IS~ドイツの黒き皇帝~改訂版   作:鈴木颯手

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第二十二話

「久しぶりだな箒。元気にしていたか?」

「あ、ああ……」

 

 一夏は数年ぶりの幼馴染との再会を喜びつつ場所を移した。流石に上級生からも見られている状態で話すのは精神的に辛い物があった。ただでさえ久しぶりに会う幼馴染との再会である。もっと気楽に話せるようにと屋上を訪れていた。何人かは屋上の入り口から覗いてはいるが屋上にまで入って来るような事は無い。遮蔽物はないうえにただならない関係と察して遠くから眺めるにとどまっていた。

 

「そう言えば去年剣道の全国大会で優勝したんだってな。新聞で見たよ、おめでとう」

「そ、そうか! 有難く受け取っておこう……!」

 

 箒は一夏の言葉に顔を赤らめつつ答えた。知っていたとは思っておらず不意打ちを喰らった形だがそこから別の話に行こうにも上手く話せなかった。会話が苦手という事と()()()()()()()()()()()()()()も重なり上手く話す事が出来なかった。

 

「? 6年ぶりにあったから何か話したい事があったんだじゃないか?」

「そ、それは……」

 

 まさか自分に声をかけて来なかったから声をかけただけとは言えず、箒は混乱しつつある頭で必死に考えた結果、現状に至る理由を聞いてみる事にした。

 

「まさかお前がISを動かしたとは思わなかったぞ」

「あー、あれね。確かに俺も驚いたよ」

 

 試験会場を間違え入った結果そこにはISが置いてあり触った起動したなんて偶然が生み出した産物の結果が今の彼の現状に繋がっていた。一夏とてこうなるなんて夢にも思っておらずISに関する知識は一般人と大差なかった。

 

「そう言えば箒はISの事について詳しかったりするか?」

「うん? まぁ、ここに入学できるくらいの知識は持っているつもりだが……」

 

 ()()()()()から、IS学園に入学する事が決まっていた彼女だがそれを抜きにしても入学できるくらいの知識と技術を磨いたと思っていた。実際、一応受けた入学試験は難なく平均値を軽く超える成績をたたき出している。

 

「ならさ、俺にISの事教えてくれないか? 千冬姉に渡された参考書って滅茶苦茶分厚いのに専門用語が多くてさ……」

「ああ、成程。確かに素人がすぐにわかるものではないな。……分かった。放課後で良ければ時間を作ろう」

 

 本当は剣道部を見に行く予定だったが好意を寄せる幼馴染からの頼みである。どちらを優先するかは明白だった。一夏は箒の言葉を聞き喜んでおり自然と頬が緩み笑顔になっていく。とは言え至福の時間はあっという間に終わってしまう。授業開始まで後僅かという事に気付いた一夏が慌てだす。

 

「やべ! もう授業が始まるぞ! 千冬姉が担任だし遅れたら怖いからな」

「そ、そうだな。千冬さんは相変わらずだったからな……」

 

 千冬の怖さを身を以て知っている二人は顔を少し青ざめながら教室へと走る。既に野次馬どもはいなくなっている辺りどれだけ時間ギリギリかを物語っていたがそう言ったやり取りをした箒は笑みを浮かべる。こういった事も箒には楽しく感じられた。それが毎日続くと考えれば箒の頭はトリップ状態となるのだった。

 余談だが二人は結局遅れてしまい先に入っていた千冬によって出席簿のチョップを喰らい涙目になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ日本か……」

 

 ラウラ・フォン・ボーデヴィッヒは機内アナウンスを聞き読んでいた雑誌を閉じて窓の外を見る。そこには日本列島が広がっており既に大日本帝国の領空に入っていた。ラウラは半日を超える長旅で展開された荷物を仕舞っていく。そして長時間座っていた事による凝りを解しながら到着するのを待った。

 暫くして飛行機が着陸し、ラウラは約半日ぶりに大地を踏みしめる。成田国際空港は平日だというのに人でにぎわっていた。国際空港だけあって外国人の姿も多くありラウラも違和感なく周囲に溶け込めていた。しかし、人形の如き美貌は自然と周囲の人々の視線を集めていた。黒いズボンに暗い感じの迷彩柄のシャツという服装はラウラの銀髪を目立たせる形となっていた。

 

「確か……」

 

 そんな視線など気にしないとばかりにラウラは手元に持ったメモを見る。IS学園からの迎えが来ている筈であるが空港は広い。ラウラは周囲を歩き回る事にした。迎えに来る相手の名前は分かるが残念ながら連絡先を知らなかったが。

 

「……む? あれか……」

 

 だがそれでもメモに書かれた特徴と一致する人物を見つけその人の下に歩いていく。ラウラの下半身を超える高さのキャリーケースを引きながらその人物、轡木十蔵の下に向かった。

 

「轡木十蔵か?」

「ええ、そうですよ。ラウラ・ボーデヴィッヒさんですね?」

「そうです。IS学園までよろしく頼む」

 

 思わず敬礼しそうになるのをすんでの所で思いとどまり軽く頭を下げる。軍隊にいた頃は問題なかったがここは違うため敬礼などを控えるように言われていた。

 

「(最初からやらかしてしまうところだった)」

 

 ラウラは送迎用の車に荷物を詰め込み乗り込んだ。IS学園は立地的な問題と専門とするかも苦から全寮制の学校となっている。その為必然的に荷物はかなり多くなる。ラウラの荷物は衣服に生活必需品が合わさり大きな荷物となっていた。今後ドイツ帝国から更に送ってもらう予定なので更に増える。

 ラウラが乗り込んだ事を確認した轡木十蔵は車を走らせる。成田国際空港は千葉県に位置しており直ぐに大日本帝国の中心地である帝都東京へと入る。

 

「(これが帝都東京か……)」

 

 祖国ドイツ帝国の帝都ゲルマニアを超える人口を持ち超巨大な経済圏を持つこの国の中心地。それは地面がアスファルトで覆われコンクリートの木々が乱立し、その周りをアスファルトの枝が絡み合うまさにジャングルと呼ぶにふさわしい光景だった。それでいてこの都市に限界は来ておらず現在もスクラップアンドビルドを繰り返して最新式の都市に更新が行われている。

 

「(極東の大国、アジアの盟主と言うだけの事はある)」

 

 ドイツ帝国を出た事がないラウラは何処か大日本帝国を侮っていた。相手が自分たちと同じ大国と言えど敵わないであろうと。しかし、その考えは東京を見て一気に吹き飛んだ。大東亜共栄圏と言う一大陣営を築き、アジア諸国を率いる国の帝都はまさにその名にふさわしい繁栄と規模を誇っていた。

 

「……日本は初めてですか?」

「ええ、初めて見ました」

 

 圧倒されている事が轡木十蔵にも分かったのだろう。温和な笑みを浮かべてラウラに尋ねた。

 

「東京は世界一の人口を持っていますからね。都市圏としても最大級の規模です」

「我が祖国ドイツ帝国の帝都ゲルマニアですらここまで圧倒されはしませんでした」

「その分問題をいくつも抱えていますがね」

 

 過密状態による感染症発生のリスクの高さ、都市圏への人口集中。高人口故に起きる犯罪等。それらは東京と言う都市が抱える無視できない問題だった。

 

「中にはこういった過密状態を嫌い地方に向かう人もいます。私としても近年の過密状態は好きになれませんね」

「重要機関が全てそろっているというのも問題と思われます」

 

 東京は国の重要機関の殆どが置かれている。アメリカの様に各地に分散しているわけではない為東京が消えれば大日本帝国はたちまち機能不全に陥るだろう。ドイツ帝国もいくつかの国家機関を分散している。ラウラは軍人らしい視点から東京の問題を答えた。

 

「それもあるでしょうね。きっと日本が急速に巨大化した代償なのでしょう」

 

 ほんの150年前まで大日本帝国は鎖国状態にあった。独自の文化を育む代わりに世界から大きく遅れる形となった日本は西欧列強に対抗できるように急速に国力を強大化させた。立て続けに起こる隣国との戦争を勝ち抜き、第一次世界大戦ではほぼ無傷といっていい状態で講和を行い第二次世界大戦では勝ち組としてアジアの盟主に躍り出た。独立したアジア諸国の発展に手を貸す事で経済成長を遂げた大日本帝国の問題。それが今になり露呈し、重大な弱点となり果てた。

 

「とは言え私に出来る事はありません。このおいぼれは大人しく過ごす事が出来れば十分ですよ」

「そうですか。私はこの国の人間ではないですが是非とも問題を取り除き遠く親しい友人でありたいと思っています」

 

 ラウラの言葉に何を思ったのか。轡木十蔵は笑みを浮かべながら頷くのだった。

 

 




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