ホグワーツのクリスマス・ディナーは、残った生徒が少ないにも関わらず去年と同じように素晴らしく豪華だった。
大広間は霜に輝くクリスマスツリーが何本も並び、天井には柊やヤドリギの小枝が縫うように飾られている。天井からは温かく乾いた雪がちらちらと降り、見るもの全てを楽しませた。
豪華なクリスマスケーキを食べていたソフィアは、セブルスが大広間からすっと姿を消したことに気付き、ドラコの隣に座るルイスを見た。すぐにルイスはその視線に気付き、そっとドラコに耳打ちをする、ドラコがそれを聞いて頷いたのを見て、ソフィアもまたケーキを美味しそうに食べるハーマイオニーに小さな声で耳打ちをした。
「私、そろそろ行くわね」
「もうそんな時間なのね、いってらっしゃい。…楽しんできてね!」
「ありがとう!…頑張ってね!」
ソフィアは大広間の扉の側で待っていたルイスと合流すると手を繋いで静かに大広間を抜け出し、弾む心から小走りなり、2人は笑いながら父の待つ場所へと向かった。
だが、ソフィアは地下牢へ続く階段の前で突然足を止めると、不思議そうな顔をするルイスに悪戯っぽい笑顔を浮かべ、杖を出した。いきなり杖を向けられ少し驚いたルイスだが、ソフィアの笑顔を見る限り悪い事をするつもりはないのだろうと、防御も何もせず微笑んだままソフィアの魔法を受けた。
「…わぁ!凄いね!」
「でしょう?父様、驚くかしらね?」
「うん、きっとね!」
ソフィアは自分にも杖で魔法をかけ、ルイスが差し出した手を取り、父の驚愕の顔を想像してくすくすと笑いながら2人は階段を駆け降りた。
「「メリークリスマース!」」
先程大広間に全員がいたのは確認していたため、ソフィアとルイスは遠慮なく扉を開けた。
すぐに2人が来るだろうと思い扉のすぐ近くで待っていたセブルスはいきなり開け放たれた扉に驚き、万が一他に誰かが居たらどうするんだ、そう言いかけたが2人を見てその言葉を忘れてしまった。
「………はぁ…」
「なんでため息をつくのよ!」
「ソフィア、可愛いでしょ?」
「あら、ルイスも可愛いわ!」
「うーん、あんまり嬉しくないなぁ」
大きなため息を吐きたくもなるだろう。ソフィアとルイスは2人とも真っ赤なサンタクロースの格好をしていた。同じようなデザインだが、ソフィアはスカートであり、ルイスはズボンでそこだけが異なっていると言えるだろう。
制服よりも短いスカートから伸びるソフィアの白い足を見て、セブルスは聞かずにはいられなかった。
「寒くないのか?」
「寒いわよ!…早く部屋に行きたいわ!」
自分でこの服装に変身させたものの、やはりこの時期に素足にミニスカートは寒く、ソフィアは震えながら早く父の自室に行こうとセブルスに駆け寄った。
「ああ…二人とも、メリークリスマス」
「メリークリスマス!父様!」
セブルスに誘われ、ソフィアとルイスはセブルスの温かい自室に入り、既に用意されている紅茶やお菓子、ケーキに目を輝かせすぐに黒いソファに座る。
ソフィアが足を組み替えるたびに白い太ももがちらりと露わになったが、セブルスもルイスも特に気にする事は無かった。
美味しい紅茶とお菓子を食べながら、幸せな家族だけの時間が過ぎる。ソフィアが思い出したように含み笑いをしながらルイスを見た。
「そうそう!あのね、この前初めて気付いたんだけど、私とハリーの目が似てたって知ってた?」
「え?…うーん、思った事ないや、色は似てるけどね。…父様、どう思う?」
ルイスはじっとソフィアの眼を見ながらハリーの目を思い出したが、それ程似てるだろうかと首を傾げ、セブルスに聞いた。
「…父様?」
セブルスは目を見開き、驚愕してソフィアを見ていた。その表情を見て、二人はそんな表情をする程、ハリーとの共通点が自分の子どもにある事が嫌なのかと苦笑いをした。
「…ポッターの顔など、まじまじと見た事がない」
キッパリとセブルスはそう言いながら紅茶を飲んだ。ルイスは何だか取り繕うようなセブルスの行動が面白くてくすくすと笑う。
「今度ハリーと見比べてみようかな!」
「ええ、そうしましょ!…それでね、ロンがハリーの目はお母さん似で、私たちの顔立ちも母様似でしょう?ーーもしかしたらハリーのお母さんと、私たちの母様が遠い親戚なんじゃないの?って言ってたの!」
「えー?うーん、…それは無いと思うけど」
「そうね、私ももしかしたらあり得るのかなぁって初めは思ってたけれど、よく考えたらハリーのお母さんはマグル出身でしょ?母様は純血のはずだもの!ちょっと残念よね、親戚がいたらきっと楽しいわ!」
ソフィアはクッキーを摘み、笑いながら言う。ソフィアとルイスに親戚は1人もいない。今まで会ったこともなく、父もそんな存在を伝える事もなかったし、何より孤児院にいたのだ。もし親戚がいるのなら、きっと孤児院で過ごす事は無かっただろう。
「ハリーと親戚かぁ…うーん、楽しそうではあるね!」
ルイスもそれが無いとわかっているからこそ、楽しい空想を繰り広げる事ができた。もしハリーと親戚なら、夏休みを共に楽しく過ごせただろう、ただ、父は心の底から拒絶しそうだが。
「あっ!そうそう、この前フレッドとジョージがね──」
ソフィアは話題を変え、ついこの間フレッドとジョージが新しく開発した魔法道具についてルイスに話して聞かせた、ルイスもまた目を輝かせ時間差で爆発する爆弾を使ってみたいと思いながらソフィアの話に楽しそうに相槌を打つ。
楽しげに話す2人を見て、セブルスは静かに詰まっていた呼吸を吐いた。
ソフィアからハリーの母親のことを話題に出された時、僅かに動揺してしまった。幸運にも2人はお喋りと楽しい空想に夢中で気がつかなかったが、もし異変に気付かれていたら──セブルスは、うまく取り繕えたか、わからなかった。
結局その夜、ソフィアとルイスは寮に戻ることは無くセブルスのベッドで共に就寝し、朝早くに寮の近くまでセブルスに送ってもらったのだった。
ソフィアは談話室に入ったが、その場所にハーマイオニーだけがいない事に気付く。自室で勉強してるのだろうかと女子寮に向かいかけた時、ハリーとロンがソフィアの手を引っ張り談話室の端、他の生徒達から遠い場所まで連れて行った。
「どうしたの?」
「それが…昨日僕とロンで、スリザリンの寮に入って、マルフォイに色々聞いたんだけど…あいつ、継承者じゃなかったんだ」
「ああ…そう、やっぱりね」
ハリーは声を顰め、深刻な顔で囁く。そういえば昨日、ドラコに聞きに行くと言っていた、楽しいクリスマスのひとときにすっかりその事が頭から抜けてしまっていて、ソフィアは心の中でハリー達に謝った。
「それで…どうやら、前回秘密の部屋が開かれたのは五十年前で、マグル生まれの生徒が1人…死んじゃったみたい」
「えっ!…殺傷能力が…あるのね?」
眉を寄せ、ソフィアはその言葉の衝撃に動揺した、今まで生徒が襲われても死んでいなかったのは幸運だったからなのだろうか。それとも、前回は殺せて、今回は殺せなかった何か理由があるのだろうか。
「本当、そんな怪物がホグワーツに居るなんて…信じたく無いよな」
ロンは身体をぶるりと震わせ、忙しなく辺りを見渡した。その怪物がこの近くにいるのではないかと、不安なのだろう。
「そう…でも、これで…犯人が誰だかわからなくなっちゃったわね…他に怪しい人なんて…思いつかないわ」
「そうなんだよ…」
ソフィアはため息をつき、ハリーも間違いなくドラコが犯人だと思っていた為ガッカリと肩を落とした。
新しい情報の収穫はあった、だが、それでも犯人の目星はつきそうにない。このまま怪物を野放しにしていては、五十年前のように死者が出るのも時間の問題かもしれない。
難しい顔で考えていたソフィアは、ふとハリーとロンを見た。
「ハーマイオニーはなんて言ってたの?彼女の意見も聞きたいわ。部屋にいるかしら?」
「あー…」
「ハーマイオニーは医務室にいるんだ」
「えっ!?ま、まさか…!」
困ったようなハリーとロンの表情に、まさか怪物の手によって石にされてしまったのかと、ソフィアはサッと顔を蒼白にし恐怖から震えた。それを見てハリーとロンは慌てて首を振る。
「違う!大丈夫だよ!…あ、いや、大丈夫ではないんだけど…ポリジュース薬に、間違えて猫の毛を入れちゃったみたいで…あの薬は動物の変身に使っちゃだめなんだってハーマイオニーは言ってた。だから姿がまだ戻ってないんだ…それで、医務室に居るんだよ」
「顔中毛むくじゃらで、…毛玉まで吐いてたぜ?」
「…まぁ…それは…よくないけど、無事で安心したわ」
ソフィアは後で必ずお見舞いに行こう決め、猫になったハーマイオニーを想像し、ちょっとだけ早く見てみたい、とハーマイオニーが聞いたなら威嚇して瞳孔を開かせるだろう事を考えた。