記念すべき第1話はワールドツアー常習犯こと空の王者リオレウスくんです。が、乱入モンスターの都合上、リオレウスが脇役みたいになる上にぶっ飛んだ結末になるのはご了承ください。
あとこの作品では無線とかいう大変便利な代物がある設定でやらせてもらっています。そちらもご了承ください。
小鳥の囀りで目を覚ます。これがあるだけで気持ちのいい朝を迎えられそうだが、私は朝にめっぽう弱いので二度寝を試みるも、相棒のオトモであるクレスに毎日毎日叩き起こされる。
「ねえ私眠いの。今日は休みでしょ起こさないで」
「何言ってるニャ、今日はリオレウスの狩猟に行くんじゃなかったのニャ?」
こっちのセリフだバカ猫。リオレウスの狩猟は明後日のはずだろう。今日の私はおやすみモードなんだからゆっくり寝かせてほしいよ全く…
「ご主人ドキドキノコでも食べたニャ?昨日天空山近辺の村娘から大老殿宛に依頼が届いているから狩猟を任せてもいいかって大長老に言われたばっかりなのニャ」
「へ?今日何日」
「今日は28日だニャ」
「何時までに大老殿だっけ」
「9時30分ニャ」
「今は?」
「9時15分ニャ」
私は開き直って優雅に朝食を済ませて大老殿へ向かう準備をした。
武具の装備や回復薬などの準備も前日にしていなかったので数十分以上の遅刻をしたことは想像に難くないだろう。
大老殿
「ウゥム…ノアよ…貴殿の腕を我々大老殿は買っているが少しは遅刻癖を治してはいかがだろうか…」
「いやぁ、ははは……今月で何回目でしたっけ…」
「今月で20回目になりますな」
と大長老に代わって大臣が言う。
「ほんとですか…いつか遅刻皆勤賞取れちゃいそうですね…」
などと軽口を叩いているとその場に居た私以外全員が苦笑を浮かべた。
「ムォッホン…!とまあ雑談はさておきだな。今回の依頼はリオレウスだ。昨日も説明した通り天空山近辺の村娘がリオレウスが飛び去ったのを見て心配して依頼してきた次第だ。貴殿も何度も戦っている相手だとは思うが油断してはならんぞ。天空山のような高所だと奴のような高い飛行能力を持つ相手の独壇場だからな」
いつものようにクエスト前には大長老直々の激励があるが私はニカッと笑って答える。
「ええ、勿論だとも大長老殿。今更慢心なんてしませんよ。それでは」
「ウム、健闘を祈る」
大長老と大臣、そして護衛達に軽く会釈してクレスと一緒に飛行船に乗り込み天空山へと向かう。私は「今日もよろしくね」と餌を舐めている猟虫と立てかけた操虫棍を撫でた。
天空山
「いったた…いやぁほんと参っちゃうよね…ハンターなりたての頃は絶対キャンプに下ろしてくれるのに、ハンターランクが4になって以降はこれまでより危険性が増しているから安全に下ろせる確証がないって理由でランダムに下ろされるなんて…」
本当にこれだけは慣れない。上位のハンターになるとこういう苦難も着いて回ることは重々承知しているが、こうも乱暴に下ろされるとハンターなりたての頃に戻りたくなる。
「まあ日頃の行いだニャ。いつも朝起こしてやってるんだから僕だけでもキャンプに下ろしてほしいのにゃ」
「あんたねぇ…私だって下りれるならキャンプに下りたいよ。そんなに自分だけ楽したいならぽかぽか島にでも行って管理人さんに鼻の下伸ばしてガノトトスでも捕まえてりゃいいのに」
「しっ、失礼だニャ…冗談に決まってるのニャ」
いつものようにお互いをからかいながらエリアを探索する。
今回下ろされた場所は幸いにもリオレウスの巣の近くのエリアだったので比較的移動は楽なのだが油断は出来ない。
このエリアはガブラスが姿を見せることが多く、そこらの小型のモンスターよりも十分脅威になり得る。毒を吐きかけられた挙句上からどつかれたりなどしたらたまったもんじゃない。
バレないように移動しようと試みるが先程からクレスが鼻をすんすんと鳴らしてる。
「どうしたの?鼻炎?」
「いや違うのニャ…なんだか鼻につく臭いがするんだニャ」
「どんな臭い?私はそんなに分からないんだけど…」
さすが猫。嗅覚は人間よりも敏感なんだなと感心しているがなんの臭いか分からない以上、不安要素として残る。
「ねえ、クレス。その臭い、今までに嗅いだことある?」
「うーん、そうだニャ…近いといえば結構前に戦ったゴア・マガラとかシャガルマガラに近い臭いだニャ…」
私はその言葉に戦慄する。
ゴア・マガラといえばあの狂竜ウイルスをばらまいていた張本人。それが近くにいるかもしれないとなるとかなり危険だ。シャガルマガラは本来天空山の一角にある禁足地にしかいないはずなので可能性は低いといえば低い。
だとしてもこんなところで奴らに出くわして尚且つリオレウスまで相手にしなければいけないとなると確実に苦戦を強いられるどころか、割と普通に死ぬかもしれない。
「クレス。その臭い、覚えといて。臭いが強くなったらまた教えてね。先にリオレウスからやりましょ」
「分かったニャ!」
とりあえず、今回の目的のリオレウスのいる飛竜の巣へと向かうことにした。
飛竜の巣
一抹の不安を抱きつつも天空山の中でも高い位置に存在する飛竜の巣へと向かい私とクレスはリオレウスと対峙した。
『グガァァァァアアアァアアアア!!!!』
耳をつんざくような咆哮を喰らい、耳を塞いでその場から動けなくなるが耳栓を持っていないので当たり前。問題はこの直後の行動で変わる。
『グギャァ!!!』
無断で巣に踏み入られたリオレウスは憤怒の表情を浮かべこちらに向かって突進してくる。
「ふっ!!」
軽やかに身を翻し突進を避け、すぐさま武器を構えると同時に腕に掴まる猟虫飛ばす。まずは攻撃に転じるために猟虫を用いてエキスを採取しなければならない。出来れば頭から狙いたいところではあるがこの際どこからでもいい。
『キュイン!』
「よしっ、お見事」
突進後のリオレウスがこちらに振り返ることを予測し、頭に向けて飛ばした猟虫が赤く発光している。赤エキスだ。リオレウスがさらに攻撃を仕掛ける前に虫寄せをしてエキスを得る。操虫棍を握る手に力が篭もり、体が軽くなるような感覚を覚える。
「これがなくっちゃね…」
と呟きながら操虫棍を地に突き立て、飛び上がる。
空中で体を捻りながら操虫棍を構え、リオレウスの首元を目掛けて斬りかかる。
「せいっ!!!!」
思いもよらぬ場所から攻撃を受けたリオレウスがよろける。その隙を見逃さずリオレウスの背中に飛び乗り攻撃を開始する。何故かモンスターはハンターに乗られて攻撃されるとさらに体勢を崩して転倒をするのだがそれを狙う。
『グルルァッアアアッッ!!!!』
「こっ、ら!!!大人しく…しろ!!!」
リオレウスも負けじと暴れ回るがこちらも負ける訳にはいかない。なんとか踏ん張り、暴れ疲れたところを一気に攻める。
『グオオッ!?』
なぜ体勢を崩したか分かっていなさそうなリオレウスの背中から飛び降り、武器を構える。先程、猟虫で赤エキスを採取したが操虫棍は猟虫によるエキスの採取がとても重要になる。これがないと正直使い物にならないレベルだ。
猟虫で採取できるエキスには4色のエキスが存在するのだがこれはモンスターによって異なるが基本的に頭が先程採取した赤エキス。翼や脚が白エキス。胴体が黄色のエキスという分類が主であるが、もちろんこれは一般的にそういうエキス配置が多いというだけで大型の古龍などになってくるとまた違った配置になることもある。
もう1色が緑のエキスだがこれはただ単に回復するだけのものでおまけだと思ってもらっていい。
そして赤、白、黄のエキスを全て合わせると───
(シュピン!!!)
一時的に攻撃力、防御力、移動速度の上昇など凄まじい身体能力を得られる。
二色揃えるだけでも大きなメリットがあるがこれは白エキスを採取しないといけないし、どうせ二色だけで揃えるくらいなら三色で揃えた方がお得って訳だ。
「さあ、ここからだよ。リオレウス!」
転倒している間に三色のエキスを採取し自己強化を施した私は鬼神の如き猛攻を叩き込む。狙うは翼。リオレウスの飛行能力の高さはその巨大な翼にある。
肉質的に物凄い弱点というわけではないがこれを損傷させることで持ち前の飛行能力は大幅に低下し、戦いを有利に進められる。まずはそれを狙ってこの転倒の隙に攻撃する。
すると、
『グルル…ッッ!!!』
と呻きながら立ち上がるリオレウスの口からは煌々と輝く炎が漏れている。
『グ…ガァアアァァァアァアアア!!!!!!』
出会った時の何倍もの激怒の表情を浮かべるリオレウスが咆哮を浴びせるが、採取したエキスの効果により今だけは立っていられる。
そして怒りに身を任せたリオレウスが火球をこちらに吐き出す。予備動作が大きいので見切って避けることは可能だが追撃してくることも十二分にあるので油断出来ない。
「あれっ…?」
続けて攻撃をしてくるかと思いきやそのまま飛び上がり、別のエリアへと行ってしまった。エキスには効果時間があるので自己強化を持続している間は攻撃の手を休めたくないのだが、飛び去ってしまっては仕方ない。また揃え直すことになるが、慣れたものだ。
「ご、ご主人…良い知らせと悪い知らせがあるんだけど、どっちから聞きたいニャ…?」
と震えながら声をかけるクレスの問いに答える。
「じゃあ良い方から」
「分かったニャ。あのリオレウス、まだかなり若くて歴戦の個体という訳でもないから実戦慣れしてなさそうニャ。さっきの怒り任せの攻撃で疲れてる可能性が高いからキャンプ近くの草食種が居るエリアでお食事中かもしれないニャ」
「えー!疲労ってそんな早いの…?手応えなさすぎるよそれじゃ…」
「そして悪い知らせニャ…さっき嗅いだ臭い、かなり近いニャ…その上、ゴア・マガラとはまた違う鋭くて異質な臭い…鼻栓無いとやってらんないニャ」
そう言ってクレスが鼻栓を両方の鼻の穴に差す。
これでさらに油断が出来なくなった。相棒の他のアイルーには無いずば抜けた嗅覚があってこその情報だからザルではないはずだ。今までハンターをやってきてペイントボール無しでやってこれたのは間違いなくクレスのおかげだ。
「そう、分かった。さっきのリオレウスも気になるけど。その臭いにも注意しないとね」
そう言ってクレスを連れてリオレウスを追いかけた。
巣を出ると身の毛もよだつような不快感に襲われる。
先程のガブラスもどこにもいない、というよりそのガブラスは崖の下で食い漁られている。そこにいる異形の姿をした何かに。
ティガレックスだ。まさか臭いの原因はこいつなのかと思ったがティガレックスからゴア・マガラと似た匂いがするはずが───
「あいつ、変」
気付いた頃には本心が口から漏れていた。
「やっ、ややや、やっぱりニャ!?あいつから物凄く臭うニャ!」
クレスも慌てて答える。ティガレックスはこちらに気付いていないようだが、まるで古龍に睨みつけられた時のように身動きが取れなくなる。
正直、禍々しさや恐ろしさで言うならこのティガレックスの方が何倍も兼ね備えている。
「クレス…ちょっと、見てくるね。そこから絶対に動かないで。大丈夫そうだと思ったら合図するから」
「し、しししし死亡フラグニャ…」
「なんつーこと言ってんの、安心して。死なないようにするから」
崖を少し下り、ガブラスを貪るティガレックスを離れた場所から眺める。ティガレックスの体からはドス黒い煙のようなオーラが立ち上り、またその体も通常のティガレックスには見られない、直視するのも嫌気がさすほどの悍ましい体色へと変化していた。
このティガレックスからゴア・マガラと同じ臭いがするとなると、恐らくは狂竜化だろうか。しかし狂竜化にしては生物感も無く、普段ポポばっかり食べているグルメなティガレックスがガブラスを食い殺しているのも異常で、文字通り存在してはならないものといった感じである。
まさか…
(カツンッ)
突然小石が転がるような音がしたのでビクッとする。上を見るとクレスがツタを伝って崖を下りようとしていた。
ぐるりと首を回したティガレックスがクレスを一瞥するとあまりに不快な咆哮と共にクレスに飛びかかる。
「バカクレス!!!!早く飛び降りて!!!!」
「そんなこと言ったってニャーーーーーーー!?!??!?」
飛びかかってくるティガレックスを見たクレスがツタから手を離し、飛び降りる。咄嗟に滑り込んでクレスを拾い、脇に抱えて一目散に逃げた。逃げて逃げて逃げまくった。
無心で逃げているともうティガレックスが追ってくる気配は無かった。物陰に隠れながら逃げているから上手く撒いたのだろうか。
「なはは…怖かったねぇ…」
抱きかかえたクレスに声をかけるが「怖かったどころじゃない」といった様子のクレスはぷるぷると震えている。
「しばらくはこっちに来ないだろうからさ、さっさとリオレウス討伐して帰ろうよ」
元気を出して欲しいから陽気に話しているつもりだが、きっと今の私は青ざめた顔をしているのだろう。
「ごめんね、怖かったね」
とクレスを慰め、頭を撫でてその場を後にした。
草食種のエリア
「あっ、いたいたリオレウス!」
例のアプトノスなどが過ごすエリアでリオレウスは食事を済ませて優雅にお昼寝中だった。と思っていた。
リオレウスから先程のティガレックスにも見られたドス黒いオーラが出ている。というよりリオレウスで重なって見えないだけでその奥に何かがいる。
『グ…』
短い呻き声と共にリオレウスの体がこちらに投げ飛ばされる。
咄嗟に躱し、リオレウスだったものから視線を移すとそこにはやはり、あのティガレックスがいた。血走った赤いような紫のような不気味な目でこちらを見つめてくる。さっきまで後ろを追いかけていたはずなのに何故先回りしてここにいるのかはこの際どうでもいい。
刺激しないようにそっと動くが本能が「早く逃げろ」と言っている。強ばる体に鞭打ち、傍にいたクレスを引き摺って走る。もうリオレウスに構っている暇はない。というより死んでいるものはどうにもならない。翼は捥げ、眼球は抉れ、臓物が出ているリオレウスを尻目に私とクレスはキャンプへと逃げ込んだ。
ベースキャンプ
目的のリオレウスはあの禍々しいティガレックスに屠られ、依頼を完遂出来なかった私は無線で大老殿に連絡する。
「こちら大老殿、何かあったか」
生きた心地のしなかった私は、人の声が聞こえるだけで涙が出そうになるが声を振り絞って答える。
「ノアです。天空山にて、リオレウスの追跡中に異形のティガレックスと遭遇…狂竜化に酷似したものだと考えられます。目的のリオレウスは今回のティガレックスによって殺害されていました。これは異常事態です。すぐに帰還用の飛行船を派遣してください。古龍観測隊には一度私から連絡しておきますが、詳細が分かり次第大老殿からも改めて連絡をよろしくお願いします」
「了解した。すぐに天空山の近くの飛行船を向かわせる。ご苦労であった」
普段することのない業務連絡のようなやりとりに「慣れないな」という感情すら持てないくらいに疲弊していた。
私とクレスはテントの中でへたり込んで飛行船の迎えを待っていたがその間、私の震えが止まることは無かった。
初書きがとんでもないことになってたと思うのですがいかがだったでしょうか。
いきなり「あぁ〜…書きてえな…」という衝動でこのサイトに登録して書いたので文脈やらその他諸々が大変なことになってると思うのですが前書きにもあったようにどうか暖かい目で読んでいただけると幸いです。
次回のお相手はまだ決まってないのですが、ゆるくやっていきたいと思います。