「……次の議題だ」
国際IS委員会主導による定例会議の開始から既に一時間以上が経過していた。これまで議題に上がったものはそこまで重要ではない、ただの経過報告のようなものばかりであったため多少の飽きが参加者には見え隠れしていた。そんな中で司会を務めるIS委員会の代表者は全員が注目する議題を出した。
「第二回モンド・グロッソに関してだ」
その言葉に全員が注目する。モンド・グロッソとはISを用いた大会であり格闘、射撃、近接、飛行と言った部門ごとに競うもので各部門の優勝者はヴァルキリーの称号が与えられる。そして、総合優勝者にはブリュンヒルデの称号が与えられる。
第一回はIS発祥の地である大日本帝国の帝都東京で開催され、第二回は超大国であるドイツ帝国の帝都ゲルマニアでの開催が決定しておりその為の準備を行っていた。既に8割ほどの準備を終えておりあとは開催目前まで迫らないと実行できないものばかりの為余裕があった。
「詳しく言えばモンド・グロッソの競技に関してだ。第一回の際には基本的に第1世代でお披露目という形で第2世代が投入された。今は第3世代の開発計画が練られている段階だが、開催前に完成する可能性もある」
「それに関しては私から」
IS委員会の代表者の言葉を遮るように声をあげたのはフリードリヒであった。IS委員会の代表者を時計でいう12時の場所にすると8時の位置に座っているフリードリヒは紙束を手に立ち会がある。
「この場で申し上げますが第二回モンド・グロッソは『第2世代までのIS』に限定させていただきます。これは先ほど言われたように第3世代は未だ空想上の物に過ぎず、もし来年行われる大会までに完成出来たとしてもうまく稼働できない可能性もあります。その為、第2世代までに限定させてもらいます」
「ふむ、それなら問題は無いな」
フリードリヒの言葉に賛成するようにドナウ連邦の代表者である宰相が発する。60過ぎの老練な男性である彼は鋭い眼光でフリードリヒを射抜く。
「私からもよろしいかな?参加国はどの程度を予定しているのだ?」
「参加条件は以下の通りで予定しています
1つ、ISを運用している国
2つ、ISのコアを保有する国
ここまでは前回同様ですがこれに『一定以上の主権を持つ国』を追加させていただきます。これは我がドイツ帝国、ドナウ連邦の様に傀儡国、衛星国を持つ国があります。それらの国々を参加させた場合宗主国を勝たせようと八百長をする可能性があり、それを予防する形です」
「それはつまり、前回出場できたシベリア共和国やフィリピンが出場できないという事か?」
フリードリヒの言葉に食い掛って来たのは大日本帝国の代表者であった。大東亜共栄圏を形成する大日本帝国だが、その加盟国の大半は衛星国であり主権を持っているのは大日本帝国、タイ王国、満州帝国のみであった。第一回モンド・グロッソでは大日本帝国の衛星国であるフィリピンとベトナムが参加していた。
「そう言う事になるな」
「そ、それは!我が国への侮辱だぞ!」
「その通りだ。ベトナムとしてはドイツ帝国の案に反対する」
ここで声を上げたのはフィリピンとベトナムであった。両国は名目上でも独立国であるためIS条約に加盟しており会議への参加が許されていた。そんな両国の前で衛星国と言いながら出場できないと言えば反対に走るのは目に見えていた。
そして、もう一つ反対する国家が現れた。
「ローマ連邦だ。我が国も反対する」
ドナウ連邦唯一の衛星国であるローマ連邦も同じように反対の立場を取った。イタリア半島はイタリア社会主義共和国、サルデーニャ王国、ローマ連邦、ドナウ連邦によって分割されておりかつての統一されたイタリアの面影は残っていなかった。それでも、ローマ連邦はかなりの国力を持っていた。
さらに、ローマ連邦の国家代表であるアリーシャは第一回モンド・グロッソに置いて準優勝の成績を残していた。三回戦でドイツ帝国の国家代表と数十分にも渡る激戦を潜り抜けて勝ち上がった彼女が出場できなる事態はドイツ帝国への不信感を高まらせる可能性があった。
「貴国がその様な事を考えていないとはわかるがこれを通せば『第一回モンド・グロッソの際に自国が負けた国を出場停止にして有利になるようにした』と思われても仕方ないぞ」
「私としてもそれは避けたいですな。ですが、第一回モンド・グロッソでは八百長の疑いがありましたので」
それは一回戦目で大日本帝国とベトナムが戦った時の事だった。大日本帝国の国家代表、織斑千冬は優勝しブリュンヒルデの称号を受けるとは言えその戦いは一方的過ぎた。まるで
それにより八百長疑惑が出たのである。ベトナムの国家代表がこの試合の後に国家代表を降りて姿をくらました事もその説に拍車をかけた。更に何処かからかその国家代表が大金を受け取る所を撮影した写真が流出した事もその説を後押しする結果となった。
「
「本人がこの世にいない以上いくら取り繕っても疑惑は消えませんよ?」
「……」
フリードリヒの言葉にベトナムの代表者は黙る。第一回モンド・グロッソから約半年後、彼女は死亡した。夜道を歩いている最中に居眠り運転をしたトラックに跳ねられ即死したのである。完全な事故というのがベトナムの発表だが口封じにベトナムが殺したというのが囁かれていた。
「その様な噂がある以上、主権がない国々の出場は辞めてもらいたいのですよ」
「だ、だが!それならイギリス連邦はどうする!?彼らも出場停止にするのか!?」
「……彼らは同じ国王を敬っているにすぎず主権はきちんと持っていますよ?あまり無知をさらけ出すのは避けるべきではありませんか?」
「ぐっ……!」
怒声を上げて抗議するフィリピンの代表者だったがフリードリヒに言い負かされて黙り込む。そしてそれ以上の反対意見は出なかったがドナウ連邦の代表者である宰相が手を上げた。
「陛下の心配は御尤もです。我々とてそう言われればローマ連邦には下がってもらうしかありません。ですが、アリーシャが出場できないのはあまりにも惜しい。そこでどうかな?彼女に関しては特例という事で
「……確かに、彼女が出場できないのは様々な所から反発がありそうですね。よろしいですよ」
ベトナムとフィリピン以外で反対していた国の問題は解決され流れはドイツ帝国の方に向かっていた。両国の宗主国である大日本帝国の代表者は我関せずと言った具合で黙ったままでありほぼ見捨てたとも取れる態度であった。
会場が完全に静まり返ったのを確認したフリードリヒは笑みを浮かべて言う。
「では、モンド・グロッソに参加できる条件に『一定以上の主権を持つ国』を追加させていただきます。よろしいですね?」
フリードリヒの提案に先ほどとは違い、反対する者は現れなかった。