俺の隣の席の女子がどうも人間じゃないっぽい   作:山田太郎2号機

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最初は普通の日常が書きたかった。

欲が混ざってこうなった。




01 [急募]隣の女子が人外だった時に取るべき行動

 

 

やあ、諸君。

 

 

突然だが君たちは今でも、御伽話の生き物を信じているだろうか。

例えばドラゴンや悪魔、神鳴り様。兎に角、物語の中だけに出てくる、作家や昔話が産み出した架空の存在だ。

 

 

――成る程、信じていない、と。

 

 

まあ、当たり前か。

幼い時ならいざ知らず、ある程度成長して物事の分別が付くようになれば、自ずとそういったことは悟ってしまうものだろう。

 

 

――世界に御伽話のような姿をした神や悪魔、ファンタジー存在なんていない、と。

 

 

事実、俺もそうだったしな。

中学に上がって直ぐくらいは・・・その、()()()()時期だったこともあって本気で信じていた時期もあったが、結局は目が覚めてしまった。

 

 

ネス湖にネッシーは居ないし、雷の原理は神鳴り様の腹の音ではなく、唯の自然現象。死んだことが無いから地獄や天国があるかは分からないけれど、多分無いだろう。

 

 

結局の所、それら超常の生き物は人々が勝手に産み出した幻想だ。

まして今は21世紀、見えない電波が飛び交う時代にそんな古くさいモノを信じる人なんて、頭がおかしいと言われても不思議じゃない。

 

 

 

 

 

・・・じゃあ、その上で諸君らに尋ねたいことがある。

 

 

――俺の隣の席の女子がどうも人間じゃないっぽいんだが、どうすれば良いだろうか。

 

 

 

 

 

あ・あ・あ

 

 

 

 

 

どの学校でも、チャイムというのは学生の心を浮き沈みさせるトリガーだ。

それが授業の始まりならブルーな気分に落ち込むし、例えば週末の放課後に聞くものであれば否が応でもテンションが上がる。

 

 

「――ハイ、じゃあ今日の授業はここまで」

 

 

なら、本来なら授業が終わり、昼休みに入るこの場面のチャイムは喜ぶべきものだろう。

だが最近、俺はそれを素直に喜べない日が続いていた。

 

 

「あー、数学やっと終わった。色々終わった」

「リサちー数学嫌いだもんねぇ・・・ま、ソレは置いといて。お昼一緒に食べよー!」

「うん、食べよ食べよ」

 

 

――ブンッ!ブンッ!

 

 

「――あ、リンゴだ。美味しそう」

「最近お父さんが箱で買ってきてから、ずっと食べてるんだけど消費が追いつかなくてさぁ。正直飽き飽きなんだけど・・・食べる?」

「うん、食べる!」

 

 

ばさ、ばさばさっ

 

 

 

――現在、俺の隣に座る女子二人がわいわいと弁当を広げて乳繰り合っている。

だがその会話の途中途中に食事の際に普通立たない筈の音が混じっているのを、俺は聞き逃さない。

 

極力怪しまれないように彼女ら側の腕で頬杖をつき、横目で確認を取る。

一人は不自然なところは何一つない一般女子だ。ちょっと制服を着崩している感はあるが、あれはそういうファッションなのだろう。

 

 

 

ここまでは良い。元から解りきっている。だが問題はもう一人だ。

視線を少し横にずらす。

 

 

 

――まず、座っている持ち主より遙かに大きな翼が見えた。

 

翼、と言っても天使の羽のように羽毛に覆われたものではない。コウモリのような翼、と言えば解りやすいか。翼膜と骨格で形作られ、どちらかというとすべすべした、さながら物語のドラゴンのような翼だ。

ちなみに先程コウモリと称したが、その見た目に愛らしさなどは一欠片もない。翼の親指に当たる部分には鋭い翼爪が付いているし、持ち主が少し身じろぎするとそれに合わせ、小さな風礫を引き起こしている。全力で羽ばたこうものなら教室がどうなるか解ったものではない。

 

そしてもう一つ。

正直それだけでお腹いっぱいなのだが、恐る恐る翼から視点を下へとずらす。

 

 

 

――其処にはバタバタと絶え間なく左右に揺れる尻尾があった。

 

ぱたぱた、という可愛らしい音ではない。バタバタとかそういった音を立てている。普段は大人しいので、先程リンゴを貰ったのがよほど嬉しかったのか。

もしこれが犬や猫のような可愛らしいものであればまだ受け入れも出来ようが、その尻尾はどう見てもは虫類か何かのソレ。ビジュアルとしては減点対象だ。

外面はすべすべした鱗のようなもので覆われ、その先端からは正体不明のモヤモヤとした謎のエネルギーが揺らいでいる。やけにゴツいポ○モンのリザー○ンの尻尾(色違いVer.)と言えば解りやすいだろうか。

 

 

どちらも今を生きる都会の女子高生がホイホイ生やして良いシロモノではない。しかしその二つ以外はこの学校の女子生徒そのもの。

だったら俺は、隣に居るこの異形が生えた少女を一体何と表現したら良いのだろうか。

いや、そもそも以前の彼女にこのようなものは無かった。ではどうして――

 

 

「・・・ねえ、さっきから君、こっちをずっと見てるけど。私の顔に何か付いてる?」

 

 

と、そんなことを考えていたら、突如として件の彼女に声を掛けられた。

観察に気を取られるうち、いつの間にか顔全体を向け、彼女を堂々と凝視する形になってしまっていたようだ。

 

 

「――い、イヤ、別ニ、ナンデモナイヨ?」

「? まあ、それなら良いけど」

 

 

とりあえずダメ元でごまかしてみる。

突然の事でガチガチに緊張していたため返答が遅れた上に、我ながら酷いレスポンスだったと思うが、幸い彼女からそれ以上の追求はなかった。

 

ちなみに俺が答えを返すまでの間に一度、尻尾が不機嫌そうに強く床を打った。バシンッと乾いた音がして先端の不思議エネルギーが軌跡を描き、床に転がっていた消しゴムがその飛沫に触れた途端、瞬時に灰と化したのだが、それを見ても尚鋼の意思で注目を彼女から外さなかったことは褒めて欲しい。

 

彼女は最後にこちらを不審げに一瞥した後、友人の方へ向き直るとすぐに談笑へと戻った。その間2秒。転換の早さが異次元である。

 

 

――今日はこれ以上、同じようにジロジロ観察するわけにもいかない。

手持ち無沙汰になってしまったので、仕方なく前を向き直して机に突っ伏す。彼女のように昼食を取ろうとも思ったが、先程の光景の後だとそんな気にもならない。

 

 

 

 

 

――一体彼女は何者なのか。どうすればそれを彼女に聞くことが出来るのか。

 

これが最近の俺、私立アカシヤ学園高等部一年、神里千里(かみさとせんり)の悩みである。

 

 

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