生存戦争 ~転生者バトルロイヤル~   作:セリカ・シルフィル

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第十二話 『修練』

 結論から話を始めると時間が圧倒的に足りなかったという一文で締めくくられる。

 初戦の相手である軍服を身に纏う三十代前半の黒髪の男、テンスとの対決では奇しくも敗北を味わった。

 その経験を次の対戦で活かす為にも、残りの一ヶ月間で鍛え直す必要があったわけですが……。

 この冴えない男と何を考えているか分からない神殺しは、よりにもよって一週間を食い潰してしまったのだ。

 セヴンスとセリカの相性は悪いのか。

 作中にも登場したアビルースという狂った男と同じ症状がセヴンスにも見受けられた。

 違う点と言えば、アビルースはセリカの寵愛を受けられず、セヴンスには受けられたところである。

 だからこそ、時間を食い潰してしまったのかもしれないが。

 セリカの美貌には人を惑わし、道を狂わせるほどの能力が秘めている。

 それは彼の意思とは関わらず、受け取る側の問題だが、その症状に悩まされる側の気持ちも考えて欲しいものだ。

 故に、ただでさえ少ない一ヶ月間の一週間を無駄に過ごした。

 

 対処法も丁度一週間後に発見されて最悪の事態だけは避けられたが、残り三週間でどれだけ頑張っていけるのか。

 少しでも強くなる為には非情になることも必要かも知れない。

 

 前回の生存戦争の反省点は、神殺しの能力を過信した点と自分の立ち位置を間違えてしまった点である。

 

 現状ではセリカが扱うことのできる魔術は電撃魔術と吸収魔術に他ならない。

 以前の戦闘では電撃魔術で敵を圧倒していたように見えたかもしれないが、それは事前に立てた作戦だけを見て、戦況を正しく見ていなかったからだろう。

 <落雷>を続けていれば、テンスが接近戦に持ち込めることは予想出来ていたにも関わらず、その対処法を<雷撃>一つに絞込み、敵が付近にいるだけで<落雷>の威力が下がってしまうような状況に陥ってしまったのは完全にセヴンスの落ち度である。

 

 電撃魔術をもう少しだけ使いこなせるように訓練を施し、仲間が周囲にいても安心して魔術を組み込めるようにしていれば、相手を牽制出来たかもしれない。

 そうなれば、接近してきたテンスの油断も広がり、<雷撃>を防いだ左腕だけではなく、直撃も夢ではなかったかもしれない。

 直線上に放たれる<雷撃>も攻撃力を下げることで射程範囲を伸ばすという工夫も取り入れれば、槍を投げる前に動作を中断させて、勝利することもできたかもしれない。

 

 吸収魔術とて例外ではないのだ。

 セリカの得意とする<性魔術>も、肌に触れるだけで発動だけなら可能だ。

 事前に<性魔術>を発動した状態で近接戦闘を開始していれば、徐々に相手の体力を奪い取り、消耗戦に持ち込むことも出来たかもしれない。

 

 これらの戦術は決して時間不足が原因だったわけではない。

 それどころかセヴンスが一声注意すれば戦術として組み込むことも可能だった。

 それが出来なかったのは一言で表せば『油断』に他ならない。

 セリカに対する絶対的な信頼こそが、敗北に繋がったのだ。

 今まで訓練で見てきた神殺しの圧倒的な能力に魅了でもされたのだろう。

 

 ――『これだけの能力が揃っていれば勝てる。我が軍は圧倒的ではないか!』

 

 この自己中心的な油断が勝敗に繋がり、敗北の結末を迎えてしまったのだろう。

 

 だが、それは過去の出来事に過ぎない。

 以前の自分は、セリカに全てを任せすぎていた。

 敗北してしまったのは、自分が死んでしまったからであり、その主な理由はセリカが不利な状況に陥れば即座に白旗を上げようという甘さが残っていたからだ。

 セリカの死亡は勝利条件が満たされなくなるだけであり、セヴンスの死亡は敗北条件を意味している。

 この戦争で最も必要なものは勝利であり、セリカはその手段に過ぎない。

 取るべき順序を間違えてしまったからこそ、彼は決定的な敗北の瞬間を相手に与えてしまったに過ぎない。

 最初からセリカだけを敵対させていれば、或いは足手まいになったセヴンスが敵からは見えない位置まで移動していればあの結果にはならなかったのかもしれない。

 既に決まってしまった結果を嘆いていても変わるわけでもないということは十分に理解しているが、それでも、嘆かずにはいられない。

 だって人間だもの。

 

 ――『これからは、一に自分、二に神殺し、三に相手』

 

 よし! これで大丈夫……多分。

 絶対というものはないので、勝利するだけならこれで問題はない。

 要はセリカの生死を考慮していないだけである。

 

 随分と暗い話で満ちてしまったが、朗報もある。

 セヴンスの死亡後、<悠久の幻影(アイ・スペース)>は解除された。

 その時にテンスがセリカへ投げつけていた刀が消えずに残っていたのだ。

 思わぬ戦利品であったが、名称までは調べてみてもわからなかった。

 切れ味は鋭く、名刀であるのは間違いない。

 

 手に入れた刀で早速セリカには神殺しの代名詞にもなっている飛燕剣を試してもらおうと思ったが、記憶のないセリカがそれを使いこなせるわけもなく、刀を使いこなすだけでも一週間は消費した。

 刀という武器は滅多に使わないらしく、というか記憶がない時点で使ったことないだろう。

 薙ぎ払うだけで空間は乱れ、風圧で周囲のものを吹き飛ばしていた。

 彼が刀という消耗品を使いこなし、能力を制御するのに一週間である。

 それだけの為に残り少ない三週間の一週間を消費したのだ。

 無論、その間は刀一筋で魔術の修練など以ての外である。

 ここまで長期に渡って時間がかかってしまったのは、二つほど理由があった。

 一つは、記憶にはないが剣と刀では使い方が違うのだとか。

 剣は叩き切るタイプであり、刀は速度で斬るタイプであるらしい。

 二つは、セリカが納得する使い方が中々定まらず、気づけば飛燕剣の基本型を使えるまでになっていたのだ。

 変化の兆しが見えていたので、セヴンスは一週間も耐えていたが、それがなければ、刀を諦めていたかもしれない。

 

 生存戦争まで残り二週間。

 この二週間を活用して電撃魔術の修練に取り組んでもらった。

 <雷撃>と<落雷>の上位版である<爆雷閃>と<轟雷>を使えるようになるまで口先だけで教え続けたのだ。

 <爆雷閃>と<轟雷>は<雷撃>と<落雷>の威力も倍で、射程範囲も広がり、消費する魔力も膨大であった。

 こうして使えるようになった<爆雷閃>と<轟雷>だが、無理して使わなければ成功しない。

 二週間では足りなかったのだ。

 制御もままならず、失敗すれば何が起こるかも予想がつかない。

 実践で使えるような代物でもないので、実際は使えないも同然である。

 

 飛燕剣については、基本型を粗方慣れてきたところで、<身妖舞>の練習に入り、使いこなせるほどに上達した。

 

 <身妖舞>は、剣の舞を連想させる飛燕剣の基本連続剣。

 接近戦で、相手に隙ができた瞬間にお見舞いできるかも知れないが、それ以外では逆に大きな隙を作ってしまう要因にもなりかねない。

 一撃必殺のように相手の意表を突くことでペースを見出せることも可能かも知れないが、所詮は基本型に過ぎないので、以前のように過信してはならない。

 一度でも見切られれば二度目は通用しない手と思っていい。

 

 こうして、準備の足りないまま運命の時がやってくる筈だった……。

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