【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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66 絶命日パーティ!

 

ハロウィーンの日。

ハリー達はゴーストであるニックの絶命日パーティーへいくと約束してしまった為に、賑やかな大広場のドアの前を素通りし──ちらりと隙間から大広間を見ると、中には巨大なカボチャや去年のような特別なキャンドルが大広間を輝かしく照らしていた──地下牢へと向かった。

 

 

「約束は約束でしょ。あなたが行くって約束したんだから」

 

 

行きたくなさそうな顔をするハリーに、ハーマイオニーが厳しくたしなめた。

絶命日を祝うパーティーへ続く道にもキャンドルがありゆらゆらと廊下を照らしてはいたが、明るい物ではなく、真っ青な炎が不気味に揺れていた。階段を一段降りるたびに気温が下がり、彼らは身震いをしてローブを強く身体に巻きつけた。

 

 

「きゃっ!…な、何の音なの…?」

 

 

耳をつん裂くような高い不協和音に、ソフィアは叫び耳を抑えた。ハリー達もまた廊下の先から聞こえる音に顔を顰める。

 

 

「あれが音楽のつもり?」

 

 

ロンが囁いたが、誰も答えなかった。音楽のつもりなら、この先に待ち受けるのは間違いなく、地獄だろう。嫌な予感は一歩進むほどに、不協和音と共に強くなった。

 

角を曲がるとニックがビロードの黒幕を垂らした戸口のところでハリー達を待ち受けていた。

 

 

「親愛なる友よ。この度はよくぞおいでくださいました…」

 

 

ニックは悲しげに挨拶をすると、祝えばいいのか、一緒に悲しめばいいのか分からず曖昧に笑ったハリー達に向かって帽子を脱ぎ、4人を招き入れるように深くお辞儀をした。

 

黒幕の先には信じられないような光景が広がっていた。ホグワーツ内のゴーストが集合しているだけではなく、きっと世界中から訪れたのだろう、何百というゴーストが集まり、地下牢は白い霧で満たされているように見えた。

 

甲高い不協和音を奏でていたのは30本の鋸が奏でる恐ろしい音で、ソフィアはニックのいる手前耳を塞ぐ事も、不快感を顕にする事も出来ず、ただ引き攣った笑みを浮かべた。

殆どのゴーストは混み合ったダンスフロアでふわふわと優雅にワルツを踊っていて、それを見たソフィアは隣にいたロンに手を出した。

 

 

「一曲お相手願えませんか?」

「あー…出来たらもっと良い雰囲気で君と踊りたいよ…」

「それもそうね」

 

 

ロンは悪戯っぽいソフィアの微笑みに、少し頬を赤く染めたが、残念そうに肩をすくめる。確かにゴースト達はワルツを楽しそうに踊っているがその音源は耳を塞ぎたくなるほどの音だ。生きている人間にはロマンスのかけらもない。

 

 

「見て回ろうか?」

「ああ…誰かの身体を通り抜けないように気をつけろよ」

 

 

ゴーストに通り抜けられると冷水を浴びたように体の芯から凍えてしまう。ただでさえここは酷く寒い冷凍庫のようなのに、これ以上冷えたら凍死するに違いない、とハリー達は慎重に部屋の端を回り込むように歩いた。

 

 

「あっ!嫌だわ…!戻りましょう、嘆きのマートルとは話したくないの…」

 

 

ハーマイオニーが当然立ち止まり小声で叫ぶとソフィアの服を早く戻ろうと引っ張った。ソフィアもまた、前を見て少し困った顔をしながらもハーマイオニーについて元来た道を引き返した。

 

 

「誰だって?」

「マートルは、3階の女子トイレに取り付いてる女の子なの」

 

 

男であるハリーとロンは嘆きのマートルの事を知らず、そんなゴーストがいたのかとちらりと後ろを振り返った。

 

 

「トイレに取り憑いてるって?」

「そうなの。去年一年間トイレは壊れっぱなしだったわ。あの子が癇癪を起こしてそこら中水浸しにするんだもの…」

「まぁ…トイレが壊れてなくても、できればあまり行きたくはないわね…ずっと泣いてるから、気が滅入っちゃうもの」

 

 

トイレの前を通っただけでもマートルの悲痛な高い泣き声はよく聞こえていた。その悲しげな泣き声を思い出し、少しソフィアは可哀想に思っていた。何故このホグワーツに居るのかわからない、だが、ホグワーツの服装に身を包む彼女は──この安全だと言われているホグワーツで命を落としたのだろう、それは、嘆きたくもなる。

 

 

「見て、食べ物だ」

 

 

ダンスフロアの反対側に真っ黒なビロードがかかる長机があり、どうやら料理が沢山置かれているようだった。ゴーストも料理を食べるのだろうか、大広間で彼達は浮かんでいるだけだったけれど、とソフィアは不思議に思いながら、ハリー達と共に興味深々で近づいた。だが鼻を刺すような悪臭に、ソフィアは思わず身体を引いた。

 

銀色の盆に置かれている魚は腐り、山盛りのケーキは炭のように焼け焦げている。肉料理には蛆が湧き蠢き、厚切りのチーズは緑のかびをはやし芝生のようになっていた。一段と高い所にある灰色の墓石の形を模したケーキには、ニックのフルネームと共に死亡日が書かれていた。

 

 

「悪趣味…」

「ここで趣味がいいものは、ひとつもなさそうだね」

 

 

ソフィアの呟きに、ハリーは小さく同意した。

引いた目でケーキを見ているソフィア達の隣を恰幅の良いゴーストが大きく口を開けながら悪臭を放つ料理を通り過ぎた。

 

 

「食べ物を通り抜けると味がわかるの?」

「まあね」

 

 

ハリーの問いにゴーストが悲しげに答える。ソフィアは驚いてそのゴーストを見つめた。ゴーストは生きていない──死んでいるわけでもないが──味を感じられる味覚があるのだろうか。

 

 

「つまり、より強い風味をつけるために腐らせたんだと思うわ」

 

 

ハーマイオニーは鼻を摘み、腐った肉料理をしげしげと眺めた。

 

 

「行こうよ、気分が悪い」

 

 

ロンの心底嫌そうな言葉にソフィア達は頷きすぐに料理から離れようと向きを変えたが、足を進める間も無くピーブズがすっと4人の前に現れ目の前で止まった。

ニヤニヤと意地悪げな顔を浮かべるピーブズは、正しく言えばゴーストでは無い。そんな彼も、この絶命日パーティーに招待されたのが何となく、意外だとソフィアは思った。──いや、ピーブズなら招待されずとも乱入しそうだ。

 

 

「おつまみはどう?」

「いらないわ」

 

 

ハーマイオニーにきっぱりと言われたピーブズはにたっと笑ったままハーマイオニーの前に滑るように移動するとくるりと上下逆向きになり、楽しげにくすくすと声を漏らした。

 

 

「おまえ達がかわいそうなマートルの事を話しているのを聞いたぞ。…お前たち、ひどいことを言ったなぁ」

 

 

ハーマイオニーは青い顔をして辺りを見渡す、もしマートルがこの事を聞いてしまったら間違いなく、また泣き叫ぶに違いない。どうかマートルに気付かれませんように、ハーマイオニーはそう願ったが、その願いも虚しくピーブズは大声でマートルを呼んだ。

 

 

「おーい!マートル!」

「ああ!ピーブズ、ダメ!私が言ったこと、あの子に言わないで。じゃないとあの子とっても気を悪くするわ」

 

 

ハーマイオニーは大慌てでピーブズに囁くが、ピーブズは意地悪げに笑うだけで何も言わない。そもそも、ピーブズは人が困るのを心から楽しむ性格だ、きっと今更何を言っても彼を止める事は出来ないとソフィアは諦めて音もなく近づくマートルを見た。

 

 

「なんなの?」

 

 

不機嫌そうな仏頂面をしてマートルが現れ、訝しげにソフィア達を見渡した。

 

 

「はぁいマートル。ご機嫌よう」

「お元気?トイレの外で会えて嬉しいわ」

 

 

ソフィアとハーマイオニーは無理に明るい声と笑顔を浮かべマートルに向き合った。ただ、マートルはそんな言葉を一切信じず、胡散臭そうに鼻を鳴らした。

 

 

「ミス・グレンジャーがたった今お前のことを話してたよ…」

 

 

ふわりとピーブズは浮かび、悪戯っぽくマートルに耳打ちした、ハーマイオニーはピーブズを睨んだが、慌てて手を振りにっこりとマートルに向き合う。

 

「あなたの事…ただ──その──」

「トイレの外で会うあなたはとっても素敵だって話してたの」

 

 

何と言っていいかわからず言い淀んでいたハーマイオニーを助けるようにソフィアが微笑んでそう言った。

しかしマートルは優しいソフィアの声にも疑心を溶かす事は無く、鋭く睨むとその目からじわりと銀色の涙を溢れさせた。

 

 

「嘘でしょう、あなた達、私のことをからかってたんだわ」

「そうじゃない、ほんとよ?私たち、さっきマートルの事を素敵だって言ったわよね?」

 

 

ぽかんとしていたハリーとロンはソフィアに脇腹を小突かれ、慌てて頷く。

 

 

「ああ、そうだとも」

「そう言っていたよ」

「嘘言っても駄目!」

 

 

ついにマートルの涙は決壊し、滝のように頬を伝った。悲しみでしゃくりあげながら涙を流すマートルの後ろでピーブズが満足げにケタケタと笑う。

 

 

「みんなが影で私の事なんて呼んでるか、知らないとでも思ったの?太っちょマートル、ブスのマートル、惨め屋、呻めき屋、塞ぎ屋マートル!」

「抜かしたよぅ、ニキビ面ってのを」

 

 

ピーブズが意地悪くマートルの耳元で囁くとマートルは耐えきれず悲痛に叫び、沢山のゴーストの上を滑るように逃げた。

あまりの悲しみの声に、ソフィアはちくりと胸が痛む。きっと彼女は生前酷く虐められていたのだろう。それが原因で亡くなったのかもしれない、死してもなお、生前の記憶に苦しめられているのだ。

 

 

「ちょっと励ましてくるわ」

「ええ…やめた方が…」

 

 

ハリー達の静止の声も聞かず、ソフィアはゴーストをすり抜けないように隙間を通りながらマートルが向かった方へ走る。もう彼女の居場所であるトイレに戻ってしまったかと思ったが、マートルは地下牢の一番奥で壁に背中をつけ膝を抱えてめそめそと泣いていた。

 

 

「…マートル?」

「何よ、まだ言い足りないって?わざわざわたしをバカにするためにきたの!?」

 

 

マートルは威嚇するように吠え、涙をぼろぼろと流した。

ソフィアは少し困ったように言葉を探していたが、すぐにマートルの前にしゃがみ込むとそっとマートルを抱きしめた。

触れられるわけではない、ただ彼らは生きていた人間だった。こうしていれば落ち着くかもしれない、そう考え、彼女が出す冷気で凍えながらもソフィアは離れる事はなかった。

 

マートルは驚きから涙を引っ込め、信じられないものを見るようにソフィアを見つめた。

 

 

「あんた、なに、して…」

「泣いている人を放っておけないわ。…ゴーストでもね。私はこうして居ると涙が止まるの。…マートルの涙も…止まったみたいね」

 

 

ほっとして優しく笑いかければ、マートルはまだ仏頂面をしたままだったが久しぶりの抱擁に少し気を良くしたのか、するりとソフィアを通り抜けないように腕から抜け出すとソフィアの隣に座った。

 

 

「あんた、変わってる」

「そう?」

「…ハグなんて…昔…生きてるときに…パパとママにしてもらって以来よ」

 

 

その言葉は、とても悲しみを含んでいた。マートルは何も、虐められた事ばかり嘆いて居るわけではない。両親より先に死んでしまった事、未来が急に消えてしまった事に対しても、深い悲しみを負っていた。

 

 

「…あんたなら…三階のトイレを使ってもいいわ…水をかけないであげる」

 

 

マートルは小さく呟き、ぷいとそっぽを向く。彼女が少しだけこころを開いてくれた事を感じ、ソフィアは嬉しそうに笑うと、大きく頷いた。

 

 

「ええ、お願いするわ!」

「…あんた、名前は?」

「自己紹介もまだだったわね、私はソフィアよ。ソフィア・プリンス。…あなたは?」

「…マートル・ウォーレン。…じゃあね」

 

 

マートルはそう呟くと、ふわふわと漂いゴースト達の中に混ざった。その後ろ姿が何処か嬉しげに見えたのは、ソフィアの気のせいでは無いだろうだろう。

 

 

ソフィアは立ち上がるとハリー達と合流する為に元いた場所へ戻った。丁度彼らはもうここから帰ろうとソフィアを探していた所で、4人は誰かと目が合うたびににっこりと会釈しながら後退りして出口へ向かう。

なんとかどのゴーストにもバレずに地下牢から抜け出すと、4人は黒い蝋燭が青く辺りを怪しく照らす廊下を急いで走った。

 

 

「デザートがまだ残ってるかもしれない」

 

 

空腹を抑えながらロンが祈るように言った。

その時、突然ハリーが足を止め、どうしたんだと三人は後ろを振り返る、ロ早く大広間に行きたいロンはイライラとした目でハリーを見る。

 

ハリーは何かを探すように緊張した顔で辺りを見渡した。

 

 

「ハリー、一体何を…」

「またあの声なんだ、ちょっと黙ってて──ほら!聞こえる!」

 

 

ハリーは天井からその声が聞こえると気付き、じっと上を見上げたが、ソフィア達はその場に立ちすくみ、何も言えずハリーを見つめた。三人で目配せをしたが、皆が首を振る。──何も、聞こえない。

 

 

「こっちだ!」

 

 

ハリーは叫び階段を駆け上がる。

ソフィア達は暫くどうするか迷ったが、ハリーを無視して大広間に行くことも出来ず、後をついて行った。

 

 

「…何か聞こえた?」

「何も聞こえなかったわ…ハーマイオニーは?」

「私も、何も…」

 

 

ソフィア達は当惑しながらハリーの背を追った。他の人には聞こえない声が聞こえるなんて、それは尋常じゃない。少し、必死に辺りを見渡すハリーが不気味に見えてしまったほどだった。

 

 

「ハリー、ちょっと待って…!」

「シーッ!」

 

 

ハリーはソフィアの呼びかけを強く制し、耳に神経を集中させるように目を閉じた。何も聞こえない、ただ、遠くから生徒達の楽しげな声が聞こえてくるだけだ。

 

 

「誰かを殺すつもりだ!」

 

 

そう叫ぶと、ハリーは3人の困惑した表情には気づかずすぐにまた走り出した。声は上から聞こえてくる。きっと上の階に違いない、とハリーは階段を駆け上がり、ソフィア達は呼吸を荒げながら必死にその後を追った。

沢山の角を曲がり、誰も居ない廊下に着いた時、ようやくハリーは足をぴたりと止めた。

やっとのことで追いついたソフィア達は肩を揺らしぜいぜいと息を整え額に滲んだ汗を拭った。──あれほど寒かった身体が、今は燃えるように熱い。

 

 

「ハリー、どうしたの?僕たちには何も聞こえなかった…」

 

 

ハーマイオニーもロンと同じように当惑していたが、ハッと息を呑むと廊下の隅を指差した。

 

 

「見て!」

 

 

向こうの壁に何かが光っていた。四人は暗がりに目を凝らしながらそっとそれに近づく。窓と窓の間の壁に、まるで血で書かれたように赤い文字が書き殴られていた。

 

 

──秘密の部屋は開かれたり

──継承者の敵よ、気をつけよ

 

 

「…ねぇ…あれは──何?」

 

 

ソフィアは松明の腕木にぶら下がって居る物を震える指先で示した。

じりじりと近寄り、足元の大きな水溜まりに足を取られそうになりながらその文字の下にある何かを、四人はよく見ようとした。

 

ふと隙間風が吹き、松明の炎が揺れた。その瞬間四人はぶら下がって居るものがなんなのかはっきりと見え──見てしまい、仰反るように飛び退いた。

フィルチの飼い猫のミセス・ノリスだった。

 

尻尾を絡ませ、硬直し、カッと目を見開いている。

あまりの現実離れした恐ろしい光景に、ソフィア達は暫くの間動けなかった。

 

 

「ここを離れよう」

 

 

ロンが緊張を滲ませる硬い声で言った。

 

 

「でも…」

「助けてあげるべきじゃないかな…」

 

 

いつも、ミセス・ノリスをいつか蹴飛ばしてやりたい、そう思っているハリーでさえ、あまりの悲惨な可哀想な姿にそう戸惑いながら呟いた。

 

 

「僕の言う通りにして、ここに居るところを見られない方がいい」

 

 

ロンの言葉にハーマイオニーはミセス・ノリスから目を離さないままに頷き戻ろうとロンに続き踵を返した。

しかし、まだソフィアはその場で躊躇った、彼女はミセス・ノリスを見捨てて去る事が本当に正しいのか迷っていた。

 

 

「早く!何してるの!」

 

 

ロンが咎めるように動かないソフィアとハリーに言う、ハリーはミセス・ノリスをチラチラと見て気にしながらも、ゆっくりとその場から後ずさる。

 

だが、ソフィアはぐっと唇を結び恐怖を目にちらつかせながらも腕木にぶら下がるミセス・ノリスに近づいた。どう見ても死後硬直が始まっているように見える、だが、このまま放っておく事は出来ない。

 

せめて、腕木から外してあげよう、そう思いソフィアがミセス・ノリスに手を伸ばし触れた。あまりの硬さに一瞬手を引き込め、そっとその硬くなった毛を撫でた。

 

 

「……あれ…?」

 

 

 

ソフィアが微かな疑念から呟いたのと、大広間でのパーティーが終わり沢山の生徒が楽しげな騒めきと共に現れたのは同時だった。

 

先頭の集団に居た生徒がぶら下がった猫を見つけた途端小さく悲鳴をあげ、そこから恐怖が漣のように広がった。

楽しげなお喋りや騒めきも一気に窄み、その悍ましい光景を恐い物見たさなのか、よく見ようと何人かが前の方で押し合った。

その傍でソフィア達は廊下の真ん中にぽつんと、取り残されていた。

 

どう見ても怪しく見えるソフィア達に、誰も近づこうとはしない。

 

 

「継承者の敵よ、気をつけろ!次はお前たちの番だぞ、穢れた血め!」

 

 

静けさを切り裂くような声が響く。

人垣を押し退けて最前列に進み出たドラコが、いつも青白い顔を紅潮させぶら下がったミセス・ノリスを見てニヤリと笑う。

だがそれも一瞬でその先にソフィアが居ると気付くとまた殴りかかるかもしれないと一歩後ろに下がる。

 

だがソフィアはそんなドラコの最悪な言葉に構うことなく──時間の無駄だと言うように──ミセス・ノリスを優しい手つきで慎重に腕木から外すとその腕に抱きしめた。

 

毛の一本一本まで硬い。

これは死後硬直ではない、石化している。

 

何かの魔法による石化なら、まだ死んでは居ない、きっと助かる筈だ。そう、ソフィアは憂いを帯びた目でミセス・ノリスを見る。石化させるだけでは足らず、猫を吊るすだなんて非道な事を誰がしたのか。沸々と怒りが込み上げた。

 

 

 

 

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