隣のJCが海でフライしてるんだけど   作:断花

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感想と評価嬉しくてつい書いてしまった。
前回のあるシーンにここ好き10連打されてて草。私もそのシーン大好き


3話

「はいタモ!」

「ん、ありがと」

 

最小限の言葉でタモを受け取った()の目線は、黒い魚体がゆらゆらと揺れながら縦横無尽に走り回る様をじっと見据えていた。

 

竿をぐっ、と立て、タモ網の中に魚体を滑り込ませる。

 

ふうー、と一息ついた額には、冬らしからぬ熱い汗が滲んでいた。

 

「よっ……と!」

「いいサイズ!40はありそう!」

「今日はお刺身とあら汁ね」

 

柄を岸壁に当てないよう気をつけながら引き上げたタモ網には、黒の魚体に青色の目をした魚。やったぜ本命だ。

 

「ねえねえ、この魚なんて言うの?綺麗な青い目だね〜」

「これはメジナだね。地方によってはクロとか、グレって言われてるお魚だよ。白身ですごく美味しい」

「所謂上物釣りの定番魚ね。イスズミじゃなくて良かったわ」

「先週は白い魚影が見えた時ガチ舌打ちしてたもんね」

「ぴいっ!?」

 

怯える小春を尻目にタックルケースをごちゃごちゃとかき回す。

釣った魚をどうするかは釣り人によって異なり、即締めてクーラーへぶち込み、冷やして鮮度を保つ人もいれば、水を溜めたバケツなどで活かしておき、もっと大きなサイズが釣れたらリリースするという人もいる。

 

私?

釣った魚は持って帰ってキッチリ食う。慈悲は無い。

ごちゃごちゃとしたタックルケースから小型のナイフを取り出し、脳〆。

口が開き、目が上にぐりん、と上がる。

「ひぃぃいい!?」

ビチチチチ!と痙攣している間にエラを切り、指を突っ込んでバケツの中で振ると、みるみるバケツが血で染まった。いわゆる血抜き、という工程である。

「目が、血が……。きゅう」

『あっ』

 

~しばらくお待ちください~

 

5分ほど経っただろうか。膝の上に乗せていた頭が動いた。

少し離れた先ではひよりが得意のフライでメバルを数尾上げている。

 

……あのヒュンヒュン、人口密度的に都会の堤防じゃ絶対に出来ないな。田舎の特権がこんなところにもあるとは……。

 

「う……ん~……?お姉さん?」

 

「大丈夫?ちょっと刺激的だった?」

 

「はっ!ごめんなさい!急に魚を暗殺したからビックリして…」

 

「あ、暗殺…。脳〆めって見たことない?」

 

「あんまり見たことある人は居ないんじゃないですか?」

 

「確かに、釣り好きか漁師さんじゃないとあんま見たことないか。ごめんね。お詫びといっちゃなんだけど、…メジナ、食べてみる?」

 

「良いの!?食べる!…あっ、食べます!」

 

「あら、そんなに歳も離れてないんだから敬語なんて良いわよ。

魚の内臓とかは見ても平気?向こうで捌いて来ましょうか?」

 

「あ、ううん、家でよく捌いてたからそっちは大丈夫!」

 

「じゃあ捌いてもらいましょうか。私はほかの準備するから。…ひよー!!グレ捌くけど一緒に食べるー!?」

 

食べるー!刺身飽きたから他のがいいー!!

 

「贅沢なヤツ。…何にしようかしら。」

 

「道具もほとんどないですし、刺身しかないんじゃないですか?」

 

「そうよねー…とりあえず捌いててもらっていいかしら?」

エラの近くにカミソリみたいな所があるから、そこだけ気を付けてね。」

 

軽い注意とともにナイフを小春へ渡すと、早速鱗をかき、慣れた手つきで3枚におろしている。エラ周りはあまり触っていないようで感心感心。

 

置型のガスバーナーにボンベをセットし、コットを乗せて湯を沸かす。

寒グレはしゃぶしゃぶが最ッ高に美味い。ひよりも文句は言わんだろう。

 

「メバル釣れたけどちっちゃかったからリリースしてきちゃった。

メジナ、何にするの?」

 

「刺身。…冗談だからその目はやめて。私に効く。

しゃぶしゃぶにするわ。お箸出しててくれる?」

 

「はーい。…え、あなた魚捌けるの?珍しいね。」

 

「うん、料理は得意なんだ!お姉さん、しゃぶしゃぶってことは薄切りでいいの?」

 

「いや、結構厚めに切っちゃっていいわよ。贅沢に食べちゃいましょ。

あと、私は浅海 凪。好きに呼んでね」

 

「じゃあ凪お姉さんだ!私は海凪 小春です!」

 

「随分遅い自己紹介になっちゃったね…あ、山川 ひよりです。」

 

どうもどうも、と遅めの自己紹介をしながらサクサクと切り身になったグレを囲み、いただきます!と手を合わせて競うように切り身を掴んで沸かした湯に一瞬だけ通す。

 

口に運ぶと、上質な白身の甘みと香りが突き抜けた。

 

「〜〜~ッ!美味しい!」

「脂が乗ってて美味しいね。梅雨グレよりも好きかも」

「お酒欲しくなるわねぇ…」

日本酒か梅酒か…一花に言ったら飛んできそうね。

 

あっという間に1尾を食べ終え、ゴミは袋にまとめてクーラーに投げ込む。

頭と中骨は帰ってからのお楽しみだ。

 

「さて、日も暮れてきたし、ぼちぼちお開きにしましょうか。

暗くなっちゃう前に2人とも気をつけて帰るのよ?」

 

『はーい!』

 

よろしい。花のJC共はさっさと帰って勉強して寝なさい。

…そういえばひより、ちょっと暗い表情してたから心配だったけど、顔色はだいぶ良くなったわね。

 

ひなたさんからも気にかけて欲しいって頼まれてたし、とりあえず大丈夫そうって連絡しときましょう。

 

 

 

……その後、ひなたさんとひよりから同じ家族写真が送られてきて、ひよりの姉が小春になったと報告があった。

 

驚きのあまりメンテナンス中のリールを落としてベールを交換することになったのは、また別のお話。

 

…クッソ、4,000円するよなぁ……。




主人公Tips

おしゃけ大好き。

恋の釣具店の常連で、よく足を運ぶ。
父親同士も付き合いがあったため、恋とも仲が良い。

現在、凪の父は凪が18歳の頃に海難事故により意識不明となり入院中。現在は母と2人で生活している。

メーカーや釣果報告よりも自分の好みかどうかで選ぶため、ルアーやエギは可愛い色のもの(ピンクなどのチャート系)が多い。

父の使っていたルアーはナチュラルカラーの物なので色味がピンと来ないことから、あまり使わない。
父が元気になった時にまた使ってくれることを祈っている。
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