生存戦争 ~転生者バトルロイヤル~   作:セリカ・シルフィル

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第二十話 『絶望』

 苛烈を極めた生存戦争第三対戦。

 勝利と引き換えにこれまでとは比較にできないほどの消耗を許してしまった神殺しは休息を余儀なくされた。

 対戦後に与えられる猶予は長くも短くも一ヶ月。

 原作の神殺しセリカですら、魔力を使い果たしただけで数百年の眠りについたのだ。

 たかが一ヶ月では到底消耗した魔力や疲労、傷の全てを完治するほどの回復は見込めない。

 セリカの世界とは違う法則で動いている世界でも、これほどの重症を一ヶ月で治すには無理があったのだ。

 

 消耗しているセリカはこれまで訓練してきた技量を差し引いても、テンスと戦っていた頃と同等、それ以下の性能に成り下がっているだろう。

 魔力不足も影響しているので、満足に魔術を使えない分、テンスと戦っていた頃よりも弱体化しているのかもしれない。

 勝利を得る為に失った対価は大きく、次の対戦にまで大きく影響を及ぼすことは予想外であったが、それは視野が狭すぎただけで当然のように付きまとうリスクだったのだ。

 知りませんでどうにかしてもらえるなら戦争など起こったりはしない。

 

 対戦者だったセカンドはセリカとは違う世界の転生特典を選んだと言っても『魔力』という概念を持ち合わせていた以上、セリカが殺していればそれなりの魔力は得られていたはずだった。

 セカンドを殺したのは、セヴンスであり、所有物であるセリカにも魔力が行き渡るなどと此方にとって都合の良い展開など早々起こるはずもない。

 

 残る魔力補給の方法は<性魔術>による魔力供給だけであった。

 魔力を補給する為には<性魔術>を行使しなければならず、セリカは魔力不足に陥って正常でもなくなってしまった。

 原作のセリカが今まで<性魔術>で何度も魔力不足の危機を乗り越えてきたように、魔力不足に陥ったセリカはセヴンスの意志とは関係なく、<性魔術>で精気を奪い取ってくるのだ。

 此方の都合等お構いなしとばかりに貪欲に精気を求めてくる姿は、セヴンスの目には醜く見えて、同時にこれ以上ないほど美しく感じた。

 

 地獄のような日々が続き、<性魔術>によって枯れ殺されることにも慣れてしまった頃になって、ようやくセヴンスはセリカの<性魔術>から開放される時がやってきた。

 魔力補給で何とか正気を取り戻すことに成功したのである。

 しかし、危機は脱したにしても問題が片付いたわけではない。

 最低限の魔力不足から脱しただけで、いつ正気を失ってセヴンスから精気を奪う行動に出るかわからない。

 それだけではなく、魔力不足では今後の戦いにも少なからず支障は出る。

 それを避けるためにも<性魔術>を行って少しでも多くの魔力を回復させなければならない。

 やっと<性魔術>で枯れ殺される日々が終わりを告げたと思っていたのに今度は自分から承知して<性魔術>を冒さなければならないとは……。

 

 これまでなら、まだセヴンスはセリカを救済する為に仕方なく<性魔術>をして爛れた生活を送っていると言い訳ができて大義名分が通用していただろう。

 現実は残酷である。

 何が言いたいのかと聞かれれば、ある意味当然にして忘れてしまっていた厄災だった。

 

 ――アビルース特有の禁断症状が再発して暴走を起こしたのである。

 

 理由は単純であり、魔力不足に陥っているセリカでは魔術以前に刀だって満足に握れない。

 そんな状態で女体化をしようとすれば、魔力が尽きて暴走しかねない。

 しかし、今までのセヴンスは禁断症状を緩和する為に女体化したセリカと<性魔術>を行っていたのだ。

 それができなくなれば、満ち足りない禁断症状が顔を見せるのはある意味必然でもある。

 

 魔力不足で嫌々ながらも仕方なく男の身体で<性魔術>を行っていたセヴンスだが、禁断症状が再発したことでその言い訳もできなくなった。

 禁断症状の再発でさらにセヴンスの精神には疲労が溜まり続ける。

 

 以前のように上位世界に戻っても、どうしてもセリカのことだけが頭に浮かんでしまう。

 天界では嬉しそうに男性のセリカの身体を満喫する光景をじっくりと視覚で、聴覚で、嗅覚で、味覚で、見せ付けられる。

 

『ああ、愛しい古神の身体ぁ……』

『俺のエヴァンゲリオンがビーストモード』

『サーチANDデストロイ! サーチANDデストロイ!』

 

 うわごとを並べるようになってからは自分でも手遅れだと思い始めた。

 否定するわけでもなく、肯定するわけでもなく、ただ流れるままに古神の神殺しの身体を蹂躙する日々が続いた。

 

 そんな日々が続く中で、手遅れだと後から知ったこともある。

 それは『絶望』の真髄である禁断症状が今まで観測できなかった『進化』『変化』『悪化』の現象を引き起こしているのだ。

 被害者であるセヴンス本人だからこそ知り得たことだったが、気づいた頃にはもう遅い。

 今の状態では、例えセリカが再び女体化できるようになっても進化した禁断症状では満足しなくなり、さらに酷い状態に陥るかも知れない。

 

 未だに接吻や性行為は行っていないのは不思議でならないが、それらを行って禁断症状を緩和したとしても、進化し続けると分かってしまった以上、いずれは性行為でも満足しなくなり、それこそ手を施しようのない状態に追い込まれる可能性だってある。

 そもそも男性と男性の性行為で童貞卒業など死んでもゴメンである。その逆であるなら尚更だ。

 

 このままではジリ貧である。

 最後の一線を超えていないのはセヴンスが寸止めのところで意識を戻しているからであって、それさえなければ命令されたセリカはセヴンスに身を委ねて腕の中で喘ぎ歓喜するだろう。

 それを防ぐ為に意識を嫌でも目を背けずに意識を向けているが、精神的な疲労は否めない。

 このままでは、セリカが魔力不足で行動不能になってしまうのが先か。セヴンスの精神が崩壊してしまうのが先か。見える二択は同じ結末を迎えていた。

 

 唯一の救いは、今のセリカでも倒せる相手で、セヴンスが壊れる前に生存戦争が始まることである。

 対戦相手をセリカが殺して魔力を得られると今の危険状態を脱することができるかも知れない。

 分の悪い賭けだということは充分に分かっている。

 大前提として相手が魔力を身に宿した転生特典であるという可能性が確率的に低い。

 例え魔力を身に宿していたとしても、吸収できた魔力が現状を打開するほどのものでなければ、近いうちに自滅するのは目に見えている。

 逆に魔力が強すぎて、今のセリカでも倒せなければ、それだけで積んでしまう。

 

 それ以前にセリカとセヴンスが敵を倒せるのかという問題が残っている。

 弱体化したセリカでは魔力の問題の前に敵を倒せない可能性があるし、正気を失っているセヴンスが戦闘中に的確な指示を出せるわけがない。

 以前の生存戦争では、セリカの独断とは言え、それがなければ得られなかった勝利である。

 現状ではあれこれ考える以前にどうやって敵を倒せばいいのか。自分達の状態を少しでも緩和、利用できるのかを考える方が先決である。

 

 早く来い。

 早く始まれ。

 早くしなければ壊れてしまう。

 早く、早く、早く!

 

 転生者候補生達に与えられた一ヶ月間は逆にセヴンスを苦しめる檻となってしまった。

 一日でも早く地獄から抜け出し、一日でも早く敵と戦いたい。

 今までは練習期間がなくなってしまうことを惜しんでいたのに妙な話である。

 早く戦わなければ、セリカに溺れて完全に意識が乗っ取られる。

 いや、自分という方針がセリカを認めてしまう。

 セヴンスの願いは地獄の日々から脱却すること。

 その一番の願いがセリカを認めることで変わってしまう。

 それが怖い。

 自分の思いを欲望に塗り替えられた時こそが終わりの時。

 

 ……さあ、早く生存戦争よ。

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