ハリーがロンの隠れ穴で過ごしている日、ソフィアとルイスは一日だけ遊びに行き、ハリーとの再会を喜んだ。ハリーからドビーという屋敷僕に手紙を奪われていたことを聞き、そんな事、家に縛られる
ソフィアとルイスはあまりハウスエルフについて詳しくは知らない。そういったハウスエルフは裕福な家にしか存在しない為、勿論、スネイプ家には居なかった。
その時にハーマイオニーも水曜日に新しい教材を買いに行くから一緒に落ち合えないかと聞かれたが、ルイスとソフィアは顔を見合わせ残念そうに首を振った。
「その日、僕たちドラコと買いに行く予定なんだ」
「…ドラコ?まさか、ドラコ・マルフォイかい?」
ソフィア達の会話を聞いていたロンの父であるアーサーは怪訝そうに2人を見る。
「ええ、そうです」
「…君たちは…あー…マルフォイ一家と仲がいいのか?」
あまり歓迎していないようなアーサーの問いかけに、ルイスは肩をすくめ頷く。
「ええ、僕はスリザリン寮なんです」
「なんだって!スリザリン寮!?いや…そ、そうなのか…ロン達の友人だからてっきり2人ともグリフィンドールなのかと…」
「アーサーさん、別の寮でも友情は存在しますよ?」
心外だとばかりにソフィアが言えば、アーサーは視線を彷徨かせ少し申し訳なさそうに──しかし、とても信じられないと言うような顔で苦笑し謝った。
「僕たち、ホグワーツに来る前からドラコとは友人なんです、ドラコのお父さんのルシウスさんが僕たちが暮らしていた孤児院に多額の寄付をしていて、そのつながりで」
「マルフォイが寄附を?…まさか、その孤児院はエドワーズ孤児院かい?」
「ええ、ご存知ですか?」
アーサーはようやく合点が行ったと言うように何度も頷いた。ソフィアとルイスは知らなかったが、エドワーズ孤児院は魔法界ではなかなかに有名な孤児院の一つだった。
施設の充実性は勿論の事、入所する子ども達への最高の環境を整え教育する事への出費を惜しまない。その為その孤児院の子どもを引き取りたいと言う大人は多いのだ。
「ジャック・エドワーズは私の後輩でね、友人、とまではいかなかったが。有名な人だったからね。…まぁ…そういえば確かに彼もスリザリン寮だった気がする」
「まぁ、ジャックの孤児院だったの?確かチャーリーの友人もその孤児院出身者がいたわ!ジャックはね、ホグワーツでも…中々のトラブルメーカーでそれでいてみんなから好かれていたわ、スリザリン生だったけど…他の寮の友人も多くいて、かなり交友関係は広かったみたいだもの、いつも色んなネクタイの色に囲まれていたわ」
「へぇー!そうなんですか」
ルイスとソフィアは初めて知った育て親の学生時代の話に興味深そうに頷いた。ジャックもセブルスと同じで、あまり、学生生活のことを話そうとはしなかった。
確かにジャックはスリザリン生らしくないかもしれない。それはホグワーツに入ってから知ったことだが、どちらかというとあの底抜けの明るさと人を楽しませる事が好きな悪戯心はグリフィンドール生が持つ性質だ。
「まぁ、でも同じ日に行くのなら会えるかもしれないわ!」
ソフィアが気を取り直してハリーとロンに言うが、2人は嬉しいような、嫌なような、複雑そうな顔で頷く。
「ソフィアとルイスには会いたいけど、マルフォイには会いたくないなぁ」
「あー…会っても喧嘩しないでよ?止める僕の身にもなってね?」
「止めなくていいよ、いつかアイツの鼻を真っ赤に染めてやりたいんだ」
ルイスの言葉をハリーは軽く流した。
ーーー
数日後の水曜日、ソフィアとルイスはジャックと共にノクターン横丁を訪れていた。もしこの事をセブルスが知ったら流石にジャックに幾つかの魔法が炸裂するだろうが、残念ながらセブルスがそれを知る事はない。
本来ならソフィアとルイスだけで買い物は済ませられるのだが、去年教材を買う時にセブルスの想像以上に彼らが無駄遣いをし──沢山の悪戯グッズを購入した──今年はそうはさせまいと、ジャックに監督を頼んだのだった。
果たしてそれが正解かどうかは、今3人がノクターン横丁に向かい、それを止める者がいないという事実が現している事だろう。
「ソフィア、ルイス、くれぐれも俺から離れるなよ?ここで迷子になったら流石にアイツに顔向け出来ないからな」
「はーい、パパ」
「わかってるわ、パパ?」
ソフィアとルイスがにやりと笑い、「パパ」と呼べば、ジャックは嬉しそうに顔中に笑顔を見せ二人の頭を撫でた。ジャックの扱い方を優に心得ている二人は、こっそりと顔を見合わせ悪戯っぽく笑った。
「ルシウスとドラコと待ち合わせしてるんだろ?なら急がないとな」
「まだ時間には余裕あるよ。…でも、ここに何を買いにいくの?」
「んーナイショ。お子様にはまだ早い物さ」
ジャックはそれ以上何も言わず、ノクターン横丁の中で一際大きな店に迷う事なく入った。ショーウィンドウにならぶ商品は萎びた手やギョロつく義眼など、表では決して売っていない闇の魔法や呪詛が掛けられているものばかりが陳列されていた。
「──あれ?ルシウス!久しぶりじゃないか!」
「ジャック?なんで君がこんな所に…」
「…お互い余計な詮索はしないでおこう、な?」
扉から現れた人にルシウスは動揺したが、特別彼に見られて困るような事はしていないと気を取り直した。
「ルシウスさん!お久しぶりです!」
揃った双子の声に、ルシウスは視線を下げて扉から入ってきたばかりの、およそノクターン横丁に似合わぬ明るい笑顔を浮かべるソフィアとルイスを見た。
「久しぶりだね、ソフィア、ルイス。今年は家に呼べなくてすまないね。少々立て込んでいて…」
「残念です…。ルシウスさんの家には楽しいものが沢山ありますもの!」
「また落ち着いたら呼んでくださいね?」
「ああ、約束しよう」
ソフィアとルイスは嬉しそうに微笑み、その奥にいるドラコに気付くとさらに笑顔を深め駆け寄った。
「ドラコ!久しぶり!」
「こんな所で会えるなんて思わなかったわ!」
「ああ、久しぶり」
ソフィアはドラコに抱き着き喜びを表現し、ルイスもその後に軽くドラコを抱きしめた。
「ドラコおっきくなったなぁ!ルシウスにそっくりに育って…ナルシッサは喜ぶ事だろう」
「ジャックさん、…お久しぶりです」
ドラコはこのジャックという男が少々苦手だった、幼少期に親の目を盗み数々の悪戯を仕掛けられかなり酷い目にあったことをドラコは勿論忘れていなかった。なぜこんな男が自分の両親と親しいのかさっぱりわからないのだが、父の友人なのだ、下手な態度は取れなかった。
「ドラコ、店の物には一切触るんじゃないぞ」
「ルイスとソフィアもだ、絶対にダメだからな?」
ルシウスが言いながらカウンターのベルを押し、店の奥にいる店主を呼んだ。
保護者二人の再度の忠告に、ルイスとソフィアは素直に頷いたが、ドラコはつまらなさそうに口を尖らせた。
「何かプレゼントを買ってくれるんだとおもったのに」
「競技用の箒を買ってやると言ったんだ」
「寮の選手に選ばれなきゃ、そんなの意味ないじゃないか…」
ドラコは拗ねながらギョロつく義眼を見ていた。ルイスとソフィアは萎びた手に手を伸ばしかけたがすぐに触れるか触れないかで手を引っ込め、ドラコを見る。
「ドラコ、きっと今年は選手になれると思うわ!私もなりたいのよね」
「頑張れ、僕は地上で見守るよ」
「でも…ハリー・ポッターなんて去年ニンバス2000を貰って、グリフィンドールのチームに特別許可までもらって選手になっただろ?ダンブルドアのお気に入りなんだ、対してうまくもないのに…有名だからって…額に馬鹿な傷があるから…」
「うーん、それはどうかしら、ハリーは中々に良いシーカーだと思うわ」
「それに、ドラコ。傷が欲しいなんて言うもんじゃないよ。ドラコのおでこは綺麗だから傷なんて無い方がいいと思うし」
「…君たち二人はどっちの味方なんだ?」
ドラコは誉められているのか貶されているのか分からず頬を少し赤く染めじろりと二人を睨んだが、二人はドラコの睨みなど一切怖くなく無視して陳列棚をわざとらしく見た。
「まったく…どいつもこいつもハリーがカッコいいと思ってる…額に傷、手に箒の、すてきなハリー・ポッター…」
「もう同じことを何十回と聞かされた。しかし言っておくが、ハリー・ポッターを好きじゃないというようなそぶりを見せるのは、なんというか…賢明では無いぞ。大多数の者が彼を、闇の帝王を倒したヒーローだと思っているからね」
「ああ!ルシウスさん、それは残念ながらもう手遅れですね」
ルシウスがドラコを押さえつけるようにため息をつきながら言うが、ルイスはその言葉にわざとらしく嘆いた。
「…二人はどうやら、息子よりもまだ賢明なようだな」
「まぁ、ハリーは友人ですからね」
「私はグリフィンドールですから」
ルシウスの言葉に二人は肩をすくめ苦笑した。
「なんだ、ハリー・ポッターと二人は友人になったのか!…そうか…」
掛け合いを聞いていたジャックは、驚き、どこか悲しそうな目を一瞬向けたがすぐにそれを消すと二人の頭を撫でながら「友人は多いに越したことはない」と頷きながら呟いた。
ルイスとソフィアはジャックの一瞬の表情の変化を見逃さなかったが、何かを言おうとした時にカウンターの奥から店主が現れたので口を噤んだ。
「マルフォイ様、エドワーズ様、またおいでいただきましてうれしゅうございます。恐悦至極でございます…そして、若様達と…お嬢様まで…光栄でございます。手前どもに何がごようは?本日入荷したばかりの品をお目にかけなければーーお値段の方はお勉強させていただきーー」
「バーボン君、今日は買いに来たのではなく、売りに来たのだよ」
「へ?売りに、でございますか?」
油っぽくねちっこい声をあげていたバーボンは顔から笑顔を少し消した。
ルシウスはジャックに視線を移し、そしてソフィアとルイスを見た。何を言いたいのかわかったジャックは手を上げ了解の返事をし、くるりとソフィアとルイスを見る。
「さ、ここからは大人の話だ。君たちはちょっと店の奥に居なさい。…いい子だから、意味はわかるね?」
「はーいパパ」
「わかったよパパ」
「いい返事だ!…ただし…」
「「絶対触らない事!」」
あまり、ここの店主との会話を他人に聞かれたく無いのだと、二人もわかっていた。このノクターン横丁にある店に──それも闇の魔法や呪詛がかけられたものばかり陳列している店に──売りに来るものなんて、だいたい言われなくても関わり合いにならない方がいい。
二人はドラコに手を振り、店の奥へと向かった。