【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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64 友人の侮辱は許さない!

 

 

ハーマイオニーとハリーは両脇からロンを支え、ソフィアはバケツから逃げ出すために這い出し地面に落ちたナメクジを拾い、やっとのことでハグリッドの小屋まで近付いた。

すぐに入ろうとしたが、ハリーは小屋からロックハートが颯爽と現れたことに気づくと慌ててロンを茂みの中に引っ張った。 

 

 

「早く、こっちに隠れて!」

 

 

ハリーは小声でハーマイオニーとソフィアを呼び必死に手招いた。ソフィアはすぐに茂みに隠れたが、ハーマイオニーは何故隠れなければならないんだと、渋々と言った表情を浮かべ茂みに座り込んだ。

 

ロックハートがハグリッドに何かを自信たっぷりに告げ、ローブを翻しながら城へ去っていき、彼が見えなくなるまでハリー達は息を顰めて隠れ続けた。

ようやくその明るい青色が完全に城の中に入った後、ハリーは茂みの植え込みでナメクジを吐くロンを無理矢理立たせハグリッドの小屋の戸口まで連れて行った。

 

扉を強く叩けば、またロックハートが戻ってきたのかと思ったハグリッドが不機嫌そうな顔で現れたが、ハリー達だと気付くとすぐにパッと顔を輝かせた。

 

 

「いつ来るんかと待っとったぞ。さあ入った入った!またロックハートが来たんかと思ってな」

 

 

ハグリッドは優しく四人を小屋の中に迎え入れ、歓迎するために紅茶の準備を始めた。

ハリーは気分が悪そうなロンを椅子に座らせ、湯を沸かせるハグリッドになぜロンがこうなったのか手短に説明したが、ハグリッドは動じる事なく大きな銅の洗面器を渡し、ナメクジで溢れそうな銀色のバケツを引き取った。

 

 

「出てこんよりは、出したほうがいい。ロン、みーんな吐いちまえ」

 

 

ハグリッドは朗らかに言うと元気付けるために曲がったロンの背中を軽く叩いた。彼にとっては軽く叩いたつもりだったが、ロンは危うく自分が吐き出したナメクジとキスをするところだった。

 

 

「止まるのを待つしか…手は無いと思うわ。あの呪いって、ただでさえ難しいのよ。まして杖が折れてたら…」

 

 

洗面器の上にかがみ込んでいるロンを心配そうに見ながらハーマイオニーが呟く。

ソフィアは一応、ダメ元でロンにフィニートを唱えたが、ロンの呪いは解かれることはなく、嘲笑うかのように再び小さなナメクジが口から飛び出した。

 

 

「ねえハグリッド、ロックハートは何のようだったの?」

「井戸の中から水魔を払う方法を俺に教えようとしてな、まるで俺が知らんとでも言うようにな。その上、奴が泣き妖怪を追っ払った話を散々ぶちまけとった。あいつの言う事がひとつでもほんとだったら、俺は臍で茶を沸かしてみせるわい」

 

 

ハグリッドはロックハートを思い出したのか気分を損ねたような顔で憎々しげに吐き捨てる。ホグワーツの教師達には尊敬こそすれ、批判するなんて初めて聞いたハリーは驚いてハグリッドを見つめた。ーースネイプですら、良い先生だって言うのに。

 

 

「それって、少し偏見じゃ無いかしら。ダンブルドア先生は、あの先生が一番適任だとお考えになったわけだし──」

 

 

ロックハートを貶されて面白くないのはこの場でハーマイオニーだけであり、彼女はいつもり少し上擦った声で反論したが、ハグリッドは小さく鼻で笑った。

 

 

「他に誰もおらんかったんだ。闇の魔術の先生を探すのが年々難しくなっちょる。誰も進んでやろうとせん。長続きしたものはおらんみんな一年と経たずに辞めちまうからな。みんな縁起が悪いと思い始めたんだな」

 

ハグリッドに勧められた糖蜜ヌガーを前歯で小さく齧りとり、口の中でふやかしながらソフィアはセブルス──父の事を考えた。たしか彼は闇の魔術の先生をしたがっていた。ハグリッドの言葉が本当なら、彼はこのまま魔法薬学の教師をして居た方が良いのかもしれない。

 

 

「それで?ロンは誰に呪いをかけるつもりだったんだ?」

 

 

ハグリッドはもうロックハートの話をしたくなかったのか、無理に話題をロンに戻し、まだ吐き続けているロンを顎で指しながらハリーに聞いた。

 

 

「マルフォイがハーマイオニーの事を何とかって呼んだんだ。物凄く酷い悪口だったんだと思う、皆カンカンだったし…ソフィアなんて今にも殴りそうだったもんね」

「だって…本当に酷い悪口だったもの…」

 

 

 なんとか糖蜜ヌガーを飲み込んだソフィアは、暖かく甘い紅茶を飲みながら苦々しく呟く。ドラコの言葉を思い出しただけで沸々とした怒りが湧き、カップを持つ手に力が篭った。

 

 

「本当に酷い悪口さ、マルフォイのやつ、ハーマイオニーの事穢れた血って言ったんだよ」

 

 

ロンが洗面器から顔を上げ、苦しげに脂汗を流し嗄れ声で言った。しかしすぐにまたナメクジが上がってくる感覚に慌てて洗面器の中に顔を突っ込む。

 

 

「そんなこと、本当に言ったのか!」

「言ったわよ。でもどういう意味かは…私は知らない。物凄く失礼な言葉だとはわかったけど…」

「…ドラコが思いつく限りの、最悪の侮辱ね」

 

 

ソフィアはため息をつき、紅茶を見ながら呟いた。

 

 

「穢れた血って、マグルから生まれたって言う意味の…両親が魔法使いじゃない人を指す最低の呼び名なの。…ドラコみたいな純血魔族の中には、その血を誇りに思うからって…自分達が優れていると勘違いして、そんな馬鹿な事を言う人がいるのよ」

「ソフィアの言う通りだよ。勿論、そういう連中以外はそんなの関係ないって思ってるよ。ネビルは純血だけど、鍋を逆さに火にかけかねないだろ?」

 

 

ソフィアの言葉を引き継いだロンは、小さなゲップと共に飛び出したナメクジを空中で捕まえ洗面器の中に放り込みながら言った。

 

 

「それに、俺たちのハーマイオニーが使えない呪文は一つもなかったぞ」

「そうよ!ハーマイオニーを侮辱するなんて…たとえドラコでも許せないわ…ああ!やっぱり殴れば良かった!」

 

 

ハグリッドが誇らしげにハーマイオニーを見て優しく告げ、ソフィアは再び怒りに身を震わせる。ハーマイオニーは二人の気持ちに少し嬉しそうに頬を紅潮させ微笑んだ。

そんな意味の言葉だとは知らなかった、だが、ここにいる人達は誰もそんな事を思っていない、寧ろ自分のためにこれ程怒ってくれる事が何よりも嬉しかった。

 

 

「マルフォイなんて殴ったら、ソフィアの手が可哀想よ」

「…じゃあ…ロンの代わりに呪っとくわ」

「ああ、そうしてくれ。フレッドとジョージがナメクジ呪いを教えてくれるよ」

 

 

ソフィアとロンは顔を見合わせにやりと意地悪く笑い合う。ハーマイオニーは眉を顰めてそれを見たが止めることはしなかった。

 

そのあとまた沢山のナメクジを吐いたロンだったが、時間の経過と共に少しマシになってきたのか──呪いが消えかかっているのか──ナメクジを吐き出すペースを落とし、額に浮き出た大粒の汗を服で拭った。

 

 

「穢れた血だなんて、まったく。狂ってるよ!どうせ今時、魔法使いは殆ど混血なんだぜ?もしマグルと結婚してなかったら僕たちとっくに滅びてるよ」

 

 

実際、間違いなく純血であるのは本当一握りの一族だけだった。世界には圧倒的にマグルが多く、魔法使いと魔女だけで子孫を残すことは不可能だ。それに、マグル生まれだとしても魔法が使えるのであれば、生まれなんて関係あるのだろうかと、ソフィアは常々思っていた。

 

 

「うーん。そりゃあ、ロン、奴に呪いをかけたくなるのも無理はねぇ。…だが、お前さんの杖が逆噴射したのはかえってよかったかもしれん。ルシウス・マルフォイが学校に乗り込んできたかもしれんぞ。お前さんがやつの息子に呪いをかけちまってたら──少なくともお前さんは面倒ごとに巻き込まれずにすんだわけだ」

 

 

ハグリッドはそう言ってロンを慰める。背中を再び叩かれたロンは、今度こそ自分が吐き出したナメクジとキスをする羽目になり、嫌そうに口についたナメクジを剥がしハグリッドを睨んだ。

 

ソフィアは少し苦笑して少し冷めた紅茶を飲む。確かに、もしロンの呪いが成功したらルシウスは間違いなく学校に乗り込み──面倒くさい事になって居ただろう。

いや、穢れた血という言葉を使うなんて、今の魔法界では寧ろ使用者が軽蔑されてしまう。呪いをかけられた原因を考えれば、ルシウスは無言を貫くかも知れない。

 

 

 

「そうだハリー、お前さんにも小言を言うぞ?サイン入りの写真を配っとるそうじゃないか。なんで俺に一枚くれんのかい?」

 

 

ハグリッドは悪戯っぽく言うが、その言葉をからかいだと気が付かないハリーは反射的にカッと頬を赤らめ怒りの声を上げた。

 

 

「僕サイン入りの写真なんて配ってないよ!」

「からかっただけだ」

 

 

ムキになったハリーに、ハグリッドは優しく笑いながら言う。ハリーがそんな事をしようとしないのは、ハグリッドが一番よく知っていた。

しかし全く笑えないからかいに、ハリーはムッとしたまま紅茶を啜った。

ハグリッドは元気付ける為に皆が紅茶を飲み切ったのを見ると小屋の裏にある小さな畑にたわわに実った大きなカボチャを披露した。

ソフィアはあまりの大きさに感心し、驚きのを上げて隣に並ぶ。

 

 

「凄いわ!私と同じくらい大きい!」

「よーく育っとるだろう?ハロウィン祭のために育てちょる。その頃にはもっと大きくなるぞ!」

 

 

目を輝かせて喜ぶソフィアを見てハグリッドは誇らしげにカボチャをポンと叩いた。

 

 

 

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