生存戦争 ~転生者バトルロイヤル~   作:セリカ・シルフィル

18 / 28
第十八話 『第二位』

 後に第二位(セカンド)と呼ばれるようになる黒髪の少女の話。

 

 その少女は『神想教会』の信徒だった。

 別に神様を盲信しているわけでも、存在しないものでも縋らなければならないわけでもない。

 神を信じる者は、それに縋り、それを憎むことで己の欲求を満たしているに過ぎないのだと少女は考えている。

 そもそも神は人の上を行く存在だとされているが、どの文献にも神々は倒されたり、倒したりしている物が多数存在する。

 中には神々で戦を起こしたり、内情で争っているものまである。

 神は人間の上を行く存在だと人間が認めているのに実際は強弱を付けられたり、人間のような感情に基づく行動を強いられている。

 これは人間が考えた神であり、上限の決められた虚構に過ぎない。

 

 それに対して『神想教会』は分かりやすかった。

 神は己の中に存在する。

 己の欲望こそが、神であり、己の掌に収まらない者が神である。

 それは、神を愚弄しているのではなく、人間の思考ではわからないことを意味していた。

 故に神は無敵、無敗、無情である。

 

 『神想教会』には三つの説がある。

 

 神想項目第一条『怠惰』説。

 人はなぜ、怠惰に溺れるのか。

 それは、人間が楽な道へ、二択を決めつけて、より安全な道を選ぼうとするから。

 神もまた、人間の中にいる。

 人間の抱える欲望こそが神々の顕現である。

 

 神想項目第二条『遊戯』説。

 人はつまらない道よりも、面白い道を辿る。それは性欲だろうと、未知だろうと、興味があることは意識していることである。上下。人間は安全な未知、危険で自分には徳のない未知。それらを自らの手で安全だと信じれば間違いなく実行するだろう。傍から見れば危ないと理解していながらも、気づいていない者は手を出してしまう。

 

 神想項目第三条『異物』説。

 人は自分とは、周りとは違う者を嘲笑い、または無情に貶すであろう。

 自分よりも弱い者であれば、尚更である。

 それが自然だから。深い意味もなく、自分とは違うから。

 遠ざける。

 それが誰であろうとも。相手が傷ついているとわかっても精神に響かない。

 

 人が『怠惰』を謳歌していると同じような生活をしている人間が努力をしていれば、努力している人間を見下すことがあるかもしれない。

 逆に努力もしていないのに『怠惰』に浸る人間を見て軽蔑する者が現れるもしれない。

 

 少女にとって『怠惰』に善悪はない。

 努力しているから『怠惰』ではないという法則に疑問も抱いている。

 努力することで『怠惰』を、利益を得たいということは『怠惰』なのではないか?

 逆に利益も、見返りもなく、人助けをする人間がどれだけ存在するのだろう。

 そんな奴は自暴自棄になっているとしか思えない。

 

 少女は『神想教会』を知ってから全てが予定調和なのだと思い始めた。

 人は誰かが選択することで未来も過去の意味も大きく変わるというが間違いだと思い始めた。

 人が悩むのも、答えを出すのも、最後にはそう決まっているのではないか?

 機械に設定された行動をなぞるように、全てが生まれた頃より決まっていたのではないか?

 

例え未来の記憶を持ち越してこようとも、それは未来が変わったのではなく、自分の中にだけある未来の記憶が変わったのであって、変えたのは現在なのではないか?

 

 無数の疑問と無数の答えの中で少女の願望は繋がっていた。

 少女が憎しむ『時間』の呪い。

 

 現在を守りたいと願いを少女は求めた。

 ただ、一つだけ変わらないものが欲しい。

 人は何もしなくても必ず動き続けてしまう。

 内蔵が動いて生きながらえさせようとしているから。

 少女が望むのは生死ではなく、変わらないものである。

 生きてても、死んでいても変わらないものなんて存在しない。

 例え心臓の鼓動が止まろうとも、異臭を放ち、腐り続けて、灰になる。

 

 機械が電気を入れ続けても中身の部品から壊れていくように、人間も食事を繰り返しても擦り切れて壊れていくのかもしれない。

 古い部品から入れ替えていけば問題ないのかもしれないが、脳髄という重要な部品の中身にある記憶は機械と違って『まだ』コピーや移動ができない。

 

 嫌われし怠惰なる時間。

 少女にとっての元凶であり、嫌がりながらも背中を押すように前だけを進まされる。

 どんな状況でも等しく平等に不公平を与える恩恵。

 

 罪もない家族の家に強盗が押し寄せてきても、強盗は罪が無いほど幸せそうな家族を敢えて標的にしたと供述するだろう。

 頑張っても敵は作られ、頑張らなくても見下す敵が現れる。

 

 終わりなき絶望に終止符を打つのは果たして少女なのだろうか。

 それとも、別の誰かが少女と同じ思想にたどり着き、その後を引き継ぐのだろうか。

 

『やっと見つけた』

 

 夢の終わりで少女は白い悪魔と出会った。

 その悪魔は当然のように取引を持ちかけてくるが、少女が応じる必要はない。

 そもそも悪魔と名乗っているだけの偽善者を少女は嫌う。

 

『僕と契約して魔法少女になってよ』

 

 自滅の道であると理解していても、悪魔の手を少女は噛みちぎる。

 それは契約の証。

 人は等しく不幸であるべきである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告