【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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80 譲り受けたもの!

 

「ハーマイオニー?大丈夫?」

 

 

ソフィアはクリスマスの次の日の朝、ハーマイオニーのお見舞いに医務室を訪れていた。ハリーとロンは宿題に追い込まれ、今はお見舞いどころでは無いようで、夕方にまた3人で行こうと約束をしていた。

その頃には宿題を終わらせると息巻いていた2人だが、ソフィアはきっと夕方になっても宿題を終わらせることが出来ず、ハーマイオニーが居ない今自分に泣きつくだろう、そう思っていた。

 

 

ベッドのカーテンは引かれていて、中を見る事は出来ない。ただぼんやりと人影が見える事から、起きてはいるようだ。

 

 

「ソ、ソフィア…」

「入ってもいいかしら?」

「………いいわ。…でも、その…お、驚かないでね?」

 

 

ソフィアはそっとカーテンを開き、そこにいるハーマイオニーを見た。

 

 

「まぁ…!」

 

 

ハーマイオニーの顔や腕、見えている肌の部分には猫の毛が生え、鼻も人間のものでは無くなっている。目は瞳孔が縦に伸び、色彩は輝く金色をしていて、髪の毛の間から柔らかそうな猫の耳が生え、ソフィアの驚愕の声に反応し、ぴくぴく動いていた。

 

 

「いつものハーマイオニーも勿論だけど、猫のハーマイオニーも可愛いわよ!」

 

 

ソフィアは感嘆しながらハーマイオニーの毛が生えた手を躊躇うことなく掴み、にっこりと笑った。

ハーマイオニーはまだ猫の姿になってしまった事に落ち込んでいたが、ソフィアの言葉に少しだけ微笑んでみせた。

 

 

「ありがとう…でも、早く戻りたいわ…」

「そうね、私も休暇が明けてハーマイオニーが隣にいないのは寂しいわ」

 

 

ソフィアはベッドに腰掛け、ちょっと寂しそうに笑いながらハーマイオニーの丸まった背中を優しく気遣うように──少し服の下はふわふわとしていた──撫でた。

 

 

「ああ…授業にどれくらい出れないのかしら…こんな…こんなのって無いわ…!」

 

 

授業をいつまで休む羽目になるのか、ハーマイオニーはそればかり考え顔を蒼白にし、不安げに胸の前で指を組みそわそわと長い爪を弄っていた。

 

 

「ちゃんとノート取るわ!ハリーとロンには任せられないものね?」

「ああ…ありがとうソフィア…!」

 

 

ハーマイオニーは感激のあまりソフィアの首元にぎゅっと抱きついた。獣に抱きつかれたような、頬にちくちくとした感触とハーマイオニーの髪の匂いに混じってほんのりと獣の匂いがした。

 

 

「ねえ、尻尾はあるの?」

「…あるわ…」

「見せ──」

「それはソフィアでも、ダメよ!」

 

 

ハーマイオニーは身体を離すと真面目な顔でソフィアに言うが、頬は薄らと赤く染まっていた。

どこから尻尾が生えているのか。ソフィアはかなり気になったが、ハーマイオニーがあまりにも恥ずかしそうな顔で視線を逸らした為、聞くのをやめた。

 

 

「…ハーマイオニー、ドラコとロックハートじゃ無いとなると…うーん、誰だと思う?」

「わからないわ…他に怪しい人なんて…ただ、スリザリン生だとは思うけれど…」

 

 

ソフィアとハーマイオニーは暫く色々話し合っていたが、ドラコ以上にマグル生まれのことを疎ましく思っている者などいるのだろうか、居たとしてもうまく隠している上級生なら、わかるわけがなく、ため息を付いた。もし、完璧に隠しているのなら見つかるわけがない。──お手上げだった。

 

 

 

ソフィアは面会時間が終わった為残念に思いながらグリフィンドール寮へ戻っていた。

ふと、目の前を俯いて歩く背中を見つけ、1人で歩くなんて不用心だと──自分も、だが──思いながらそっとその背中に駆け寄り声をかけた。

 

 

「ジニー!」

「っ!…ソフィア…」

 

 

突然声をかけられ、ジニーは驚いたように肩を跳ねらせ、勢いよく振り向いた。しかし相手がソフィアだと分かると、ほっと固く強ばっていた唇を緩めた。

 

 

「ジニー、何だか前より顔色が悪いわ…」

「…ソフィア、あの…、…今、少し時間ある?」

「え?ええ、大丈夫よ」

「2人きりで、話したいの…」

 

 

ジニーは周りに人影が無いにも関わらず背を丸め縮こまり何かを恐れるように忙しなく辺りを見渡していた。きっと、ホグワーツに居るという怪物を恐れているのだろう、コリンとも仲が良かったようだし。ソフィアはそう考え、優しく微笑みジニーの手を取った。

 

 

「なら、私の部屋に行きましょう。ハーマイオニーは今…居ないの」

「…ええ…」

 

 

ジニーは頷くと、静かに手を引かれソフィアの後についてきていたが、その握った手は氷のように冷たく、足取りはおぼつかない。目も、何処か虚だった。

 

 

ソフィアはジニーと共に自室に入るとすぐに扉に鍵を閉め、戸棚の中からチョコレート菓子を一つ出した。

 

 

「ジニー、おいで、お菓子を食べながらお話しましょう?」

 

 

ソフィアは自分のベッドに座り、隣を叩いた。ジニーは小さく頷くと、すぐに隣に座り差し出されたチョコを受け取ったが、包みを開くことは無かった。大切そうに抱えていた日記を膝の上に置き、ジニーはじっと黒い日記を見つめていた。

 

何を話したいのかは分からないが、きっと大事な話なのだろう。ソフィアはそう思い急かすことは無く、ジニーに寄り添いながら話し出すのを待っていた。

 

 

「あの!…あのね…」

「何?」

 

 

ジニーはソフィアの目を見た。その目は困惑と恐怖がちらちらと見え、今にも泣き出しそうに揺れている。何か酷く思い詰めているような様子に、ソフィアはそっとジニーの膝の上にある冷たい手を握った。

 

 

「っ…ソフィア…、…ソフィアは、今…ホグワーツで起きている…秘密の部屋の継承者って…どんな人だと思う?」 

「…え?」

 

 

ジニーの口から秘密の部屋の事が飛び出るとは思わず、ソフィアは少し驚いた。が、すぐにジニーが何を言いたいのかソフィアはぼんやりと思い当たる事があり、優しく頭を撫でた。

ジニーは普段共に行動する友達がまだいない、きっと断片的に耳に入る噂だけしか知らず、その事について話し合う相手もいない。一人で考え込んでいるうちに目に見えない怪物への恐怖心が膨らみ、抑えきれなくなり、誰かに話したいのだろう。

 

 

「そうね…凄く狡猾で、狡賢くて、卑怯な人だと思うわ。誰かは…分からないけれど、マグル生まれを嫌うのならスリザリン生だと思うわ」

「……そう…」

「大丈夫!きっとすぐ捕まってアズカバン行きになるわよ!」

 

 

ジニーは暗い顔をしたまま俯いた。

犯人が誰だか分からなくて、不安なのだろう。ソフィアは明るく安心させるために言ったが、ジニーは俯いたまま顔を上げることはなかった。

固く閉じられていた手が開き、膝の上の黒い日記を何度も撫でる。

 

 

「…ソフィア…」

「何?」

 

 

日記に視線を落としていたジニーはゆっくりと顔を上げた、蒼白な顔で、どこか表情を欠落させ、じっとソフィアの目を見つめる。

 

 

「この日記を、暫く持っていて欲しいの。けれど、誰にも、見せないで…私から受け取ったとも言わないで…秘密にしていて…」

 

 

ジニーは日記をソフィアに差し出し、小さな囁き声で言った。ソフィアは驚き──大切な物のなはずなのに──目を瞬かせたが、それがジニーの望みなら、とその日記を受け取る。

 

 

「いいわよ。でも…どうして?」

「…友達作りのためよ、…日記に話しかけてるだけでは…駄目だもの」

 

 

ジニーはそう言うと考え込むように俯いてしまった。ソフィアはざらりとした表紙の日記を撫でる。たしかに、この日記は何にでも返事をくれ、持ち運べる友人のような存在になれるかもしれない。だが、決して本当の意味での友人にはなり得ないのだ。

ホグワーツが危険に晒されている中、ジニーは日記を一時手放す覚悟ができたのだろう。人間と友人関係を築くために。

 

 

「…良かったら、トムと話してあげて…じゃあ、私、もう部屋に戻るわ…」

「ええ、わかったわ。…チョコレート、食べてね?」

 

 

ジニーは初めて気づいたと言うように手のひらにあるチョコレートを見ると、包みを開いて小さな塊を口に放り込み、静かに部屋を出ていった。

 

手を振って見送ったが、一度もジニーが振り向かなかった事に少しソフィアは憂いを帯びたため息をつく。

ちらり、と手に持つ黒い日記に目を落とし、折角だからと机に座り、日記を開いた。

 

 

「…何を書こうかしら…」

 

 

羽ペンのふわふわとした部分で額を掻きながら悩んでいたが、とりあえずは今、日記がジニーから自分に移っている事を伝えようと白紙のページに文字を書き連ねた。

 

 

──こんにちはリドル。ジニーから日記を預かりました。ソフィアです。

──ソフィア?久しぶりだね。元気かい?

──ええ、元気よ。

──それは良かった。ジニーは僕と少し距離を置く勇気が出たみたいだね、ずっと気にしていたんだ…僕だけと話しているようだったから。

──そうなの、暫く預かって欲しいって言われたわ。

──良いことだけど、ちょっと寂しいな。

 

 

ソフィアはリドルの文字を見て微笑む。ジニーが大切に思うのも理解できる気がした、ただの日記に込められた少年の記憶のはずだが、今目の前にいて交流を深めることが出来るようなそんな返答に、彼女が夢中なるのも仕方がないだろう。

 

 

──たまには、あなたに話しかけるわ。

──ありがとうソフィア。

 

 

ソフィアは羽ペンを置き、日記を閉じた。少し怪しさはあるが、この日記には呪詛がかかっている様子はない。きっと、自分の思い過ごしだろう。ホグワーツがピリピリしているから、そう思うだけだ。

 

そう、ソフィアは思いぐっと身体を伸ばすとクリスマス休暇中の宿題に取りかかり始めた。

 

 

 

 

ジニーはふと、自分の部屋で手のひらに残る包紙を見つめた。

 

 

「あれ…私…」

 

 

──何をしていたんだっけ。

 

 

ジニーは首を傾げながら、ゴミ箱にその包紙を捨てた。

 

 

 

 

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