生存戦争 ~転生者バトルロイヤル~   作:セリカ・シルフィル

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第二話 『転生特典』

 セヴンスの現状はメルティアの言葉を頼りにしていながらも信じてない微塵もいなかった。

 だが、メルティアが最後の質問に語った『天界から追放する』という言葉は、メルティアがセヴンスを軽々と持ち上げられるだけの力があることから虚言だと切り捨てることもできない。セブンスは今、最も生存確率の高い選択肢を選ばなくてはならなかった。

 セヴンスから見てメルティアは、嘘をついているようには見えないが、言葉は信じられるか? と聞かれるなら到底信じられるものではない。

 

「ようこそ、転生者候補生セヴンス。やっと同等の立場となったな。それじゃあ早速、生存戦争に必要な転生特典を選ぶがいい」

「……は? ……転生、特典?」

「まさかここまで知らないのか? メアの期待をこうも裏切ってくるとは策士か?」

「いや、いくら哀れんでるところ悪いけど、相変わらず説明されてない部分に期待の眼差しを向けられても困るぞ」

「貴様達、人間の文化にも最低限根付いているではないか」

 

 『転生』という言葉はよくネットでも見かけるが、これがそうだとは考えても見なかった。

 特典というからには相当なものを要求しても答えてくれるだろうが、如何せん、現状では見極めるだけの材料が足りない。

 

「なあ、また質問してもいいか?」

「別にメアは構わないぞ。セヴンスが生存戦争に参加の意志を表した以上は此方も最低限のサポートは義務付けられているからな」

「最低限、ねぇ」

 

 それがどこまで有効なのかを見極めるだけでも視野の幅は天と地ほどの差が生まれる。

 ならば最初に聞くべき質問は『転生』についてだろうか?

 

「なあ、生存戦争の勝者は絶対に転生しないといけないのか?」

「決まってるだろう。それがなければ何のための生存戦争だ、ということになる。先に言っておくが、転生先は最重要機密項目だからいくら抜け穴を探そうと質問してもそれだけは答えないからな」

「……なるほどな。わかったよ」

 

 つまり、勝者は強制的に転生が義務として存在する。そして敗者がどうなるのかは誰にも分からない。

 メルティアに聞けば答えてくれそうだが、返事によっては聞いたことがきっかけで恐怖の対象になりかねない。

 ならば前向きに、そして自分から質問しても損の少ない道は……。

 

「次の質問だ。転生特典は最低でも何個まで手に入れることが可能なんだ」

「最低でも一個は絶対だ」

「それじゃあ質問を変える。どうすれば複数の特典を得られるんだ?」

 

 メルティアは「最低でも一個は絶対だ」と答えた。

 大抵なら一個が限界数だと思うかもしれない。

 しかしメルティアは「一個だけ」ではなく、「一個は」と答えた。

 憶測に過ぎないかも知れないが、可能性がある内は質問していくことこそが視野の幅を見極めるのに必要な作業なのかもしれない。

 

「敢えて特典に制限を与えることで特典の容量を変化させることは可能だ。例えば、同じ作品内でのみ特典を複数選択する。他にも弱い特典を複数所持することも可能だ。逆に強過ぎて生存戦争に支障を与えるものならば特別に制限を掛けられることもあるから注意しろ」

 

 この情報は上記でセヴンスが「最大でも何個まで手に入れることが可能なんだ」と聞いた場合は「最大でも一個」と返事が返ってきて、この事実に気づけなかっただろう。

 質問をする、しないの違いだけでここまでの情報量を誇っている。

 しかしこの程度ならばセブンスの他にも数名の転生者候補生達は別窓口から入手している可能性は高い。

 質問を怠った者は正しい情報が配られておらず、情報戦においては劣勢を強いられることだろう。

 

 強過ぎる能力は制限される。

 敢えて弱い能力は続けて複数所持出来る。

 弱点を加えることで容量を増やせる。

 

 不用意に特典を選ぶと、単純に強過ぎる特典を選んだ後に制限を掛けられて自分の望んだ能力と違うと思うかもしれない。

 幾ら「聞いていない」と言っても「聞かれていない」と言われれば、それだけで反論を重ねても良い結果は生まれないだろう。

 

「続けて質問だ。転生特典に課せられる制限の詳細を教えてくれ」

「転生特典における強制的な制限の例えは見ただけで相手を殺せるほどの能力を特典として選んでも当然のように制限は掛けられるわ。制限が課せられた場合は相手を見ても弱体化は可能だけど、やっぱり殺害は不可能という判定に収まってしまうのよ。他にも能力をご所望しても剣術のような経験則から積み重ねる技術の体得は天界の技術でも不可能よ」

 

 この条件が正しければ格闘系は全滅したに等しいだろう。

 幅広い選択肢を選んでいけばその限りでもないのかもしれないが、残念なことにセヴンスはそこまで物事の視野が広いわけでもなく、特典選択においてはどこまでが強過ぎで、どこまでが弱いのかの判断が難しい。

 加えて現代人に過ぎないセヴンスでは技術面においてもどれだけ努力を重ねたところで剣術等は剣道までが限界だろう

 こと殺し合いに発展しかねない生存戦争においてはむしろ人を殺せない技術などは返って足でまといになりかねない。

 

「技術面の問題を克服するための例外を幾つか教えてくれ」

「そんな深く考えなくても抜け穴なんて山のようにあるわよ? 例えば、転生特典を能力ではなく、能力を使える本人を選ぶとか」

「なるほどな。でも、選んだ特典が死んだ場合はどんな処理が下されるんだ?」

「転生者候補生の方々は生存戦争の終焉まで『死ぬ』ことは許されていないけどぉ。所有物に関する破損は管轄外よ」

 

 つまり、死んでしまえば丸腰も同然ということになるのだろう。

 いや、死ぬという危険性を敢えて制限として受け入れた上で強いキャラクターを転生特典として選んでみるのも選択肢の一つに加えてもいいのかもしれない。

 そもそも武器を選んでも壊れたら意味はない。能力も使えなければ同じである。

 

「俺の転生特典は決まったぜ」

「へぇ、色々質問攻めしてきた割にはあっさり決まったじゃない」

「生憎とそこまで頭は回らないんでね。俺は俺である程度は初めから決まっていたんだよ」

「ならば聞いてやるわ! セヴンスの転生特典はなに?」

 

 セヴンスは考え抜いた頭を冷やすように深呼吸すると身体を落ち着かせた。

 そして決意を顕にしたようなハッキリとした口調で――。

 

「俺の転生特典は『戦女神』シリーズの登場人物、セリカ=シルフィルだ!」

 

 メルティアの息を呑む音がセヴンスまで伝わってくる。

 それは強過ぎるから、驚いているから、そんな感じではない。

 むしろ、制限の多いキャラクターを選択したことについて驚いていると言っていい。

 

「呆れた。貴様はもっと利口な男だと思っていたのだけどね」

「そりゃあ過剰評価って奴だろう。少なくとも俺ってのはこの程度の存在だ」

「本当に理解しているわけ? わざわざ、忠告まで発してあげたっていうのに。その特典は死亡した時点で使い物にならなくなる。思い通りに動かせなくて自分の身も守れないかも知れない」

「人間っていうのはデメリットをメリットに変える猿なんだぜ? 使い物にならなくなる? この世に消耗品じゃない物なんてありゃしねぇだろう。思い通りに動かせない? 自分の身も守れない? 少なくとも俺の考えてることよりも有能だ。それに最低限の護衛として使えれば問題はなくなる。逆に自分の頼りにならない感覚を頼るよりはまだ信頼できるね」

 

 デメリットをメリットに変える。

 確かにその発想は素晴らしいだろう。

 しかし、それはデメリットが消えたわけではないのだ。

 弱点を弱点として使われてしまえば、そのまま弱さに繋がる。

 

「いいだろう、セヴンス。先程の発言は撤回してやる。光栄に思うんだな」

「ああ、そうしてくれ」

「全く、相変わらず都合の良い考えをするやつだ。まああの程度の相手ならすぐに『用意』してきてやる!」

「……ああ! ……ん? 用意?」

 

 セヴンスがメルティアの言葉に疑問を抱いたと同時にメルティアは空高く舞い上がり、セブンスの視覚では捉えきれない程の速さで何処かで消えてしまう。

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