次の日の朝にはソフィアが襲われた事はホグワーツ中に広まっていた。明るさを取り戻した学校内が、ソフィアという明るさの象徴を失い、それに呼応して暗くなるように──また生徒達は廊下で笑うのもやめてしまった。授業を移動する際はクラス全員で動き、少しも一人にならないよう、教師や監督生が目を光らせた。寮に所属するゴーストさえ──ニックを除き──生徒たちの動きを見張った。
ハリー達は数日後グリフィンドールとスリザリンの授業がない僅かな時間に密かに会った。もちろん褒められた行動では無いが、まだ一人ではなく、4人で行動する彼らを止めようとする者は居なかった。──彼らがソフィアと親しいと知っているからこそ、悲痛で暗い顔をする彼らに誰も声をかけられなかった。
「ソフィアが見つかった場所に何か手がかりがあるかもしれない」
ルイスのその一言で、ハリー達は空き時間に2階の廊下を訪れた。しかしその廊下には何もなく、手がかりらしいものは何もなかった。注意深く床や壁、窓を見るハリー達だったが、ハーマイオニーは周りをぐるりと見て首を傾げた。
「でも…何でソフィアはこんな所に来たのかしら?行き止まりなのに…」
周りには空き教室しかなく、人気も少ない。こんな所に一人で来るなんて、流石に少し不用心過ぎないかとハーマイオニーは眉を顰める。
「ああ…。…んー…実は、この先に隠し部屋があるんだ。僕たちはたまにこの先の部屋で会ってたんだ」
ルイスはハーマイオニーほど疑問に思って無かったようで、少し考えたのち廊下の行き止まりまで歩く。その先にある花束を持つ少女の肖像画を指差した。
「隠し部屋?そんなの、あるの?」
「そういやフレッドとジョージがそんな事言ってたっけ」
「多分、ここ以外にも隠し部屋とか、隠し通路は沢山あるんだと思う。…その怪物も、そういうところを使ってるのかも知れないね…」
今ルイスは少女に捧げる花を持っていない為その扉は開かれない。隠されている場所に行くには何か隠された手順がある。──きっと、秘密の部屋も同じなのだろう。
「この部屋に入るには…ある手順を踏まなければいけないんだ。僕らはその手順を育て親から聞いたんだ。…スリザリンの秘密の部屋も、同じかもしれないね」
ルイスの言葉にハリー達は頷く。
継承者にだけ代々伝わる隠された部屋を開ける方法。ロンが以前考えた代々鍵を渡す事よりも、あり得る事のように感じた。
「…そうだ、ルイス…T・M・リドルって知ってる?」
「…?誰かの名前?…聞いたことないや」
「そっか…前回扉が開かれた50年前に.その開けた人は追放されたってこの前教えたでしょ?丁度そのT・M・リドルっていう生徒が50年前にホグワーツ特別功労賞を貰ってたんだ。トロフィー・ルームに盾が置いてあったんだけど…何でその賞を貰ったのかは書いてなかったんだ」
「…まさか、その人が継承者を捕まえたって考えてるの?」
ルイスは驚き声を思わず顰めたが、ハリー達は頷く、もしそうだとしたら、何故怪物の事も秘密の部屋の事も公になっていないのだろうか。継承者を捕まえたのなら、真実薬を使えば全てが明らかになり、秘密の部屋は閉鎖され、怪物は処分されているだろう。
「それは…どうだろうね、…でも、どうやってリドルって人を知ったの?」
ルイスの当然の疑問にハリーは鞄を探り黒い日記を取り出した。それを見てロンとハーマイオニーが目を見開き何か言いたげにハリーを見る。──まさか、常に持ち歩いているなんて。二人の目はそう告げていた。
「この日記を拾ったんだ。…50年前の物で、多分リドルはマグル生まれだよ。マグルの店で買ってるもの。…でも、日記は真っ白なんだ。…ロンが罰則でトロフィーを磨いてる時に、この名前を見て覚えていてね…昨日トロフィールームで調べたところなんだ」
「首席で卒業したらしいぜ。きっと全部の科目だよ…全く、そんな優等生様はパーシーだけだと思ってたよ」
「…どこでこの日記を拾ったの?」
リドルが誰かも詳しくはわかっていない得体の知れない日記を拾うなんて、それは少々不用心過ぎやしないかとルイスは日記を見ながらハリーを非難するような目で見たが、散々ロンとハーマイオニーからその眼で見られていたハリーはそんな眼で見られても動じる事は無かった。
ハリーは、何故かこのリドルという名前を知っている気がした。ほとんど記憶に残らないほど遠い昔に友達だったのではないか──そんな事はあり得ないのだが──そう思うほど、懐かしく感じていた。
「マートルのトイレだよ、誰かが捨てたみたい」
「まぁ、でも私がどれだけ調べても…何にも現れなかったから、本当にただの日記で…リドルは使わなかった日記を古本屋で売ったのかもしれないわ」
ルイスはその日記を覗き込み、少し胡散臭そうにしながらも決して触れようとは思わなかった。ノクターン横丁にたまに訪れたことがあるルイスは、闇の魔力は想像もつかないようなものに宿る事があると知っている。隠された呪詛や、遅延型の呪いなど、それは様々な形に宿り狡猾なまでに姿を装い、日常に溶け込む。
「…ハリー、どんな呪いがかかってるのかわからないし、すぐに捨てた方がいい」
「んー…そうだね」
真面目な顔でルイスはハリーに忠告をしたが、ハリーは言葉では頷いたものの鞄にしっかりと日記を鞄に片付けた。
それを見た三人は顔を見合わせる。ルイスはハリーの行動に眉を顰めたが、ロンとハーマイオニーは仕方がないというように肩をすくめただけだった。