【完結】スネイプ家の双子   作:八重歯

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98 来年度はこれ!

 

 

石化から蘇生したソフィアとハーマイオニーは、花束を持つ少女の部屋でハリー、ロン、ルイスに全てを聞いた。

驚いたり、憤ったり、息を呑んだりーー中々に2人の反応は話し手を喜ばせるものだった。

 

 

「ソフィアはどうして…石化で済んだの?」

 

 

ハリーはずっと疑問に思っていた事をソフィアに聞いた。他の生徒たちはバジリスクの目を直接見ていない、だから死なずに石化で済んだのだ。…だが、ソフィアの周りには何かを経由して見た形跡が見当たらなかった。「ああ…」と思い出すようにソフィアが口を開いた時、ハーマイオニーが「わからなかったの?」と訝しげにハリーとロンを見た。

 

 

「あの一輪挿し!ね?そうでしょ?ソフィアだけ、被害現場と発見場所が違ったのよ」

「ええ、そうよ」

「え?トイレで襲われたの?…たしかに、一輪挿しが…そういやあったね」

 

 

ハリーは胸のもやもやが取れたように深く納得した。たしかにあの一輪挿しは乳白色だった、あれを通してなら死亡することなく、その目を見られただろう。

 

 

「あの時、ジニーを人質に取られていたの。ジニーは操られて、自分の首に杖を突きつけていたわ…ジニーが死ぬか、私が死ぬか…選べって言われたの」

 

 

「流石にあの時はもうこれまでかと思ったわ!」とソフィアは明るく言うが、ルイスはまさかそんな事になっていたとは思わず今更ながらに顔を青くした。

 

 

「それで…何か喋ったらーー呪文を唱えたらジニーを殺すって脅されたわ。リドルが私を殺したいのは…わかっていたから、咄嗟に無言呪文で一輪挿しを見て、バジリスクの目を見て…自分から石化されたの。そうすればリドルは私を殺せないでしょう?その後に私を運んだのは…流石に秘密の部屋の入り口に石化した私が居たら怪しまれるからでしょうね」

 

 

ソフィアは肩をすくめ、ソファに深く座ると持ち込んだお菓子を食べた。ハリーは咄嗟によくそんな芸当が思いつくものだと驚愕する。きっと自分ならあっけなく殺されていた事だろう。

 

 

「まぁ…まさかあなた達が秘密の部屋でリドルと決闘するとは思わなかったわ!本当にお疲れ様」

 

 

ソフィアはハリーとロン、ルイスを見て明るく笑った。去年に引き続き、またトラブルに巻き込まれている。3人が照れたようにーーどこか誇らしげに笑うのを見て、ソフィアはふと気付いた。

 

 

「そう言えば2年続けてあの人絡みなのね…来年こそ、本当に何とも無いといいけど」

「はは、それは流石に…」

 

 

ロンは乾いた笑いをこぼしチョコレートを食べたが、他のみんなを見渡し誰も笑ってない事に気付くと真顔に戻った。

 

 

「ーーーまじで?」

「ありえるわね、二度あることは三度あるのよ、ロン」

 

 

顔をさっと青くしたロンに、ハーマイオニーは神妙に頷き伝えた。ハリーとルイスも、もしかしてあり得るのでは無いかとうっすら思っていた。むしろ、これから毎年起こるのでは無いかと言う漠然とした予感すらある。

 

 

「まぁ、皆で考えればなんとかなるわよ!」

 

 

ソフィアは沈黙を破るように明るく言い放つと、いつもの悪戯っぽい笑顔でハリー達を見渡した。やはり、ソフィアが居ればどんなに暗い雰囲気も明るくなってしまう。ーー大切な存在だ。そう、ハリーは心の奥で思った。

 

 

「あ、そうそう、来年の選択科目何にしたの?私明日までに提出しなきゃならないの」

 

 

ソフィアは食べていたビスケットを勢いよく口の中に押し込み、鞄の中を探って一枚の羊皮紙を出した。復活祭休暇の時に配られたものだが、当然石化されたソフィアはまだ提出していない。

 

 

「僕は占い学と魔法生物飼育学だよ」

「ハリーと同じにした」

「僕は古代ルーン語学と魔法生物飼育学だ。…魔法生物飼育学だけ合同で受けられるかもね」

「えー…迷うわね…ハーマイオニーはもう決めたの?」

 

 

ソフィアは眉を寄せ羊皮紙をじっと見る。隣にいるハーマイオニーはソフィアの疑問に「ええ、決めたわ」と涼しい顔で答えた。

それなら、ハーマイオニーと一緒にしよう、とソフィアは羽ペンを取り出した。

 

 

「何にしたの?」

「数占い学と占い学と古代ルーン語学とマグル学と魔法生物飼育学よ」

「数占い学とーー占い学とーーって!それ全部じゃ無い!授業時間が被ってるわよ?」

 

 

ソフィアは驚いてハーマイオニーを見る。ハーマイオニーは当然だと頷き机の上にあるビスケットを食べた。

 

 

「大丈夫なの?これ…」

「大丈夫よ、マクゴナガル先生と決めたもの」

 

 

心配そうにソフィアはハーマイオニーを見たが、ハーマイオニーは来年度から始まる新しい授業が楽しみで仕方がなく、上機嫌で頷く。流石に全部取る気は無かったソフィアは「うーん…」と悩みながらまた羊皮紙と睨めっこを開始した。

 

 

 

「んー…魔法生物飼育学と…数占いと…古代ルーン語学とマグル学を受けたいのよね…私もマクゴナガル先生に相談してみようかしら…」

「いいと思うわ、ソフィアは優秀だし、きっと力になってくれるわよ」

「まって、ソフィア。君それ殆ど全部だって気付いてる?」

 

 

ロンが心の底から信じられないと眉を寄せた。自分なら取らずに済む授業は取らない。科目が増える分、課題の量も増えるのだ。5教科中2教科は選択しなければならず、仕方なく選んだロンは「うへー」と舌を出した。

ロンの隣でハリーは何故占い学は選ばれないのか首を傾げた。

 

 

「何で占い学は取らないの?」

「ああ、私占い信じてないもの!数占いは将来呪い破りの職を目指すなら必須だし、あれは占いとはまた違うもの」

 

 

当然のようにソフィアは占いを信じていない。それは、ルイスも同じだった。彼らは自分の見たものしか信じず、尚且つ未来は自分の手で切り開くものだと思っている。心の中の不安を見つめる為に占いに頼る人が多いことは知っている、それを否定するわけでは無いが。結果が悪くて諦める選択はソフィアには無い。

 

 

「呪い破りって何?」とハリーがきょとんと聞いた。ハリーは魔法界にきてまだ2年しか経っていない、尚且つ、あまり進んでその知識を更新しようとは思っていないーー日々の授業やトラブルをこなすだけで精一杯なのだがーーソフィアは「宝を探してそれにかけられている呪いを解くのよ」と簡単に説明した。

ハリーはその説明だけではぼんやりとしかわからなかったが、昔テレビで見たトレジャーハンターみたいなものだろうかと考えた。

 

 

「ソフィアは呪い破りになりたいのかい?それなら僕の兄さんーービルが呪い破りだよ!」

「本当?今度機会があれば話を聞いてみたいわ!」

「うん、ビルは忙しくてあまり帰ってこないけど…夏休みに帰ってきたらすぐに言うよ!」

「まぁ、ありがとう!」

 

 

ソフィアは嬉しそうに笑いながらあと1ヶ月足らずでくる夏休みを心待ちにした。去年は楽しかった、今年もそんな夏休みが過ごせたらいい。

 

 

「そうよ!ソフィア、今年は必ず私の家に遊びにきてね?勿論ルイスも!」

「楽しみがまた増えたわ!」

「マグルの世界に行くの、楽しみだよ」

 

 

和気藹々と夏休みの話に花を咲かせるソフィア達をハリーは羨ましそうな目で見ていた。きっと、ダーズリー家には呼べない、いや、呼べばそれはそれは愉快な事になるだろうがその一日のために何が犠牲になるのか考えるまでもない。

 

 

「いいなぁ、僕もみんなと会いたいよ…」

 

 

力なくハリーは呟いた。ハリーが夏季休暇にどんな思いで過ごしているのか知っているロンはすぐに慰めるようにハリーの背を叩き「また隠れ穴に招待するよ、その方が君のおじさん達も喜ぶみたいだし」とにっこりと笑った。その言葉だけでハリーはぱっと大輪の花のように笑い何度も頷いた。

 

ルイスはチョコレートの銀紙を外し、口の中で溶かしながら首を傾げる。

 

 

「ハリーの親戚達は魔法が大嫌いなんだよね?」

「うん、魔法のま、って言っただけで食事抜きさ!」

「それは酷いなぁ…ねえ、その家ってどこにあるの?近いかな?マグルの人って姿表しとか箒を使わずにどうやって遠くに行くの?」

「え?自転車とか車とか電車…あと飛行機とか」

「??…僕もマグル学取ればよかったかな、全然使い方がわからないや!」

 

 

ルイスは言葉で聞いたことがあるものもあったが、使い方が分からず頭の上に疑問符を飛ばした。

 

 

「ハリーの家は何処なの?」

「サリー州のリトルウィンジングだよ。2人は…魔法界だよね?近かったら遊びに行けるんだけど…」

 

 

ルイスとソフィアは顔を見合わせ、一瞬どう答えようか悩んだ。

2人の住居ーーコークワースは中々に治安がわるい、さらに2人の家があるスピナーズエンドは謂わば貧困街であり、街全体はいつも灰色に薄汚れていた。だが、2人は微塵も気にしたことは無かった。セブルスは2人の為に新しく家を買おうかと言ったが、2人はそれを断った、特に不便は感じていなかった。ーーそれに、母が亡くなるまで、少しの間暮らしたというこの家から離れたくなかった。

 

 

「…コークワースよ、まぁ、あんまり治安がいいとは言えないから来ることはオススメしないわ」

「コークワース?…うーん、聞いたこと無いなぁ」

 

 

ハリー達はその場所がどんなに所なのか分からず首を傾げた。ルイスは話題を変えるべくソフィアが持つ羊皮紙を突いた。

 

 

「結局、どうするの?選択科目」

「うーん…」

 

 

まだ何の印も入れていない羊皮紙にふたたび目を落としたソフィアは少し悩んで羊皮紙にチェックを入れた。一度手を止め、しばし悩んだ挙句もう一度書き込む。

 

 

「出来たわ!」

 

 

ソフィアは意気揚々と羊皮紙を前に掲げ、ハリー達はそれを覗き込んだ。

 

 

「……全部とるの?」

「ハーマイオニーもソフィアも、正気かい!?」

 

 

結局、ソフィアは全てにチェックを入れていた。ソフィアは満足気に羊皮紙を見つめたあとくるくると丸めた。

 

 

「どうせなら占い学もとってみようかなって思ったの!信じては無いけれど、学べば色々な視点から物事を見れるもの」

「良いと思うわ!…でも、マクゴナガル先生に報告しに行かないといけないわ」

 

 

ハーマイオニーはソフィアの言葉に嬉しそうに笑い、真剣な顔を見せた。ハーマイオニーは来年度、どうやって被っている授業を受けるのか既にマクゴナガルから聞いている。タイムターナーという器具を借りる事になっているが、果たしてそれは幾つもあるものなのか、ハーマイオニーは分からなかった。

 

 

「ええ、じゃあ今から行ってくるわ!」

 

 

「行ってらっしゃい」というハリー達の呆れと尊敬の混じる声を聞きながらソフィアは部屋から飛び出すと職員室へ向かった。もし、職員室にいなければ後でマクゴナガルの自室に向かおう。

 

ふと、ソフィアは前から1人で歩いてくる生徒に気付き、羊皮紙を見ていた顔を上げた。

 

 

「…あ」

「ソフィア…」

 

 

久しぶりに対面したのはドラコだった。今年一年、ドラコとは全く話していない。ーーまぁその半分、ソフィアは石化していて話したくとも話せなかったのだがーー何だか懐かしさを感じ笑顔で駆け寄ろうとしたソフィアだったが、ドラコの何処かよそよそしく気まずい表情を見てはた、と寄りかけた足を止めた。

 

 

ーーそういえば、喧嘩?してたんだったわ。

 

 

もう遠い昔の事のように感じる。ハーマイオニーを侮辱した事は許せないが、ソフィアはルイスから自分が石化されたと知ったドラコが物凄く心配し取り乱していた事を聞いていた。

 

 

「ドラコ、久しぶりね」

「…ああ」

 

 

ドラコは足を止めたが、いつものような余裕のある笑みは見せていない、視線をうろうろと彷徨わせ、青白い顔をいつもより白くさせていた。ソフィアもまたドラコの近くまで駆け寄るとその足を止めた。2人の間に今までには無かった距離と、なんとも言えない沈黙が落ちる。

ソフィアは俯いているドラコを見て、ここから去らないのだ、なにか言いたい事があるのだろう、とドラコの言葉を待った。

 

 

「…ソフィア…石化が解けて、本当に良かった」

「ええ、ありがとう。…心配してくれていたんでしょう?」

 

 

ドラコはソフィアの声に刺々しさが含まれていない事を知ると少しだけ顔を上げ、小さく頷いた。

 

 

「どうして心配してくれたの?」

 

 

静かにソフィアは問いかけ、首を傾げた。少し、ドラコは沈黙しまた視線を逸らす。ーー友達だから、そう言いたいが、拒絶されてしまうだろう。僕は彼女の心を傷つけ、失望させてしまった。

 

 

「…それ、は…」

「それは?」

「……友達だから」

 

 

ぽつり、と消えそうなほど小さな言葉はしっかりとソフィアの耳に届き、ソフィアは目を見開いたが嬉しそうに笑いーーそして彼を許した。

 

 

「嬉しいわ!」

 

 

ソフィアは足を進め、2人の間にあった距離を埋めるとドラコの白い手を握った。「ソフィア…」ドラコは顔を上げ、薄く微笑んだ。

 

 

「けど、次ハーマイオニーを穢れた血っていったら、わたし貴方の持ち物を全部蛇に変えるわね?勿論、そのローブもシャツもズボンもーーパンツもよ」

「なっ…!」

 

 

ドラコは顔を赤く染めた後直ぐに青くさせてたじろぐ、くすくすと悪戯っぽく笑うソフィアを見て冗談でからかっているのだと判断するとーーからかいでは無く、ソフィアは勿論本気だーーぷいとそっぽを向いた。

 

 

 

 

ドラコと別れ職員室を訪れたソフィアは、マクゴナガルに来年度に全ての授業を受講したいと伝えた。マクゴナガルはとても驚いたが、それでも微笑み頷くと羊皮紙を受け取った。

 

 

「ええ、貴女ならこなせるでしょう」

「ありがとうございます、けれど…どうやって全科目受けるのですか?」

「心配には及びません。優秀な生徒には特別措置があります。とても便利な魔法道具を使用すれば、不可能ではありません。ーーよろしい、明日ミス・グレンジャーと共に放課後私の部屋に来なさい。その器具の詳しい説明を行います」

「はい、わかりました!」

 

 

ソフィアは嬉しそうに笑い来年度全ての科目を受講する事となった。

それを、数ヶ月後ハーマイオニーと共に激しく後悔する羽目になるのだが、彼女達はまだ何も知らなかった。

 

 

 

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