たとえば……地球を侵略する宇宙人とか。
「いい加減にしろ! いったいいつまでこんな点数のままでいるつもりなんだ!」
部屋に親父の野太い怒鳴り声が響き渡り、部屋にバン! と机を思いっきり叩きつけた音が響き、
近くでその怒号を耳にした俺――山本和也はキーンと耳鳴りがしたのを感じ、
相手に悟られぬようにうつむきながら痛みに顔を歪ませた。
まあ、それ以外にも顔を歪ませたには別の感情があるんだけど。
「お前は受験生なんだぞ! それなのに学校の定期テストごときで十教科ある内の五教科も、
赤点を取っていてどうするんだ! こんな状態じゃ国立など受からんぞ!」
親父は俺が渡した答案をグチャグチャに丸めて俺に投げつけると、
イライラしているのを少しでも紛らわそうと音量を小さめにクラシックをかけはじめた。
椅子に座り、親父お気に入りのクラシックが部屋に中に静かに流れ始めるが、
それでもイライラが収まらないらしく貧乏ゆすりをしていた。
俺は今、センター試験の二か月前という状態にあった。
にもかかわらず、俺は学校の定期テストで十教科あるうちの半分、
つまり五教科のテストで赤点を取ってしまった。
細かいことを言えばあと一点あれば赤点じゃなかったって言う点数なんだが……それでも、
親父は今の点数がたいそう、気に食わないらしい。
「別にこのまま行っても確実に卒業できるし、それ以前に公募推薦で私立受かってるんだから、
別にいいだろ。模試でも目標の国立は合格レベルBだし担任だって俺の頭なら、
目標の国立はまず受かるって言ってんじゃん」
「そう言う問題じゃないだろ!」
「じゃあ、どういう問題だよ。俺的には受験料三万五千円を払って国立並みの学費で、
大学に通えるっていう方がよっぽど魅力的に見えるけど。それに国立国立っていってるけどさあ。
何も俺が受けた私立とこれから受ける国立の偏差値かわらないじゃん」
「私立なんかに行かせると思うのか!? 今、日本は学歴社会だ! 学歴がものをいう時代だ!
私立大学を卒業したくらいで会社から内定をもらえると思ったら大きな間違いだ!
お前には何が何でも国公立に行ってもらう!」
そう怒鳴ると言いたいことは済んだのか親父は手を動かして部屋から出ていくように伝えると、
引出しから数学の参考書を取り出して、裏紙に俺には理解できない数式を書き始めた。
親父は高校の数学教師。しかもその高校は偏差値があの天才学校として有名な波高校よりも、
さらに一段階上と噂されている高校の数学主任だ。
それを見た俺は特に何も言わずにぐちゃぐちゃに丸められて投げつけられた答案用紙を拾って、
自分の部屋へと戻るとそのまま答案をぽいっとゴミ箱に投げ捨ててスマホの電源をつけた。
「私立だろうが国立だろうが今の時代、会社に入ることができたら御の字だってのに」
ブツブツと親父に聞こえないくらいの声量で文句を言いながら、ベッドに横になると天井には、
五枚ほどの大きな紙にあらゆる複雑な積分の置換の方法やら英語の文法、さらには化学式など、
大学受験に必須な知識が書かれた紙が天井に張られている。
母さんは教育に関しては親父に任せっきり。親父が言うことは正しいと思っているらしい。
俺はイライラを解消するためにスマホにダウンロードしているあるアプリを起動させた。
そのアプリとは二年ほど前に配信された“ノンタイトル”というゲーム。
プレイヤーはいくつか武器を所持して宇宙から飛来した未確認生命体と、
熾烈な戦いを繰り広げるという単純なように見えて、やり込み要素が大量にあるゲーム。
今まで三日でアプリをアンインストールしてきた俺が唯一、
一月以上やりこんでいる素晴らし気ゲームアプリ。
しかし、ダウンロード数がそこまで伸びずに去年のフェスティバルを最後に、
運営側からの反応は見られなくなってしまった。
元々マイナーどころが制作したせいかダウンロードランキングでもランキング外どころか、
“ノンタイトル”で検索しても情報が出てこないという幻のアプリ。
オタクの間ではこれが結構、有名らしい。
「大学なんてどこ行ってもやることはおなじ! フィニッシュ!」
そう叫びながら画面をタッチするとプレイヤーが持っている銃口から極太のレーザーが放たれ、
相手の巨大なカブトムシの怪物を貫通すると、相手は大爆発を起こして消滅し、
画面にyou win!という文が表示された。
「あぁ~」
スマホを椅子の上に置き、ベッドにゴロンと横になって天井を見上げる。
ふと、思う。
―――――――――これが本当に現実なのだろうかと。
いや、別に俺に中二病の気があるわけじゃないがどうも俺という自我を持ち始めた時から、
そして大学受験を控えたこの時期にさらに強くそう思うようになった。
俺が知らないところで何かとんでもないことが起きているんじゃないのかと……。
その時、視界の端で一瞬だけピカッと光ったのが見え、
念のためにスマホの画面を見てみると下の方にお手紙の表示が出ていた。
「珍しいな。今どきEメールか……あ、切れた」
しかし、ずっと充電せずにアプリをしていたせいかスマホの電源がぷっつりと切れてしまい、
画面が暗くなってしまった。
俺はスマホの横側にある差し込み口に充電器の端子を差し込んで、
枕もとに置くとそのまま部屋の明かりを消して、就寝モードに入った。
『いつも“ノンタイトル”をご利用いただいてありがとうございます。
おかげさまで三年目を迎えることができました。
つきましてはわが社負担でパーティーを開催したいと思っております。
ご参加を希望される方はこのメールの返信で空メールを送信してください。
パーティーに出席なさらない場合は“欠席”と入力して返信して下さい。
返信せずに五日経過した場合は出席とみなします』
「カモン……カモン」
俺は妙な緊張感に包まれながら学校の近くにあるゲームセンターでレバーをガチャガチャしながら、
アームを動かして慎重にぬいぐるみへと落としていく。
そして、ぬいぐるみの真上辺りでアームの手を開いて閉じると、
うまい具合に俺が欲しいぬいぐるみの耳を挟んでそのまま持ち上げた。
数秒後、ガコンという音ともに取り出し口にぬいぐるみが落ちてきた。
「Yes! 犬ぞう君限定モデル!」
犬ぞう君……それは胴体と尻尾はいぬ、そして顔と四本の足が像という凄まじいキャラなのだが、
俺は一目見ただけでその魅力に撃ち抜かれてしまった。
それ以来、ゲームセンターに通いづめでこのぬいぐるみを集めているのか世間の方々は、
このぬいぐるみを気持ち悪いとおっしゃる。
「んじゃ、帰って」
犬ぞう君を抱きしめて家路へと就こうとゲームセンターを出た瞬間、
突然俺の目の前に黒塗りの高級車が急停止して、そこから金髪の若い男性が降りてきた。
で、でか……180㎝はあるか?
「やっと、見つけたよ。困るなあ、ほら、乗った」
「え、っちょ!」
急に腕を引っ張られ、ロクな反抗も出来ないまま車に乗せられてそのまま車は発進してしまった。
「君、学校で集合の五分前に来るっていうことを習わなかった?」
「何の集合ですか?」
「何のってパーティーのだよ」
……まったく心当たりが見当たらん。別に今日の日付が俺の誕生日ってわけじゃねえしな。
「昨日のメール見なかったのかい?」
男性にそう言われ、俺はすぐさまスマホを取り出してメール画面へといって、
履歴を見てみると確かに一通のメールが就寝時間前に来ていた。
すぐさまそのメールを開いて文面を読んでみると確かにパーティーに関して書かれていた。
「あ、えっと俺昨日電源落ちたから」
「君を含めた人数分しか準備していないから困るんだよね。ま、すぐに帰れると思うよ」
男性はそう言うと少し笑みを浮かべて俺の方を見てくるが、
どうもこの人が言っていることはウソ臭い。
昔からそうだ……誰かが嘘をついているとすぐにわかる。
その時、体が前の方に引っ張られるのを感じ、外を見てみると既に車は船の横に停車していた。
俺の隣に座っていた男性は一足先に降りると俺の手を引っ張って、
船の中へと入ることのできる入口の目の前へと俺を連れてきた。
す、すげえ……どっかの映画に出てきそうだ。
「さあ、どうぞ」
ともかく俺はいささかの不安を抱きながらも犬ぞう君を持って、
客船から伸びているスロープを上がり、
船内に入るとその空間は今まで見たことがないくらいに豪華だった。
天井にはいくつものシャンデリア、床には汚れなど一切見えないくらいに、
綺麗なタイルが敷き詰められ、前方にある大きな扉はシャンデリアの光を浴びて、
弱く光を発していた。
俺は大きな扉の前に立って思いっきり押すと、広い部屋に出た。
そこには円卓のテーブルが置かれており、それを囲むように俺と同世代、
もしくは一つか二つほど年上に感じる男女十五名が座っていた。
俺は近くの空いているイスに座って右隣の席の人をちらっと見てみると、
眼鏡をかけた女の人が頬杖をついて、ポケーっとしていた。
そして、左隣もチラッと見てみるとイヤリングをつけて、
ジャラジャラと音が鳴りそうな装飾品をいっぱいつけて、
さらに髪色を金に染めているやんちゃそうな奴が座っていた。
『やあやあ、待たせたね』
突然の声に俺を含めた全員が声が聞こえてくる方を向くが、そこには誰もいなかった。
するとガチャッと後ろの扉が開けられる音が聞こえ、そちらの方を向くとそこに先ほど、
俺を送ってくれたイケメンの男性がマイクを持って立っていた。
『君たちは運がいいね。こんな価値もないアプリを、
ダウンロードしたが故に君は英雄になれるんだ』
男性は前にある檀上まで歩きながら話し、そこへたどり着くと男性は口元からマイクを離した。
意味が分からなかい。なんで、アプリをダウンロードしただけで英雄になれるんだ。
すると、急にドアがやや乱暴気味に開かれ、黒服に身を包んだ屈強な男性達が、
アタッシュケースを俺達の人数分だけ持って中に入って来て、それぞれの前にケースを置いた。
『いきなり凄い話をするけどね、この世界……太陽系第三番惑星である地球は今、
危機に瀕しているんだ。地球外生命体による侵略によってね。ケースを開けてみて』
言われるがまま、ケースを開いてみるとそこには少し前までの俺達には、
全く無縁といっていい程の物がおさめられていた。
「拳銃だ」
誰かがそう言った。そうだ、この中に入っているのは一丁の拳銃だった。
『その拳銃は警察官とかが使っているような拳銃なんかじゃないよ。
“奴ら”を倒すために開発した特殊な拳銃なんだ』
そうは言われても信じることが出来なかった。
試しに拳銃を持ってみるが、ずっしり重く、そして冷たかった。
ま~た、意味の分からないことを言い始めたな。地球外生命体?
男性はあまり、芳しくない俺達の反応を見てハァッと一つ、小さくため息をついた。
『ん~。まあ、この事は伏せられているしね。一般人の君たちには、
伝わることも無いか……だったら、私が言っている事が本当だって事をお見せするよ』
そう言って、男性がパチンと指を鳴らすとドアが開けられ、
黒いスーツを着た男性達が布をかぶせた何かを部屋の中に運んできた。
『少し女の子にはショッキングかも』
そう言って勢いよく黒スーツ男性が布を退けると部屋に女性の悲鳴が木霊した。
布の下にあったのは四角い折に入れられたまさしく地球外生命体だった。
その肌は人間の様な肌色ではなく、黒色で口の端から鋭く先端がとがった牙が見えており、
異様に膨れ上がった眼球が皮膚を押し上げて外に出ており、
腕と思われる部分の肘から下は異常なまでに膨れ上がっていた。
―――――怪物、化け物。
そんな言葉が似合う存在が俺の目の前にあった。
『“君”には“奴ら”と戦ってもらうからね』
部屋の中にどよめきが響いた。
そら、そうだ!
あんな化け物といきなり闘ってくれなんて言われて動揺しない方がどうかしている。
「ふざけんなよ! 何で俺達があんな化け物と戦わなくちゃいけないんだよ!」
一人が立ち上がってそう叫ぶのを機に次々と男性に対して罵声が浴びさせられる。
男性は次々と罵声を浴びさせられながらも、ニコニコと笑みを崩さずにゆっくりとした動作で、
ズボンのポケットに手を突っ込み、立っている男子に何かを向けた。
―――――さっきまであんなに騒がしかったのが一瞬にして静かになった。
一発の銃声が鳴ったかと思えば、次の瞬間にはさっきまで立って怒鳴っていた男子が背中から倒れ、
動かなくなってしまった。
『言っておくけど“君”に拒否権なんてものは存在しないから』
俺達にとって、これほどまで絶望感を与えられる言葉は存在しなかった。
『ちなみにこの船は防衛本部に向かっているからね。逃げようとしたら武力を持って拘束するかもしれないから。じゃ、本部に着くまでの間の楽しいパーティーを楽しんでね』
男性は笑みを浮かべてそう言うと、マイクを持ったまま部屋の外へと出ていき、
黒いスーツを着た男性達が“奴ら”と呼んだ生物に布をかぶせて外へと運んでいくとともに、
撃たれて動かなくなった男性も運ばれていった。
さっきまでの雰囲気はどこへ消えたのか、まるで通夜の様な静かさだった。
誰も目の前に置かれている豪勢な食事に手をつけようとはせずに、
ただただボーっとしている者、絶望のあまり涙を流しているものなどたくさんいた。
このどんよりとした空気に嫌気がさしたので、いぬぞう君(限定モデル)を持ったまま、
外へと出ると目の前に広がっているのは真っ暗な夜の景色と何も見えない海だった。
船の周りを探検がてら散歩しているとデッキにたどり着き、
俺よりも先にデッキに来ていたのかさっき俺の隣に右隣に座っていた眼鏡をかけて、
黒いコートを着た女性がボーっと海を眺めていた。
「隣良いすか?」
「どうぞ」
ちらっと女性の方へ眼を動かすと、
彼女の腕に見たことのない形をした腕時計の様な物が付けられていた。
へぇ、あんな時計もあるんだな……もしくは俺が時計に関して情弱なだけなのか。
「良い時計っすね。どこで買ったんすか?」
「言う義理があるか?」
「そ、そうっすね」
女性と一回だけ会話をしてわかったのはこの人がめちゃくちゃ冷たい人だってこと。
それに妙に俺に対して……というか何か大きなものに対して、
憎しみに近いものを抱いているような気がする。
その時、強い風が一瞬だけ吹き、隣にいる女性の服が風に煽られて上へと持ち上がった時、
俺はその格好に驚きのあまり凝視してしまった。
女性がコートの下に着ていたのは何か特殊な素材で作られていそうな……パッと見の印象は、
かなり硬そうなズボンをはいていた。
硬いといっても本当に物理的な意味での……鉄だったり金属だったり。
そして太ももの側面にホルダーのようなものが巻かれ、
そこにさっき配られたケースに入っていた拳銃が一丁入っていた。
「お前」
「は、はい」
「付けておけ。すぐに使うことになる」
後ろを指さされながらそう言われ、振り返ると小さなテーブルの上に、
さっきのケースが置かれていた。
……俺、確か向こうに置いてきたよな。
女性の高圧的な雰囲気に押し負け、
俺はどうにかして格好になるようにケースに入っている装備を付けていく。
―――――――その時、今まで強く吹いていた風が一瞬にして止んだ。
周囲の雰囲気に小さな恐怖を抱いていると急に後ろから手を引っ張られ、
女性の方へ引き寄せられた瞬間!
俺の目の前スレスレのところを黒い塊のようなものが落下してきて船の上に落ちてきた。
その黒いものはウネウネと動き出したかと思えば繭のようなものを突き破って、
黒い腕のようなものが出てくるとビリビリと繭を破ってさっき広場で見た怪物が出てきた。
「っっ!」
突然、耳元で銃声が数発響いたかと思えば隣にいた女性が怪物めがけて何の迷いもなく、
銃の引き金を引いていた。
「……ちっ。変異個体か」
そう呟いたかと思えば目の前から雨の時に地面を歩いているような音が聞こえ、
そちらを振り向くと全身から真っ黒な血液のような液体を流した怪物が俺たちに向かって、
ゆっくりと近づいてきていた。
見なくてもわかる―――――――こいつは悪だ。
「っっっっっ!」
そう思った直後、俺たちめがけて飛びかかってきて慌ててその場から飛びのくと、
俺たちがもたれかかっていた手すりを手刀だけですっぱりと真っ二つに切断してしまった。
「あ……あぁ」
「戦え!」
恐怖のあまり体をガタガタ震わせながら壁伝いに逃げようとした時、
女性の怒鳴り声が響き、思わず立ち止まってしまった。
「今、お前はその力を持っているだろ!」
怪物の攻撃を避けながら女性が俺に叫んでくる。
俺はホルダーに入れていた銃を手に取るがその冷たさと言い表せない重みを感じ、
そこから動くことができなかった。
「お前の見てきた世界はすべて偽物なんだ! これが現実……世界の真実だ!」
世界の……真実……目の前のが。
「ど、どうやって使うんすか!」
女性に尋ねた瞬間、相手の口から俺めがけて黄色い液体が噴き出され、咄嗟に身をかがめて、
吐き出された液体を避けるとそのまま液体は壁にかかり、シューという音ともに煙が立ち上った。
と、溶けてる! 壁が溶けてる!
「セーフティーを外せ!」
銃を見ようとした瞬間に怪物が翼を展開して俺めがけて突っ込んできたから身を屈めて、
避けると視界の端に銃の側面にあるレバーのようなものが見えた。
相手のほうを見るが暗闇にまぎれてその姿がはっきり見えない……でも羽音と、
凄まじいくらいに濃い悪は感じ取れた。
「こ、これを外すんだよな」
「バ、バカ!」
女性が俺に叫んだと同時に側面にあった小さなレバーをあげた途端、
キィィィン! という甲高い音を発しながら銃口の先に光が集まっていくとともに、
拳銃全体が眩いくらいに輝きはじめた!
「な、なんなんだよ!」
拳銃の発する輝きはどんどん強くなっていき、
暗闇の中に潜んでいた奴の姿も肉眼ではっきりと見えるまでに明るくなっていた。
苦しそうな声が聞こえ、ふと顔を上げて前を見ると突然、
強い光を見た所為なのか相手は手で目を隠していた。
あいつを倒すのは今がチャンスってやつでしょ!
「分かんねえけどくらえ!」
「ば、やめ」
女性が俺を止めるよりも早く、俺の指が引き金を引いた瞬間!
銃口から放たれたのは弾丸ではなく、極太のレーザーの様な物が相手に向かって発射された!
発射された際の衝撃で、俺は壁に打ち付けられ、放たれた極太のレーザーは強い輝きを放ちながら、
眩い光で目を覆っている怪物めがけて伸びていき、直撃した瞬間!
凄まじい爆風が吹き荒れ、爆発音があたりに響き渡った。
「このバカが! だから待てと言ったんだ!」
「ゲホッ! ゲホッ! はっはっは…………」
強く壁に叩きつけられたせいで数秒間息ができなくなり、窒息しそうになるがなんとか、
普段通りに呼吸ができるようになり大きく深呼吸をしながら呼吸を整えた。
はぁ……し、死ぬかと思った。
「か、怪物はげほっ!」
「死んだ。さっきの一撃でな」
女性の言うとおりさっきまで耳の奥で聞こえているようだった羽音は一切聞こえず、
船が海水をかき分けて進む音が俺の耳にはよく響いていた。
衝撃で吹き飛ばされた際に手放した拳銃はところどころから煙を上げているし、
銃口は溶接でもしたのか穴が完全にふさがっているし、
グリップの部分は既に吹き飛んで存在していないし、
目の前に落ちているのは銃口の部分だけどそれ全体に亀裂が入っていて、
少しでも触れたら粉々に砕け散りそうなくらいに破損していた。
「やあやあ。楽しいパーティーは楽しんでくれたかな?」
突然、目の前から言葉がかけられたかと思えばいつの間にかあの長身イケメンが立っていた。
「まあ、こんな状況で楽しんでいたらそれはそれでおかしいんだけどね~。
特に山本和也君なんかは非常に貴重な経験したんじゃないの~?でも、
そのうち貴重な経験じゃなくて普段の経験になるんだろうけどね~。とにかく拍手喝さいものだね」
「……なあ、俺が見ているのはいったい何なんだ」
「ん? 真実だよ。この世界のね……改めまして。君は英雄となる資格を得た。
ようこそ。この世の真実に最も近い組織…………ノンタイトルへ」
この日、俺はこの世界の真実を見た。