【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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72 レッツ調合!

 

 

日曜日の朝、ソフィアはハーマイオニーとロンと共にハリーの見舞いに行くために医務室へ向かっていた。

 

だが階段を降りようとした時に、階下の踊り場からフリットウィックの小さな悲鳴が聞こえ、一体何事かと三人はこっそり階段の上から下を盗み見た。

 

踊り場に居たのはフリットウィックとマクゴナガルで、2人はひそひそと声を顰め、顔を合わせるようにして話し込んでいた。

 

 

「そんな…!本当に、生徒が…?」

「ええ、フリットウィック先生。私はこの目で見ました…一年生のコリン・クリービーです。ミセス・ノリスと同じように…石になっていました」

「なんと…何と酷い…!」

 

 

あまりの衝撃に、フリットウィックは手で顔を覆い、その場で座り込んでしまう。マクゴナガルもまた、悲痛な顔をして固く口を結んだまま、じっと石の階段を見ていた。

 

3人は顔を合わせ、足音をさせないように気をつけながら元来た道を戻り、人気のない廊下にたどり着くと一度足を止めた。

 

 

「コリンが…!まさか…」

「ついに、マルフォイのやつ!やりやがった!」

「こうしちゃいられないわ、──早く薬を作りましょう。ハリーのお見舞いはいけないけれど…きっとハリーは分かってくれるわ」

 

 

3人とも顔色を悪くしていたが、無言の内で頷き合うとすぐに3階のトイレへと向かった。しかしすぐにソフィアは足を止め、驚き急ブレーキをかけたハーマイオニーとロンを見て静かに言う。

 

 

「私、生徒用の戸棚から材料をとってくるわ。二人は準備を始めてて!」

「わかった、…けど、気をつけて」

「くれぐれも、誰にも見つからないようにね!」

 

 

ソフィアは深く頷き、2人と別れ魔法薬学の教室へと向かう。

今日は日曜日で授業もない、忍び込むにはもってこいだろう。後は、セブルスが居ないことを祈るしかない。

 

足早に地下室へ向かい、教室の扉を少しだけ開いた。中は無人で鎮まりかえっている。ソフィアはホッとしながら素早く体を扉に潜り込ませると、すぐに生徒用の薬棚へ向かった。沢山の小瓶や材料が並ぶ棚から必要な材料を素早く探す。

 

 

「クサガゲロウ、ヒル、ニワヤナギ…あっ、満月草もあるわ、よかった…これで次の満月まで待たないで済むわ…」

「ポリジュース薬でもつくるの?」

 

 

突如聞こえた声に、ソフィアは声にならない悲鳴を上げ勢いよく後ろを振り向いた。

その先にはきょとんとした顔のルイスがいて、ソフィアは早鐘のように打つ心臓の音を聞きながら、胸を抑え深く息を吐いた。

 

 

「ルイス…もう、驚かせないでよ!」

「え?…いや、それは僕のセリフだよ…こんな所で何してるの?流石に、勝手にとったら…先生に、怒られるよ」

 

 

ルイスは忠告し、怪訝な目でソフィアを見たが、ソフィアはバツの悪そうな顔をしながらも戸棚からさっと材料を抜き取ると鞄の中に突っ込んだ。

 

 

「お願い、誰にも言わないで」

「…先生にも?」

「先生にも、よ」

 

 

必死な顔で懇願するソフィアに、ルイスは小さくため息を吐いたが、真面目な顔でソフィアの両肩を掴み、彼女の黒い目を覗き込んだ。

 

 

「ソフィア…黙っててあげるけど、何をするつもりか教えて」

「…ごめんなさい、言えないの」

 

 

ソフィアは悲しげに首を振る。暫くルイスは無言でソフィアを見つめたが、彼女の口が開かれることはなく強く結ばれたままで、諦めたように肩から手を離し、肩をすくめた。

 

 

「危険なことはしてない?」

「ええ、大丈夫よ」

 

 

──今のところはね。と内心でソフィアは呟いた。

ルイスはまだその言葉を信じられないような目をしていたが、ソフィアが一度決めた事を曲げないことも、意外と頑固な事も知っていた為それ以上の追求はしなかった。

 

 

「ただ、ポリジュース薬はぜっっ…たい、ソフィアには逆立ちしても作れないと思うよ」

「まぁ!」

 

 

ソフィアはルイスのからかいに顔を赤くして憤慨したが、ソフィア自身、あんな複雑な調合は不可能だと理解していたため、頬を膨らませるだけで反論はしなかった。

 

 

「事実でしょ?…ハーマイオニーあたりかな?ポリジュース薬か…いいな、僕もまだ作ったことないもん、先生に作りたいって言ってみようかなぁ」

 

 

少し笑いながら言ったルイスの言葉に、ソフィアは少し不機嫌そうな表情のままちらりとルイスを見た。

作りたいといっても、きっと授業でポリジュース薬を造る事は無いだろう。夏休み中にセブルスと家で造るにしては少々時間がかかるものだ。いつ作るつもりなのか。

そんなソフィアの視線に気付いたのか、ルイスは悪戯っぽく笑うと声を顰め、ソフィアの耳元で自慢するように告げた。

 

 

「僕、今年から…父様の個人授業を受けてるんだ」

「えっ…!」

 

 

ソフィアの想像通りの反応に、ルイスは満足したかのように笑いながら身体を離した。

 

 

「そんな…!ずるいわ!」

「えー?だってほら、僕って魔法薬学は優秀だからね?ソフィアはマクゴナガル先生から個人授業を受けているでしょ?それと同じだよ。ソフィアは…スネイプ先生の個人授業を受けるにはちょっと…スキルが足りないんじゃない?」

「…、…そうね…」

 

 

くすくすと楽しそうに笑うルイスを見て、ソフィアは苦々しい顔を見せ頷いた。たしかに、自分は先生の──父の個人授業なんて永久に受けられないだろう、補習ならいずれ受ける事になるかも知れないが。

それに、魔法薬学の個人授業が羨ましいのではない、そもそも調合は苦手で嫌いだ。父と2人きりになれる、それが途轍もなく羨ましかった。

 

 

「僕、この後個人授業なんだ。…ソフィアが何してるのかは言わないけど、もう教室から出て行った方がいい…すぐに先生が来るよ」

「…わかったわ…ありがとう、ルイス」

 

 

ソフィアは頷きながら、そういえば2人きりで話すのは久々だと気付いた。ルイスは今年ドラコと喧嘩をしてからあまりソフィアに…ハリー達に近付かなくなった。大広間での食事の際も去年は頻繁にグリフィンドールに混じっていたが、ここ最近は全く無かった。

そう考えると、何となく寂しさが溢れ、ソフィアはぎゅっとルイスを抱きしめた。ルイスは驚き目を開いたが、すぐにその目を優しく細めさせるとソフィアの背に手を回した。

 

 

「クリスマス、どうするか…聞いておくね」

「ええ、お願いね?」

「…ソフィア、くれぐれも…僕達を悲しませる事はしないでね?」

「…わかったわ」

 

 

ソフィアは頷く。そしてすぐに身体を離しルイスの頬にキスを落とすと手を振り、魔法薬学の教室から去っていった。

 

それを見送ったルイスは今までの優しげな表情を消し、考え込むように顎に手を当てた。

 

 

「…秘密の部屋…調べてみようかな」

 

 

いま、ソフィア達が調べ嗅ぎ回ることと行ったら間違いなく秘密の部屋関連だろう。ルイスは今年もまた厄介なことに巻き込まれていくソフィアを思い、父と同じように深いため息をついた。

 

 

 

 

材料を手に入れたソフィアはすぐに3階のトイレへ向かい、そっと扉を開け中の様子を確認する。一番奥の個室が閉まっている事に気付きそっと扉を叩いた。

 

 

「材料、とってきたわ」

 

 

ガチャリと鍵の開く音と共にハーマイオニーが安心したように息を吐き、ソフィアを抱きしめた。

 

 

「ソフィア!遅かったから心配してたのよ!」

「何かあったのかい?」

「ああ…ルイスと魔法薬学の教室で会って、誤魔化すのが大変だったの」

 

 

ソフィアはカバンの中を漁り、材料を取り出しながら言った。その言葉にハーマイオニーとロンは顔を見合わせ不安そうな目でソフィアを見る。

 

 

「大丈夫だったの?…その、バレなかった?」

「何とか大丈夫だったわ。…はい、材料よ。…私は調合に自信がないから…ハーマイオニーにお願いすることになるけど…」

 

 

大丈夫だと言う言葉が本当なのか、少し気になったハーマイオニーだったが──ルイスは、かなり勘が良い。少しの情報で驚くほど色々な事を知ってしまう──今はそれを気にしても仕方がないと考え、材料を受け取り間違いが無いかを本を開き何度も確かめ、深く頷いた。

 

 

「よし…これで、途中までは大丈夫ね…早速作りにかかるわ!」

「僕たちは何をしてればいい?」

 

 

ロンがハーマイオニーに問いかけ、ちらりとソフィアを見た。ハーマイオニーは少し考え、声を顰めて隣の個室を顎で示した。

 

 

「マートルのご機嫌をとって頂戴。トイレの水がもし鍋に入ったら…全て台無しよ!」

「ああ、それなら簡単だ!ソフィアがマートルと話して、僕は黙ってたらいいんだからね!」

 

 

ロンは手を上げて喜んだが、ソフィアはそれを見ると頭を押さえて首を振った。

マートルの泣き声は今は聞こえないが、過去に自分を虐めた相手を呪う言葉の呟きが聞こえてくる事から、あまり機嫌は良くなさそうで、ソフィアはハーマイオニーに言われた任務の難しさに肩をすくめた。

 

 

ハーマイオニーが早速調合を始め、ソフィアはマートルの機嫌を取るために隣の個室へ向かう。ロンはマートルに姿を見せない方がいいと考え、出来る事はないがハーマイオニーと共にその場に残った。

 

 

「こんにちはマートル、急にお邪魔してごめんなさいね」

「ソフィア…またアイツらを連れてきたの?私は…あなただけなら歓迎するのに」

 

 

マートルはトイレの水槽の上で浮かんでいたが、ソフィアが入ってきたと分かるとふわりと前に舞い降り、つまらなさそうに唇を尖らせた。

 

 

「ごめんね、ちょっと…秘密で作りたいものがあって…マートルも、内緒にしてくれるかしら?あなたはかけがえのない友達だから…教えてあげるのよ?」

「…まぁ!…ふふ、良い響きね?」

 

 

ソフィアは少し彼女を都合よく使っているだけのような気がして彼女の嬉しそうな笑顔に胸にチクリとした痛みを感じたが、仕方のない事だと、自分に言い聞かせ無理に笑って見せた。

 

ソフィアは蓋の閉まった便座に腰掛け、マートルの機嫌を損ねないよう取り止めのない話をした、なるべく彼女の過去のトラウマを刺激しないような話題を選び、家族を思い出させ悲しませてはいけないと、家族の話題も避け、去年あった賢者の石に関する事を話していた。マートルはあまりトイレから出ないのか、興味深そうに頷きそれを聞いていた。

 

少し経った後、トイレの扉が開く音がしてソフィアは息を呑んだ。まさかこの部屋に自分達以外の誰かが来るなんて全く想像していなかった、もし、ポリジュース薬を作っている事がバレたら大変な事になる。

じっと息を殺していたが、聞き覚えのある声が聞こえ、ほっとソフィアは胸を撫で下ろした。

 

 

「マートル、ごめんなさい、私ちょっと隣に行くわね?」

「わかったわ…またきてね、ソフィア…」

「ええ、必ず」

 

 

マートルは悲しそうにしたがすぐに頷き、何かを期待するような目でソフィアの前に立った。少しソフィアは考えた後、両手を広げ、マートルを抱きしめた。

 

 

「ふふっ…またね…ソフィア…」

 

 

マートルは嬉しそうに笑いながら便器の中に向かってゆっくりと水飛沫をソフィアにかけないように飛び込む。パイプから機嫌のいいくぐもった鼻歌が聞こえてきたのを確認し、ソフィアは感じた寒気に体を一度大きく震わせたあと隣の個室へ移動した。

 

 

「ハリー、腕は大丈夫?」

「ソフィア!うん、もう平気さ。…2人に聞いたんだけど…もうコリンのことは知ってるんだね」

「ええ…」

 

 

ハリーは腕をぐるぐると回し、問題のなさをアピールした、それを見てソフィアは安心したが、コリンの事を思い出すと表情を翳らせる。

 

 

「コリンの事じゃ無い、もう一つ…話があるんだ。真夜中にドビーが僕のところに来たんだ」

 

 

ハリーは三人にドビーが話した事、話してくれなかった事を詳細に伝えた。ロンもハーマイオニーもソフィアも、想像もしなかった話に口をぽかんと開けたまま聞いていた。

 

 

「秘密の部屋は以前にも開けられた事があるの?」

 

 

ハーマイオニーが恐ろしさに身を震わせ、小さな声でハリーに聞いた。

 

 

「これで決まったな!ルシウス・マルフォイが学生だった時に部屋を開けたに違いない!今度は我らが親愛なるドラコに開け方を教えたんだ。間違いない!」

 

 

ロンはまるで勝利を確信したかのように膝を叩き、意気揚々と言った。ソフィアはハリーの言葉を聞いて暫く悩んでいたが、ふいにロンを見た。

 

 

「ロン、アーサーさんは、ドラコのお父さんの…ルシウスさんと同級生かしら?」

「え?どうだろう…多分、違うんじゃ無いかな?僕のパパの方が歳上だと思うよ。…どうして?」

 

 

いきなり自分の父が話題にあがり、ロンはきょとんとした顔をしていたが少し考えて首を振った。ソフィアは考え、言葉を選びながら自問自答するように呟いた。

 

 

「ルシウスさんが秘密の部屋を過去に開いたと仮定して、の話だけど…。もし開けたのなら、アーサーさんは絶対に知ってるでしょう?犯人がルシウスさんだとは気が付かなかったかも知れないけれど。そんな事件がホグワーツ在学中にあったのなら…知らない人は居ないと思うの。けれど…そうね、学年が違うのなら…アーサーさんが卒業してから…ルシウスさんが開いた可能性もあるし…。

私の知り合いで当時のことを知ってる人も…ルシウスさんより年下だし…んー…だめ、もしいつ開かれたか分かれば、もっと犯人を絞り込めると思ったの。でも…ここ二十年は無いと思うのよね…親がホグワーツの卒業生なんて子ザラにいるでしょ?皆秘密の部屋の事を知らないなんて…ああ、でも…一度目はほとんど、誰にもバレなかった…?…うーん…」

 

 

ソフィアは両手を上げて首を振る。

ハリーとロンは間違いなくドラコの仕業だと思っている、ハーマイオニーですら、九割はドラコだと思っていた。だがこの様子ではソフィアはまだドラコが犯人だと確証を持てていないのだとハリーは気付いたが、去年の事もあり何も文句は言わなかった。

 

 

「それにしても、ドビーがそこにどんな怪物がいるか、教えてくれたら良かったのに!そんな怪物が学校の周りをうろうろしてるのに、どうして誰も気が付かなかったのか、それが知りたいよ」

「きっと、透明になれるのよ。そうでなきゃ何かに変身してるとか…鎧とかに。カメレオンお化けの話、読んだことあるわ…」

「そうね…それに、千年前から生きていたとして、途轍もないわ。そんなの…伝説級の生き物くらいしか…確か今昔奇妙物の怪図鑑で…沼地に住む不死の生物がいるって見たわ…」

 

 

ハーマイオニーとソフィアも怪物の正体について考えたが、これだと言うものは思い浮かばなかった。ソフィアは何度か図書館に行き、魔獣についての本を探したのだが、考えることは皆同じなのだろう、全て貸出中になっていた。

 

 

「ハーマイオニー、ソフィア、君たち本の読みすぎだよ」

 

 

ハリーが少し嫌そうに呟き、それにロンも賛同して頷く。ハリーは改めてロンがこのグループの中にいたことに感謝した。

──失礼な言い方かも知れないが、同じレベルの人が1人でもいなければ、この勤勉で博識な2人とはとても上手く付き合ってられないだろう、と思った。

 

 

 

 

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