《Endless World》~その日、親友が死んでデスゲームが生まれた~   作:何も無いです

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第4話「Vtuber 風宮若葉」

 

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獲得Exp:8000

獲得Gold:2000

~Level UP~

『Aoharu』

Lv:10→Lv:18

VIT:600→VIT:950

STR:31→STR:50

DEX:30→DEX:54

AGI:32→AGI:49

INT:31→INT:54

LUK:29→LUK:46

CLR:32→CLR:52

Skill Point +48

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 レベルアップの通知音と共に表示されるステータスの成長値。やはり《技能成長+200%》と《獲得経験値+200%》のパッシブスキルは壊れている。

 

「あ、あの!」

「ん?」

 

 ステータスを確認していると緑髪の少女が声を掛けてきた。身長は百六十前後。エメラルドのような穢れのない瞳に、肩にギリギリ届くぐらいの緑髪。頭にはフリルの付いたカチューシャ。この少女を俗に言う美少女と呼ぶか、俺には判断できない。

 

「あ、ありがとうございました! あんな怖いモンスターと戦えるなんてすごいですね……!」

「……」

「……あれ? どうかしましたか?」

 

 ただこの少女はどこかで見たことがある。よく目にした、というより必然的に目にすることが多かった。そんな感じの曖昧な記憶。

 

風宮 若葉(かぜみや わかば)……?」

 

 視界に映ったのは少女の『Vtuber_Kazemiya Wakaba』というユーザー名。

 

「は、はい、そうです! Vtuberの風宮若葉です!」

 

 やっと思い出した。

 この少女はMtubeで配信活動をしている大手の個人Vtuber──風宮 若葉(かぜみや わかば)。必然的に目にすることが多かったのはMtubeの急上昇によく載っていたからだろう。

 

「もしかして"自然の(たみ)"ですか!?」

「"自然の(たみ)"……とは?」

「私のリスナーさんの名称です! 私のことを知っているので、もしかしたらと……!」

 

 キラキラと瞳を輝かせてこちらの顔を見上げてくる。俺は一体何に期待しているのかと首を傾げた。

 

「リスナーかと聞かれれば、たまに動画や配信を見たことがあるからリスナーなのか……?」

「やっぱり! あなたも自然の民でしたか!」

「でもチャンネル登録はしてないし、コメントもしたことない。それでもリスナーなら、多分その自然の民とやら──」

「ガーンッ!!」

「……自然の民になれるよう努力するよ」

 

 四つん這いになってどんよりとする少女。俺はその姿を目の当たりにし、苦笑することしかできない。

 

「だ、大丈夫です。大丈夫ですよ。チャンネル登録してくれなくても、コメントをしてくれなくても……見てくれるだけで嬉しいので……」 

「説得力、全然ないっす」

 

 その場に立ち上がり暗い表情を浮かべる風宮。何というか、このVtuberは喜怒哀楽が激しい。いや、喜怒哀楽が激しいからこそ配信者としてやっていけるのか。

 

「あぁそうだ。風宮さんって……このゲームのプレイヤーですよね?」

「えっ? あっ、は、はい! もちろんNPCじゃないですよ!」

「良ければ……他のプレイヤーが集まってる町まで案内とかしてもらえませんか?」

「はい、是非とも案内させてください! あ、でも……妖精の谷を越えないといけないんですけど大丈夫ですか?」

 

 やはり妖精の谷を越えた先にプレイヤーが集う町がある。俺は「大丈夫です」と返答し、風宮さんと共に妖精の谷を越えることにした。

 

「あのぉ、Aoharu(アオハル)さんって呼んでもいいですか……?」

「はい、何なら呼び捨てでも大丈夫です」

「ま、まだそこまで馴れ馴れしくはできません……!」

「え? 数秒前のこと覚えてないの?」

 

 妖精の谷ではRage(レイジ) Fairy(フェアリー)という妖精が敵として姿を見せた。とはいってもレベルは10~12が平均。大して苦戦せず、妖精の谷は難なく踏破する。

 

「そういえば、風宮さんはいつからこのゲームに?」

「……オープンベータからです」

 

 オープンベータ。

 つまりこの少女は一年もこのEWで過ごしてきたデスゲームの被害者。

 

「実は俺、今日このゲームにログインしたばかりなのでどういう状況なのか分からなくて……色々と教えてもらいたいことが……」

「え? 最近ログインした……?」

「……? そうですけど……」

「もしかしてこのゲームをクリアするために派遣されたプロゲーマーの方ですか?」

 

 このゲームは販売停止措置が取られている。唯一ログインが可能な者は対策本部がゲームをクリアするために派遣したプロゲーマーのみ。勘違いされて当然だろう。

 

「いや、プロゲーマーじゃないです。俺は普通にログインしただけで……」

「ふ、普通の人……?」

「そうですね。色々と事情があって、このゲームにログインを──」

「ど、どうしてログインなんか……ッ!?」

 

 大人しかった風宮は声を荒げて俺に掴みかかる。明るい表情が一変し、怒りに満ちた表情でこちらを睨みつけてきた。

 

「あなたは、あなたはこのEWに一度ログインしたら……ログアウトできないことを知ってるんですよね?!」

「……」

「私は、私たちはオープンベータからずっと、ずっとこの世界で生きるか死ぬかの恐怖に耐えてきたんです! ログインしなければ良かったって、何百回も後悔してきたんです!」

 

 掴みかかる風宮の両手はブルブルと震えている。オープンベータから一年という長い期間、外部の者からは測り知れないほどの苦しみがあった。

 

「それなのに、それなのに……デスゲームだと分かっていて、ログインするなんて……ふざけないでくださいッ!」

 

 だからこそのうのうとログインしてきた俺に対して怒りが込み上げたのだろう。少女の立場を踏まえれば、ここまで声を荒げるのも無理はない。

 

「確かに俺はクリアをするために派遣されたプロゲーマーじゃないのは事実です」

「ならどうしてログインを……!?」

「このゲームを終わらせるためです」

「……!」

 

 俺が風宮へ真剣な眼差しを送れば、掴んでいた手を徐々に離した。

 

「EW開発者の赤峰陽介。俺はこの世界にアイツの人工知能がゲームマスターとして存在すると聞きました」

「……」

「赤峰陽介は、俺の親友だったんです。アイツは誰よりもゲームを愛していました。だからどうしてこんなことをしたのか。それをアイツ本人から確かめたくて……」

 

 ある程度説明をし俺は風宮に頭を下げる。

 

「すみません、もう少し言い方を考える必要がありました。こんな馬鹿げた理由の時点で、到底許しては貰えないとは──」

「あなたは……」

 

 途切れ途切れの謝罪を風宮は遮った。

 

「本当に、このゲームを終わらせてくれるんですか?」

「……終わらせます」

「本当に、私たちを助けてくれるんですか?」

「……最善は尽くします」

 

 信用するかしないか。

 迷いが見える問いかけに応えようと俺は顔を上げた。

 

「現実で覚悟は決めて、中途半端な考えでログインしたわけじゃないこと。それだけは信じてください」

「それじゃあ──」

「けど俺一人ではこのゲームをクリアできません。何故ならこのゲームはVRMMO。他のプレイヤーとの協力を前提に作られているから」

 

 安全な場所で待っていれば俺がクリアしてくれるとでも思ったのだろう。僅かに見せた希望の表情はすぐに消え失せる。

 

異端種(ノーコモン)との戦いで分かったとは思いますが、俺には赤峰やプロゲーマーのような天才的なゲームセンスはない。前線を張れるほどの力量や技術もない」

「そんな……」

「だけど他のプレイヤーのゲームセンスを最大限に発揮させられますし、ゲーム全体の流れを組み立てることができる──後衛のIGLとして」

「IGL……? 確かプロゲーマーの"ダスク"さんもそんなこと……」

 

 In(イン) Game(ゲーム) Leader(リーダー)。ゲーム内における司令塔の役割。先々の最善の手を常に思考し、盤面の全体を見通す──頭脳の部分。 

 

「本当にそんなことができるんですか……?」

「それは、やってみないとどうにも」

「そ、そうですよね。すみません、少し取り乱してしまって……先を急ぎましょうか」

 

 曖昧な返答をした風宮と微妙な空気間の中で、妖精の谷を越えた道を進んでいく。すると薄暗い道の先で、小さな明かりがぽつぽつと灯った町が目に入る。

 

「あれが町……?」

「はい。あそこが多数のプレイヤーの住んでいる町、ヒューマンズツリーです」

 

 Hangman's(ヒューマンズ) Tree(ツリー)

 そこは木々で生い茂った自然豊かな町だった。

 

 

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~用語解説~

 自然の(たみ)

 風宮若葉のリスナーたちの呼称。Vtuberはリスナーに呼称を付けることで一体感を出している。

 

 IGL:《In(イン) Game(ゲーム) Leader(リーダー)

 ゲーム内における司令塔の役割を担うプレイヤーの名称。特にプレイヤー同士で競い合うゲームでは仲間へ的確な指示を出し、相手の行動を常に読まなければならないため、より重要な役割となる。

 

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