IS~ドイツの黒き皇帝~改訂版   作:鈴木颯手

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お待たせしました~
次回辺りから一夏とラウラが出会うかも?


第二十四話

 一日目の授業が終わり放課後になれば待っているのは解放感だ。特に一夏にはその思いが強い。何しろ先ほどまで地獄とも言える授業を受けていたのだから。参考書を片手に目の前のボードをガン見してひたすらノートに書きこんでいく作業は一夏の精神力を一日で使い果した。最悪マイナスにすらなっている可能性だってある。

 そんな地獄より解放された一夏は机に突っ伏して軽く涙を流している。その姿からは学生というよりも社畜と言うイメージを真っ先に思い浮かべるだろう。実際、彼の隣に立つ箒はそう言ったイメージを浮かべていた。

 

「そう言えば一夏、お前の部屋は何処なんだ?」

 

 箒はふと気になった事を聞いた。IS学園は全寮制である以上一夏にも部屋は用意されているだろう。しかし、女性ならともかく一夏は男だ。適当な女性と同室にするのは不味いというよりも確実に夜這いをかけられるだろう。そう言った事を防ぐには理解のある者か一人で使うしかない。

 そんな疑問を抱いた箒に一夏は首だけ箒の方を向いて答える。

 

「なんか寮の調整が出来ていないから一週間は自宅から通えってさ」

「そう、なのか?」

 

 箒は意外だと思った。この一夏を自宅から通わせる? 確実に拉致や襲撃を受けるだろう。多少強引でも寮にねじ込む事は出来なかったのか、と箒は呆れるがそんな彼女の疑問を解消するように千冬と山田教諭が教室に入ってきた。

 

「その件だが一夏、お前は寮生活を始めてもらう」

「え?」

「今日決まってな。お前には悪いが自宅に戻るは諦めろ」

 

 一夏はえぇ……と声を上げるがそんな彼に千冬は寮のカギを渡す。ふと、その鍵番号が見えた箒は体を震わせた。

 

「お、織斑先生。その番号って……」

「ああ、()()()()()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()。いや、お前にはご褒美か?」

「っ!!!!!!」

 

 千冬の言葉に箒は顔を真っ赤にする。一夏も箒と同室と言う事に驚くが反論させる前に理由を言う。

 

「最初は自宅通いと通達されたがそもそも一夏の安全を考えればそれは論外だ。警備を付けてもそれがどれだけ信用できるのか怪しいからな」

「……」

 

 千冬の言葉に一夏も顔を暗くする。5年前に起こった第2回モンド・グロッソでの誘拐事件。ギリギリ引っ越す前に起こった出来事なので箒も知っていたがどのような事になっていたのかは知らないが二人の様子から警備に関する信用がない事がうかがえた。実際、箒も警備が裏切り誘拐したと知れば怒りを露にして不信感を持つようになるだろう。

 

「だからこそ多少強引にだが寮に入れる事になった。しかし、強引に入れる事になったからな。寮の調整は間に合わなかった。が、幸いな事に篠ノ之にはルームメイトがいなかった」

「それで私と同室に、って事ですか?」

「篠ノ之に関しては私も一夏もよく知っている。夜這いをかけるような事は無いだろうからな」

「うっ」

 

 箒は言外に度胸がないと言っている様な千冬の言葉にダメージを受ける。実際、小学生の時から好意を寄せていたのに全く告白が出来なかったのだから。そう言う意味では夜這いの心配はなく一夏の事情を知っていて誰かのスパイになる可能性の低い箒と同室と言うのはまさに最適だった。

 

「とは言え篠ノ之が嫌だというのなら話は別だがな。直ぐに他の部屋を見繕うだけだからな」

「っ! いえ! 私は構いません! 一夏との同室を受け入れます!」

 

 せっかく巡って来たチャンスを不意にするものかと箒は声を荒げて言った。幼き日より一夏を思い続けた彼女にとってこの状況は千載一遇の好機と言えた。何しろ織斑一夏と言う男は超の突く朴念仁だ。多少のアプローチでは好意を持たれているという事さえ気づかれない。押し倒そうとすれば何かの間違いでこうなっていると考えてしまう。箒を始め彼に好意を持った女性たちはこの朴念仁の前に次々と敗れ、脱落していった。

 そんな中での同室。千冬の言う通り箒に一夏を押し倒すような度胸はないがそれでも意識をしてくれる程度にでも進展出来れば周囲を牽制出来るし自分の気持ちをきちんと伝える事も出来る。

 

「篠ノ之、この愚弟の世話を頼むぞ」

「任せてください千冬さん!」

「織斑先生だ」

 

 フンスと鼻息荒く張り切る箒に冷静にさせる意味も込めて千冬の出席簿チョップが頭上に落ちる。頭が割れん勢いの痛みで頭部を抑えつつ箒は気を落ち着かせた。

 

「すいません……」

「構わないさ。私としても弟の将来は気にしている。こうなってしまった以上一夏に普通の幸せは訪れないだろう。である以上今の状況で最大の幸福を掴んでほしいと願うのは姉として当然だ」

 

 先生としてではなく一人の姉として一夏の幸せを願う千冬は自然と笑みを浮かべる。どことなく儚くも凛々しい千冬のその笑みに箒は自然と見入ってしまう。しかし、そんな二人の雰囲気を壊すように一夏が声を上げた。

 

「あ、あの山田先生。荷物とかって……」

「それなら先ほど織斑先生が取りに行ってましたが……」

 

 一夏の悩みは荷物の事だ。一週間は自宅から通うと聞いていた一夏は必要最低限の荷物しか手元にない。寝具や寝間着、予備の服など持って来る必要があるが果たして自らの姉にそれが出来るのか? 一夏の心配は数秒後に現実となった。

 

「数枚の下着とスマホの充電器、その他雑貨を持ってきた。それ以上は時間が無くてな。週末まではそれで我慢するんだ」

「えぇ……」

 

 本当に必要最低限のみを持ってきたらしい姉に呆れしか出て来ない。水道やガスは一週間後に止めてもらうように調整しており食材も帰り道に買い込む予定だった為必要な手続きはなかったのが幸いか。掃除が苦手な千冬でもそこはきちんとこなしていた為一夏は諦めて寮生活を送る事にした。

 

「寮の位置は分かるな? 分からなかったとしても篠ノ之の後をついていけば問題ないだろう」

「道草をしてはいけませんよー! きちんと真っすぐ寮に向かってくださいねー!」

 

 果たしてIS学園内に道草を出来る場所があるのか? 山田教諭の何処かずれた言葉を危機ながら一夏と箒は寮への道のりを歩く。入学初日と言う事で部活がなかった箒は一夏の傍にいた訳だがその結果は上々の物と言えた。

 

「……い、一夏」

「ん? どうした箒?」

「寮での生活の事を決めたい」

 

 そんな彼女が覚悟を決めて話した内容は寮生活での取り決めの事だった。確かに重要な事ではあるが普通ならもう少し相部屋となった事への反応を示すべきだろう。箒にとっては相部屋と言う事実だけで頭がパンク寸前ではあったが。

 

「私は既に寮に入っている。だから窓側の寝床は私が使っている」

「そうか。そこは仕方ないな」

 

 入学式に合わせて新入生は寮に入る事になっている。中学での勉学を早めに終えて1月くらいから入寮する猛者もいれば前日に入って来た者もいるなど様々な中で箒は3月初めには寮に入っている。なので寮の中は彼女の私物が置かれて生活感が溢れていた。そんな状況で窓側が良いから変えてくれと言っても難しいだろう。位置に対したこだわりを持たない一夏は素直に受け入れた。

 

「それとシャワー室だが私が先に使わせてもらう。7時から8時は私が、一夏はその後からだ」

「んー、でも俺も早い方がいいんだけどなぁ」

「私に部活後そのままでいろと言うのか?」

「部活って剣道部だろ? 確か部室にシャワー室があっただろ?」

 

 IS学園の運動部にはそれぞれ簡易的なシャワー室が設置されている。通っている者が女性である以上汗をすぐに流せるようにと言う配慮からだが中には箒のように自室のシャワー室を使いたいという者がいた。そしてそんな者達にはある()()()()()()()

 

「……私は部屋のシャワーじゃないと落ち着かないのだ(い、一夏に周りの視線が嫌だからなんて言えない!)」

「? そうなのか? それなら仕方ないか」

 

 若干顔を赤らめて言い訳の如く呟く箒に一夏は不思議そうにしつつ納得する。

 高校生と言う若さに加えモデルとも取れるスラリとした体は男だけではなく女性すら魅了していた。そしてそんな箒の特徴とも言える巨乳を生で見れば女性であろうとも釘付けとなってしまう。箒は恥ずかしさで顔を赤くしつつ「もしかして一夏にシャワー後の姿を見られるのか!?」と今後の生活を考えて更に顔を赤くするのだった。

 




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