を開けた時、ロンの側にしゃがみ込み様子を伺う人が居ることに気づいた。
「ダンブルドア先生!」
「ソフィア、ハーマイオニー!無事じゃったか、ハリーはもう追いかけて行ってしまったんじゃな」
「ええ、そうです!…きっと、その先にはクィレルと…あの人も!」
ソフィアの言葉にダンブルドアは眼鏡の奥の目を光らせ、直ぐに飛ぶように扉へと向かった。
ハーマイオニーとソフィアはダンブルドアが消えた先の扉を暫く、何も言えず見つめる。
「…もう、大丈夫よ、ダンブルドア先生がきたなら…きっとハリーは無事よ…」
「…ええ…でも、ダンブルドアが何故ここに?」
「さあ?わからないわ…それは、後で聞きましょう」
ソフィアはそう呟き、ハーマイオニーと共にロンの元へ駆け寄った。