Tips.語り手
浅海 凪(あさみ なぎ)
高卒社会人3年目の21歳。
なおホワイト通り越して透明レベルの企業の経理担当。
主な釣りは船(コマセ釣り)とエギング。フカセも父の影響で出来る。
ひよりと出会ったのは14歳の頃。当時ひよりは7歳の引っ込み思案最盛期だったが、釣りを通して仲良くなった。「なっちゃん」と呼ばれている。
「うみだぁぁぁぁぁぁぁ!」
3月も終わりが近づき、もうすぐ新学期、という頃。
2人が軽口を叩きながら釣りをしていた堤防では
「はいストップ「ぐえ!」」
凪に抱きとめられた。海水浴はお預けである。
少女の正面から両肩を掴み、スっと屈んで目線を合わせ、ひよりが「あっ……」と声を漏らすが早いか、凪が微笑みながら口を開く。
今日は風が強い。
風に煽られたミスト状の海水が、少女の肌に吹き付けて体温を奪ったからか、少女はブルっ、と身震いした。
「突然ですがお嬢ちゃんに問題です。今何月でしょう?ごー、よーん……」
後にひよりはこう語っている。
「うぇ!?さんがつ!3月です!もうすぐ4月!」
「正解。では3月の横須賀、海水温は何度?さーん、にー、いち……」
「タイマー継続!?んーとんーと……」
『あの時のなっちゃんは、まるで目が笑っていなかった。』
通り過ぎた漁船の起こした波が岸壁に当たり、それに慌てたフナムシが音も立てずに岸壁を登り足元に這い寄る。
「ひぅ!」
「はいタイムアップ。……答えは10度よ。
30分も浸かれば体幹温度が危険域に入るし、1時間で意識飛んで海の藻屑。
登ろうにも岸壁は鋭利な貝と
ねぇ……それでも泳ぎたい?」
「い、いいいいえ泳ぎませんごめんなさい!」
「……よろしい。……ひよ、バッカンの
「う、うん。」
『お母さんが怒るより1000倍くらい怖かった。なっちゃんにああやって怒られたら私はきっと……いや、絶対に泣く。』と。
「と、ところであなた、この辺じゃ見たことないけど……迷子?」
ひよりがカバンの中から350ml入り水筒を取り出し、はい、と渡すと、ありがとう、と涙目で受け取った小春は、水筒に入った温茶をくぴくぴと飲んで、ぷは、と一息ついてから応えた。
「ううん、4月からパパが再婚してこっちに引っ越してくることになったの。
前のところじゃ全然海なんか見た事なかったから、見に来たんだ」
「そう。見るだけなら別に怒りゃしなかったのよねぇ」
ため息混じりにボソリと一刺しした凪は、ひぅ!とひよりの後ろに隠れる少女を横目に、氷の入ったクーラーに腰かけ、仕掛けの組み直しに取り掛かった。お土産無しなど釣り仲間共になんと言われるか想像するに耐えない。
ハリスはそのまま、ウキを00に。からまん棒は針から1ヒロ半に下げてそのすぐ下にガン玉のG7を1つ。針はひとつ落として6号……
「ほえ〜……すごいすごい!バラバラだったのがぴしーって……へくし!」
「とりあえず服着なさい。見てるだけでも寒いわ」
スっ、と立ち上がるとヒシャクを手に持ち、撒き餌を足元に1発……2発。しばらくしてから沖へ1発。そしてようやく仕掛けを投げ込む。
「ま、まぁまぁ……この子も反省してるし……あ、でも、ホントに危ないから、漁港で泳ごうとしちゃダメだよ?深さも相当あるし」
「は、はーい……うん、ありがと。絶対泳ぎません!」
しばらくしてから、じわっ、じわっ……とウキが沈み込む。
「うん、よろしい。……コッチも言い過ぎたわね。ごめんなさい。」
「ううん!危ないことしたのは私だし……って、ねぇ、アレ何してるの?」
「あれは【フカセ釣り】って言って、すっごく頭を使う釣りなんだ。でも、1番『釣った』って感じがする釣りなんだよ!」
「それアタシの受け売りじゃないの。……っ!と!」
バシ、という小気味よい音とともに立てられた、1.25号の磯竿が大きな満月を描いた。海面を指す竿先が1度、2度と立て続けに引き込まれる。
「……っ、とぉ!そっち行くなそっち行くな……!」
魚のツッコミに耐えられるようにグッと腰を落とし、左手を竿へ添えて
魚が浮き、竿のたわみが緩くなったら、間髪を入れずリールに糸を巻き込んで、竿のたわみを満月に戻す。竿が伸されそうになるが、レバーで糸を瞬時に、かつ最小限に出し、竿を立て直して弾性を最大限に引き出す。
これだ。
この、無限にも一瞬にも感じられるこの時間。
この糸の先にいる魚に、私の力と技術を試される瞬間。
油断すれば一瞬でハリスをぶった切られる緊張感。
そして、黒い魚体が海面に浮き上がってきた瞬間。
……これだから、フカセは止められない!
「ひよ、タモ!」
「う、うん!」
感想くれたら続き書いちゃうかもなぁ〜?(ちらっちらっ)
評価なんてされようもんなら完結まで描ききっちゃうかもなぁ〜???(ちらっちらっ!!)