【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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73 似ているのは偶然!?

 

 

コリンが襲われたと言う話は、休み明けの月曜日には学校中に広まっていた。人がついに襲われた、次は自分の番かも知れないと皆が疑心暗鬼になり信じられる友人と固まって行動した、とりわけマグル出身の者は教室を移動する度に生きた心地がしなかった。

 

余裕を見せていたのはスリザリン生だけだろう。彼らは自分達は絶対に襲われないと考え、恐怖に慄く生徒達を見て馬鹿にしたように笑った。──実際のところを言えば、スリザリンにも純血ではなく、片方の親がマグルだと言う生徒も、両親共にマグルだという生徒も存在している。だが利口な彼らはもちろんそのことを生涯誰にも言うことはない。この寮で、その事実が露呈する事がどれだけ危険なのか、彼らは重々理解していた。

 

自由時間も殆どの生徒がここだけが安全地帯だというように各自の寮で身を寄せ合って過ごしていた。

生徒達が固まって行動するなか、ソフィアはジニーの事が気掛かりでならなかった。未だにジニーは殆ど1人で過ごしているようで、ついこの間教室を移動する際も一人きりでとぼとぼ歩いていた。心配したソフィアとロンはもちろんジニーを次の教室まで連れていったが、どうやらジニーはコリンと妖精の呪文の授業で隣だった事もあり、酷く動揺し落ち込んでいるようだった。

 

 

その日、ソフィア達もまた他の生徒と同じように談話室で過ごしていた。

ポリジュース薬は着々と完成に向かっているが、ただどうしても必要な材料が二種類足りず、それを手に入れる事が出来るのはセブルス個人の薬棚しかなかった。

 

 

「必要なのは、気を逸らす事よ。そして、私たちのうち誰かがスネイプの研究室に忍び込んで、必要な材料を取るの」

 

 

ハーマイオニーは声を顰め、真面目な顔でついに計画を立て始めた。ハリーとロンは怪物と戦うよりも、研究室に忍び込む方が何倍も難しいのでは無いかと乾いた笑いを漏らした。果たして、誰が忍び込むのか、どうか自分を指名しないでくれとハリーとロンは心配そうにハーマイオニーを伺うように見た。

 

 

「私が実行犯になるのがいいと思うの。ハリーとロンは次に問題を起こしたら退校処分でしょ。ソフィアも何度も罰則を受けているわ。私なら前科がないし…だから、あなたたちは一騒ぎ起こして、ほんの5分くらいスネイプを足止めしてくれたらそれでいいの」

 

 

ハーマイオニーはいとも簡単そうにいうが、それ以上に困難な事をハリーは想像出来ず、力なく笑った。

ソフィアは自分が実行犯になった方が良いのではないかと思っていた為、心配そうにハーマイオニーを見た。

彼女は自分と先生の関係が親子だと知っている筈だ、見つかっても罰則を受ける可能性は高いが退校になることは無い。そんな危険な真似をハーマイオニー1人に任せて良いのだろうか。──しかし、ハリーとロンが居るこの場でそれを言うことは出来なかった。

ハーマイオニーはソフィアが何か言いたげな目をしていた事に気付いたが、知らないふりをした。彼女もまた、ソフィアに危険な目は合わせられないと同じことを考え、自分自身が名乗り上げたのだ。それに、ソフィアは退校になることはないとわかっていたが、バレた時に父親に失望され、悲しむソフィアを見たくはなかったのだ。ソフィアはとても優しい。自分で全ての罪を被るだろう、それを避ける為でもあった。

 

 

「5分ね!それは、大丈夫よ。私、騒ぎを起こすのには慣れているから」

 

頼もしいような、果たしてそれは本当に大丈夫なのか、ハリーとロンは顔を見合わせどうか無事成功しますように、と呟いた。

 

 

自室にいた生徒達が談話室に集まりだし、周辺に人が溢れがやがやと騒がしくなったところでソフィア達はそこでポリジュース薬についての話題をやめた。

ロンが部屋から魔法チェスをしようと持ってきて──ロンは自分が得意な魔法チェスを頻繁にやりたがった──まずはソフィアとハリーが対戦する事になった。

 

 

二人の腕前は同レベルであり、ソフィアは賢く冷静になれば何手先でも読み勝つ事が出来るのだが、ハリーのトリッキーな戦略に心が乱されるとつい──彼女の性格なのだろう──焦ってすぐにキングを取りに行こうと躍起になり、結局負ける事が多かった。

 

今回もなかなかにいい勝負をしている二人はお互い同じように真面目な顔をして考え込む。

ふと、それを少し離れた所で見ていたネビルはソフィアとハリーに近づくと、二人の顔を見比べた。

 

 

「何?ネビル」

 

 

ネビルの視線に気付いたハリーは気が散ってしまいソフィアに駒を一つ取られてしまった。小さく「ううっ」と呻めき、ネビルを少し恨めしげに見る。

 

 

「今気づいたんだけど、ハリーとソフィアって似てるね」

「え?」

 

 

同じ真剣な表情をしていたハリーとソフィアをまじまじと見ていたネビルはぽつりと呟く。二人はきょとんとしたまま顔を見合わせた。

 

 

「…そう?私はそんな事…思った事ないわ」

 

 

ソフィアの隣に座って盤上を見ていたハーマイオニーはソフィアとハリーを見ながら首を傾げた。ロンも同じように二人を見ながら首を捻る。

 

 

「そうかなぁ…目が似てるって思ったんだけど…」

 

 

全員に否定され、ネビルは自信なさげに眉を下げた。ハーマイオニーはじっと二人の目を見比べる。たしかに、言われてみれば似てなくも無い、かもしれない。

 

 

「ねえ、二人で並んで…手で顔を隠して目だけを出してみて?」

 

 

ソフィアはハリーの隣に移動すると、不思議そうにしながら片手で鼻から下を、もう片方の手で額を隠し、それを見たハリーも同じようにして、ハーマイオニー達の方を向いた。

 

 

「……あっ!」

「わー!本当だ、今まで気付かなかったや!」

「ほら、僕の言った通りでしょ?」

 

 

ハーマイオニーとロンは驚きの声をあげ二人の目をじっと見た。ネビルは自分の意見が間違っていなかった事を喜びどこか得意げに微笑む。

目だけを見てみれば、確かによく似ている。その鮮やかな緑色の瞳も瓜二つだった。

 

 

「ハリーの目はお母さん似なのよね?…ソフィアは…」

 

 

ハーマイオニーはソフィアの父を知っているために間違いなく母親似だと思ったが、それを口にするときっと何故そう思うのかハリー達に不思議に思われるだろうと途中で言葉を止めた。

 

 

「私もルイスも、母様に似てるの」

「じゃあ…もしかしたら君達の母親は親戚かもしれないね」

 

 

ネビルはなんとなく、そう呟いたがそれに酷く動揺したのはハリーだった。

ハリーはダーズリー一家以外に親戚が居ないと思っていたし、そう、聞いていた。皆死んでしまったのだと…少なくとも、父親側の魔法界に居た人は皆死んでしまったとそう、思い込んでいた。

 

 

「まさか、そんなの聞いたことないわ!」

 

 

ソフィアは苦笑しながら「ないない」とばかりに手を振った。だが、ロンは面白そうに笑いながら「あり得るかも」と何処か確信めいた色を滲ませながら言う。

 

 

「ソフィア、君のお母さんは純血かな?」

「うーん、多分そうね。スリザリン寮だったみたいだし…」

 

 

ソフィアは母がスリザリン寮だったとは聞いていた。その寮に選ばれると言うことはきっと純血なのだろう、スリザリンには純血しか組み分けされないと聞いた事がある。──ソフィアは、スリザリン寮にマグル生まれの者や、両親の片方がマグルの者も居るという隠された事実を全く知らなかった。

 

 

「今の魔法界では皆、何処かで血が繋がってるって聞いた事があるんだ!」

「そうなんだ…もしそうなら、嬉しいな!」

 

 

ハリーは興奮し、喜びと期待を滲ませながらソフィアを見た。もし本当に親戚なら──例えどんなに遠い親戚でも──心から嬉しいと、ハリーは思った。

そんなハリーを見てソフィアもまたロンと同じく、楽しそうに笑った。期待させてしまって少し申し訳ないが、ソフィアはそれは無いだろうと思っている。父がそんな事は一言も言わなかったし、もし本当に親戚なら流石の父もこれほどハリーを嫌わないだろう。

 

 

「あはは!親戚だったとしても、きっと凄く遠いわよ!…でも、その話は面白いわ!後でルイスにも伝えてあげましょう!」

「うん!伝えてみて!」

 

 

ハリーは嬉しそうに笑い、心がじんわり暖かくなるのを感じた。ソフィアとルイスが僕の親戚なら、ダーズリー家からソフィア達の家に行けないかな?ああ、でも2人も孤児だから、難しいかもしれない。どうにか関係を調べられないだろうか。

 

 

「ソフィアのお母さんって、ファミリーネームは何なの?」

「え?……そう言えば、聞いた事ないわ…物心つく前から居なかったし…あまり気にした事が無くて…今度何か家に手かがりが無いか探してみるわ!」

 

 

ハリーは少し残念に思ったが、それでも探してくれるという言葉が嬉しく、期待を込めて何度も頷いた。

ソフィアはいつか、暇を見て父に聞こうと思った。母の話題を父が避けているのは知っているが、流石にファミリーネームくらいは教えてくれるだろう。

 

 

「…さあ!勝負の続きよ!親戚かも知れなくても、手加減しないわ!」

 

 

ソフィアは悪戯っぽく笑い、ハリーもまた臨むところだと楽しげに頷いた。

 

ただ1人、ハーマイオニーだけが違和感に気付きどこか複雑そうな顔でハリーとソフィアを見ていたが、楽しげな雰囲気を壊す事に気が引けてしまい、何も言わなかった。

 

 

 

 

 

就寝時間になり、ベッドの中に潜り込んだハリーは談話室で話したソフィアとルイスと親戚かも知れないと言う事をぼんやりと考えていた。

もしそうならどれだけ幸せだろうか、そう妄想を膨らませていたハリーだったが、ふと一つのとんでもない勘違いに気が付いてしまい、身を硬らせる。ややあって、こっそり重いため息をついた。気が付かなかったら良かった、そうしたらもう少し幸せな時を過ごせたのに──。

 

 

「…僕のお母さんは…マグル出身だった…」

 

 

すっかり忘れていた。そうだ、お母さんはあの憎いダーズリー家のペチュニアおばさんの妹だ。

 

 

魔法界ではどこかしら繋がりがあるとはいえ、流石にマグル出身の者と親戚だなんて、そんな奇跡は無いだろう。きっとあの時皆その事について失念して、気が付かなかったんだ。──いや、ハーマイオニーはずっと黙っていた、もしかしたら、気を遣って黙っていてくれたのかもしれない。 

 

きっと、目が似ていたのは偶然なんだろう、こんな沢山の人がいるんだ、似ている人が居ても不思議ではない。ゴイルとクラッブもよく考えればダドリーに似ているし。ルイスの赤毛はロンの赤毛と似ている。

 

 

幸せな気持ちは急激に萎み、ハリーはごろんと寝返りをうった。

 

 

 

 

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