IS~ドイツの黒き皇帝~改訂版   作:鈴木颯手

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第十九話

「やはりISコアの複製は不可能か?」

「不可能です」

 

 無事に専用機を受け取り研究所での用事を済ませたフリードリヒは帰って来る答えが同じだとはわかっているものの質問を所長に投げかける。それに対する所長の答えは予想していた通りであった。

 ISコアはブラックボックス化されており開発者である篠ノ之束以外で製造方法を知っている人物はいない。世界中の研究者が製造方法を知ろうと調べたものの結局誰一人として製造方法の取っ掛かりすらつかめた者はいなかった。

 

「ISコアは私でもどういう原理で作られているのか分かりません。そもそも篠ノ之束自体が規格外と言ったでしょう。火薬の製造方法が知った時に現代の科学者が知識をそのままに生まれついたようなものです」

「つまり篠ノ之束は100年、200年先の技術力を知識として持っていると?」

「可能性は高いでしょう。尤も、知識が100年、200年後のものだと良いですがね」

 

 所長の言葉はそれ以上先の技術すら持っているかもしれないという物でありフリードリヒは納得してしまう。それだけ篠ノ之束という存在は異質であり特別だった。フリードリヒやクロエとラウラも彼女と同じものを見る事は出来ない。それが出来るのは同じ規格外な存在である織斑千冬くらいだろう。

 

「ISコアの複製。何十年の歳月をかけないと難しいかもしれないが研究は進めてくれ。複製が出来ればドイツ帝国の軍事力を高められる」

「勿論です。私としても分からないままで終わるのは悔しいのでね」

 

 ISコアもいずれは複製できるようになり世界中に存在する467個から468個目が出来るようになるだろう。だが、フリードリヒとしてはそれを成すのが祖国であって欲しいと願っている。ドイツ帝国という強大な国がこれからもその力を保持していくにはそれくらいの偉業を成さないといけない。ドイツ帝国という存在が胡坐をかいているだけでよかった時代は既に存在しないのだから。

 

「そう言えば男がISを動かせないのは何故なんでしょうね」

「それを俺に聞くのか? 少なくともお前らの方が答えが出そうだが」

「それが分からないから聞いているじゃないですか。それが分かり、改善できればロシアみたいなイカレタ連中も大人しくなるでしょうしね」

「そうだな……」

 

 女尊男卑という考え方は世界中に広がった。ISという絶対的な力を扱えるのは女性だけという事実がそうしているがだからと言ってその通りに動いている国はほぼ存在しない。大抵は弾圧を受けるがそれから逃れた者達がロシアに集まってきている。ロシアは独立から日が浅い事から早急に技術力と国力を高める方法を模索していた。その結果が彼女達(女尊男卑主義者)の受け入れでありそれを成した結果ロシアから男という人権を持った生物は消え去った。男は家畜となり愛玩用、労働用、発散用と用途ごとに()()()()女性たちに配られる。抵抗すれば簡単に殺される。数はたくさん存在するのだから。

 それがロシア国民にだけ適用されていればイカレタ連中という言葉も飛び出す事は無かったかもしれない。だが、実際にはロシアに入った者は外国人だろうと関係なく家畜にされる。捕まれば二度とロシアの外に出る事は出来ないだろう。だからロシアは女性しか訪れる事が出来ない。ロシア国内で外交などを行う場合は女性を向かわせないといけない。女尊男卑を広げる為という目論見もあるのだろう。その結果ロシアは急速に世界中から距離を取られ、孤立の道を歩み始めている。その内ロシアを国家として認める国はいなくなるだろう。

 

「彼女達の思想が変化する確率は低い。一度完成され、慣れてしまえばそれに抗うような事はしなくなる。それで満足しているのなら余計にな。だが、ある意味ではそう言う思想を持っている者を吸収しているからな。世界中に散って潜られるよりはマシだろう」

「そう言うものですか? 私には分かりませんが」

「そういうものさ。さて、少し話過ぎたな。俺はそろそろ戻るとしよう。クロエとラウラも専用機の試運転を行いたいだろうしな」

「そうですね。手足と変わらないくらいには熟練度を上げておきたいです」

「私も同じ意見です」

 

 クロエとラウラも早く専用機を動かしてみたいと思っている様でフリードリヒの言葉に同意する。研究所を出た3人はそのまま親衛隊専用の訓練場に向かう。IS戦闘を行う以上ここが一番近く、簡単に使える場所だった。

 

「っ!? へ、陛下!?」

「おう、ちょっと場所を借りるぞ」

「も、勿論構いません! 総員! 陛下の為に場所を開けろ!」

 

 訓練場につくと一部隊規模の人数が訓練を行っていたがフリードリヒの登場に目を丸くして驚きスペースを開ける。IS戦闘を行うアリーナが一つ空きクロエとラウラがそれぞれISスーツに着替える。見た目は水着状のレオタードだがISをより機敏に動かせるように様々な技術が盛り込まれている為ISを使うにあたってなくてはならないものだ。中には肌の露出を嫌い、手足以外を覆われた物を着用する者もいたり体型を見られないように全身装甲(フルスキン)と呼ばれる肌の露出が少ないISを用いる者もいるがそう言った者達は少数派に付属する。

 

「二人とも準備は出来たか?」

『はい。大丈夫です』

『何時でも行けます』

 

 管制室に入ったフリードリヒはISを展開して待機する二人に話しかける。フリードリヒの周りには先ほどまで訓練を行っていた親衛隊員が詰めかけており最新型のISを一目見ようとモニターに集中していた。……一部フリードリヒの背中に熱いまなざしを送る者もいたが。

 

「よし、これはあくまで二人のISの試運転だ。無茶な動きはするなよ」

 

 フリードリヒがそう言うと同時に二機のISが姿を現した。全体的に黒で統一されており銀髪の二人を目立たせていた。

 

一次移行(ファーストシフト)までそれなりに時間が掛かる。適当に動かしたり武器の調子を確かめてくれ」

『『了解!』』

 

 二機の黒い機体は戯れるように動き出す。その様子を眺めながらフリードリヒは手元のキーボードを操作して二機のスペックを確認する。

 

「ほう、これは中々に面白い形で仕上がっているな」

「あの陛下、二人が乗っているISは例の最新型ですか?」

 

 スペックを見たフリードリヒが口角を上げると一人の親衛隊員がおずおずと話しかけてきた。先程まで部隊長として指示を出していた者だが陛下と喋った事はあまりなく若干の緊張を含んでいた。それでもクロエとラウラが最新型の専用機を持つ事は聞かされていた為確認も兼て声をかけていた。

 

「ああ。お前も見るか? 第3世代だけあって面白い機体だぞ」

「ではお言葉に甘えて……。って、何ですかこれ!?」

 

 データを管制室に設置されたタブレットに移したフリードリヒは部隊長にそれを渡す。渡されたタブレットを操作してスペックを確認した部隊長は緊張してたとは思えない驚きの声を上げた。

 

「大口径のレールガンに計6本のワイヤーブレード、エネルギー状のプラズマ手刀に1対1の場合では必殺の威力となる慣性停止結界(AIC)……。陛下、この二つの機体はドイツ帝国の最新鋭技術しか積まれていないのですか?」

「そうだな。第2世代のレーゲン型を基に第3世代に相応しいスペックと武装を持ったシュヴァルツェア型はその言葉がふさわしいだろうな」

「特にAICなんて完成していたのですね。私はまだまだ時間が掛かると思っていましたが……」

「それは同感だ。うちの技術者たちは予想以上に優秀だったという事だろう」

 

 そんな話をしていると二機は軽い模擬戦を始めたようでレールガンやワイヤーブレードの応酬が始まった。あくまで試運転という事で相手を倒す事よりも操作に慣れる事を優先している様で試合と呼ぶには微妙な勝負が行われる。それでも元々二人のIS適性の高さと操縦のうまさ、第3世代ISという最新鋭機がもたらさすスペックの高さでそれなりに楽しめる試合が展開される。

 

「……漸くか」

 

 そこから暫くして漸く一次移行(ファーストシフト)が完了した。より二人に合わせた本当の意味で専用機となったISを纏った二人は試運転は終わったとばかりにそこから試合は苛烈になった。互いの武器を壊すように、体を傷つけるように攻撃が行われる。同じスペック、同じ武装を持つ二機の勝敗を分かつのは操縦する人だ。

 クロエとラウラはお互いの事を自分のこと以上に知っている。二人はそう思っておりそれを元にした戦術を組み立てていくがそこで両者の趣向が分かれる。クロエは速度や相手の意表を突く戦術を好みラウラの死角から奇襲を行う。対するラウラは正面から立ち向かいつつ奇襲や後退など常に流れを作る事を意識している。相手のペースに乗せずに自分の土俵で戦う事を意識する。まさに軍事らしい戦い方と言えた。

 結果、勝敗は徐々にラウラに傾き始めた。常に死角からの攻撃を警戒しつつクロエの動きを封じる動きを見せるラウラと奇襲を封じられ自分の動きが出来ないクロエでは明白だった。数分後にラウラは止めの一撃を与え試運転を行いながらの試合はラウラの勝利で終了した。

 

「ご苦労、今日はここまでだ。戻ってこい」

『分かりました』

『了解しました』

 

 二人に声をかけたフリードリヒは訓練の邪魔をした事を部隊長に詫びこれからも頑張って欲しい旨の事を言って管制室を出た。二人の下につくまでの間にフリードリヒは考える。

 

「ISはどんどん進化している。いずれ篠ノ之束という存在がいなくともコアの複製にたどり着く。だが、それでも俺はドイツ帝国の皇帝として我らが世界を引っ張っている事を祈ろう」

 

 フリードリヒは未来の世界を思い浮かべながらもその世界をドイツ帝国が先頭に立つ姿を思い浮かべるのだった。

 




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