【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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97 家族の元へ!

 

ハリー、ロン、ルイス、ジニー、ロックハートが泥まみれに汚れた姿で──その上ハリーとルイスは血まみれだった──戸口に立つと、一瞬沈黙が流れたが、すぐに叫び声が響いた。

 

 

「ジニー!」

 

 

ジニーの母であるモリーがジニーを見た途端跳び上がり涙を流しながら駆け寄ると強く抱きしめた。すぐに父のアーサーも続き、モリーごと強く抱きしめる。

 

 

ルイスはほっとして家族の再会を喜び、力なく壁に背中を預けた。もう足が震え1人では立てなかった。

すっと扉からフォークスが部屋に入ると暖炉のそばにいたダンブルドアの肩に止まった。

笑顔を見せるダンブルドアに、ルイスは少し微笑んだが、急に目の前が暗くなり顔が押しつけられ、ハリーとロンとルイス、3人まとめてのモリーからの熱い抱擁をうけたことに気付いた。ルイスはちょっと身体が痛んだがそれでも嬉しくてモリーの震える腕をそっと手を添える。

 

 

「あなた達があの子の命を助けてくれたのね!どうやって助けたの?」

 

 

モリーの声は感激と感謝で震えていたが、信じられない気持ちもあるのか、体を少し離すとハリー、ロン、ルイスの顔を順に見回しながら不思議そうに言った。

 

 

「私たち全員がそう思ってますよ」

 

 

マクゴナガルがぽつりと呟きモリーの言葉に同意した。

ルイスとハリーは目を見合わせる。この機会に全てを言った方が良いのだろうか。

 

 

「全てを聞くのならルイスはスリザリン生じゃ、寮監のセブルスもいた方が良いじゃろう。ミネルバ、すぐ呼んできてくれるかのう」

 

 

部屋の奥からダンブルドアの静かな声が響く。マクゴナガルはルイスをチラリと見て頷くと直ぐに部屋から飛び出した。

ダンブルドアはルイスに向かって意味ありげなウインクを一つ零す。それを受け取ったルイスは彼の気遣いに深く感謝した。──父だから、呼んでくれるのだろう。

 

 

少しして足音が響き、閉じられていた扉が勢いよく開くと、険しい顔をしたセブルスが現れ、ルイスのその体につく血や泥を見て目を見開き苦々しく顔を歪めた。

 

 

「…これは、いったいどう言う事ですかな?」

「今からそれを聞くところじゃよ、セブルス。…さあ、説明出来るかな?」

 

 

ルイス達は顔を見合わせ無言で頷き合ったが、ロンは全てを知っているわけではない、ハリーとルイスに前に行き説明するように促した。

ルイスがゆっくり頷いたのを見て、ハリーはルイスを支えながら部屋の中央にあるデスクまで歩いて行った。

ぽたり、とルイスのローブから血が床に垂れ、モリーは小さな悲鳴を上げた。

 

 

「ルイス!あなた、大丈夫なの!?」

「モリーさん…ええ、話が終わったら…医務室に行きますね」

 

 

ルイスは微かに微笑むと、躊躇するハリーに「大丈夫」と告げた。ハリーはこくりと頷き、組分け帽子と剣、それにリドルの日記の残骸をデスクの上に置いた。

 

 

ハリーは満身創痍なルイスの代わりに一部始終を話した。

時折ルイスが自分の行動を補足しながらも、ハリーは秘密の部屋を見つけ出したところまで話し終えると一度ふぅと息継ぎをした。その僅かな隙にマクゴナガルが硬い言葉で先を促すように言った。

 

 

「それで入り口を見つけたわけですね、──その間100の校則を粉々に破ったと言っておきましょう。──でもポッター?プリンス?どうやって全員生きてその部屋を出られたのですか?」

「ルイスが数々の魔法でリドルとバジリスクを翻弄してくれたおかげです、ちょうど良いタイミングでフォークスが組み分け帽子を持ってきて──…」

 

 

ハリーはそこで言葉を途切れさせた。それまでハリーはリドルの日記の事にわざと触れないようにしていた。だが、これ以上隠すのは難しい、ルイスと2人でジニーの無実を説明すると言ったが、それでもジニーは許されるだろうか。乗っ取られたと、どうやって証明すればいいんだろう。

 

ハリーは本能的に、ダンブルドアを見た。

その目はいつものようにキラキラと輝き、優しく微笑んでいて──その眼差しを受けたハリーは全て良い方向に行くに違いないと強く思った。

 

 

「わしが一番興味があるのは、ヴォルデモート卿が、どうやってジニーに魔法をかけたと言う事じゃな。わしの個人的情報によれば、ヴォルデモートは現在アルバニアの森に隠れているらしいが」

「何ですって?例のあの人が、ジニーに?ま、魔法をかけたと?でも、ジニーはそんな…本当に?」

 

 

ヴォルデモートの名前が出たアーサーが驚愕し狼狽しながらジニーとダンブルドアをチラチラと何度も見た。今回の事件にヴォルデモートが関わっていたなんて、誰が想像しただろうか。

 

 

「アーサーさん、…この日記です。リドルは16歳の時に自分の記憶を閉じ込め…ジニーを操りました」

 

 

ルイスは少しよろめきデスクに身体をもたれかけながら黒い日記を掴み、ダンブルドアに手渡した。ダンブルドアはその日記をしっかりと受け取ると数枚のページを捲り、熱心に見ると大きく頷いた。

 

 

「見事じゃ…確かに、彼はホグワーツが始まって以来最高の秀才だったと言えるじゃろう」

 

 

ダンブルドアはバジリスクの毒牙に貫かれ大きな穴が開く日記をゆっくり机の上に置くと、いきなり出てきたリドル、という人が何なのかわからないアーサー達に向き合い、昔の思い出話を懐かしむように目を細め、髭を撫でながら口を開いた。

 

 

「ヴォルデモート卿がかつてトム・リドルと呼ばれていた事を知る者は、殆どいない。わし自身、50年前ホグワーツでトムを教えた。卒業後、トムは消えてしまった…遠くへ。そしてあちこちを旅したようじゃ。…闇の魔術にどっぷりと沈み込み、魔法界で最も好まざしからぬ者たちと交わり、危険な変身を何度も経て、ヴォルデモート卿として姿を現した時には、昔の面影は全く無かった。あの聡明でハンサムな男の子、かつてここで首席だった子を、ヴォルデモート卿と結びつけて考える者は、殆ど居なかった」

「でも…私のジニーが、その人と──何の関係が?」

 

 

モリーは不安げにジニーを見た。ジニーは母からの視線に身体を硬くすると、顔を覆いわっと泣き出し叫ぶ。

 

 

「そ、その日記なの!私、その日記にか、書いてたの、そしたら、その人が…私に一年中返事をくれたの!」

「ジニー!私はお前に何も教え無かったと言うのかい?いつも言っていただろう、脳が何処にあるのか見えないのに、一人で勝手にものを考える事ができる物は信用出来ないって!なぜ、日記を私かモリーに見せなかった?そんな怪しげな物は闇の魔術がはっきりと詰まっている事が分かりきっているのに!」

 

 

アーサーは悲痛に叫び、娘の行いを悔やみその震える肩を掴んだ、号泣するジニーはしゃくりあげ、何度も謝った。

 

 

「ママが準備してくれた本の中にあったの、私、てっきりいつものお下がりだと思って…!」

「アーサーさん、僕たちでさえ…初めその日記の危険性に気がつきませんでした。責めるのであれば…僕ら皆同じ罪を持っています」

 

 

ルイスはジニーだけ責められるのは間違えていると首を振り、真剣に伝えた。──ルイスはその日記に不信感を持っていたが、それでもセブルスに…父に伝えるほどでは無いと思っていた。それほど、この日記は巧妙に闇の気配を隠していた。

 

 

「私、私──!」

「ミス・ウィーズリーは直ぐに医務室に行きなさい。苛酷な試練じゃったろう。処罰はなし、もっと年上の賢い魔法使いでさえヴォルデモート卿に誑かされていたのじゃ」

 

 

ダンブルドアはジニーの言葉を遮ると出口まで歩き扉を開けた。振り返ると、いつもの優しい眼差しでジニーに見つめ、労わるように優しく言った。

 

 

「安静にして、それに、湯気が出るようなココアをマグカップ1杯飲みなさい。…わしはそれでいつも元気が出る。マダム・ポンフリーはまだ起きておるじゃろう。マンドレイクのジュースをみんなに飲ませたところでな、バジリスクの犠牲者達が、今にも目を覚ますじゃろう」

「ソフィアは無事ですか?」

 

 

ルイスは心配そうにダンブルドアと部屋の隅でこちらを見ていたセブルスを見る。ダンブルドアは優しく深く頷いた。

 

 

「回復障害は何も無かった」

 

 

ダンブルドアの答えに、ルイスはほっと身体の力を抜き、その場に膝をつき胸を押さえ「良かった…」と声を震わせながら噛み締めるように呟いた。

 

 

モリーが項垂れ泣くジニーの肩を抱きながら連れて出て行った。アーサーはまだ動揺していたが2人の後に続く。

 

 

「のうミネルバ、これは一つ、盛大に祝宴を催す価値があると思うんじゃが。厨房にその事を知らせにいってくれまいか?」

「わかりました。3人の処置は先生に任せて良いですね?」

「勿論じゃ」

 

 

ダンブルドアの茶目っ気たっぷりの笑顔にマクゴナガルは頷き、足早に部屋から出て行く。最後に残されたのはルイス達と、セブルスだった。

 

 

「わしの記憶では、ハリーとロンがこれ以上校則を破った退学処分にせざるをえないと言ったの…どうやら誰にも過ちはあるようじゃな、わしも前言撤回じゃ」

 

 

ロンは退校するかもしれない恐怖で顔を引き攣らせていたが、ぱっと顔を安堵で明るくさせると、ほっと息を吐いた。

 

 

「三人にホグワーツ特別功労賞が授与される。それに──1人200点ずつそれぞれの寮に加点しよう」

 

 

ロンの顔がぱっと赤く染まり、嬉しさと驚愕でそわそわと身体を忙しなく動かした。──200点もの加点だなんて、今まで聞いたことが無い。

 

 

「さて、ルイス。君はその怪我を治さねばならん。セブルスに薬を貰い、後はゆっくり医務室で過ごしなさい」

「…はい、わかりました」

 

 

ルイスは机を掴み、なんとか立ち上がると背後を振り向く。セブルスは変わらず険しい表情をし、ルイスの足元に出来た血溜まりを見ていた。

 

 

「これはいかん、セブルス、早く連れて行くのじゃ」

 

 

ダンブルドアもまたそのローブから滴る血を見て早く出て行くように促す、セブルスは一度強い眼差しでハリーとロンを睨んだが──2人はダンブルドアがいる前でセブルスは何もしないだろうとその視線を無視した──すぐにルイスの側に寄るとその腕を掴み上手く歩けない彼を補助しようとした──が、ルイスは腕が掴まれた途端小さく呻いた。

 

 

「っ…すみません、先生、僕…バジリスクの尾で打たれて…多分、骨が…」

 

 

セブルスは冷汗を流し苦しそうに顔を歪めたルイスを見ると直ぐに手を離し、杖を振りルイスの身体に浮遊魔法をかけた。地面から少し浮いたルイスは静かに滑りながらセブルスに連れられ部屋を出て行く。

 

部屋を出て行った後も変わらず無言だったセブルスを、ルイスはちらりと見上げたが、セブルスは前を見たまま足早に進み、ルイスと視線を交わすことは無かった。

 

 

ルイスは医務室に向かっているのでは無いと直ぐに気付いた。階段を降り、何度も通ったその場所は──セブルスの研究室だった。

 

 

セブルスは研究室に入ると直ぐに浮遊するルイスを抱き上げ──腕にルイスの服がじっとりと血で濡れているのを感じながら──そのまま研究室を横切り自室へと向かった。

 

 

「──あの、父様…」

 

 

何も言わないセブルスに、ルイスは少し不安になりながらその胸の中で父を呼んだ。セブルスは自室に入ると、初めてルイスを見下ろした。

 

 

「…何故、何も言わなかった」

 

 

セブルスは膝掛け椅子にルイスを優しく座らせるとすぐに立ち上がり薬棚に向かいながら呟く。ルイスはかちゃかちゃと瓶の微かな音を聞き、肩をすくませた。

 

 

「…本当に、ただの日記だと思っていたんだ…」

「私は、危険な事をするなと言っただろう──どうやら、2人とも一切私の忠告を聞く気は無いようだ」

「あー…いや、僕は本当に今回の事件には関わる気が無かったんだよ…ソフィアが襲われるまではね」

 

 

セブルスはルイスの言い訳を聞いて眉を顰め睨みながらルイスのぼろぼろになった服を魔法で消した。

 

 

「──寒っ!」

 

 

いきなり上半身が露わにさせられたルイスはぶるりと震え身を縮こませる。セブルスは暖炉に向かって杖を振り、すぐに温かい焔を燃やした。

 

暫くはぱちぱちとした炎の爆ぜる音が静かな部屋に響いた。セブルスはルイスの身体の傷一つ一つに丁寧に薬を垂らし、白い包帯で巻いて行く。骨折を治す薬を飲んだルイスは身体中にじわじわと氷のような冷気が広がり、さらに強く身体を震わせていた。

 

 

「…服についていた血ほど…傷は深くないな」

「ああ…ダンブルドアの不死鳥が…その涙で内臓の損傷は治してくれたんだ。本当に凄いよね…一粒でも涙が欲しいなぁ…」

「……」

 

 

セブルスはルイスの治療を終えると深くため息をつき、洋服ダンスから黒いシャツを出すと杖で縮めルイスの前に膝をついた。

 

 

「…ルイス、…後でソフィアにも言うが…来年は、何かあればすぐに私に知らせろ。何でも良い、異変に気付いたら──直ぐにだ」

 

 

ルイスの腕にシャツの袖を通し──それはふわりと薬草の匂いがした──ボタンを閉じながらセブルスは真面目な顔でルイスの目を見つめる。似た色彩の黒い目が交わり、ルイスは少し微笑んだ。

 

 

「異変ばっかりで、毎日父様のところに行かなきゃならないかもね」

 

 

悪戯っぽく笑ったルイスだったが、流石に疲れたのか椅子の背に深く身体を預け、長いため息をついた。身体には強い倦怠感がある、それでも思考は興奮しているのか眠気が訪れる事はない。

 

 

「父様…ねえ、ソフィアはもう戻ったの?僕、ソフィアに会いたい…もう4ヶ月以上もソフィアの声を聞いてないんだ…」

「ああ、先程目覚めた。…今頃は大広間だろう。祝宴を開くと言っていたからな」

「僕も参加したい、…だめ?」

 

 

ルイスはぐっと足に力を入れ立ち上がった。ふらついたルイスをセブルスがしっかりと抱き止める。ふわり、といつもの匂いに包まれたルイスは目を細めた。

 

 

「…怪我は痛まないか?」

「父様の作った薬でしょ?…大丈夫だよ」

 

 

ルイスは自分の頭を撫でるセブルスの温かな手のひらの感触にくすぐったそうに顔を綻ばせ、重い腕を上げて父の背に腕を回して強く抱きしめた。

 

 

「僕、…結構頑張ったんだ…」

「そのようだな…あまり危険な事をして欲しくないが」

「ふふ、トラブルがね、僕らに恋をしてるんだよ」

 

 

離してくれないんだ、と言って顔を上げ悪戯っぽく笑ったその表情は、ソフィアが過去に見せた顔とよく似ており、セブルスはほんの僅かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

セブルスに連れられ──くれぐれも無理をするなと強く言われた──ルイスは大広間に向かった、近づく程に生徒達の騒めきや歓声が聞こえ、その暖かく賑やかな音は扉を開けたルイスを包み込む。──ああ、やっと帰ってきたんだ。

 

 

 

「ルイス!」

 

 

生徒の騒めきの中でも、その声は良く通りルイスの耳に届いた。唯一の愛しいその声に、ルイスはふわりと花が綻ぶように笑い、その頬に柔らかな涙を流した。

 

 

ソフィアはすぐにルイスに気付くとぱっと立ち上がり両手を広げるルイスの胸の中に飛び込んだ。

 

 

「ソフィア、──ああ、目が覚めて、本当によかった…」

 

 

ルイスはソフィアの柔らかな頬に自分の頬を擦り合わせ、温かい身体を強く抱きしめた。ソフィアもまた、ルイスの首元に顔を埋め、胸が詰まったように「ええ、ありがとう」と呟く。

 

 

そっと身体を離したソフィアはまじまじとルイスの身体を見て──ハリーから酷い怪我をしたと聞いて気が気ではなかった──傷が全て治っていることにほっと胸を押さえ肩を下ろした。

 

 

「ルイスも、無事で良かったわ!…色々聞いたわ…ごめんなさい、日記の事…ルイスには話せばよかったわ…」

「ううん、もう全て終わったからもうその話はやめとこう?…僕お腹ぺこぺこだよ…」

 

 

ソフィアはルイスの手を取り、賑やかな集団の中へルイスを誘いながら、ちらりと振り返り悪戯っぽく笑った。

 

 

 

「ルイス、アクロマンチュラを見れたなんて良いわね!──私、いつかベッドにしたいと思っていたの!寝心地最高そうじゃない?捕まったんでしょう?毛質はふわふわだった?」

 

 

 

ルイスはリドルがヴォルデモートだと知った時や、内臓を損傷し苦しんだ時──その時よりも顔を引き攣らせた。

 

 

 

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