IS~ドイツの黒き皇帝~改訂版   作:鈴木颯手

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雪の進軍
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第二話

 ISの登場は世界を変えた。ISの最大の欠点である【女性にしか扱えない】により女尊男卑が進んだ。未だ国家を運営するのは男性が多いが少しずつ女性の進出が始まっていた。中には女尊男卑を推奨する団体まで誕生する程だ。

 しかし、ISの心臓部であるコアはISを作り上げた天災製作者、篠ノ之束しか製造方法を知らず作れない状況となっていた。その為束が失踪した現在、既存の467のコアを各国で分配して運用していた。

 内訳として

 

ドイツ帝国(植民地、傀儡国含む):60

大日本帝国:50

ドナウ連邦:40

イギリス連邦:40

アメリカ:40

その他国家:87

企業:150

 

という配分となっていた。ISの軍事利用を禁止したアラスカ条約やIS委員会の発足などを行い、それら機関の経費の4割を支払っているドイツ帝国が圧倒的に多くなるのは当然と言えた。それでも傀儡国であるモスクワ公国、ニューギニア王国、マレーシア王国、大フィンランドなどの国へ配分することを考えればこれでも少ないと言えた。

 現在各国は挙ってISの研究を行いすでに第三世代に至るまで進歩させていた。ドイツ帝国も第三世代ISを完成させ量産化の目途を立てている所だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがこれからお前たちが住む部屋だ」

 

 ドイツ帝国帝都ゲルマニア。その中心地には皇族が住まう城があった。ゲルマニアの代表的な建造物であると同時にドイツ帝国を象徴するその城の一室に皇帝フリードリヒを始め、保護された二人の少女ラウラとクロエはいた。彼女達は皇帝に保護され共に城の中に入ったのだ。

 城の中で使用されていない、比較的キレイな部屋に案内された二人は初めて見る豪華な部屋に戸惑った。こんな城を見るのも、ましてや入城すら初体験の二人は驚きすぎて反応がなくなりつつあった。

 

「ほ、本当にここに住んでいいの……?」

「ああ、勿論さ。ここは君たち二人の部屋だ」

 

 フリードリヒの言葉に二人は嬉しそうに顔を綻ばせた。先程まで夢と思ってしまうほどのこの状況に少し不安げな様子だった。フリードリヒは二人の笑顔を見て満足そうに何度も頷く。そうしていると部屋の入口に一人の男性が現れた。フリードリヒと似た顔つきの男は三人に気付くと声をかけてきた。

 

「あ、兄さん。ここにいたんだね」

「ルーか。どうかしたのか?」

 

 ルーと呼ばれた男は兄であるフリードリヒの問いかけに一枚の紙を渡してきた。それを確認したフリードリヒの表情は曇った。しかし、特に何も言う事はなく不思議そうにしているクロエとラウラを一瞥するともう一度ルーの方を見る。

 

「これに関しては了承した。だが、今はちょっと無理だな」

「……ああ、なるほどね」

 

 ルーは何かを察したらしく二人に笑みを浮かべると視線を二人の高さに合わせた。クールな感じのするフリードリヒとは違い穏やかな、見ている人を温かくさせる笑みに自然と二人の頬は染まる。

 

「ルートヴィヒ・フォン・プロイセンっていうんだ。君たちは……、兄さんの愛人後補かな?」

「あいじん?」

「子供に何を吹き込んでいるんだ」

 

 愛人の意味が分からない二人は首をかしげているが意味を知っているフリードリヒは軽くルーの頭に拳骨を落とした。それと同時に二人の教育面を何とかするかとフリードリヒは考える。10歳ほどの二人だが明らかにそれ以下にしか見えず知能面でも遅れが見て取れた。

 後で手配するかと思いながらルーに話しかける。

 

「今回の任務で保護した二人だ。……目を閉じている方がクロエでもう片方がラウラだ」

「任務……。そっか。君たちの事はある程度は把握しているよ。安心して。ここには君たちを虐める人なんていないから」

「本当、ですか?」

「勿論さ。もしそんな人がいるなら兄さんが懲らしめてくれるよ」

「そこはお前じゃないのか」

「だってもうすぐ婿に行く僕よりも兄さんの方が適任じゃないか」

 

 フリードリヒとルーの会話に二人は泣き始める。そんな二人をフリードリヒが抱きしめる。しばらくの間、二人はフリードリヒの腕の中で泣き続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで?彼女たちはなんなんだい?」

 

 ルーは先ほどまで見せていた温和な雰囲気から真剣な表情となりフリードリヒに尋ねた。彼らの傍にはベッドで眠るクロエとラウラが居りお互いくっついて眠っていた。あれからずっと泣き続けていた二人は泣きつかれたためにそのまま眠ったのだ。

 フリードリヒはベッドに腰をかけるとルーの方を向く。

 

「何のことだ?」

「とぼけないでよ。いくら兄さんでもいきなり城に人を住まわせるなんてことしないでしょ?」

「……はぁ、お前は本当に鋭いな」

「そりゃそうだよ。地頭は兄さんに劣るけど頭の回転は兄さんより上だって自負しているんだから」

 

 そう言って笑顔を見せるルーにフリードリヒは観念したように話し始めた、聞き始めこそ自然に聞いていたルーだったが話を聞いていくうちに顔から表情は消え無意識のうちに拳を握りしめていた。

 

「……それは事実なの?」

「ああ、半年の調査で将官2名、佐官6名、尉官10名、後は政治家にちらほら……。恐らくもっといるだろうが少なくとも関与していた人数だ」

「……腐っているね」

「認めたくはないけどな。誰だって自分の国の軍隊が生物兵器の製造(・・・・・・・)を行っているとは信じたくはないだろう。それも非人道的という言葉では足りないくらいの非道ならな」

 

 フリードリヒは怒りと悲しみが籠ったくらい声でそう呟いた。彼とて調査を開始した当初は信じられなかったが今では事実として受け入れると同時に自分の国の軍隊を抑えられなかった責任として研究所の制圧に同行したのだ。

 

「……あの二人は」

「その施設の生き残りにして唯一の成功例だ。酷いもんさ。クロエはともかくラウラは来年には軍への入隊が決まっていて俺たちをごまかすための偽の経歴、家族構成などを用意してあったのさ」

「クロエちゃんの方は?」

「良くて廃棄、悪ければ一生研究所の中で慰み者だっただろうな」

 

 理想通りの高スペック体となったラウラと誕生こそしたが失敗作だったクロエの将来に二人は深いため息をつく。どちらもまともな人生を歩むことは出来ないだろう。そんなを簡単に出来るほど二人のこれまでの人生は悲惨だった。

 

「だけど、何時までも二人をこのままにしておくわけにはいかないよね?」

「勿論さ。こういう時を想定してすでに準備はしてある。二人にはゲルハルトの養子になってもらい皇族専属の侍女見習いとして過ごしてもらう」

「ゲルハルト?帝国親衛隊のボーデヴィッヒ中級将軍の事?」

 

 ゲルハルト・フォン・ボーデヴィッヒは皇帝への忠誠心があつい初老の男性だが結婚歴はなく独身のままこの年まで来ていた人物だった。かつて結婚式の直前に友人に婚約者を寝取られた経験がトラウマとなっており女性と結婚や恋人どころか性行為すら出来なくなっていた人物だった。

 とは言えそれ以外では優秀な人物で性格にも問題は無いのをルーは知っていた。

 

「一応聞くけど大丈夫なの?」

「俺が頼んだんじゃないぞ。襲撃前に本人から頼まれたんだ」

「へぇ、意外だね」

「本人曰く”妻は欲しいとは思わないが子供は願った事がある”との事だ。女の子だったとしても大丈夫と言っていたからな、本人の言葉を信じた形だ」

「ふぅん」

 

 ルーはそれ以上いうつもりはないらしく追及はしてこなかった。

 

 その後も二人は話を続け空腹でクロエとラウラが起きるまで続くのだった。

 

 数週間後、ドイツ帝国軍内で大規模な粛清が行われた。非人道的な研究に関与していたとして多数の将校が裁かれる事になった。更に政治家も同様の罪で裁かれる事となりドイツ帝国内での粛清の話はあっという間に世界中の知る事となるのだった。

 

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