生存戦争 ~転生者バトルロイヤル~   作:セリカ・シルフィル

16 / 28
第十六話 『希望』

 古神の人間を老若男女関係なく無差別に魅了する能力によって意識を暴走させられ、一時は日常生活にまで支障を及ぼしていたが、時期が過ぎ去ると落ち着きを取り戻していた。

 人間が成長と退化を繰り返して変化し続ける限り、セリカも<性魔術>を行使する度に精度も上昇し、より効率よく精気を奪えるようになっていった。精気を奪われるセヴンス本人としてはたまったものではない。

 

 最も完成度の高い<性魔術>を行使された時等は、精気を奪われすぎて瀕死の状態に追い込まれたことすらある。

 その時は立ち上がることすら困難で、訓練どころではなくなってしまった。

 解決法はなく、<性魔術>の手を緩めるだけでセヴンスはセリカが好きで好きで仕方がなくなる。

 中には訓練の終わりに<性魔術>で精気を大量に吸い取り殺されることで上位世界へ戻るという俗に言う『死に戻り』まで試したこともある。

 結果は成功したが、上位世界で目覚めた当初は身体が重く怠かったので影響力が関係しているのだろう。

 それに死ぬほどの快楽を経験するセヴンスが果たして普通の快楽で満足出来なくなる日がやってきてしまうかも知れない。そもそも、どうあっても苦しむのはやっぱりセヴンスだけである。

 

 悪いことばかりが続いているようにも聞こえるが、<性魔術>の精度が上がったことで得られるメリットも存在する。

 一つ目は、<性魔術>関連の精度が上がれば手に入る精気も上がり、セヴンスが主に苦しむ羽目になるが、反面、奪い取ることのできる精気を調整できるまでに精度が上達すれば苦しい思いも少なくなり、溜まった性欲や抑えきれない欲望を精気として効率よく吸収することもできるだろう。

 二つ目は、精気をより多く奪うことによって得られる能力は神殺しとしての能力に強化を施す事ができる。神殺しの強化方法は主に敵を殺して魔力補給を行ったり、<性魔術>で精気を吸収するしかない。

 神殺しとしての能力とは関係なく、セリカ自身としての能力でも戦闘経験を積むことでそれを効率よく活用したりできるはずだ。ファンタジー主人公の特権だもの。

 

 最低限の<性魔術>で最大限の効果を得られることこそが最も素晴らしい結果足り得るが、それでも苦しむ羽目になるのはセヴンス一人だけである。

 

 勝利の為ならば手段は選ばない(キリッ)なんて誓ってはいるが、どれだけ目をそらしたつもりでも、痛い思いも、苦しい思いも、消えたわけではなく言い逃れの事実であることはどうあっても変わらない。

 

 苦しみの先にこそ、輝かしい勝利の栄光が約束されていると昔の人は言っていたような言わなかったような気がするが、その勝利が苦しみよりも価値の低いものならば無駄骨同然である。

 

 しかも判断できる材料が少なく特定もできない。

 転生すら義務と言っていたので、もしかするとブラック企業なのではないだろうか。

 後悔だけなら幾らでも考えつくが、現状では不安に押しつぶされるだけなら苦労はしない。

 そうならないように精神科に通い続け、それでも天界でこれが最善の策だと無理矢理自分を納得させることで耐え忍ぶしかない。

 だからといって耐え続けるだけで山積みになっている問題が自然に解決することがあるわけでもない。

 

 問題点其の壱、セヴンスは至って正常な恋愛的感性を保持している。神殺しが元人間だったとしても、人間と化物が本気で好きなるようなものは作り物の世界だけだ。そんなものは人間がエーリアンに恋するのと同じである。

 問題点其ノ弐、セヴンスは神殺しの持つ古神の身体による魅了でおかしくなっているのであって、同性愛者ではない。そもそも、同性を本気で好きになることは、例え女性体に性転換できるセリカであろうとあり得ない。

 問題点其の参、情報化社会の荒波はセヴンスにとって恐怖の対象でしかなく、元気に満ちている銀髪の美少女が無表情で冷たい眼差しをセヴンスに向けるだけで彼の心は大きく傷つき立ち直るまでに時間がかかってしまう。

 

 他にも問題点は山ほど残っているが、表立ってセヴンスを苦しめているのは主にこの三つだけだ。

 他の問題点はどうにかできるわけでもないが、どうにもならないわけでもない。

 セリカに眠る神殺しとしての真価を発揮するための代償だと割り切って恥を捨てれば楽になれるのだが、それをすると性欲や欲望を抑える必要がなくなるという結論に落ち着きかねない。

 人間としての感性だけは忘れない者としてセリカと結ばれることだけはあってはならない。男が好きなわけでもなく、夢で出会っている男に本気の恋した等と口が裂けても言えるわけもなく、誰かに聞かれても引きこもり生活で頭がおかしくなった人だと思われるのがオチである。

 

 今のセヴンスが取れる行動は人間としての感性を忘れず、自尊心を傷つけ、恥を捨てて勝利を得るような方法である。

 限りなく苦しみに侵食されているが、押しつぶされないように用意されている『希望』に縋り付くしか方法もない。

 逆に言えば、道は用意されているのでそれに従って人間らしく進んでいくことこそがセヴンスらしく、人間らしいのかもしれない。

 神殺しと出会ってから人間らしさが薄れていたかも知れないが、それもまた勝利の代償だと割り切っておくことにしよう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告