【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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59 写真を撮りましょう!

 

 

ソフィアは大広間でハリー達と合流し、昼食を取った後次の授業が始まるまで中庭で過ごした。

ハーマイオニーは石段に腰掛けて、ロックハートの本をまた夢中で読み、ハリーとロン、ソフィアはクィディッチの事を楽しげに話していた。今強いチームは何処だとか、あの戦略は素晴らしいとかを話していると、ふとハリー達は視線を感じ顔を上げた。

 

少し離れた場所に薄茶色の髪をした小さな少年──ソフィアよりは高いが──がその場に釘付けになりハリーを熱い視線でじっと見ていた。

ハリーと視線が合うと、少年はぽっと頬を赤らめ、おずおずとハリーに近づいた。

 

 

「ハリー、元気?僕、コリン・クリービーと言います。…僕もグリフィンドールです。あの──もし、構わなかったら…写真を撮っても良いですか?」

 

 

コリンは大事そうに持っていたカメラを少し掲げ、緊張と興奮を滲ませながらハリーに聞いた。

 

 

「写真?」

「僕、あなたにあったことを証明したいんです。僕、あなたの事は何でも知ってます。みんなに聞きました、例のあの人があなたを殺そうとしたのに、生き残ったとか、あの人が消えてしまったとか…今でもあなたの額に稲妻型の傷があるんですよね?…同じ部屋の友人が、ちゃんとした薬で現像したら、写真が動くって教えてくれたんです」

 

 

コリンは一息で熱っぽく、必死にハリーに訴えた。ハリーはそれを見て少し嫌そうに一歩後ろに下がる。ハリーは稀有な経験をし、魔法界でその名を知る者はいないヒーローでもあるが、ハリー自身は自分には相応しくない名声では無いかと思い、あまり騒がれる事は好きではなかった。

どうせ注目されるのなら、クィディッチの腕前で、とかならいいのにとハリーは密かに思う。

 

 

ソフィアはコリンのカメラを見てパッと表情を輝かせると鞄の中を漁り「じゃじゃーん!」と大袈裟な動作でカメラを取り出し皆の前に披露した。

 

 

「ねえ!私も夏休みにカメラを見つけたの!そういえば持ってきていたわ!皆と写真を撮ろうと思って!…ねえ、いい?勿論ハリーだけじゃ無くてロンとハーマイオニーも一緒に撮りたいの!」 

 

 

ハリーとロンは顔を合わせ、ハーマイオニーは自分の名前が呼ばれた事に気付き本を閉じるとソフィアの側に駆け寄った。

 

 

「呼んだかしら?」

「ハーマイオニー!──ここを見て?」

 

 

ソフィアは隣に並んだハーマイオニーの腰に手を回すと、ロンにカメラを渡した。ロンは受け取ると、すぐにレンズ越しにソフィアとハーマイオニーを覗く。

少し驚いたハーマイオニーだったが、すぐに意図に気付きにっこりと笑うとソフィアに寄り添った。

 

 

「撮るよー…3、2、1…笑って!」

 

 

ロンは掛け声と共にシャッターを押す。直ぐに飛び出た写真をソフィアは上手く空中で掴むと、嬉しそうにハーマイオニーに見せた。

 

 

「ありがとうロン!良い写真が撮れたわ!」

「本当ね!」

 

 

写真の中の2人は嬉しそうに笑い、手を振っていた。ソフィアは動く写真を興味深そうに見るハーマイオニーに写真を手渡し、ロンからカメラを受け取ると今度はハーマイオニーに渡した。

 

 

「ねぇ、次はハリーとロンと写りたいの!…お願いしても良いかしら?」

「勿論よ!──はい、並んでー」

 

 

ソフィアはハリーとロンの間に立つと、2人の腕にぎゅっとしがみつき満面の笑みを見せた。ロンとハリーは少し驚いたもののカメラを覗くハーマイオニーに向かって同じように笑う。ハリーは、友人とこんな風に楽しく写真を撮るのははじめてだった。

 

 

「──オッケー!…良い写真だわ!」

 

 

飛び出た写真を見たハーマイオニーは満足気に頷き、ソフィアに渡した。腕を引かれて少し前のめりになっているハリーとロンだが、3人とも溢れるような笑顔を見せている。

 

 

「ねえ、僕もこの写真欲しいな!」

「良いわよ!今は複製薬が無いけど、今度購入して複製して皆に送るわね!」

「ありがとう!」

「わぁ!嬉しいわ!」

「ジニーとフレッドとジョージが僕に嫉妬しちゃうかも」

 

 

友人との初めての写真。それは一生の宝物になるに違いないとハリーは目を輝かせ嬉しそうに頷いた。

ソフィアは2枚の写真を大事そうにカバンの中に入れるとハリー達に向き合い、興奮から頬を染めながら言った。

 

 

「よーし、今度は皆で取りましょう!…コリン、お願いしてもいいかしら?後でこのカメラでコリンとハリーの2人で撮るわ!このカメラなら薬品を使わなくても動くわよ?」

 

 

ハリーと写真を撮るなんて、羨ましい、というようにソフィアを見ていたコリンはぱっと表情を輝かせ、何度も頷いた。

 

 

「良いんですか!?やったぁ!あの、よければハリー?その写真にサインしてくれませんか?」

「サイン入り写真?ポッター、君はサイン入りの写真を配っているのかい?──みんな、並べよ!ポッターがサイン入りの写真を配るそうだ!」

 

 

突然ドラコがルイスと共に現れ、嘲るような声を中庭に響かせた。途端にハリーは今までの楽しかった気持ちが怒りに変わり、強く拳を握る。

 

 

「僕はそんな事してないぞ。黙れマルフォイ!」

 

 

ハリーは怒鳴りながら言うが、ドラコは面白そうにニヤニヤとした笑いを止める事はない。そんなドラコをルイスは呆れたように見ていた。

 

和やかで明るい雰囲気が一気に険悪なものになった中、場の空気を読めないのか──読もうとしていないのか、ソフィアはパッと表情を輝かせると「ドラコ!」と嬉しそうにドラコに駆け寄った。

 

 

「ドラコ!ねえ、私と写真を撮らない?」

「…ソフィアと?──まさか君までサイン入り写真を配っているのか?」

「え?何が?私のサインなんて欲しいの?…変わってるわね!構わないわよ!…はい、ルイス、お願い!」

「はいはい、──後で僕もドラコと撮りたいなぁ、ちゃんとサインしてあげるから、ね?」

 

 

怪訝そうな顔をしたドラコは嫌味っぽくソフィアに言うが、ソフィアは全く気にせず、そしてルイスはどこかからかい宥めるようにドラコの肩を叩いた。

 

 

「なっ──」

「はいドラコ、笑ってー」

「ほら!笑って?」

「……」

 

 

ソフィアはドラコの腕を組み、にっこりと笑った。ドラコは少しむっつりとしていたが、カメラを向けられて僅かに微笑む。

高貴な純血一族である彼は、記念写真を何度も撮った事があり──カメラを向けられると、何処から見ても、誰が見てもマルフォイ家の名に泥を塗らないよう、完璧な気品ある出立ちをするよう躾られており、つい、微笑みを見せてしまった。

 

 

「──うん、良い写真だ!」

「わぁー!本当…あっ次はルイスとドラコよね?」

 

 

ソフィアは嬉しそうに写真を見ていたが、すぐにカバンの中に入れるとルイスからカメラを受け取り、並んだ2人にカメラを向けた。

 

 

「撮るわよ?3、2、1──笑って!」

 

 

写真に写るドラコとルイスは、とても仲が良さそうに寄り添い微笑んでいた。その写真を見たドラコは少し、嬉しそうに表情を緩める。

 

 

「後で複製してくれないか?」

「勿論!」

 

 

ソフィアはにっこりと嬉しそうに笑った。今まであまり自分の写真を持っていなかったのだ、これから色々な人と沢山の写真を取り、思い出を振り返られるようにしたい、そう思っていた。

中庭にあった緊張感はふと緩んだが、ドラコはくるりとハリーを見ると先ほどソフィアとルイスに見せた優しい気品ある笑みを一切感じさせない嘲笑を浮かべた。

 

 

「──で?サイン入り写真で一稼ぎでもして、ウィーズリーに恵んでやるつもりかい?」

「君、嫉妬してるんだ」

 

 

コリンは憧れのハリーが侮辱される事が我慢ならなかったのか、果敢にもドラコに言い返した。

ドラコは薄ら笑いを消し、眉を顰め小さなコリンを強く睨む。

 

 

「嫉妬?…何を?僕はありがたいことに、額の真ん中に醜い傷なんて必要ないね。頭をかち割られる事で特別な人間になるなんて、そうは思わないからな」

「ナメクジでもくらえマルフォイ!」

 

 

ドラコの言葉に我慢ならなかったロンが杖先を彼に向けた、だがテープで無理やり固定されたそれを脅しに使うのはいささか迫力に欠けており、ドラコは鼻でせせら笑う。

 

 

「言葉に気をつけるんだねウィーズリー、これ以上問題を起こしたら、君のママがお迎えに来て学校から連れて帰るよ?──今度ちょっとでも規則を破ってごらん!」

 

 

ドラコが吠えメールでの言葉と声音を真似、甲高い突き刺すように言えば周りにいたスリザリン生達は声を上げて笑った。

 

ルイスは深いため息をつき、額を抑押さえる。

ドラコはやはり、ハリー達に噛み付かなければ居られない性格のようだ。

 

 

「まぁポッターのサイン入り写真は、君の家一軒分よりも価値があるだろうね」

「…ドラコ、もうそれくらいにして。聞いていて気分の良いものじゃない」

「本当よ!ロンの家はとっても暖かくて素敵な家だったわ!」

 

 

ソフィアとルイスがドラコの前に立ち、厳しく咎めるように言うとドラコは嘲笑を消すと不機嫌そうに顔を歪めた。

ルイスはいつもそばに居てくれる、ハリー・ポッターをどれだけ罵倒しても呆れつつも離れていく事はない。だが決して自分の心を理解しては、くれない。

言いようのない苛立ちから、ドラコはソフィアとルイスに向かって、ハリー達にしたような嘲笑を浮かべた。

 

 

「ああ、君たちもポッターのサイン入り写真を貰った方が良い。薄汚いボロい家を建て替えるくらいは出来るんじゃないか?まぁ──君たちにはその家がお似合いかもしれないけどね」

 

 

露骨に2人の家を貶したその言葉に、ソフィアはカッと顔を赤くさせ表情を硬らせ、右手を振り上げたが直ぐにルイスがその腕を強く掴み止めた。

 

 

「──ルイス!離して!」

「…ソフィア、落ち着いて」

 

 

ドラコは振り上げられた手に驚き少し一歩下がったが、やはりルイスは自分の言葉を許して止めてくれるんだ、と何処か安堵しながらルイスを見たが、ルイスの目は今までドラコが見た事がないほど、冷ややかに自分を見ていた。

 

 

「…ドラコ、それって君の本心?それとも、勢いで言っただけ?」

 

 

静かにルイスはドラコに問いかける。

ドラコはいつものルイスとは異なる雰囲気と威圧感に少し狼狽したが、ハリー達の手前、すぐに前言を撤回するなんて情けない姿を見せる事もできず、虚勢を張るように顎を上げ、ルイスを見下ろした。

 

 

「──ああ!本心さ!それがどうした!?」

 

 

ルイスはドラコの言葉を聞き、悲しそうに目を伏せ、そして無言でソフィアの鞄の中から先程はドラコと2人で撮った写真を取り出した。

 

 

「…そう、悲しいね。僕は君と友人だと…思っていたよ」

 

 

そう言いながらドラコに近付き、その胸に写真を押し付けた。いきなりでドラコは写真を受け取らず、誰の手にも届かなかった手紙はひらりと地面に落ちた。

 

 

「行こうソフィア」

「…え、…ええ」

 

 

ルイスはソフィアの手を取り、足早に中庭から去った。ソフィアは途中で振り返り、唖然とした目でドラコがこちらを見ていた事に気付いたが、何も言葉をかける事なくルイスに引かれるまま城へと戻った。

途中で騒ぎに気づいたロックハートとすれ違ったが、彼はハリーだけを見ており、2人には全く目もくれなかった。

 

 

人気の無い廊下でルイスは足を止めるとソフィアの手を離した。

ソフィアは、彼がここまで静かに怒っているのを久しぶりに見たために、何も言う事が出来ない。

ルイスの気持ちは、痛いほどよくわかっている。きっと彼もドラコの自尊心が強く、虚勢を張っているだけで、勢いで言ってしまった言葉を取り消せなかったのだと分かっているのだろう。だが、──だからこそ、悲しかった。

 

ルイスは、勿論ドラコが今までハリー達に発していた暴言を快くは思っていない。どちらも友達だからだ。…だが、ルイスはスリザリンであり、いくら友達だとはいえグリフィンドール寮のハリー達よりも、ドラコと共に過ごす時間の方が長かった。ルイスは、ハリー達ではなく、ドラコの事をかけがえのない親友だと、思っていた。

 

 

「…ルイス…」

 

 

ソフィアは俯き項垂れるルイスの後ろからそっと彼を慰めるように抱きしめた。

 

 

「…わかってる、ドラコはただ…ハリー達の前で…勢いで言っただけだって…でも…僕は…それでも、友達、だから……謝ってくれると…」

 

 

ルイスの震える声を聞いて、ソフィアは目を閉じ、いつもより小さく見える彼を抱きしめる腕の力を、強くした。

 

 

「…ええ、そうね。私も悲しかったわ…だって、ルイスはいつでもドラコの事を考えて…ドラコを愛しているもの」

「…、…うん…」

 

 

一番の友達だと思っていたが、そう思っていたのは自分だけだったのだろうか。ルイスは俯いたまま拳を強く握った。

 

 

「…ごめん、大丈夫だよ。…もう授業が始まっちゃうね」

 

 

ルイスはやんわりと自分を抱きしめるソフィアの腕を解くと、心配そうに見るソフィアに笑いかける。

その悲しい微笑みを見て、ソフィアは更に不安げに目を揺らした。

 

 

「本当?…私、そばにいるわよ?」

「…初日の授業をサボるなんて、いけないよ。…さあ、行って…ね?」

 

 

ルイスはソフィアの背を優しく押すと、笑ったまま数歩後ろに下がり、思わず手を伸ばしたソフィアを振り払うように駆け出した。

 

 

「ルイス!」

 

 

後ろからソフィアは叫び、すぐに後を追おうとしたが次第に足を止めるとその場で立ち止まる。追いかけないで、1人にして。──そう、ルイスの背が伝えていた。

 

 

ソフィアは暫くルイスが走り去った廊下を見ていたが深いため息をつくと、とぼとぼと次の教室──闇の魔術に対する防衛術の教室へ向かった。

 

 

 

 

 

ドラコは呪文学の教室で不安げにちらちらと扉を見ていた。

もう授業開始のベルがなったが、ルイスは現れる事はない。

フリットウィックが教壇の上に立ち、生徒一人ひとりの名前を呼び、出席を取り始めたが、それでも扉が開かれる事はなかった。

 

 

「──ルイス・プリンス……?…ミスター・プリンスは居ませんか?」

 

 

いつもならすぐに返事をするルイスの声が聞こえず、フリットウィックは出席簿から目を上げ生徒を見渡す。だが、その姿を見つける事は出来ず、フリットウィックは欠席、と記しながら優等生のルイスが授業をサボったとは、微塵も考えずきっと体調不良だと思った。

ドラコは空席になっている隣をチラリと見て、俯いた。

 

 

 

 

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