IS~ドイツの黒き皇帝~改訂版   作:鈴木颯手

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いよいよあの人が登場します


第八話

「モンド・グロッソですか?」

「そうだ」

 

 フリードリヒがクロエとラウラを救出して早1年。二人はここの生活にも慣れ侍女としての経験や知識を蓄えていった。そんな二人は現在役割として与えられた倉庫の掃除を行っていたがそこにフリードリヒがやってきた。スカート丈の長いがフリルがふんだんに使われたメイド服に身を包んだ二人は最初こそ羞恥心を持っていたが1年も経つと切る事にも慣れてフリードリヒの前でも普通に接する事が出来ていた。特にクロエは最初はフリードリヒを見かけるたびに顔を真っ赤にして逃げ回った為侍女を管理する侍女長に幾度も説教を喰らっていた。

 

「ISは分かるな?」

「はい。なんでも凄い兵器だと聞いてます」

「そうだな。少なくとも起動中は()()()()()()止める事は出来ない。とは言えそれを軍事に使う機会は当分訪れないだろう」

 

 1世紀前ならともかく今は兵器は進化しすぎた。大国間同士の戦争が起これば地球は一気に終末と化すだろう。そう言う意味では都市を更地に帰るような火力を持たないISはこれまでとは違い戦争を()()()()()に変えてしまっていたが今のところはISを用いた戦争は行ってはいなかった。

 

「今度そのISを用いた大会がここ(ゲルマニア)で行われる。俺も皇帝として出席予定だがお前達もどうかと思ってな」

「そう言う事ならお供します!」

「私も!」

 

 フリードリヒの提案に真っ先に喰いついたのはクロエだった。未だにフリードリヒに好意を伝えられていないがこのままで終わるつもりはないようで告白の準備を行っていた。と言っても面と向かって告白する勇気が出ないのだが。

 そしてクロエが行くと言えばラウラも行くと言う。無邪気な笑顔で楽しそうにしているラウラに自然とフリードリヒの口はほころぶ。それを見てクロエがラウラにやきもちをやくまでが三人の何時もの流れと言えた。

 

「モンド・グロッソの準備は終わり選手はドイツに入国している。後は当日を迎えるのを待つだけだ」

「……それっていつ始まるんですか?」

「一週間後だ」

「……」

 

 クロエは心の中でもう少し早く言って欲しかったなと思いつつそれは難しかったかと再確認する。1年前はクロエが恥ずかしがっていた事とアフリカからの報告書でフリードリヒは忙殺されており二人と話す機会は全くなかった。それ以降もモンド・グロッソの準備に追われていてまともに会話できたのは久しぶりだった。

 

「分かりました。では一週間後を楽しみにしています!」

「私も楽しみにしてます!」

「おう、二人も楽しむといい。IS同士の戦いは圧巻だぞ」

 

 そう言ってフリードリヒは仕事に戻った。皇帝としてやるべきことは大量に残っている。その中で時間を作り二人に会いに来たがそろそろ時間だった。二人もそんな皇帝を理解して自らの仕事に戻った。何処かウキウキした様子でだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここが、ゲルマニアか」

 

 第2回モンド・グロッソを後2日にまで迫っていた時、ドイツ帝国帝都ゲルマニアの郊外に位置する国際空港で一人の女性がそう呟いた。黒い髪を腰まで垂らし凛とした表情で周辺を見回していた。そんな彼女を見た周囲の人々が目を見開く。

 

「お、おい。あれって織斑千冬じゃないか?」

「は? 何言って……、マジじゃん!?」

「嘘だろ!? さ、サイン貰わないと!」

 

 そう言う声が聞こえ女性、織斑千冬の周りはあっという間に人々で囲まれた。一方の千冬は慣れているのかため息を吐くと移動を始めた。彼女の周りではサインや握手を求める声が響くがそれに一切耳を貸さずに空港前のタクシーに乗り込みモンド・グロッソに参加する選手村へと向かった。

 

「……」

「お客さん、()()織斑千冬でしょ? 選手は専用の飛行機に乗ってその後に選手村に行くんじゃないの?」

「……用事があってな。私は個別で向かう事にした」

 

 野次馬が消えた事で落ち着いたのかタクシー運転手の質問に答える千冬。首を回したり腕を回したりしながらそのまま続ける。

 

「弟がいてな。一緒に来るはずだったが熱で寝込んでしまってな。結局こうして一人で来たわけだ」

「へぇ、弟さんね。熱でてるのに大丈夫なのかい?」

「幸い熱は下がりつつあるが飛行機までには間に合わなかっただけだ。明日か明後日には到着する予定だ」

「それなら良かった。お姉さんの活躍は生で見た方が良いだろうしね」

「私としてはISに関わる道に進んでほしくはないのだがな」

 

 そんな他愛のない話をしているとモンド・グロッソ会場付近に建設された巨大な選手村区画に到着した。

 

「お客さん、つきましたよ。料金はこれね」

「ん」

「はいはい、丁度受け取ったよ。大会、頑張ってね。私も会場で見る予定だから応援しているよ」

 

 タクシー運転手の言葉に千冬はフッ、と笑みを浮かべると「勿論だ。素晴らしい試合を見せてやろう」と言ってタクシーを降りて選手村の入り口に向かって行く。千冬がタクシーで来たことに驚いたらしい守衛が慌てて彼女の近くに近寄って行った。その様子を見ながらタクシー運転手はレシーバーを手に取ると言った。

 

「ターゲットは遅れて来るそうだ。……ああ、計画に支障はないだろう。気を付けろよ」

 

 そう言うタクシー運転手の目は怪しく光っていた。

 




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